Dancing in the Rain

Life is not about waiting for the storm to pass but about learning how to dance in the Rain.

(15)海洋法②

国際海峡

 領海12カイリ制の確立にともない、国際的航行に使用される多くの海峡は領海化されることになる一方で、海峡は海上通商の要衝として船舶の通行がとくに重視される

 伝統的国際法の下では領海化された国際海峡には「強化された無害通航権」が適用されてきたが、海洋法は新たに「通過通航権」を創設

1強化された無害通航
 通常の領海の通航に比べて強化:
  ①沿岸国はその海峡の無害通航制度を停止することはできない(45条②)沿岸国による当該海峡の閉鎖等の措置を禁止
    cf.通常の領海では、自国の安全の保護のために不可欠である場合(25条③)

  ②軍艦の通航権が認められる「平時においては国家はその通行が無害であることを条件に、公海の2つの部分を結ぶ国際航行に使用される海峡において沿岸国の事前の許可を受けることなく自国の軍艦を通行させる権利をもつ」(コルフ海峡事件)

  ③潜水艦を含む潜水船は浮上航行しなければならず、外国の航空機は海外上空の飛行権を有しない

 国際海峡の基準
  ①地理的基準=公海の2つの部分を結ぶ海峡 →領海条約で、一方が他国の領海とのあいだにある海峡も
  ②機能的基準=「国際航行」に(international navigation)に使用される海峡であること

2通過通航制度 transit passage

 第三次海洋法会議で米ソは伝統的な海峡制度に批判的 ①無害性判断の恣意性②潜水艦の潜水航行③軍用機機の上空飛行

 スペイン、モロッコインドネシア等海峡諸国は逆に無害通航の厳格な適用要求 英は通過通航制度を提唱
 意義:国際海峡における「継続的かつ迅速な通過の目的のための航行及び上空飛行の自由」(38条②)
 ①無害性が通行可否の直接の基準とされていない②上空飛行(軍用機含む)の自由が明記③潜水航行の可否については明示規定なし
 公海または排他的経済水域の一部分とそれらの他の部分を結ぶ海峡で国際航行に使用されるものに適用 
  それ以外には無害通航(他の国の領海との間にある海峡も含む)(45条)

3日本の海峡問題 

 領海法(1977)により領海を12カイリに拡大する一方、5つの海峡(宗谷、津軽対馬東水道、同西水道、大隅)を3カイリに凍結 →非核三原則との関係が指摘→「自由な通航を確保することが総合的国益の観点から是非とも必要であること、‥本問題がこのような方向で国際的に解決されるのを待つのが望ましい」→海洋法条約発効後も3カイリを維持

Ⅶ 大陸棚

1制度的発展
 大陸棚が国際法上問題となったのは第二次世界大戦後のこと=大陸棚に関するアメリカのトルーマン宣言(1945年)
 同宣言は、アメリカの沿岸の大陸棚の海底と地下資源は米に属し、同国の「管轄と管理」に服するものとする
 各国は相次いで大陸棚宣言・立法、国際法委員会は不統一と混乱を収拾するため大陸棚条約の草案作成に着手

 1958年大陸棚条約 北海大陸棚事件では、同条約の1条から3条までの規定は慣習法規則を反映したものとした
 1982年国連海洋法条約第6部:大陸棚の範囲等を修正して58年の条約を踏襲

2範囲
 ①領土の自然の延長をたどる大陸棚辺縁部の外縁まで(棚状部分、大陸棚斜面、コンチネンタル・ライズを含む)
 または②領海基線から200カイリの距離までの海底(76条)
  延長幅の最大限度は、基線から350カイリの線または2500メートルの等深線から100カイリ沖の線まで
  いずれも沿岸国の判断に委ねられるが、措置は国連大陸棚限界委員会の承認を得なければならない
 ②につき、200カイリに満たない場合でも、200カイリまでの海底までの一律に沿岸国の大陸棚とする

3沿岸国の権利
 沿岸国は「大陸棚を探査し及びその天然資源を開発するため」の「主権的権利」を有する(77条①)
 オデコ会社事件(昭和57年、東京地裁):大陸棚での外国法人の活動に対する「主権の一側面たる課税権を当然に含む」
 主権的権利:大陸棚に対して沿岸国に対して沿岸国が排他的で独占的権利を有すること、またそれが、無主物でも共有物でもないことを示す概念として導入 cf.主権とは区別 大陸棚そのものに対する主権的権利ではなく機能的権利にすぎない

排他的経済水域

1沿革
 1970年国連総会は73年から第三次海洋法会議を開催することを決定 中南米諸国は領海外の広い沿岸海域に対する資源管轄権を主張する構想を相次いで発表

 72年、アフリカ諸国のヤウンデ宣言は、200カイリ水域の排他的経済水域を提唱 当時台頭しつつあった新国際経済秩序構想の下に、自国の天然資源に対する永久主権の観念を海に投影

 74年、国連海洋法条約第5部に取入れ 早い段階でコンセンサス 一人歩きで各国の立法措置

2法的性格

 ⑴沿岸国の権利
  ①天然資源の探査、開発、保存、管理のための、および経済的目的のその他の調査・開発活動のための「主権的権利」
  ②人工島、海洋構築物の設置、海洋の科学調査、海洋環境の保護・保全のための「管轄権」(以上56条)
  主権的権利は上部水域のみならず、海底とその地下にも及ぶが、条約は海底部分は大陸棚の規定によるとする
  資源の「最適利用」を促進する目的で各国はその「最大持続生産量」を維持しつつ自国水域内での許容漁獲可能量と自国の漁獲能力を決定するものとし、そこに余剰分が生ずる時は協定を通して他国の入漁を認めなければならない(61・62条)

 ⑵諸外国の権利
  資源に対しては沿岸国が主権的権利を有するものの、同水域の利用、船舶航行、上空飛行、海底電線及び海底パイプラインの敷設についてはすべての国に自由な使用が認められ、追跡権の行使や海賊の取り締まりなど他国の権利行使も可能(58条)

 ⑶性格
  資源の利用と管理に関するかぎり沿岸国の権限に服する海域であるが、他方、交通・通信等についてはなお従前の公海としての性格を止めている。

 ⑷大陸棚の権利との異同
 ①権利の発生原因とその性格
  大陸棚:領土の自然の延長をなすものであり、それゆえに大陸棚の存在という自然的事実によって沿岸国は「当然かつ原初的」に、すなわち「特別の法的手続」を要することなく排他的かつ固有の権利を有する(北海大陸棚事件)
  EEZ:沿岸国のその設定意思の表明が必要
  リビア・マルタ事件では、経済水域の制度は慣習法の一部をなすとしたが、それは条約発効前でも効果を有するということを表現したにすぎない 後天的権利としての性格
 ②排他的権利性
  大陸棚:主権的権利は完全な排他性を持つ(77条②)
  EEZ:上述の制限 また余剰分がなくとも途上国たる内陸国との地理的不利国の継続的な開発参加の規定(69条)
 
排他的経済水域と大陸棚の科学調査
 沿岸国による同意方式:もっぱら平和目的でかつ全人類的利益のための科学知識を増進させるものは「通常の状況においては同意を与える」ものとし、他方、それが天然資源の探査開発に直接影響を及ぼすもの、あるいは採掘、爆発物の使用等を伴う場合は「裁量により同意を与えないことができる」とした(246条)

4島と排他的経済水域
 島「自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるもの」(121条①)
 島は、独自の領海、大陸棚、排他的経済水域を有する。ただし、「人間の居住または独自の経済的生活」を維持できないものはとして、それらを有することはできない。

 

(14)単位法律関係③法定債権(1)

第1節:不法行為

(1)総説
 法例11条は、不法行為法主義を採用。新たな類型の国際的不法行為に関して適切な準拠法を選択しない、偶然に決まる不法行為地が連結点として必ずしも適切ではないという点から批判。これに対する学説の主張は、①個別的不法行為に関する特則の導入、不法行為に関する準拠法のより柔軟な決定、③当事者自治の導入
 通則法では、原則として加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、通常予見可能性がない場合は、加害行為が行われた地の法による。個別的不法行為の特則として、製造物責任(18条)及び名誉または信用の毀損(19条)についての特則がある。さらにこれらの規定により指定された法よりも明らかにより密接な関係を有する地がある場合の例外条項が置かれている(20条)当事者による事後的な準拠法の変更も認められている(21条)
(2)一般不法行為 
 原則:結果発生地 法例11条は、隔地的不法行為に関して不明確
  加害行為地の秩序維持というよりも損害の公平な分配という点を重視
  結果発生地とは、法益侵害の結果が発生した地である。この点、二次的(後続)侵害は含まれないというのが一般的理解。
  結果発生地の特定が困難な場合、20条により個別的に最密接関係地法を探求
  単一の行為により複数国で損害が発生する場合:個々の被害者ごとに決定可能
  これに対し、ネットや衛生通信を通じた知財侵害や不正競争などにおいては、困難
  例外:結果発生地における結果の発生が「通常予見することができないものであったとき」(17条但し)は、加害行為地法。被害者と加害者の利益の公平を図り、準拠法につき加害者の予見可能性を確保する趣旨。予測可能性は一般的・平均的なものが予測できたかどうか。対象は結果発生地における結果の発生。

(不法行為)
第17条:不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、 加害行為が行われた地の法による

(3)個別的不法行為:不正競争または競争制限行為に基づく不法行為知財権の侵害に基づく不法行為について個別規定が検討されたが、現行法は、生産物責任と名誉または信用の毀損の2つだけである。
  ①生産物責任(18条)
   原則:被害者が生産物の引き渡しを受けた地の法
    生産物責任の場合、生産から事故の発生まで原因となる生産物が転々とする。17条の一般則を適用すると、結果発生地は偶然に左右されることから適当とは言えない。18条は生産物で引き渡しがされたものの瑕疵により他人の生命、身体または財産を侵害する不法行為によって生ずる生産業者等に対する債権の成立及び効力の準拠法を、原則として「被害者が生産物の引き渡しを受けた地の法」としている。これは被害者が生産物を取得した時点での当該生産物の所在地を指し、通常は市場を意味する。市場は生産者と被害者の接点であるという点で中立的であり、かつ密接に関連する。生産者は市場の安全基準をに従うと考えられ、生産業者等の行為を不法と評価する規範も市場地法に因るべきであるとする。当事者間のバランスに配慮した連結点であり、市場における競争の平等といった公益的観点に立つものではない。
    例外:生産者等の主たる事業所の所在地法
     予見可能性がなかった場合。一般則の加害行為地法に対応。例として、中古車市場。製造地や販売地なども考えられるが、むしろ生産物を市場に投入する意思決定を行う地である主たる事業所所在地の方が、市場地を原則的な連結点とする生産物責任における加害行為地としてより適切であると考えられた結果といえよう。
    引き渡しを受けた者以外の者が被害を受けた場合、18条の「被害者が生産物の引き渡しを受けた地」という連結点は、被害者が事前に生産物や生産事業者等と直接接触したことを前提としているところ、生産物の引き渡しを受けた者ではないバイ・スタンダーは、このような前提を欠いており、市場地法の適用を予測できる立場にはない。とすれば、一般則である17条が適用されるべきである。例外として、生産物の引き渡しを受けた者の従業員や同居家族のように、引き渡しを受けた者と一体しできるような場合は、18条の適用が認められるだろう。

(生産物責任の特例)
第18条 前条の規定にかかわらず、生産物で引渡しがされたものの瑕疵により他人の生命、身体又は財産を侵害する不法行為によって生ずる生産業者(生産物を業として生産し、加工し、輸入し、輸出し、流通させ、又 は販売した者をいう)又は生産物にその生産業者と認めることがで きる表示をした者に対する債権の成立及び 効力は、被害者が生産物の引渡しを受けた地の法による。ただし、その地における生産物の引渡しが通常予見することのできないものであったときは、生産業者等の主たる事業所の所在地の法 による。

②名誉または信用の毀損(19条)
   被害者の常居所地法:同時に複数の法域ぼとに不法行為がなされたとして、それぞれについて結果発生地法によりとすると、当事者間の紛争処理が複雑になるため単一の準拠法とした。被侵害利益である名誉又は信用は物理的所在を持たないため、連結点としていずれの地を選ぶかが問題となるが、被害者の救済に資すること、加害者の予見可能性にも配慮し、何より常居所において最も重大な社会的損害が発生していると考えられることから、被害者の常居所地法が選ばれた。

(名誉又は信用の毀損の特例)
第19条 第十七条の規定にかかわらず、他人の名誉又は信用を毀損する不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、被害者の常居所地法(被害者が法人その他の社団又は財団である場合 にあっては、その主たる事業所の所在地の法)による。

 

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(12)国家領域②

Ⅲ 国家領域の取得

1領域権限の意義と類型

  権原 title:国家が領域を法的に取得するための淵源をなす根拠及び証拠

 19世紀から20世紀初頭にかけては、先占、添付、割譲、征服、時効 のちに併合も含むとする見解

 区分:原始的取得 original mode of acquisition と承継取得 derivative :取得地域が他国の領有下にあったかどうかで区別 ただし、効果が異なるわけではない。

2原始取得

 ⑴ 先占 occupation:無主の地に対して実効的な支配・占有をすること。

  17世紀、スペイン・ポルトガルによる「発見」の権原性主張に対する対抗概念 cf.グロティウス「現実の占有を伴わなければならない」

要件:①国家が主体であること 私人が授権される場合も含む

   ②無主地であること 19世紀には文明国でないことは無主地であるとされた

   これに対し、当時の国家あ実行では社会的政治的組織を持った部族の領地に対しては、当該部族の首長との協定による承継取得であったとする見解(西サハラ事件)

   しかし、国際法主体性が認められていないにもかかわらず、条約としての効力を認めることは不合理ではないか

   ③実効的占有 effective possession 国家権力の実効的な表示ないし行使が必要 

   1)物理的占有説:土地の占有、定住など

   2)社会的占有説:支配権の確立があれば良い(判例)居住困難な無人島でも成立。東部グリーンランド事件でも確認。

   cf.「発見」は合理的期間内に実効的占有によって権原を完結するための「未成熟な権原」である(パルマス島事件判決、なお時際法の原則を採用している)

   ④国家による領有意思:なければ「占領」となる。

 ⑵ 添付 accretion:新しい土地の形成による領域拡大

 事実により領有の効果 自然現象によるものと人工的造成によるもの

 ただし、人工島や海洋構築物によるものは例外(海洋法60条8)

2承継取得

 ⑴ 割譲 cession        ex.樺太割譲、米のアラスカ購入

  国家の意思、とくに条約による領土の移転 有償・無償を問わない

  移転時期につき、19世紀は実効的占有の実現や引き渡しを要件とする 現代では、条約の発効日とする見解 しかし、条約の内容など個別的に対応する必要性

  住民投票の問題:ナポレオン戦争以後正統性を高めるために多用されてきたが、法的要件としては考えられていない

  一方、植民地その他非自治地域においては本国の領域とは「別個かつ異なる地位」が認められていることに留意(植民地独立付与宣言)

 ⑵ 征服 subjugation 

  武力の行使によって他国の領土の全部または一部を強制的に取得 実効的支配の確立と領有意思の存在が必要とされた

  現代国際法における征服:武力不行使原則の確立→違法から権利は生まれない

  合法性を承認してはならないとする不承認主義の一般化 

   ①武力不行使原則が強行規範ないし対世的義務となった(ニカラグア事件)

   ②不承認義務が一般国際法上の確立したとみれる実行 ex.友好関係原則宣言、ヘルシンキ議定書、

  ナミビア事件「すべての国は南アフリカの占拠の「違法性を認める義務」と同国の行為の「合法性の承認を包含する」あらゆる行動・取引を慎む義務がある

 パレスチナの壁事件「イスラエルによる壁建設はパレスチナ地域の「事実上の併合 de facto annexation」に相当するものとし、友好関係原則における違法な領土取得の不承認義務の規定を再確認しつつ、「すべての国は壁の建設から生じる違法な状態を承認してはならない義務を負う」

⑶ 時効 prescription

 土地の領有の意思を持って相当の期間、継続的かつ公然と占有することによって領有権を取得する形態

 長期の時間の経過に一定の法的効果を付与することは法秩序に内在する要請とも言えるが、国際法上、時効制度の本質的要件が明確にされておらず、要件充足の判断機関も存在しないため機能していない=学説では否定的 

 cf.「黙認」と同視されることもあるが、これは主観的意思を重視

 カシキリ・セドゥドゥ事件で、当事国は時効を援用したが、裁判所は判断回避

⑷ 領域権の歴史的凝固論 historical consolidation of title

 ノルウェー漁業事件で示唆 単に時間の経過だけを重視するのではなく、あらゆる歴史的・地理的・国際的要因を考慮して権限の凝固を認定する法理

 領域主権の確定を関連する諸要素の総合的評価に依存する点で伝統的領域権限とは異なる

 領土紛争の解決基準の判断要素として考慮されるべき

 

 

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(11)国家領域①

Ⅰ 領域主権の法概念 territorial sovereignty
1定義とその性格
 国家領域とは国家主権の及ぶ範囲の空間をさすが、この立体的空間に及ぶ国家の権限を特に領域主権と呼ぶ。

 ①立体性:領土・領海・領空で構成 ②包括性:当該地域すべての人・物・事象を支配 ③排他性:領域主権の結果として他の国家に対して排他的に主張が可能 

2法的性質

所有権説 dominium(客観説)
 私人と同様に国家がその領土を自由に使用し処分する権利、すなわち所有権に類する権利を有するとする立場 
 ローマ法から近世の絶対王政時代の家産制時代の支配的考え=国家の領土は世襲財産

権限説 支配権説 imperium
 領土主権とはその領域内の人と物に対する「支配権」そのものを意味する。
 パルマス島事件仲裁判決:国家間の関係においては独立を意味する。地球上の一部に関わる独立は、他国を排除して、そこに国家の機能を行使する権利である。
 支配権説は有力であるが、「割譲」という現状がある以上、所有権という考えも排除できない=今日では両説が包括的に認められる。

2国家領域の不可侵ー領土保全原則 territorial integrity

 伝統的には領域国の意に反してその領土を武力的に奪取されないことを意味 ex.1815年の議定書におけるスイスの永世中立とその領土保全クリミア戦争後のトルコ

 20世紀以降、連盟規約や国連憲章が「領土保全と政治的独立」を標榜、武力不行使原則とともに確認、その後、植民地独立付与宣言や友好関係原則宣言等で言及、一般国際法
 「領域主権尊重の原則の効果は、武力不行使原則と不干渉原則と不可避的に重なる」(ニカラグア事件)

 人民の自決権行使の場合:施政国の領土保全の侵害を構成しないものと解するべき ケベック分離事件「植民地人民及び外国の姿勢下にある人民あるいは内的自決を否定された人民は分離権を有する」

領域管理責任の原則:自国の主権行使によって他国の権利を害することは許されない
 「他人のものを害さないように自己のものを使用せよ」の命題に由来する義務 国内法の相隣関係の法理のアナロジー

①領域国内にある他国の権利侵害:パルマス島事件判決では、領域主権はそのコロラリーとして、領域内において他国の権利を保護する義務があるとした。

 1)人による侵害:外国人を相当な注意をもって保護する責任

 2)物による侵害:他国を侵害する危険を了知している場合に必要な措置をとる責任

  コルフ海峡事件:「他国の権利を侵害する行為のために自国の領域を使用させてはならない、というすべての国の義務」の存在を指摘し、アルバニアの責任を認める。

②領域国外における他国の権利侵害

 元来は自国領域内の外国ないし外国人の権益を保護の対象とするものであったが、近年では、領域外の外国権益の侵害を防止すべき原則として発展し、かつ、その侵害行為が私人や企業によるものであっても国家の管理責任を生じせしめる原則へと発展 さらに、環境損害に関する独自の法原則へ(1972年ストックホルム人間環境宣言原則21→1992年リオ宣言原則2)

 トレイル溶鉱所事件仲裁判決;「いかなる国も他国に重大な結果をもたらす形で自国の領域を使用したりその使用を許容する権利を有しない」
 
Ⅱ 国家領域の構成

1国家領域と国際領域
 特定の国の領域主権の及ぶ国家領域:領土とそれに付随する領水(領海と内水)、及びそれらの上部の領空
 いずれの主権または領有にも服さない国際公域:公海、公海上空、深海底、南極大陸、宇宙空間等 cf.国際化区域:国家領域のうちでとくに国際的利用に供された特別の法的地位を持つ区域

領土
 国家領域の中核であり、国家の存立要件 割譲すれば、それに付随して領海と領空も移転 領土に対する領域主権は排他的かつ包括的性質 国際法上の制限として、主権免除、外交特権など

領水
 内水 internal water と 領海 territorial sea を合わせた水域 後者につき、外国船舶の無害通航権が認められるという違い(後述)

領空
 第一次世界大戦後、航空国際条約「すべての国はその領域上の空間において完全かつ排他的な主権を有する」シカゴ国際民間航空条約(1944)でも確認
 水平的限界:領土ないし領域の外側の限界
 垂直的限界:争いあり 実効的支配説、地球引力説、大気圏説、航空機揚力説、人工衛星最低軌道説

 cf.1967年宇宙条約は宇宙空間に対する「主権の主張」を禁止、そこでの活動の自由を求める

 

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在テヘラン米国大使館事件 本案判決

米国 VS イラン 国際司法裁判所

1980年5月24日

<経緯(在テヘラン米国大使館事件 仮保全措置命令以降>

 1979年12月15日、ICJは人質の解放、大使館の明渡し等を内容とする仮保全措置を命令。

 1980年4月24日、米軍は海軍ヘリによる人質救出作戦を行うも失敗。米国は、安保理への報告の中で、これは国連憲章51条に基づく自衛権の行使であり、自国民救済のための人道目的の措置と説明。同年5月24日には判決。最終的にはアルジェリアの仲介を待って1981年1月19日に達成。

<判決要旨>

 ⑴イラン側は不出廷であるが裁判可能(前出)

 ⑵法律的紛争と政治的紛争は不可分である=混合紛争論(前出)

 ⑶ICJと安保理の同時係属について

 国連憲章12条は「総会」について制限しているが、裁判所については規定せず。

 法律的紛争を解決することは、国連の主要な司法機関である裁判所の任務である。

 法律的な解決は紛争の平和的解決の決定的な要因になりうる。

 したがって、安保理と裁判所が同時に活動することは可能である。

 ⑷管轄権の基礎:外交関係条約議定書と領事関係条約議定書

 ⑸国家責任の有無

⒈義務違反行為のイラン政府への帰属

  原則として、大使館を襲撃した過激派学生は公的地位を有していたとは言えず、また、イラン国の権限ある当局から具体的な任務を与えられ国家のために行動していたとは立証されなければならないが、そのような関係は認められないため、過激派学生の行為をイラン政府に帰属させることはできない。

  しかし、イラン自身の不作為=米国大使館及び領事館、館員、公文書及び通信手段の保護、館員の移動の自由の確保のための措置を講じなかったことは、ウィーン外交関係条約及びウィーン領事関係条約条の義務のみならず一般国際法上の義務に違反している。よってイラン自身の行為は明白で重大な義務違反を構成する。

  また、大使館占拠後、イラン政府はあらゆる努力手段を講じ占拠を終了させなければならない義務が存在したにもかかわらず、そのような措置は取られず、加えて、学生による占拠を承認し、ホメイニ師自身が大使館占拠及び人質行為をを支持を明瞭にした。これらにより大使館占拠及び人質行為は国家の行為へと変容した。

⒉責任阻却事由の有無

  イランは、米国が25年以上にわたりスパイ活動を行い、国内問題への介入を行ってきたと主張。これはイランの行為を正当化する特別な事情と言えるか。

  同主張が立証されたとしても、イランの行動を正当化できない。外交法の規則は自己完結的な制度であり、違法行為に対する防衛及び制裁として取り得る必要な措置を規定している(外交関係条約9条及び領事関係条約23条1項及び4項のペルソナ・ノン・グラータなど)=外交法に認められた以外の制裁行為は許されない。

  米国の人質救出作戦はいかなる動機によるものであれ、国際関係における司法過程への尊重を害する行為であり、また、裁判所による両国に対する紛争を激化させない命令を想起させる。しかし、この行為の合法性については申し立てられておらず、またこの行為はイランの行為に対する評価とは無関係である。

 したがって、裁判所は、国際条約及び確立した一般国際法上の義務違反を認定し、イランの国家責任及び賠償義務を認める。その上で、人質の解放、出国の保証、大使館及び領事館の明渡し、及び館員の身分保障を命じる。 

<論点>

⑴裁判所は伝統的な政治的紛争論を否定。ここから裁判所と安保理の同時係属の可能性があるがこれを容認。しかし、この点につき争いがある。

⑵私人の行為であっても、国家に国際法上の防止義務違反がある場合、国家責任が発生することを確認。私人の行為を国家が承認した場合にも国家に帰属(国家責任条文11条で採用)することが明らかにされた。

⑶米国の人質救出作戦につき、裁判所は非難はしたが、自国民保護のための武力行使の合法性については判断せず。またイランは不出廷のため、仮保全措置命令違反かどうかについても検討されず。

⑷自己完結制度とは、外交法上、必要な救済策が規定されており、それ以外の対抗措置はとりえないという考え方であるが、一般国際法上の対抗措置が禁じられているわけではない。またペルソナ・ノン・グラータによって外交官を追放してもそれが真の問題解決になるかは疑問が残る。

 

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旧在テヘラン米国大使館(2016年3月3日撮影)

 

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