Dancing in the Rain

Life is not about waiting for the storm to pass but about learning how to dance in the Rain.

(4)国際法規の効力と適用関係

1. 国際法規の一般的効力関係
  • 国際法秩序は並列的構造=それぞれの効力に関しては優劣がない。(ただし、強行規範は例外)とすれば問題となるのはその適用順位。
2. 国際法における強行規範

(1)強行規範(jus cogens, peremptory norm)

  • 国家間の合意をもってその規範から逸脱することを認めず、これに抵触する条約の効力を否定する規範(条約法条約53条)
  • 自然法のもとではその存在が肯定されていたが、主権概念の高揚により意思主義が支配的となった。
  • ウィーン条約法条約 (VCLT) 第53条

締結の時に一般国際法の強行規範に抵触する条約は無効である。この条約の適用上、一般国際法の強行規範とは、いかなる逸脱をも許されない規範として、また、のちに成立する同一の性質を有する一般国際法の規範によってのみ変更することのできる規範として、国により構成されている国際社会全体が受け入れ、かつ、認める規範をいう。

  •  国際社会の基本的秩序に関わる狭義の公序と、高度に人道的・道徳的観念にかかわるもの。
(2)強行規範の要件
 ①一般国際法としての普遍的適用性、②国家の合意による逸脱変更の非許容性、③諸国によって構成される国際社会全体による承認
 
(3)強行規範の内容と認定
  • 内容の不確定性=同条項は積極的に定義せず。
  • 「国家実行と国際裁判所の判例に委ねる」ex. 国連憲章に違反する違法な武力行使、奴隷取引、海賊、ジェノサイド
  • ICJは認定に慎重:武力不行使原則の強行規範性(ニカラグア事件)、国際人道法の普遍的規則(核兵器使用の合法性事件)でその決定を避ける。
  • 一方で、ジェノサイドの禁止規則は強行規範であると認定(コンゴ領軍事活動事件、2006)ジェノザイド条約適用事件(2007)でも再確認。
  • 拷問の禁止につき、締約国間の対世的義務であると同時に強行規範であるとも認定(訴追か引き渡しか事件、2012)
 cf.対世的義務との関係:強行規範が対世的義務であることは真だが、その逆は必ずしも成り立たない しかし、一般には密接に関連・符号。
 ex.侵略行為、ジェノサイド、奴隷制や人種差別(バルセロナ・トラクション事件、傍論)、自決権(東ティモール事件)、ジェノサイド(ジェノサイド条約適用事件)
 
(4)強行規範の効力
  • 締結時に強行規範に違反する条約は「無効(void)」である(条約法53条)無効の効果は全体に及ぶ(可分性の原則の排除・44条5項)
  • 無効がのちに確定した場合、遡及するため締約国はその間に取られた「結果をできる限り除去する」必要がある。(71条)
  • 他方、強行規範が後から成立する場合、「当該強行規範に抵触する既存の条約は効力を失い、終了する」(64条)無効原因ではなく終了原因
  • 「新たな強行規範に抵触しない限度においてのみ維持することができる」(71条2)
(5)強行規範をめぐる紛争の解決
  • 強行規範の承認は国際社会の基本的法秩序の一体性を維持するため。他方、当該規範を援用すると条約関係が不安定化。
  • 強行規範との抵触に関する紛争が国連憲章33条に定める手段によって解決されないときは、いずれの紛争当事国もこれをICJに一方的に付託しうる(66条)
(6)強行規範の意義
  • これに違背する規範の存在を否定することによって国際社会の基本秩序を維持すること。国内社会の私的自治契約自由の原則公序良俗や経済的弱者保護の制約を受けるのと同じ。
  • これに反する個々の国家の「行為」の合法性をも否認:「強行規範から生ずる義務の国家による重大な違反は「国際責任」を引き起こし、国家はその違反の終了に協力すべきこと、ならびにいかなる国も当該違反から生じる事態を適法なものと認めたり、その自体の維持を支援してはならない」(国家責任条文、40条・41条)
3. 国際法規の適用関係
(1)適用関係上の諸原則
  • 特別法は一般法を破る」「後法は前法を廃す」による処理。ただし、法の一般原則は補充的法源であり条約・慣習法に劣後するというのが支配的。
  • 特別法優先の原則:条約は慣習法に対する特別法。 ex.ガブチコボ・ナジマロシュ事件
  • 地域的慣行は一般的慣行に優先。ex. インド領通行事件
  • 条約相互間:ある一般条約の一部の締約国が特定の事項について特別の条約を締結する場合 ex.国連海洋法条約311条3項参照、条約法30条4c
  • 特別の条約の実施過程で生じた問題が同時に一般条約の別のいくつかの規定とも関係する場合:一般条約に関係する限度で両条約が併行的に適用。 ex. みなみまぐろ仲裁裁判
  • 後法優先の原則:前の条約と同じ締結国がのちに同じ主題について別の相容れない条約を締結するとき、前の条約は原則として終了(条約法第59条)両国があえて終了させない場合、「のちの条約と両立する限度においてのみ」適用される(30条3)
  • 新しい国際法秩序が慣習法によって形成されるとき、これに合致しない旧来の条約は当然には効力を失わず、改定する必要。 cf.自由地帯事件
 (2)国連憲章の優位性
 
憲章に基づく義務と他のいずれかの国際協定に基づく義務が抵触するときは、この憲章に基づく義務が優先する
  • 優先規定の解釈
   ①抵触条約の適用不能説:抵触条約は依然として有効であるが、その適用性と対抗性を喪失する。(フロリ)
   ②無効説:効力を停止するのではなく無効とする(ベルンハルト)
   →問題点:憲章の義務が優先する(prevail)の文言 また、条約全体ではなく、憲章の義務に抵触しない当該条約の他の義務は適用性を持つと解すべき。
  • 優先規定の適用範囲:義務の種類につき区別なし 範囲は、憲章に直接明記された義務に限定されるのか、それとも国連の機関が憲章に基づいて決定した拘束的義務も含むか。
  • 湾岸戦争の際の安保理決議670:「憲章103条の規定に言及しつつ、「国際協定に基づくいかなる権利義務が存在するとしても」加盟国が取るべき義務としての強制措置。
  • ロッカビー事件の仮保全措置:安保理決議748を引証して、「この決議の義務は憲章103条により、モントリオール条約を含む他の国際協定の義務に優先する」
  • ただし、拘束力を持たない総会や安保理の勧告決議はふくまない また、憲章を具体化した条約にも認められない、と解するべき。

 

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