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Dancing in the Rain

Life is not about waiting for the storm to pass but about learning how to dance in the Rain.

(8)国家

国際法

Ⅰ 国家性の要件
 国家の三重の地位:国際法主体性・規範創設機能・規範実現機能

1伝統的要件 19世紀以降
  モンテビデオ条約第1条:①恒常的住民、②領土、③政府、④他国と関係を取り結ぶ能力(国家性の4要件)

 実効主義の原則:適法性を問わず、事実において要件を充足すればよい

2伝統的要件の再検討

 武力不行使原則や人民の自決権に反して国家の創設が図られる場合に実効主義は問題となる ex.南ローデシア北キプロス

 4要件は必要条件にすぎず、現代国際法においては適法性も要件に しかし、これは集合的判定によるところが多い

 cf. 一方で、適法性は国家承認の拒否で対応するという異論

      ex.第三リステイトメント「国家として承認ないし取り扱わない義務」

  →国家承認理論の宣言的効果説(後述)と論理的整合性が疑問

Ⅱ 国家結合

1国家の形態
 単一国家と複合国家=国家結合(連合国家と国家連合)
  従属的結合=保護関係・付庸関係 ex.アンドラ共和国が今日唯一

同君連合
 身上連合 personal union と物上連合 real union 前者ではたまたま2以上の国が同一の人を自国の君主にいただく場合 後者は連合体が国際法主体

3国家連合 confederation of States
 複数の国が外交問題等の一定の事項を共通に処理するために条約を基礎に結合する組織体=各構成国が主体性を維持 連邦制への移行期

連合国家連邦国家
 複数の国が憲法を基礎に1つの主権国家として結合する連合体 ex.米、カナダ、ブラジル、スイス

5特別な結合組織
 ⑴ コモンウェルス ⑵ 独立国家共同体 ⑶ 欧州連合

Ⅲ 国家承認

1史的沿革ー承認制度の二面性
  歴史的には神聖ローマ帝国によるスイスに対するものやスペインによるオランダ→しかし、国際法は未発達で制度的基盤なし
 18世紀後半アメリカ独立 フランスによるいち早い承認が英仏戦争を誘引
  これ以前ではヨーロッパ内では新国家は当然に国際法の適用主体 しかし、以降中東・アジアでの国家承認が問題に
 ①キリスト教文化と異なる ②れっきとした独立国家を形成していた ③不平等性
 承認制度の2面性:法主体性の承認と国際法社会への加入 20世紀初頭、ヨーロッパでは支配的 オッペンハイム「文明国の共同の同意」によって承認される必要=「文明国」要件
 一方、1930年代には国際連盟が発足 国家の法主体性の承認=国際社会への参加の自動的な承認 ex.植民地独立付与宣言

2承認行為の性格

 ⑴ 創設的効果説 constitutive theory 他国の承認を受けて初めて国際法上の当事者能力を有する 承認は国際的権利義務の実行的受容の始期を画する

 ⑵ 宣言的効果説 declaratory theory 承認は国家の成立を確認する行為に過ぎない =外交関係の開設等の意思の予告といった政治的効果

 ⑶ 中間説 法人格を持つ国家そのものの成立に承認は不要だが具体的権利義務行使の段階で必要な条件となる(フィオレ、ボンフィス)

 創設的効果説の妥当性:
  ①理論的考察:文明社会への仲間入りというヨーロッパ的承認論の否定と自決権原則の確立 国際法は既存の国家に新国家の生殺与奪の権を与えているとは解せない 
   また、未承認国でも一般的権利義務の享有主体となることを合理的に説明できない ex.未承認国に対する侵略

 ②実証的考察:モンテビデオ条約は「国家の政治的存在は他国の承認に依存しない」とする
  EC仲裁委員会第1意見「国家の存在または消滅は事実の問題である。他国の承認は純粋に宣言的効果のものである」
  ティノコ事件(1923);ティノコ政権の存在は、英米等の不承認よって否定されない

3承認の要件
 国家性要件の充足=領土、国民、政府、外交能力、適法性
 要件を充足する前の承認は「尚早の承認 premature recognition」となり国家責任を生じさせる
 承認条件の追加:EC方式の問題点 「東欧及びソ連邦における新国家の承認に関する指針」(1991) ①宣言的効果説との整合性 ②旧制度=国際法社会への加入を基本とする

4承認の方式

 ⑴ 具体的方法:明示的承認=書簡、電報、宣言等で承認の意思を直接的に表明 黙示的承認=外交関係の開設、領事認可状の交付、包括的関係樹立の2国間条約、国際機構への加盟への賛同など

 ⑵ 国連への加盟と承認の関係:1950年国連事務総長の覚書 国連への加盟は国家承認の有無とは無関係に国連の権限ある機関が行う集合的行為であるとして分離論を支持 以降、国連実行として
  ①加盟に賛成する場合、特別の留保を表明しない限り黙示的な国家承認と見なしうる ②加盟に反対しても、当該国家の憲章上の地位と権限を否認できない ③国連が不承認の決定を行い得る

 ⑶ 法律上の承認と事実上の承認:一般には新国家の統治の実効性が明確でないときは事実上の承認がなされるとされる 効果は同じだが撤回が可能 ただし区別は曖昧

5不承認原則の発展

 ⑴戦前の事例:1932年満州事変 ただし、武力不行使原則は不完全であったゆえ、政治的立場の表明と見ることができる cf.エチオピア併合

 ⑵国連による発達:南ローデシア北キプロス、トランスケイ等の安保理ないし総会の不承認の決定 不法な占拠;ナミビア事件 違法な併合:東ティモール
 
6未承認国家と国内裁判

 ⑴英国の司法的対応の変遷 伝統的立場は国家政府承認は行政府の専権事項であり、司法はこれを反映 しかし、現実問題として不合理 また英政府の政府承認廃止により司法が判断することに

 ⑵日本の裁判所の対応:大陸法系の裁判所は、政府の承認の有無にかかわらず、当該事案の必要性に応じて独自に判断してきた 渉外事件における私人の法律関係の合理的な処理
 戦後の裁判例

  リンビン・タイク対ビルマ連邦事件(昭和29、東京地裁)「同連邦を以って民事訴訟における外国国家と一応認めるほかない」として裁判免除の享有主体性を認める

  王京香対王金山事件(昭和31、京都地裁・大坂高裁)「準拠法選択において承認の有無は関係しない」

7承認制度の再検討
 ⑴承認行為の政治性:法律的行為か政治的行為かという承認の性格に基づいた議論
 ⑵承認の非義務性 ⑶制度的地位の再検討 法的制度として実体を止めているのか疑問 しかし、政治外交上の重要性は喪失していない

Ⅳ 政府承認

1序論 本来は国内事項で国際社会の関知するところではないが、事実上2つの政権が存在する場合、いずれの政権を正統とするかにつき政府承認が問題となる
 国家同一性の原則=一国内での政府や統治者の変更は国家としての同一性に影響を与えない グロティウス・ヴァッテル時代からの伝統的原則 

2政府承認の要件
 ⑴ 実効性の原則:新政府が当該国において実行的支配を確立すること 新国家がいかなる政体をとるかは当該国の主権的事項であり他国がこれに介入すべきでないという考え方

 ⑵ 正統主義 legitimism:19世紀、神聖同盟による君主的正統主義、20世紀前半期は中南米による立憲的正統主義=トバール主義 ただし広い指示を得たわけではない 

3実効性原則の限界不承認主義の台頭
 ハイチとシエラレオネにおける不承認:軍事クーデタによる政権に対し地域的機構・国連が不承認策をとる=伝統的な実効性原則の排除

4政府承認廃止論
 エストラーダ主義(メキシコ外相、1930年):政府承認は外国の批判や内政介入を許すことになる 戦後、英米も転換 外交関係を持つかの実務的判断に止める
 承認回避の理由:①内政干渉の防止 ②政策是認の回避 ③外交的処理の柔軟性 一方で、2つの政権の正統性を競い合っている場合は意義を有する

Ⅴ 国家承継 succession of States

1国家承継の発生形態
 新国家の成立あるいは国家領域の一部の他国への移転があるとき、先行国(predecessor staes)が有する国際法上の権利義務、法制度、あるいは国家財産や債務等を承継国(successor State)が引き継ぐこと

 伝統的区分:

 (1)包括承継=国家の合併・結合・併合、分裂 merger, unification, annexation, dismemberment, division =先行国が消滅 

 (2)部分承継=割譲、分離独立

 条約承継条約における形態:領域の一部移転、新独立国および国家の結合および分離 

  ①領域の一部移転(香港返還)、②国家の結合(イエメン共和国)、③分裂(ユーゴ、チェコスロバキア)、④分離(エリトリア)、⑤新独立国(旧植民地国)
    cf.ソ連崩壊は「分離」であると解される ロシアがソ連の地位を引き継ぐ継続国家として国際的に確認 旧ソ連国は分離 バルトは「主権の回復」

2国家承継法の特質
 国家承継法は明確化されていない領域のひとつ 特に日常的に生起するものではなく、また個別具体的な処理をされてきたため しかし、国際法委員会は法典化 締約国は少ない
 条約承継条約(1978)と「国家財産、公文書および債務の国家承継に関するウィーン条約」(1983年)、「国家承継との関連における自然人の国籍に関する条文草案」(1999)

3条約の承継

 ⑴ 条約関係継続性の原則 principle of continuity of treaty relations 個人の相続と同様に包括的に承継する

 ⑵ クリーン・スレート原則 clearn slate rule 承継するか否かは白紙の状態で出発する
  ①領域の一部移転:当該地域には承継国の条約が全面的に適用(15条) 

  条約境界移動の原則=譲受国の条約適用範囲が拡大する cf.西ドイツによる東ドイツの吸収併合
  ②国家の結合:別段の合意がある場合を除いて、いずれの先行国の条約も引き続き効力を有する(31条)
  ③複数の国への分裂:先行国の全領域について効力を有するいかなる条約も、そのように構成された各承継国につき引き続き効力を有する(34条①)
  このような自動承継化の規定につき、国家実行にそぐわないとする見解 cf.ガブチコボ・ナジマロシュ事件
  ④分離:植民地独立の場合とは区別して、継続性の原則を適用 しかし、このような区別は伝統的にはされてこなかったのであり、慣習法化には疑問

  ⑤新独立国:分離や結合によって成立する国家と区別され、承継発生前に「先行国がその国際関係上の責任を負う従属地域」はクリーン・スレート原則が適用

  具体的には、①自動承継義務の免除と②条約参加の選択の自由を保障 以前に新独立国の領域に適用されていた多数国条約について「承継の通告」が可能(17条)

 cf.境界と領域的制度の承継:クリーンスレートの例外 条約によって決定された境界および領域的制度は当該地域の割譲や新国家の成立があった場合でもそのまま承継(11条)
  ①境界の安定性と確定性の確保②自立的存在論=条約の運命とは独立に自身の法的存在を持つ ex.プレア・ビヘア事件
 領域的制度の事例:ガブチコボ事件
 なお、関係国における当該制度の合意による変更を禁止するものではない

4国家財産・債務の承継
 合意による衡平原則

5国家承継と国際機構

 ⑴先行国が消滅:承継国は新国家となるので原則として加盟の手続きが必要 ただし、結合の場合は柔軟に対応

 ⑵先行国が存続:吸収の場合は問題無し 新独立国は加盟手続きが必要 分離した新国家も同様

 継続国家の地位 :連邦が解体して旧構成国の一つが法的に旧連邦の国際的地位を引き継ぐ場合  cf.ソ連とユーゴ

 継続国家は加盟申請が不要  学説上、客観的要素(国土・人口等地理的要因、首都機能の所在地、歴史的文化的)と主観的要素(他の承継国の同意・国際社会の一般的承認)で判断

6政府機能の承継

 一般原則として、承継国の統治権と憲法秩序に服する ex.香港返還と英中共同宣言(1984)

 前政府の国家領域の一部に残存し、そこに実効的な統治を継続する場合:光華寮事件 

 

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