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(9)国際社会の基本的原則:主権平等と内政不干渉【国際法】

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国際法解説シリーズ第9弾。この記事では、国際社会の基本的原則、特に主権平等と内政不干渉の問題についてまとめています。少し長いですがまとまりが悪いので一本の記事で。

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基本権概念

  • 国際法秩序は、多元的で重層的な規範構造を織り成しながら全体としてまとまりを持った体系。それを可能ならしめる条約や慣習法上の様々な規則が調和を保つような基本原則が存在。
  • 歴史的に、主権尊重、主権平等、国家の自己保存権、国家独立の原則、国家の交通権、不干渉義務などの原則は国家の基本的権利義務として捉えられてきた。
  • 国家の絶対的な自然権や人の基本的人権と同視された時代があったが、現代では国際法が規律する枠内で変化発展している。
  • 国連総会の友好関係原則宣言(1970年)は以下の国際社会の基本的原則を掲げる。
  1. 武力不行使原則
  2. 紛争の平和的解決の原則
  3. 国内問題不干渉の原則
  4. 相互協力義務
  5. 人民の同権と自決の原則
  6. 主権平等の原則
  7. 憲章義務の誠実な履行 

主権概念の変遷

主権概念の展開

(1)近代の主権論
  • 主権論は、16世紀の仏の政治学者ボーダンによって理論化。「国家の絶対的で永久の権力」として、国王による国家統一を促進するための政治理論であった。一方、主権者といえども神の法、自然法およびすべての人々に共通の幾つかの「人定法」には服するとした(相対主権論)
  • ホッブス及びヘーゲルは、国家主権の高次性を強調。一方で、ロックやヴァッテルは、統治のための権力して法の支配に服するとする。
  • 18世紀以降、ウェストファリア体制の進展:主権観念は国家の対外的独立を意味するものとして、他国の不当な介入に対する概念としての主権が定義された。
(2)現代の主権論
  • 20世紀、戦争容認論等の主権概念の負の側面の反省から、セルやポリティスは、「主権概念はもはや国際社会の基調概念としての地位をもちえない」とした。
  • 第二次世界大戦後、社会主義国発展途上国による主権尊重原則の強調。少数派・弱者と西欧先進国における主権の制限ないし移譲の承認→国際機構の発展

国家主権の現代的意義

  • 国家主権は、他国の不当な介入を排除する抵抗概念として、または国家領域の安全確保の手段としていぜん有用性が認められる。
  • 国際司法裁判所(ICJ)による判例:「領域主権の尊重は国際関係の本質的基礎である」(コルフ海峡事件、1949年)「他国の領域主権を尊重する国家の義務」の明示(ニカラグア事件、1986年)
  • 主権概念は、主権平等原則不干渉義務およびこれらを保障する原理としての武力不行使原則、紛争の平和的解決原則などに実体法化。 

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主権平等の原則

  • 18世紀、ヴァッテルは、自然法思想に立脚し、自然状態の人と同様、国家も当然に平等であると訴えた。
  • 実証主義の19世紀においてもこのことは疑問視されることはなかった。しかし、当時想定されていたのは "family of nations” であり、欧米キリスト教国の圏外では不適用であった。
  • フィオレ「非文明国は完全に平等の条件で国際的権利の享受を主張し得ない」国内制度の未発達さゆえに国際的義務を十分に履行できないとする。cf.国連憲章2条1「すべての加盟国の主権平等の原則を基礎においている」

主権平等の具体的意味内容

国際法の適用における平等

法の前の平等:慣習法はすべての国に、条約はすべての締約国に無差別に適用。しかし、自力救済の原則から事実面でずれ。

国際法の定立における平等

国際法規範を創設する上で差別されない。条約締結参加の機会の平等と意思表明の平等。例外として国連憲章の改正(第108条)。

国際法の規範内容における平等

すべての国に同じ内容の権利義務を創設。必ずしも保証されない。ex. 核兵器不拡散条約、気候変動枠組み条約。

実質的平等の確保

  • 主権平等原則の適用はかえって国家間の格差を拡大させる可能性。ex.経済力の劣る発展途上国に競争原理を適用したブレトンウッズ体制。
  • 格差是正と実質的平等確保のためには伝統的国際法の修正が必要。ex.排他的経済水域、深海底制度、「共通にして差異ある責任」(気候変動3条1)
  • 国際機構との関係では、内部機関への代表選出の機会平等と機構の意思決定における評決が問題となる。
(1)安保理常任理事国の地位

地位の常任性と拒否権:平和の維持に当たって大国は主要な責任を負うとの前提でこれを正当化。cf.非常任は任期2年で選出

(2)経済的国際機構の加重表決制

IMF世界銀行では加重投票制(weighted voting system)を導入。資金の確保と大口出資国の発言権の保障という現実的必要性。 

内政問題不干渉の義務

  • 主権平等原則のコロラリー(論理的帰結)として、内政不干渉は、国際秩序の維持の根幹をなすと同時に国家の共存を保障するもの。
  • 歴史的には国際政治の荒波に翻弄:ポーランド分割、反革命的干渉などの実例=ヨーロッパ協調体制での「政治的均衡」、一方で米のモンロー主義
  • ナポレオン戦争後の公然とした干渉は例外としての「勢力均衡のための干渉」か→19世紀末には真に国際法上の義務として定着。
  • 現代国際法では、武力不行使原則の確立、自決権の原則、人権概念の高揚、国際機構の発展に寄与。

不干渉義務の対象範囲

  • 国内管轄事項の範囲(matters of domestic jurisdiction)国家は国内問題を自由に処理決定できる。国内管轄事項か否かは国際関係の発展に依存。チュニス・モロッコ国籍法事件)
  • 干渉不許容宣言(総会決議、1981年)は、主権、政治的独立、領土保全、国家的統一と安全保障、及び、自国の政治的、経済的、文化的、社会的制度の決定、天然資源に対する永久主権の行使に関する不可譲の権利を確認。
  • また、違法な行為として、①武力的方法で他国の政治経済秩序を破壊する行為、他国の政治制度や政府を転覆または変更する行為、②他国の国内問題に対する軍事的政治的経済的介入、③植民地支配または外国の占領下にある人民の自決権の侵害、④他国に対する政治的圧力ないし強制の手段として自国の対外経済援助計画を利用し、経済的報復や封鎖を実施する行為、⑤他国における反乱活動や分離行為を直接間接に助長する行為などを列挙。ただし、先進国の反対多数のため慣習法化は疑問。

干渉行為の一般的基準

  • 伝統的には「命令的介入 dictatorial interference」の有無(オッペンハイム)武力その他を背景に一国の意思を他国に強制したかどうかで判断。
  • ニカラグア事件において、ICJは、強制の手段によらない単なる助言や批判は違法な干渉にあたらないと判示。
(1)武力的干渉
  • 今日では武力行使自体が違法であり、主権侵害や侵略行為等を構成することもある。
  • コルフ海峡事件では、イギリス海軍アルバニア領海内で強行した掃海作業が、アルバニアの主権を「侵害(violation)」するとした。ex. ハンガリー事件、チェコ事件、アフガニスタン侵攻
  • 直接軍事力を行使しなくとも他国の政治体制の変革や内乱の助長のために武装集団を組織・援助・扇動することも間接的な武力行使として禁止される。
  • ニカラグア事件において、ICJは、国際法上、1国が他国への強制の意図を持って、その他国の政府を転覆させる目的を持つ武装集団を支援し援助するときは、その支援国の政治的目標がそこまで及んでいるかを問わず、それは他国の国内問題への干渉に相当すると判示した。
(2)経済的・政治的強制
  • 友好関係原則宣言及びヘルシンキ最終議定書で確認。他方で、国家の通常の経済的戦略や内外の情勢変化に伴う経済政策の変更と区別が微妙。
  • また、自衛権の行使と国際法上の対抗措置は例外として認められる。。主として途上国が主張し、先進国は反対している。

内戦と他国の支援

  • 19世紀以来、合法政府の支援要請があれば内政干渉とならないとする見解が一般的。ex.1900年の万国国際法学会
  • 当該政府がその国を代表する能力を有していることが条件とする見解(ブルンチェリ)
  • 今日では、要請の有無にかかわらず、他国内戦への不介入を求める立場が有力。合法政府といっても国民的支持を失っている可能性があり、また外国の介入による内戦の拡大悪化する可能性あり。
  • ただし、内戦への不介入義務は植民地支配や外国支配下の人民が自決と独立を追求する武力闘争には適用されない。

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