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Dancing in the Rain

Life is not about waiting for the storm to pass but about learning how to dance in the Rain.

(18)国際法における個人②

国際法
Ⅲ 犯罪人の引渡し
1犯罪人引き渡し制度の発展
 古代中世ローマ法から、グロティウスによる「引き渡すか、処罰するか」、ヴァッテルも同旨
 フランス革命以後、政治犯は引渡しの対象から外れる
 1833年ベルギー犯罪人引渡法→19世紀以降、法的枠組みが確立
 引渡しの義務性:条約によらない場合について
  ①義務説=犯罪の防止 ex.ヴァッテル・グロティウス
  ②非義務説=「礼譲 comity」説 領域こいうの裁量「領域主権の通常の行使を意味する」(庇護事件)
    ロッカビー事件では安保理に基づく引渡しの義務性が争われたが、取り下げ(2003)
  19世紀以来、2国間条約の増加 ex.日米・日韓、相互主義を前提とした国内法
  欧州犯罪人引渡条約(1957)対象犯罪の明確化と義務化
 
2引き渡しの基本原則
 ⑴ 双方可罰の原則 principle of double criminality 対象犯罪が請求国と被請求国の双方で可罰的であること(日米2)
 ピノチェト事件(1999);基準時は実行時 拷問は条約国内法化以降、人質は英のそれとは異なる
 ⑵ 特定主義の原則 principle of speciality
 請求国は引渡し前に行われた犯罪であって、被請求国によって引渡しが許諾された犯罪についてのみ訴追・処罰することができる(日米7)
 ⑶ 政治犯不引渡しの原則 principle of extradition of political offenders
  ①思想的要因ー自由主義的背景 ②政策的要因:他国の政争に介入しない
 法的性格:今日では国際法上、確立した一般原則
  ①非慣習法説=条約等で認められてきただけ オコンネル等
  ②国家権能説=義務ではない ex.尹秀吉事件(東京高裁
  ③国家義務説 ex.同事件の東京地裁、ブルンチュリ
 偽装引渡し disguised extradition にも適用 同地裁「客観的にこれと同視すべき程度に処罰の確実性」
 政治犯の定義はないし
  張振海事件(東高・平2):「一国の政治体制の変革を目的とし、あるいはその国家の内外政策に影響を与えることをも奥的とする行為であって、その国の刑罰法規に触れるもの」
 相対的政治犯:政治秩序の侵害に伴う普通犯罪(殺人、放火) スイス(1892)theory of prodominance 優越性の理論
  同判旨:①当該行為が真に政治目的を持つか
      ②客観的に政治目的の達成に直接関連しているか
      ③行為の内容、性質、結果の重大性が意図された目的に対比して均衡を失っていないか
 例外①一般例外犯罪 ⑴外国の元首とその家族に対する危害行為 ベルギー条項=加害条項 attentat clause
           ⑵無政府主義的反社会行為
   ②条約上の例外犯罪 ジェノサイド、ハイジャック、アパルトヘイト等多様
自国民の不引渡し=一般的慣行は存在せず、国家の裁量に委ねられている
 大陸法系:自国民を保護する義務=国家の尊厳維持、自国での処罰可能性、他国裁判権の不審
 英米法系:犯罪地国法定主義⑴回復すべき法秩序は犯罪地国 ②手続き上の便宜
3国際人権法の発展と引渡し
 死刑廃止条約は締約国が死刑存置国への犯罪人の引き渡しを実際上困難にしている
 米加引渡し条約(1971):請求国が死刑を課さないか、その執行を行わない旨の十分な保証が得られない場合は、請求国は引渡しを拒否しうる(6条)
 ショート事件(オランダ・1990);アメリカ軍人の引渡し義務に対して欧州人権条約第6議定書上の義務を優先 cf.2003年の米とEUの引渡し条約は拒否事由を確認
 ゼーリング事件(欧州人権裁・1989):死刑そのものではなく「死刑の順番待ち現象」に鑑みて、それが欧州人権条約「第3条=拷問等の禁止」の違反を引き起こすとした
 
Ⅳ難民の保護
1庇護制度の発展
 ⑴概念
  古代ギリシャ都市国家間では他国からの亡命者に庇護を与える慣行が広く見られたことが、近世の主権国家間での領域的庇護制度に発展
  グロティウス「祖国を追われて庇護を求める外国人に対しては、彼らが既存の政府に服し、抗争の回避に必要な規則を遵守するならば定住することを拒否すべきでない」
  領域的庇護 territorial asylum 他国からの亡命者を自国領域内で保護すること
  伝統的には国家が権利として「庇護権」を有するとされてきた 今日においても、外国人が有する権利ではなく、いかなる国もこれを与える義務を負わない、とされる
  世界人権宣言はすべての人が迫害からの庇護を求め、かつ、これを享受する権利(14条1)を認めているが、これは個人の庇護権を認めたものではない right to seek and enjoy
 ⑵ 外交的庇護
   在外公館には広範な不可侵権 inviolability を有する(外交関係22条)ものの、条約上の取り決めがある場合を除いて、一般国際法上、庇護権を有さない
  庇護事件:「外交的庇護の場合は、避難者は犯罪地国の領域内にいる。外交的庇護の供与の決定はその国の主権を毀損することになる」
 
2国際難民法の発展
 19世紀においては難民の問題を特別に取り扱うことなく、逃亡犯罪人、経済的流民とともに国家の庇護権の拒否の対象事項とされた
 ⑴難民条約の採択経緯
  戦前:ロシア革命ナチスドイツのユダヤ迫害、スペイン内乱、イタリアファシスト政権からの避難民
  戦後、国際難民機関IRO(1946)が設立 社会主義政権誕生により難民増加 難民条約の契機
  1950年、国連難民高等弁務官事務所 Office of the United Nations High Commissioner of Refugees の設置、1951年「難民の地位に関する条約
 ⑵難民条約の性格と議定書の採択
  西側諸国を中心に作成=ソ連・東欧からの難民救済を主眼としていた
  難民条約は難民を「1951年1月1日前に生じた事件の結果として」発生したものに限定(1条A②)=アジア・アフリカを含んでいない
  締約国の選択により上記期限内で「欧州」で生じた難民の保護に限定しうる道を設けていた(1条B①)
  1967年「難民の地位に関する議定書」:時間的・地理的制限をなくすことで、普遍性を高める
3難民の定義
 ⑴定義上の3要件
  条約難民(1条A②)
   ①迫害要件:人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること または 政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖
   ②保護喪失要件:この恐怖のため、その国籍国の保護を受けることができないものまたはその保護を望まないもの及び無国籍者の場合は常居所国へ帰ることができないかまたはそれを望まないもの
   ③国外性要件:迫害の恐怖のために「国籍国の外にいるもの」
 
① owing to well-founded fear of persecution for reasons of race, religion, nationality, membership of a particular social group or political opinion ② is outside the country of his nationality ③ and is unable or, owing to such fear, is unwilling to avail himself of the protection of that country; or who, not having a nationality and being outside the country of his former habitual residence as a result of such events, is unable or, owing to such fear, is unwilling to return to it.
 <考察>
       ①迫害要件
     迫害の原因事由の限定列挙=人種・宗教・国籍・特定の社会的集団の構成員・政治的意見 戦争や内乱等の経済的困窮は対象外
     迫害の蓋然性の立証:本来は主観的判断基礎=個人的認識 しかし、条文は「十分に理由のある恐怖」として客観的事情の存在を要求
      その客観性の立証の度合いにつき、厳格にすれば、難民申請者はその立場上、証拠の収集・提示に困難な地位に置かれているため、事実上振るい落とされる
      英貴族院「迫害を受けるであろうという合理的な程度の見込み」でよい(キース卿)
      米連邦最高裁「証拠によって客観的状況が示される限り、その状況がおそらくもたらすであろうことを証明する必要はなく、迫害が合理的に起こりうることで十分」
    ②国籍国の保護喪失要件:本国による保護の拒否などの客観的事情の存在、または、保護を望まないという個人意思の主観的事情の尊重 例外1条C
    ③国外性要件:国内避難民は当たらない 国籍国を離れたのちに迫害の恐怖を生ずる場合を含む「後発的難民」 refugee sur place
  cf.アフリカ難民条約(1969):外部からの侵略、占領、外国支配、内乱により国外に避難したものも対象 この場合の難民は迫害要件不要
      
4難民該当性の立証に関する手続問題
 各国の立法に認定手続きを委ねる ex.「出入国及び難民認定法」立証責任は第一次的には申請者本人 必要な場合は「難民調査官による事実の調査をさせることができる」(61条の2の14①)
 ただし、国に一般的な「調査義務」を設けたものではないにしても、立証不足を持って直ちに不認定の処分を禁じたものと解すべき
 
5難民の地位
 社会的同化と帰化を「できるかぎり」促進すべきもの(34条)永住者として受け入れ義務を課しているわけではない =国家の庇護権の概念がなお維持
 難民認定を受けたものは、労働、教育、裁判、公的扶助、社会保障等について一定の保護・待遇を与えるべきものとされる
 不法入国を理由とする処罰は禁止され、また、国の安全と公の秩序の維持以外の理由による追放は禁止(32条)
 
ノン・ルフールマン原則 pronciple of non-refoulement
 いかなる方法でも難民の「生命または自由が脅威にされされるおそれのある領域の国境へ追放または送還してはならない」(33条①)
 ⑴適用基準
  迫害要件とは異なる文言:前者がの方がより緩やかで、「生命・自由への脅威」はより客観性を要求?
 ⑵適用範囲
  送還先が当該脅威の待つ別の国へ再送還が見込まれる場合にも適用 間接的に生命・自由の脅威
  迫害を逃れる者について国境での入国拒否を禁ずるものか:解釈上、締約国の領域内に存在する難民を対象としている(33条2) 事実上、難民の受け入れ義務(連邦最高裁
  UNHCRは、同原則は場所を問わず適用されるとする また、正式に難民認定を受けてないものでもその生命・自由の脅威にさらされるおそれがある場合には適用されるとする解釈が有力
 ⑶慣習法性
  国際人権法や犯罪人引き渡し条約の発展により慣習法化するに至ったという学説が有力 ex.拷問禁止条約、日韓犯罪人引渡条約 ただし、尹秀吉事件では否定
 

 

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