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(16)国家領域 III:領土紛争の解決【国際法】

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国際法解説シリーズ、国家領域その3。領土紛争の解決についてまとめました。日本の領土問題の国際法上の論点についてはまた別記事でいつかかけたらいいかなと思います。

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領土紛争の解決

  • 領土紛争の概念:領土の帰属をめぐる紛争国境の画定をめぐる紛争に大別。前者は特定の地域や島、後者は地理学上の国境。
  • 領土紛争と領域権限の関係:権原の要件を充足すれば、その領有権を主張しうる対世的効果を創設するが、実際の紛争ではそもそも権原が何であるかを争うケースもあり、国際裁判を通して独自の解釈基準が形成されてきた。

領土紛争に特有の一般的ルール

(1)時際法 intertemporal law 
  • 複数の異なる法規則が時間的に前後して存在する場合に、ある法律上の事実がいずれの法によって規律されるのかを決める法の規則(ただし多義的に使用さえる用語であることに注意。)。
  • ある行為・事態の法的評価が問題となる場合に、それに関する紛争が発生した時の法ではなく、その行為の実行・生起した時の法が適用されるものとする。

判例】マンキエ・エクリオ島事件:「権利の創設」と「権利の存続」を区別。後者が有効であるためにはその後の法の発展が要求する諸条件に従うものでなければならない ex.「発見」から「実効的占有」へ(パルマス島事件

(2)決定的期日 critical date
  • 領土紛争の裁判において領有権を根拠づけるための証拠能力を決する基準日(設定されない場合もあり。)。通常は紛争の発生日でそれ以降の行為・行動は証拠力を有しない。実効的支配の起算点の役割。
  • 紛争発生後に自国に有利に創設された行為の証拠力を排除する目的。
  • マンキエ・エクリオ事件では、「当事国の法的立場を改善する意図でなされた措置でなければ」考慮するとした。
  • その他のケース:条約の締結日(パルマス島事件)、紛争を引き起こした国の領土の先占の日(東部グリーンランド事件)

領土紛争解決の主要規準

(1)実効性の原則 effectivites エフェクティビテの原則
  • いずれの国が当該係争地域に継続的かつ平和的に統治権を行使してきたかを重視する規準。

判例パルマス島事件:権原がなんであれ、「主権の継続的かつ平和的発現」が領有権の確定的な存否を決するとした。

  • 主権の発現:国家の立法・司法・行政上の統治権の行使をさし、私人の行為は該当しなし。

判例】リギタン・シパダン島事件(2002年):「立法、行政及び準司法的行為」が「相当の期間」に渡って遂行されてきた事実を認める。

  • 競合する主権的活動の相対的強さ relative strength of opposing claims:双方が主権的活動の実効性を根拠に領有権を争う場合、いずれの側が「優越的な主張」を提示するかで決する。ex. マンキエ・エクレオ島事件判決、パルマス島判決、東部グリーンランド事件

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(2)黙認・エストッペル
  • 黙認:相手国の占有の事実を知りながら、これに抗議等の反対の意思表示を行わない場合、この沈黙をもって相手国の領有に黙示的な同意が付与されたとみなす法理。ex. ホンジュラス v. エルサルバドルカメルーン v. ナイジェリア
  • エストッペル(禁反言):自己の一定の行為を信頼して他者が別の行動をとることに至った時、前者がその信頼を裏切る形でのちに別の行動をとることを禁ずる法原則。ex. 北海大陸棚事件
  • 両者はともに信義則と密接に関連するが、黙認は事後の同意で、後者は態度の変更を問題とする。プレアビヒア事件(1962年)では、両原則を採用。
(3)ウティ・ポシデティスの原則
  • 植民地の独立に際して、植民地の旧行政区画を新独立国の国境とする原則。
  • ラテン・アメリカで適用されてきたが、やがてアフリカ諸国にも適用。
  • 植民地からの本国の撤退に伴う新独立国間の国境紛争の発生を防止し、その独立と安定を維持する目的。
(4)割譲条約・国境条約(関連する条約の存在)
  • リビア・チャド事件:条約の国境規定により「確定的に」また「全面的に」決定されているので、当事国が主張した実効性の原則等は考慮されない=当事者の合意が優位
  • カメルーン・ナイジェリア事件(2002年):実効性と権原が抵触する場合権原が優先する。
  • ただし、条約が常に絶対的な効力を持つとは限らない。 ex.プレアビヒア事件

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