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(6)条約法 I:条約の締結【国際法】

f:id:hiro_autmn:20200503065527j:plain国際法解説シリーズ、条約法その1です。この記事は、ウィーン条約法条約上の規定のうち、条約の締結手続についてまとめています。

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条約法とは

  • 国内の契約法の影響を受けながら発展。
  • 条約法(law of treaties) : 条約の締結、効力、適用、留保、終了等に関する規則の総称。
  • 1969年、国際法委員会(ILC)で議論されていた条約に関するウィーン条約(Vienna Convention on the Law of Treaties, VCLT)を採択。1980年発効。国家間で締結される条約を対象とした条約に関する一般規則。 cf.国際機構条約法条約(1986)

条約の概念

  • 条約の意義:「国の間において文書の形式により締結され、国際法によって規律される国際的な合意」(条約法条約2条1(a)、以下同じ)
  • 国際法によって規律」cf.日ソ共同宣言は規律され、日中共同声明はそうでない。ともに書面であるが尺度が明確でない。
  • 「条約に拘束されることについての国家の同意」(11条)の存否:通常の条約の締結手続だと問題なし。署名文書の場合、名称よりも、文書の性格、その文言・規定およびそれが作成された具体的状況によって判断されるべき(エーゲ海大陸棚事件)
  • 当該文書が最初から法的拘束力を持たないとの了解のもとに作成された場合、それ自体条約とみなされない。ex.ヘルシンキ最終議定書、新欧州パリ憲章、リオ宣言

Article 2 Use of terms

1. For the purposes of the present Convention:

(a) “treaty” means an international agreement concluded between States in written form and governed by international law, whether embodied in a single instrument or in two or more related instruments and whatever its particular designation;

一方的声明の効力

通常は法的効力を持たないが、一定の状況では例外的に法的性格が付与される場合 ex.東部グリーンランド事件(デンマークの要請に対するノルウェーの肯定的回答であって、かつ、ノルウェースピッツペルゲンに対する主権の主張と相互承認の性格を持つ「双務的義務」の創設)、核実験事件(相手国に対する約束という形をとらない、公の声明としての一方的な義務の受諾 (拘束性の根拠は信義則 principle of good willとした))

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  • コンセッション協定:テキサコ石油会社事件の仲裁判決は、「国際化」現象によって一定の条件下で「国際法の規律」に入るものとしたが、アングロ・イラニアン事件では国内法とした。

条約の締結

(1)条約締結権者
  • すべての主権国家は条約を締結する能力を有する。
  • 具体的に国のいかなる機関がこれを有するかは国内法の問題=憲法による委任
  • 伝統的には行政府=条約締結は主権者たる君主の専権事項であったが、今日では民主的統制のため議会の同意ないし承認を要件とするのが通例 
(2)条約締結手続
  • 交渉:全権委任状(full powers)を備えた代表者によるが、元首・政府の長・外務大臣および外交使節は職務上これを要しない。
  • 確定:条約文を採択(adoption)したのち、確定(authentication)=代表者の署名が行われる。これにより当該条約文は「真正かつ最終的なもの」となる。
  • 代表者の署名の効力:それが「条約に拘束されることについての国の同意」を意味する場合=署名によって条約が成立(略式条約、12条)。特に行政的・技術的条約の場合。
  • 批准等を国の同意として署名を要する場合:「条約の趣旨および目的を失わせることとなるような行為」を行わない義務を負う(18条)=国際法上の信義則、漸進的規定から一般化。
  • 批准:ratification 条約に拘束されることについての国の同意を国際的に確定する行為。署名によって成立しない条約の場合、やや簡略化された「受諾」「承認」もある。当該条約がその旨を定めているとき、交渉国がそれに合意したとき、代表者が批准を条件として署名したとき、これが必要となる(14条)
  • 批准の義務性:近世の絶対君主時代は、君主による批准が原則として義務=代理法理。19世紀には義務性の緩和=政治的経済的に重要度の高い条約が多く結ばれるようになった。
  • 批准制度の必要性:①条約の種類の多様化と内容の複雑化に伴い代表者の署名した条約の精査の必要性。②各国の憲法上の要請として議会の統制が進展 cf.ICJは「不可欠の条件」とした。
  • 批准を要する条約かどうか明らかでない場合:慣行的に不要とする趣旨である(ブライアリー)一定の例外を除いて批准によってのみ拘束力を有するのが国際法の通常の原則(PCIJ) 
(3)条約の締結における議会の統制
  • アメリカ合衆国憲法が端緒。
  • 民主的統制:条約の規律事項の拡大多様化→憲法・国内法との整合性や政治的判断の必要性。
  • 議会承認条約の範囲(日本の場合):国会承認条約行政取極とを区別。大平三原則1974)によれば、以下の条約については国会の批准が必要。
  1. 国民の権利義務に関係するような国会の法律事項にかかわる条約
  2. 財政支出を伴う条約 
  3. 国家間の一般的基本関係を規定するような政治的重要性をもつ条約
(4)条約の発効 
  • 当該条約の定める期日または交渉国の合意する日。
  • 別段の定めや合意がない場合、国家の同意が確定的に付与されたとき(24条)=批准書の交換または寄託(16条)
(5)条約の登録 
  • 国連憲章は、加盟国が締結する条約をすべて事務局に登録することを義務付け(102条1項)=秘密条約の防止。

  • 未登録条約は国連のいかなる機関においても援用(invoke)しえない(同条2項)

  • ICJも含まれるが、仲裁裁判所では適用されない。また、法的効力をもつすべての国際約束が対象となる。

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