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【国際法判例】ノッテボーム事件 (ICJ判決)

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国際法判例シリーズ。この記事では、ICJ判決のノッテボーム事件についてまとめています。

【事件名】ノッテボーム事件(Nottebohm Case)

【当事国】リヒテンシュタイン v. グアテマラ 

【判決日】国際司法裁判所(ICJ)管轄権判決:1953年11月18日、本案判決:1955年4月6日

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事実と経緯

判決要旨

管轄権判決

争点:グアテマラの選択条項受諾宣言(ICJ規程36条)の期限は5カ年であり、同宣言は1952年1月26日をもって失効した。よって、その時点から裁判管轄権を決定する権限がICJにはないのではないか。(選択条項受諾宣言の失効と裁判の継続の問題)

  • 裁判所が自らの管轄権を決定する権利を有することは一般国際法上の原則である。
  • 本件訴状が受理された時点では有効であったのであるから、それ以降、期限の満了や廃棄による事後的失効というような非本質的事実によってすでに設定された管轄権を奪うことはできない。(ノッテボーム・ルール=有効な提訴があり裁判所に継続されれば後の失効等により裁判は影響を受けない)

本案判決

リヒテンシュタインの主張
  1. ノッテボーム氏の帰化国際法に違反しない。
  2. ノッテボーム氏のために行われる同国の請求は受理可能である。
グアテマラの主張
  1. ノッテボーム氏の帰化リヒテンシュタイン法上正当なものではない。
  2. またそれは国籍に関する一般に承認された国際法原則にも合致しない。
  3. 帰化は、中立国国民の地位を得たいがために詐欺的方法によるものであり、リヒテンシュタインは外交的保護権を行使することはできない。
(1)グアテマラによるリヒテンシュタイン国籍取得に対する「承認」の有無
リヒテンシュタインの主張:グアテマラはこれまで当該帰化を前提として行為をしており、そのため当該国籍を否認することはできない(禁反言・エストッペル
  • グアテマラ総領事による入国査証外国人登録簿の記載事項訂正は外交的保護を行うこととは無関係であり、単に外国人の取り締まりに関するものに過ぎず、また、当局と一私人の関係であって、政府間の関係を設定したものではない。
  • 重要な事実として、1944年12月20日に、グアテマラドイツ国民ノッテボームが常居所を変えないでリヒテンシュタイン国籍を取得したことを承認できない旨を明確に宣言している。
(2)リヒテンシュタインによる国籍付与のグアテマラに対する援用可能性

争点:国籍を付与したことで、同国の外交的保護権行使を承認しなければならないのか。

  • 国籍付与は本来、国家の国内管轄権に属する。しかし、それは国内法秩序内ではなく、国際法上の効果を有するか、とは別の問題である。
  • 国籍は、結びつきという社会的事実、つまり権利義務の相互性と結合された存在、利益、感情の「真正な結合」関係を基礎とする法的なきずなである。国籍は1国に付与された場合、彼を国民とした国とその個人の連結を法律的用語で表されるものである場合のみ、その国に、他国に対して保護を与えているに過ぎないのである。
  • ノッテボームとリヒテンシュタインとの間に事実上存在する結びつきは、彼への国籍付与を実効的なもの、つまり社会的事実の正確な法的表現とみなすことができるかが問題となる。
 (3)ノッテボームとリヒテンシュタイン間の「真正な結合
帰化申請時ドイツ国民であり、家族もドイツに居住し、かつ家族と事実上の関係が存在。グアテマラに34年間定住し、帰化の後も、43年に戦時措置により退去するまで利害関係を有していた。リヒテンシュタインには、帰化申請時には住所もなく、長期滞在もしていない。定住する意思も不存在。46年にはリヒテンシュタインへと赴いたが、それはグアテマラに入国拒否されたからである。リヒテンシュタインとの間に認められる唯一の関係は、先の一時滞在と兄弟が一人居住しているだけである。
  • 以上の事実から、ノッテボーム氏とリヒテンシュタインの間にはいかなる帰属のきずなも存在しない。
  • 他方でグアテマラとの関係においては長期に渡る密接な結合関係が存在、帰化後においても同様である。
  • この帰化は、国際関係において一般にとられている国籍概念を顧慮することなく国籍を付与するものであり、真正さにかけている。
  • この帰化は、リヒテンシュタイン国民の一員としての法的承認を受けるというよりも、中立国国民としての地位を得て、リヒテンシュタインの保護を受けるために申請されたのである。
  • 従って、リヒテンシュタイングアテマラに対してノッテボームを保護する資格を有さず、その請求は、以上の理由により受理できない。

 論点

  • 真正な結合」理論は、本来二重国籍から生じる紛争に適用されるものであって、その判断基準を今回のケースに援用したのは不当ではないか。
  • 国籍付与の国内的効果と国際的効果に分離して外交的保護権の問題を検討するという手法を採用しているが、リヒテンシュタイン国籍がグアテマラに対抗できないとすると、ドイツ国籍を喪失したノッテボームは無国籍者と同様の地位に立ち、どの国からも外交的保護を受けることができないことになる。
  • 「真正な結合」理論を厳格に適用すると、今日の経済のグローバル化や移民の増加の現状では弊害が大きい。

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