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(10)国家 I:国家の要件と国家承認【国際法】

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国際法解説シリーズ、国家編その1。この記事では、国家の要件と国家承認についてまとめています。 

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国家の要件 

伝統的要件

  • 国家の三重の地位:国際法主体性・規範創設機能・規範実現機能
  • モンテビデオ条約第1条:①恒常的住民、②領土、③政府、④他国と関係を取り結ぶ能力(国家性の4要件)
  • 実効主義の原則:適法性を問わず、事実において要件を充足すればよい。

伝統的要件の再検討

  • 武力不行使原則や人民の自決権に反して国家の創設が図られる場合に実効主義は問題となる。 ex.南ローデシア北キプロス
  • 4要件は必要条件にすぎず、現代国際法においては適法性も要件に。しかし、これは集合的判定(国連など)によるところが多い。

 cf. 一方で、適法性は国家承認の拒否で対応するという異論

    ex. 米国第3リステイトメント「国家として承認ないし取り扱わない義務」

  →国家承認理論の宣言的効果説(後述)と論理的整合性が疑問

国家結合

  • 単一国家と複合国家=国家結合(連合国家と国家連合)
  • 従属的結合=保護関係・付庸関係 ex.アンドラ共和国が今日唯一の例
(1)同君連合

身上連合(personal union)と物上連合(real union) 前者ではたまたま2以上の国が同一の人を自国の君主にいただく場合。後者は連合体が国際法主体。

(2)国家連合 confederation of States

複数の国が外交問題等の一定の事項を共通に処理するために条約を基礎に結合する組織体=各構成国が主体性を維持。連邦制への移行期がこれにあたる。

(3)連合国家連邦国家

複数の国が憲法を基礎に1つの主権国家として結合する連合体。ex.米、カナダ、ブラジル、スイス

(4)特別な結合組織

コモンウェルス独立国家共同体(CIS)、欧州連合EU)など。

国家承認

承認制度の二面性

  • 歴史的には神聖ローマ帝国によるスイスに対する承認やスペインによるオランダに対する承認。しかし、国際法は未発達で制度的基盤なし。
  • 18世紀後半アメリカ独立。フランスによるいち早い承認が英仏戦争を誘引。
  • これ以前ではヨーロッパ内では新国家は当然に国際法の適用主体。しかし、以降中東・アジアでの国家承認が問題に。
  • 承認制度の2面性:法主体性の承認と国際法社会への加入。20世紀初頭、ヨーロッパでは支配的。
  • オッペンハイム「文明国の共同の同意」によって承認される必要。「文明国」要件
  • 一方、1930年代には国際連盟が発足。国家の法主体性の承認=国際社会への参加の自動的な承認 ex.植民地独立付与宣言

承認行為の性格

(1)創設的効果説 (Constitutive theory)

他国の承認を受けて初めて国際法上の当事者能力を有する。承認は国際的権利義務の実行的受容の始期を画する。

(2)宣言的効果説(Declaratory theory)

承認は国家の成立を確認する行為に過ぎない。外交関係の開設等の意思の予告といった政治的効果。

(3)中間説 

法人格を持つ国家そのものの成立に承認は不要だが具体的権利義務行使の段階で必要な条件となる(フィオレ、ボンフィス)

創設的効果説の妥当性

理論的考察
  • 文明社会への仲間入りというヨーロッパ的承認論の否定と自決権原則の確立。国際法は既存の国家に新国家の生殺与奪の権を与えているとは解せない。
  • また、未承認国でも一般的権利義務の享有主体となることを合理的に説明できない。ex.未承認国に対する侵略
実証的考察
  • モンテビデオ条約は「国家の政治的存在は他国の承認に依存しない」とする。
  • EC仲裁委員会第1意見「国家の存在または消滅は事実の問題である。他国の承認は純粋に宣言的効果のものである」

判例】ティノコ事件(1923年):ティノコ政権の存在は、英米等の不承認よって否定されない。

承認の要件

  • 国家性要件の充足:領土、国民、政府、外交能力と適法性
  • 要件を充足する前の承認は「尚早の承認 (premature recognition)」となり国家責任を生じさせる。
  • 承認条件の追加:EC方式の問題点「東欧及びソ連邦における新国家の承認に関する指針」(1991)①宣言的効果説との整合性、②旧制度=国際法社会への加入を基本としている。

承認の方式

(1)明示的承認と黙示的承認

具体的な承認方法として、書簡、電報、宣言等で承認の意思を直接的に表明する明示的承認と外交関係の開設、領事認可状の交付、包括的関係樹立の2国間条約、国際機構への加盟への賛同などによる黙示的承認がある。

(2)国連への加盟と承認の関係

1950年国連事務総長の覚書によれば、国連への加盟は国家承認の有無とは無関係に国連の権限ある機関が行う集合的行為であるとして分離論を支持。以降、国連実行として以下が確立。

  • 加盟に賛成する場合、特別の留保を表明しない限り黙示的な国家承認と見なしうる。
  • 加盟に反対しても、当該国家の憲章上の地位と権限を否認できない。
  • 国連は不承認の決定を行い得る。
(3)法律上の承認と事実上の承認

一般には新国家の統治の実効性が明確でないときは事実上の承認がなされるとされる 効果は同じだが撤回が可能。ただし区別は曖昧。 

不承認原則の発展

未承認国家と国内裁判

(1)英国の司法的対応の変遷

伝統的立場は国家政府承認は行政府の専権事項であり、司法はこれを反映するとした。しかし、現実問題として不合理であった。また、英政府が政府承認を廃止したことにより司法が判断することとなった。

(2)日本の裁判所の対応

大陸法系の裁判所は、政府の承認の有無にかかわらず、当該事案の必要性に応じて独自に判断してきた。渉外事件における私人の法律関係の合理的な処理。ex. 北朝鮮についてベルヌ条約事件

判例】リンビン・タイク対ビルマ連邦事件(昭和29、東京地裁)「同連邦を以って民事訴訟における外国国家と一応認めるほかない」として裁判免除の享有主体性を認める

判例】王京香対王金山事件(昭和31、京都地裁・大坂高裁)「準拠法選択において承認の有無は関係しない」

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