読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Dancing in the Rain

Life is not about waiting for the storm to pass but about learning how to dance in the Rain.

(7)国際社会の基本的原則

Ⅰ 総説ー基本権概念

1基本権概念の変遷

 国際法秩序は多元的で重層的な規範構造を織り成しながら全体としてまとまりを持った体系
 それを可能ならしめる条約や慣習法上の様々な規則が調和を保つような基本原則が損存在

 歴史的には、主権尊重、主権平等、国家の自己保存権、国家独立の原則、国家の交通権、不干渉義務 =従来これらの原則は国家の基本的権利義務として捉えられてきた 

 国家の絶対的な自然権や人の基本的人権と同視された時代があったが、現代では国際法が規律する枠内で変化発展している


2現代の基本的法原則

 国連総会の友好関係原則宣言(1970)によると
  ①武力不行使原則、②紛争の平和的解決の原則、③国内問題不干渉の原則、④相互協力義務、⑤人民の同権と自決の原則、⑥主権平等の原則、⑦憲章義務の誠実な履行

Ⅱ 主権概念の変遷
1主権概念の展開

 ⑴近代の主権論

  16世紀、ボーダンによる理論化「国家の絶対的で永久の権力」国王による国家統一を促進するための政治理論 

  一方、主権者といえども神の法、自然法およびすべての人々に共通の幾つかの人定法」には服するとした=相対主権論

  ホッブスヘーゲルは国家主権の高次性を強調 一方で、ロックやヴァッテルは、統治のための権力して法の支配に服するとする

  18世紀以降、ウェストファリア体制の進展:主権観念は国家の対外的独立を意味する=他国の不当な介入に対する概念としての主権

 
 ⑵現代の主権論
  20世紀、戦争容認論等主権概念の負の側面の反省 セルやポリティス「主権概念はもはや国際社会の基調概念としての地位をもちえない」
  戦後、社会主義国発展途上国による主権尊重原則の強調

  少数派・弱者と西欧先進国における主権の制限ないし移譲の承認→国際機構の発展


2国家主権の現代的意義
 他国の不当な介入を排除する抵抗概念として、または国家領域の安全確保の手段としていぜん有用性が認められる

 「領域主権の尊重は国際関係の本質的基礎である」(コルフ海峡事件、1949)「他国の領域主権を尊重する国家の義務」を明示(ニカラグア事件)

 主権概念は、主権平等原則不干渉義務およびこれらを保障する原理としての武力不行使原則、紛争の平和的解決原則などに実体法化

 主権概念は消滅したわけではなく、他の基本的諸原則を侵食する形での至上性を主張することはできなくなったとみなければならない
 
Ⅲ 主権平等の原則

1平等原則の史的展開

 18世紀、ヴァッテルの主張

  ①自然法思想に立脚=自然状態の人と同様、国家も当然に平等 ②主権概念

 法実証主義の19世紀においても疑問視されることはなかった。しかし、当時想定されていたのは"family of nations”であり、欧米キリスト教国の圏外では不適用

 フィオレ「非文明国は完全に平等の条件で国際的権利を享受を主張し得ない」国内制度の未発達さゆえに国際的義務を十分に履行できない ただし法的平等を意味する

 cf.国連憲章2条1「すべての加盟国の主権平等の原則を基礎においている」


2主権平等の具体的意味内容

 ⑴ 国際法の適用における平等:法の前の平等 慣習法はすべての国に、条約はすべての締約国に無差別に適用 しかし、自力救済の原則から事実面でずれ

 ⑵ 国際法の定立における平等:国際法規範を創設する上で差別されない 条約締結参加の機会の平等と意思表明の平等 例外=国連憲章の改正(第108条)

 ⑶ 国際法の規範内容における平等:すべての国に同じ内容の権利義務を創設 かならずしも保証されない ex.核不拡散条約、気候変動枠組み条約


3実質的平等の確保

 主権平等原則の適用はかえって国家間の格差を拡大させる可能性 ex.経済力の劣る発展途上国に競争原理を適用したブレトンウッズ体制

 格差是正と実質的平等確保のためには伝統的国際法の修正が必要 ex.排他的経済水域、深海底制度、「共通にして差異ある責任」(気候変動3条1)


4国際機構と主権平等

 内部機関への代表選出の機会平等と機構の意思決定における評決が問題となる

 ⑴安保理常任理事国の地位:地位の常任性と拒否権=平和の維持に当たって大国は主要な責任を負うとの前提でこれを正当化 cf.非常任は任期2年で選出

 ⑵経済的国際機構の加重表決制IMFや世界銀行で導入 weighted voting system 資金の確保と大口出資国の発言権の保障という現実的必要性

Ⅳ 内政問題不干渉の義務

1不干渉義務の歴史的展開と現代的視点

 主権平等原則のコロラリー 国際秩序の維持の根幹をなすと同時に国家の共存を保障
 歴史的には国際政治の荒波に翻弄:ポーランド分割、反革命的干渉などの実例=ヨーロッパ協調体制での「政治的均衡」?一方で米のモンロー主義

 ナポレオン戦争後の公然とした干渉は例外としての「勢力均衡のための干渉」か→19世紀末には真に国際法上の義務として定着 ボンフィス・フィオレ

 現代国際法での法現象の発展①武力不行使原則の確立=自衛権の行使等を除いて一般的に違法 ②自決権の原則 ③人権概念の高揚 ④国際機構の発展=組織的・集団的対応

2不干渉義務の対象範囲

 ⑴国内管轄事項の範囲(matters of domestic jurisdiction)国家は国内問題を自由に処理決定できる 国内管轄事項か否かは国際関係の発展に依存チュニス・モロッコ国籍法事件)

 ⑵干渉不許容宣言(総会決議、1981年)①主権、政治的独立、領土保全、国家的統一と安全保障等②自国の政治的、経済的、文化的、社会的制度の決定、天然資源に対する永久主権の行使に関する不可譲の権利、③世人宣言等の条項に基づく自国の政治的、経済的、文化的利益のための情報への自由なアクセス、情報システムとマス・メディアの発展の権利
 違法な行為として、①武力的方法で他国の政治経済秩序を破壊する行為、他国の政治制度や政府を転覆または変更する行為、②他国の国内問題に対する軍事的政治的経済的介入、③植民地支配または外国の占領下にある人民の自決権の侵害、④他国に対する政治的圧力ないし強制の手段として自国の対外経済援助計画を利用し、経済的報復や封鎖を実施し、またそのために多国籍企業を活用する行為、⑤他国における反乱活動や分離行為を直接間接に助長する行為、⑥他国を標的にしたテロ活動の国家的利用、テロリストグリープへの支援行為その他 ※ただし、先進国の反対多数なので慣習法化は疑問とする

3干渉行為の一般的基準
 伝統的には「命令的介入 dictatorial interference」の有無(オッペンハイム)=武力その他を背景に一国の意思を他国に強制すること
 ニカラグア事件「強制の手段によらないたんなる助言や批判は違法な干渉にあたらない」
 ⑴武力的干渉:今日では武力行使自体が違法であり、主権侵害や侵略行為等を構成することもある
  コルフ海峡事件では、イギリス海軍アルバニア領海内で強行した掃海作業が、アルバニアの主権を「侵害(violation)」するとした
  事例:ハンガリー事件、チェコ事件、アフガニスタン侵攻
 直接軍事力を行使しなくとも他国の政治体制の変革や内乱の助長のために武装集団を組織・援助・扇動することも間接的な武力行使として禁止される

 ニカラグア事件「国際法上、1国が他国への強制の意図を持って、その他国の政府を転覆させる目的を持つ武装集団を支援し援助するときは、その支援国の政治的目標がそこまで及んでいるかを問わず、それは他国の国内問題への干渉に相当する」


 ⑵経済的・政治的強制:友好関係原則宣言及びヘルシンキ最終議定書 他方で国家の通常の経済的戦略や内外の情勢変化に伴う経済政策の変更と区別が微妙 また、例外として、自衛権の行使と国際法上の対抗措置 先進国による反対


 ⑶情報技術と干渉:放送衛星による他国への情報・映像の送信、資源探査衛星による地球資源や環境の遠隔探査

4内戦と他国の支援

 ⑴合法政府の支援要請:19世紀以来、内政干渉とならないとする見解が一般的 ex.1900年の万国国際法学会
  当該政府がその国を代表する能力を有していることが条件とする見解(ブルンチェリ)
  今日では、要請の有無にかかわらず、他国内戦への不介入を求める立場が有力
   ①合法政府といっても国民的支持を失っている可能性②外国の介入による内戦の拡大悪化

 ⑵自決権行使の武力紛争と外国の支援
  内戦への不介入義務は植民地支配や外国支配下の人民が自決と独立を追求する武力闘争には適用されない
  植民地独立付与宣言4項、侵略の定義決議(総会、1974)

5人道的干渉

 ⑴歴史的経緯:他国において重大な人権侵害、迫害行為、虐殺等の非人道的行為があるとき、これを阻止するために外国が武力で持って一方的に介入することが国際法上許されるかどうか=人道的干渉 humanitarian intervention
 16世紀からの議論、特にキリスト教徒の保護を名目とした介入→今日では、武力行使自体が違法化

 ⑵法的論点の検討
  一般に承認された国連実行によれば、重大な人権侵害は「国際的関心事項 legitimate concern of international community」
  よって国連がこれに対して必要な措置を講ずることは法的に問題無い cf.ウィーン宣言(世界人権会議、1993)
  他国が自らの判断で一方的に武力介入する場合に問題 ex.NATOのユーゴ空爆

 1)肯定論:

 ①国連憲章体制上、人権保護は平和の維持と同様に重要な目的である

 ②憲章2条4項は「領土保全または政治的独立」を害するものでなければ良い

 ③国連の集団安全保障体制が有効に機能していない場合は個別国家の行動により補完される

 ④合法化されないとしても国家責任法における違法性阻却事由としての緊急避難ないし対抗措置として違法性が解消される

 2)肯定論の法的検討:
 ①それ自体が誤りではないが、国連憲章の1条1項と2項は「第一次的地位」が与えられている(国連経費事件)

 ②是認することは法的に困難。連盟の起草過程から導入されたにすぎない。そのような制限解釈はICJは採用していない

 ③武力不行使原則は集団安全保障を前提として導入されたのではない

 ④緊急避難について、国家責任条文を見ると、「不可欠の利益」が必要、対抗措置については、今日では対世的義務の違反について直接の被害国以外のそれが認められている。しかし、それらは武力の行使を伴わないことが基本的な前提となっている

 ⑶課題と展望

  濫用の危険:人道の名の下に容易に「合法的な」武力行動が可能となる
  「保護する責任」(カナダ政府):一国において大規模な人権侵害が発生しているにもかかわらず当該国家がそれを防止する能力ないし意思がないときは「不干渉の原則は国際的な保護する責任に立場を譲る」べきものであり、その際、安保理は拒否権を行使すべきではない

6国際機構と干渉問題

 ⑴国際連盟国連の対比:

 連盟規約15条8:紛争が国際法上もっぱら該当事国の管轄に属する事項について生じ、理事会がこれを是認するときはなんら勧告し得ない
 憲章2条7:「本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限」を国連に与えるものではない(ただし、7章除く)
 相違:①憲章は原則としてすべての活動を対象・連盟は紛争の解決に限定 国連の活動は後半に及ぶため ②憲章は「本質上」連盟はもっぱら「国際法上」 国内管轄事項を広く解する ③連盟は理事会が決定主体、憲章は明記せず

 総括的には、条文上は憲章の方が加盟国の管轄権を強く擁護する立場 国際機構の発展過程からは後退ともいえる 米ソの戦略

 ⑶憲章における「干渉」概念:国家間における不干渉原則のそれとは区別:「命令的介入」は国連上7章の強制行動のみ
  よって2条7項が規律するのは、国連の一般的な活動である討議と勧告との関係で問題となる
  議題として討議すること自体は干渉に当たらないと解されるが、勧告は、特定国に向けた要求的勧告が対象か 本来の任務遂行の場合は除く


Ⅴ 人民の自決権(後述)
1政治的原則から法的権利へ
2自決権の内容と適用範囲