Dancing in the Rain

Life is not about waiting for the storm to pass but about learning how to dance in the Rain.

(16)国際化地域・空・宇宙

Ⅰ 国際化地域

 国家領域を構成する地域・水域であって、領域国の排他的使用が制限され国際的利用に供される空間

国際運河
 ⑴ スエズ運河 地中海と紅海
  1869年開通 1876年、エジプト政府保有株を買収した英国が筆頭株主
  1888年、コンスタンチノープル条約がトルコ(=エジプト)と西欧諸国の間で結ばれる
   ①自由通航の保障=すべての商船・軍艦に対し、平時・戦時を問わず、常に開放される
   ②運河の中立化、ただし、エジプト国の防衛および公の秩序の維持のために必要な措置を取ることができる
  1956年、エジプト政府によるスエズ運河国有化 同年のイスラエル・エジプト館の武力衝突を機に、英仏は軍事占領→スエズ危機で国連緊急軍
  1957年、コンスタンチノープル条約の自由航行を保証する声明 スエズ運河問題につき義務的管轄権受諾
  
  1901年、英米間でヘイ・ポンスフォート条約 すべての国の商船・軍艦の自由航行、敵対行為の禁止原則、防護のための軍事力配備
  1903年、パナマ・米間でヘイ・ヴァリラ条約 パナマの独立を擁護する一方で、運河の建設・管理、保護の独占的権利を有する
  問題点
   ①管理国アメリカが交戦国になった場合の通航の自由を保障する規定がない 
   ②運河の領域国以外の国が排他的管轄権を有する
  1977年「パナマ運河条約」「パナマ運河の永久中立と運営に関する条約」管理運営権をパナマに移管、すべての国の船舶の「平和的通過」のために開放されるものとする
 
 ⑴ 概念と地位
  複数の国を貫流するか複数の国の国境をなし、通航の自由やその他の使用について条約で取り決められた河川
  それぞれの国境内では各河川流域の領域主権に服する そのため、同一の河川であっても法的には各国の領域として分属
  他国の通航の自由を認める義務が一般国際法上あるわけではない 特別の条約により規律されるべき問題
  一方で、河川流域国は河川の利用について無制限の使用の自由を有するものではない 相隣関係の原則:「利益の共同」「特権の排除」
 ⑵航行利用
  1815年ウィーン会議最終議定書=シェルト河、ミューズ河、ライン河の自由航行の原則確認
  その後、個別条約により規律 ex.ダニューブ河規定(1921年)ベルリン一般議定書(1885年)=コンゴニジェール川
  ①締約国以外にも広く開放(反射的利益)
  ②原則として商船に開放
  ③河川の管理・維持・通航料の徴収につき国際委員会が設置
 ⑶非航行利用
  20世紀になると非航行利用のための水資源の使用(灌漑、発電、工業用水)が大きな関心事
 「いかなる国も隣国の領域の自然的状態に不利益を与える形で自国の自然的状況を変更することはゆるされない」ラウターパクト
  ただし、上流国による河川の水利用の事業に際して、常に下流国の同意を要するわけではない
 cf.ガブチコボ・ナジマロシュ事件ハンガリーによる1977年条約の不履行に対する対抗措置としてチェコスロバキアが一方的にとった「ヴァリアントC」の合法性につき、それ自体が同条約に違反するものであると同時に、ハンガリーが有する水資源の「衡平で合理的な配分に対する基本的権利」を奪うことになるとした。また対抗措置として違法性が阻却されることもないとした=地域への生態系への影響も含めた「均衡性」要件
 
南極
 ⑴ セクター理論
  極地に近い国の領土の両端から極点に引いた2本の子午線によって囲まれる扇型区域内に入る陸地や島を当該隣接国の領域とする=カナダやソ連によるの援用 南極につきアルゼンチン・チリの援用
  地理的近接性を基礎としつつ極地の過酷な気象条件のために先占の法理の適用が適当ではないとする考え方
   →近隣国の利益のみ考慮、普遍的な承認は得られず
 ⑵ 南極条約体制
  大陸を持つ南極はかつて7ヶ国がそれぞれ領有権を主張 
   英・仏・ノルウェー・オーストラリア・ニュージーランド・アルゼンチン・チリ
  それに対し、米旧ソ連は自国の領有権を留保しつつ反対
  1959年 南極条約 日本、ベルギー、南アを含む12カ国
   ①領有権の凍結 領土問題の棚上げ 
   ②平和利用の原則=軍事利用禁止の明確化 ③非核化
   ④監視員制度 ⑤南極条約協議国会議
 ⑶ 資源と環境の保護
  1988年、南極鉱物資源活動規制条約→発効せず
  1991年、南極環境保護議定書=自然保護地域とするとともに、科学調査の場合を除いて、鉱物資源の開発活動を一切禁止
 
Ⅱ 空
1国際航空制度の基本構造
   領域主権の原則から、一般国際法上、領空においては外国の航空機の自由飛行、無害飛行の権利も有しない
 1944年 シカゴ国際民間航空条約
   不定期航空の民間機に限って他の締約国の、領空飛行、および運輸以外の目的における着陸の権利を認める
   国の航空機には認められず、定期国際航空業務に就く民間機にも特別の許可なしに適用されない
 
国際航空協定
   アメリカ 輸送大型航空機 自由競争主義 対 イギリス 商業航空の支配懸念 国際的規制主義
   定期航空について別の協定で規律:
 国際航空業務通過協定=2つの自由協定
  ①無着陸の領空通過
  ②運輸以外の目的での着陸の自由
 国際航空運送協定= 5つの自由協定
  ③自国領域内で積み込んだ貨客を他の締約国で下ろす自由
  ④他の締約国で自国向けの貨客を積み込む自由
  ⑤第三国向けあるいは第三国からの輸送の自由
 
  いずれに加入するかは各国の判断だが、前者が多数で、結局2国間の個別協定
  1946年、英米バミューダ協定をモデル 1990年代、アメリカのオープン・スカイ政策 2010年に日米も協定
 
3領空侵犯の対処措置
  領域国がいかなる措置を取ることができるか、国際的な法規則はなく、シカゴ条約でも明文化されず
  一般には、警告措置、退去命令あるいは着陸命令、強制着陸等の対処措置を取るべきものとされ、直ちに攻撃等の実力行使が許されるものとはみなされなかった
  近年の軍用機と民間機を分けてとらえる見解:軍用機は高度に危険な現代的兵器を搭載している可能性もあることから、状況によっては領域国の強制措置もやむなしとする立場
  1983年大韓航空機撃墜事件(269名全員死亡):ICAO(国際民間航空機関)は直ちに非難決議、各国も対ソ制裁
  1984年シカゴ条約改正3条の2新設:民間機に対する「武器の使用」を禁止するとともに、「要撃 interception の場合には、航空機内における人命を脅かし又は航空機の安全を損なってはならない」(=武器不使用原則)「武力の行使」ではない「武器の使用」であるから禁止されていなかった
  防空識別圏air defense identification zone ADIZ):領空侵犯の事前防止等に対処するため、領空に接続する一定範囲の排他的経済水域ないし公開上空に設定され、航空機に飛行計画、目的地等を報告させるための制度
  国際法上は、海洋法が「上空飛行の自由」を認めているのであって、このような規制の一方的設定は本条約はもとより、シカゴ条約にも見いだすことはできない。事実上、黙認状態
 
Ⅲ 宇宙
1宇宙法の形成
  1957年 ソ連人工衛星の打ち上げによる宇宙時代の開幕 月その他の天体を含む宇宙空間の法的地位とその探査利用法を規律する法が必要とされる=宇宙法 space law, law of outer space
  1963年 宇宙法原則宣言(総会決議1962)宇宙の地位と利用の基本原則、探査利用の自由、全人類の利益目的、領有の禁止、国家責任
  1967年 月その他天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約
  宇宙救助・返還協定(1968)、宇宙損害責任条約(1972)、宇宙物体登録条約(1974)月協定(1979)
  宇宙条約に定められた幾つかの基本原則(=探査利用の自由の原則、領有の禁止原則)はその後の諸国家による広範な承認、国際的文書による再確認を通して国際慣習法として確立
  
2宇宙の基本原則
 ⑴ 探査・利用の自由
  天体を含む宇宙空間は、すべての国がいかなる差別もなく、また経済的・科学的発展の程度にかかわりなく、国際法に従って自由に探査利用することができ、また、すべての天体に自由に立ちいることができる(1条)
  探査利用の自由は「すべての国の利益のために」行われるべきもの 深海底と異なり、「開発」概念は慎重に回避
 宇宙活動は「登録国」の「管轄権及び管理」の下に行われる(8条)
  登録国とは、宇宙物体の打ち上げ国であって、自国の登録簿に当該物体を記録し、これを国連事務総長に通報する国
  なお、宇宙活動により他国に損害を加えた場合に責任を負うのは「打ち上げ国」
 ⑵領有の禁止
  月その他の天体を不空宇宙空間は、いかなる根拠であれ、国家による領有は禁止される(2条)
  宇宙の法的地位につき、①無主物、②万民共有物、③取引外のもの、④公法上の公共物 利用権の共有物説が有力
  月協定:月の領有を改めて禁止、月及びその天然資源を「人類の共同遺産」とし、その開発が実施可能となった段階で、これを規律するための「国際制度」を創設するするもの しかし、締約国は10余カ国と極めて少なく、宇宙活動の展開国がいずれも未加入であり、実効性を欠く
  ⑶軍事利用の規制
   宇宙の「平和的目的」の利用を確認しつつ(前文)、軍事的利用については「宇宙空間」と「天体」とを分けて規定し、前者に対しては、「核兵器及びその他の種類の大量破壊兵器」を地球を回る軌道に載せないこと、及び、これらの兵器を宇宙空間に配置してはならない(4条前段)
   全面禁止は貫徹されず:①通常兵器の配置は禁止されていない②大量破壊兵器であっても地球の軌道外は対象外 ex.大陸間弾道ミサイル
   天体については、全面的な非軍事化、軍事基地や軍事施設の設置のみならず、あらゆる兵器の実験・演習が禁止(4条後段)
 ⑷国家の国際責任
  1)国家専属責任の原則:政府機関によって行われるか非政府団体によって行われるかを問わない(6条)
   cf.一般国際法上は、事前の防止ないし事後の救済手続きにおいて「相当の注意 due diligence」を払わなかった場合にかぎって義務違反の責任を負う
  2)責任原則の形態:
   ①無過失責任(2条)宇宙物体が「地表において引き起こした損害又は飛行中の航空機に与えた損害」
   宇宙活動は高度に危険を伴う活動 ultra-hazardous activity であって、他国はその被害を合理的に防止措置を取ることが困難、被害者による過失の立証が困難
   ただし、発生した損害が被害請求国側の重大な過失ないし損害発生を意図した作為不作為によることを打ち上げ国が立証した場合は免責
   ②過失責任(3条)その活動が地表以外の場所においてある国の宇宙物体に損害を与えるとき
 ⑶責任主体と損害の範囲
   打ち上げ国とは、①打ち上げを行う国、②打ち上げを行わせる国、③その領域施設から打ち上げられる国(1条c)
   これら 打ち上げ国は連帯責任を負う また、被害国はいずれにも請求が可能であり、打ち上げ国は内部で求償権を有する
   損害「人の死亡若しくは身体の傷害その他健康の傷害又は国、自然人、法人もしくは国際的な政府間機関の財産の滅失もしくは損傷」
   賠償額「当該損害が生じなかったとしたら存在したであろう状態に回復させる補償」(12条)
 ⑷賠償請求の手続
  請求主体:被害国、被害者の国籍国、被害発生地国、被害者の永住国
  外交的保護に該当するが、国内的救済完了の原則は適用されない(11条)
  1年以内に解決に至らないときは、いずれかの国の要請により3名の委員で構成される請求委員会に付託
  両国が拘束性に合意すれば拘束力を持つ決定に、合意なき場合は「勧告的な裁定」

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