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Dancing in the Rain

Life is not about waiting for the storm to pass but about learning how to dance in the Rain.

(5)条約法①

Ⅰ 総説

1条約法の特質:国内の契約法の影響を受けながら発展
 条約法(law of treaties) : 条約の締結、効力、適用、留保、終了等に関する規則の総称
 1969年「条約に関するウィーン条約(1980年発効、国際法委員会
   =国家間で締結される条約を対象 cf.国際機構条約法条約(1986)
2条約の概念
 条約:「国の間において文書の形式により締結され、国際法によって規律される国際的な合意」(2条1(a)) 
 cf.コンセッション協定:テキサコ石油会社事件の仲裁判決は、「国際化」現象によって一定の条件下で「国際法の規律」に入るものとした、がアングロ・イラニアン事件では国内法とする
 「国際法によって規律」cf.日ソ共同宣言は規律され、日中共同声明はそうでない ともに書面であるが尺度が明確でない
 「条約に拘束されることについての国家の同意」(11条)の存否 
   通常の条約の締結手続きだと問題ない 
   署名文書の場合、名称よりも、文書の性格、その文言・規定およびそれが作成された具体的状況によって判断されるべき(エーゲ海大陸棚事件)
   当該文書が最初から法的拘束力を持たないとの了解のもとに作成された場合、それ自体条約とみなされない ex.ヘルシンキ最終議定書、新欧州パリ憲章、リオ宣言
  cf.一方的声明の効力:通常は法的効力を持たないが、一定の状況では例外的にそれに法的性格が付与される場合 ex.東部グリーンランド事件、核実験事件
  前者:デンマークの要請に対するノルウェーの肯定的回答であって、かつ、ノルウェースピッツペルゲンに対する主権の主張と相互承認の性格を持つ「双務的義務」の創設
  後者:相手国に対する約束という形をとらない、公の声明としての一方的な義務の受諾 (拘束性の根拠は信義則principle of good willとした)
 
Ⅱ 条約の締結
1条約締結権者
 すべての主権国家は条約を締結する能力を有する 
 具体的に国のいかなる期間がこれを有するかは国内法の問題=憲法による委任
 伝統的には行政府=条約締結は主権者たる君主の専権事項であったが、今日では民主的統制のため議会の同意ないし承認を要件とするのが通例 例外としてスイス
 
2条約への同意の表明=条約締結手続
 交渉:全権委任状(full powers)を備えた代表者によるが、元首・政府の長・外務大臣および外交使節は職務上これを要しない
 確定:条約文を採択(adoption)したのち、確定(authentication)=代表者の署名が行われる よって当該条約文は「真正かつ最終的なもの」となる
 ※代表者の署名の効力:それが「条約に拘束されることについての国の同意」を意味する場合=署名によって条約が成立(略式条約、12条) 特に行政的・技術的条約
 批准等を国の同意として要する場合:「条約の趣旨および目的を失わせることとなるような行為」を行わない義務を負う(18条)=国際法上の信義則 漸進的規定から一般化
 批准:ratification 条約に拘束されることについての国の同意を国際的に確定する行為 署名によって成立しない条約の場合 やや簡略化された「受諾」「承認」もある
 当該条約がその旨を定めているとき、交渉国がそれに合意したとき、代表者が批准を条件として署名したとき、これが必要となる(14条)
 批准の義務性:近世の絶対君主時代は、君主による批准が原則として義務=代理法理 19世紀には義務性の緩和=政治的経済的に重要度の高い条約が多く結ばれるようになった
 批准制度の必要性:①条約の種類の多様化と内容の複雑化に伴い代表者の署名した条約の精査必要性 ②各国の憲法上の要請として議会の統制が進展 cf.ICJは「不可欠の条件」とした
  批准を要する条約かどうか明らかでない場合:慣行的に不要とする趣旨である(ブライアリー)一定の例外を除いて批准によってのみ拘束力を有するのが国際法の通常の原則(PCIJ) 
 
3条約の締結における議会の統制 アメリカ合衆国憲法が端緒 
 民主的統制:条約の規律事項の拡大多様化→憲法・国内法との整合性や政治的判断の必要性
 議会承認条約の範囲(日本の場合):「国会承認条約」と「行政取極」 ①国民の権利義務に関係するような国会の法律事項にかかわる条約 ②財政支出を伴う条約 ③国家間の一般的基本関係を規定するような政治的重要性をもつ条約には批准が必要(大平三原則、1974年)
 
4条約の発効 当該条約の定める期日または交渉国の合意する日
 別段の定めや合意がない場合、国家の同意が確定的に付与されたとき(24条)=批准書の交換または寄託(16条)
 
5条約の登録 国連憲章は加盟国が締結する条約をすべて事務局に登録することを義務付け(102条①) 秘密条約の防止
 未登録条約は国連のいかなる機関においても援用(invoke)しえない(同条②)
 ICJも含まれるが、仲裁裁判所では適用されない また、法的効力をもつすべての国際約束が対象となる
 
Ⅲ 条約の留保
1留保制度の意義
 留保(reservation)とは、条約の署名ないし批准のさいに「条約の特定の規定の自国への適用上その法的効果排除又は変更すること」を意図して行う国家の単独の声明(2条(d))
 多数国間条約において、一部の国が国内事情等により特定の条文の受け入れを困難視する場合、留保を認めることでその国の条約への参加を促進することができる=条約の普遍性の実現
 留保制度は2つの相異なる要請=普遍性(広範な締約国の確保)と一体性(の確保を図るものでなければならない
 
2留保制度の歴史的意義と経緯
 19世紀末、奴隷取引禁止のブリュッセル一般議定書に対するフランスの留保=「部分的批准」 その後、2度のハーグ平和会議で一般化
 ①連盟慣行:「全会一致の原則」により、他のすべての締約国の受諾を必要とする=一カ国でも反対すれば条約の締約国とはなり得ない 一体性重視
 ②汎米慣行:一部の締約国の反対があっても、留保受諾国との間では留保規定の部分を除いて条約関係が成立するものとし、反対国とのあいだでは条約関係が成立しないとする方式 普遍性重視
 ジェノサイド条約留保事件(1951年):当該条約の目的等を勘案しつつ、ささやかな留保に対する異議により諸国家が本条約の枠外に置かれることも、また多数の締約国確保のために条約の趣旨が犠牲にされることも認められないとし、それゆえ、「当該留保と条約の趣旨及び相性との両立性」にこそ、留保を付す際のまたこれを異議する際の「基準」になる、とした
 条約目的との両立性の基準:当該留保につき条約目的との両立性に異議を唱えない締約国との間では条約関係が成立し、他方、異議申立て国との関係では留保国は締約国とはみなされない
 
3条約法条約の留保制度
 留保の許容性(permissibility):いかなる場合に留保を付すことができるか
 ①当該条約が留保を禁止している場合、②条約が当該留保を含まない特定の留保のみを認めている場合、③条約に定めがないとき、当該留保が条約の趣旨目的と両立しない場合(19条)
 留保の受諾及び留保に対する異議(20条)
 条約が留保を明示的に認めている場合は、別段の定めがない限り受諾を要しない(同①)
 留保国と受諾国との間では条約関係が成立、留保にかかわる規定は「留保の限度において変更」される(21条①a)
 留保国と異議申立国との間では「条約の効力発生が妨げられることはない」としつつ、かつ留保にかかわる規定は「留保の限度において適用がない」(21条3)
 ただし、締約国としての地位を認めない旨の「別段の意図を明確に表明する場合」は留保国との間では成立しない(20条4b)
 両立性の判断:個々の締約国が判断 特に人権条約で問題となってきた ex.自由権規約6・7条に対するアメリカの留保、ジェノサイド条約の管轄権規定(コンゴ領軍事活動事件)
 人種差別撤廃条約の規定:締約国の少なくとも3分の2の異議があるときは両立しないものとする
 留保の相互主義:留保国以外の締約国も、留保国との関係においては、当該留保規定に拘束されることはない
 
4人権条約の留保制度の適用性
 人権条約には条約法上の留保制度を全面的に適用するべきではないとする学説
  ①相互性の欠如=自国の管轄下にある個人に対して義務を負うのであるから、国家間の義務の相互性が働かない
  ②実施機関の存在=人権条約は履行監視制度を含んでいるため、これらの実施機関が留保の許容性を一元的に判断することが可能
 ベリロス事件(欧州人権裁):留保の有効性に関する判断権を確認しつつ、スイスの留保を無効とした(ただし無効とされた留保の効果については不明)
 自由権規約委員会一般的意見24(1994):国際人権規約は「個人の権利付与」に関わる条約であり、国家は他国の留保に法的利害を持つことが乏しく、よってその問題は委員会が判断するほかない=人権条約の留保の許容性は実施機関にあるとする宣言
 →これに対して、英・米・仏は締約国に判断権があるとして反対意見
 ロウル・ケネディー事件(自規委・1994):同意見に基づき、留保の許容性を判断、個人通報制度に対する留保が議定書の趣旨及び目的と両立しないとして、無効とする→トリニダード・トバゴは議定書を廃棄(留保が受諾されなければ議定書に参加しなかったと考えられるな場合にも、議定書に拘束されるのかという反対意見)
 
5解釈宣言の取り扱い
 解釈宣言(interpretative declaration):条約規定の意味内容を特定化するために、条約の署名または批准の際に付される 条約の法的効果を排除変更するものであってはならなず、この場合は「留保」みなされる(条約法2条1d)
 英仏大陸棚事件(1977):フランスが大陸棚条約6条に付した条件は、「留保」か「解釈宣言」かの判断につき、「解釈の要素を持つものの、単なる解釈を越え、条約規定の法的効果を変更する意図を有するものである」
 しかし、依然としてその基準は曖昧で、個々のケースによって判断
 
<参考>日本のによる留保
 
  第7条「公の休日についての報酬について」第8条「同盟罷業をする権利について」
  第13条「中等教育及び高等教育の漸進的無償化について」(2012年9月民主党政権により撤回)  
 
 人種差別撤廃条約第4条:いわゆるヘイト・スピーチと表現の自由との関係
 (a) 人種的優劣又は憎悪に基づく思想のあらゆる流布、人種差別の扇動、いかなる人種若しくは皮膚の色若しくは種族的出身を異にする人の集団に対するものであるかを問わず、すべての暴力行為又はその行為の扇動、及び人種主義に基づく活動に対する資金援助の提供も『法律で処罰すべき犯罪』であることを宣言すること」
 (b) 人種差別を助長し及び扇動するその他のすべての宣言・活動を『違法である』として禁止するものとし、このような団体又は活動への参加が、『法律で処罰すべき犯罪』であることを認めること
 
 児童の権利条約37条(c):国内制度上20歳以上と未満で分離
 「自由を奪われたすべての児童は、人道的に、人間の固有の尊厳を尊重して、かつ、その年齢の者の必要を考慮した方法で取り扱われること。特に、自由を奪われたすべての児童は、成人とは分離されないことがその最善の利益であると認められない限り成人とは分離されるものとし、例外的な事情がある場合を除くほか、通信及び訪問を通じてその家族との接触を維持する権利を有すること。」