Dancing in the Rain

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ニカラグア事件 本案判決

 
ニカラグア VS 米国 本案判決(国際司法裁判所
1986年6月27日
 
⑴適用法規:
  米国は自国の選択条項受諾宣言につき、「判決によって影響を受けるすべての条約当事国が裁判当事国である場合を除き、多数国間条約から生じた紛争」を除外するという留保を付している。
  本件では、国連憲章の当事国であるエルサルバドルは「判決によって影響を受ける国」であるが、裁判当事国ではない。よって、ニカラグアを裁判当事国とする本件において国連憲章を適用法規とすることはできない。(=ニカラグアが当事国となっていない多数国間条約は使えない)
  しかし、慣習国際法は条約国際法と並行して存在しており、区別されて適用される。よって、ニカラグアの主張を慣習国際法に基づいて決定する。
 
⑵適用される国際慣習法
  不干渉原則や領域主権尊重原則については異議なし、一方で武力不行使原則については争いがある。
  武力不行使原則に対する法的信念は総会決議の「友好関係原則宣言」や米州機構の諸決議などから引き出される。なお、国家実行は完全にこれと一致する必要はない。(=現実に武力行使はなされているとしても、それは慣習法の存在を妨げるものではない)
  結論的には、武力不行使原則の慣習法性を認める
 
⑶米国の義務違反:
   コントラの活動が米国に帰属するためには米国によるコントラの「実効的コントロール」が必要である。単なる援助はこれにあたらない。(指揮命令関係が必要)
  しかし、コントラに対する訓練、武装、装備、資金、補給を与えたことによって、米国自身がニカラグアに対して不干渉原則違反を違反する(これは武力不行使原則にも違反する)
  ニカラグア領域内の海底油送菅の爆破、海軍基地・石油施設への攻撃は慣習法上の武力不行使原則に、機雷敷設行為は慣習法上の武力不行使原則、不干渉原則、領域主権尊重原則に違反する。
 
⑷米国の責任阻却事由:集団的自衛権による正当化
  慣習法上の自衛権の認定:国連憲章51条や友好関係原則宣言などの国連の総会決議により確認される
  「武力攻撃」の意義:自衛権発動には武力攻撃の発生が必要である
    ①武力行使不行使原則にいう武力行使は、最も重大な形態(武力攻撃)と他の重大でない形態とに区別される。
    ②武力攻撃は、正規軍による越境行為だけでなく、武装団体・集団、非正規軍、傭兵を派遣すること、あるいはそれに実質的に関与することを含む。
    ③反乱軍への武器や兵站その他の援助(訓練・軍事演習等)は、武力攻撃には含まれないが、「武力行使」または威嚇にあたる。   
    ④武力攻撃に至らない武力行使については、「均衡性ある対抗措置」のみが認められる(本件、第三国たる米国の武力行使を含む対抗措置は正当化事由とならない)
  集団的自衛権の行使要件:被害国が武力攻撃を受けたことの「宣言」と他国に防衛を「要請」したこと
    本件では、エルサルバドルは「武力攻撃」を宣言したが、これは米国が行動したはるか後のことであった また「要請」はなされなかった。
    なお、自衛権行使の一般的要件たる必要性と均衡性についても、本件では満たさない。
  よって、米国によるニカラグアに対する武力行使集団的自衛権行使による正当化を棄却する。
⑸判決:
  ①本件審理で米国の受諾宣言の「多数国間条約留保」の適用を求められると決定する
  ②米国のニカラグアに対する軍事的・準軍事的活動に関する集団的自衛権の抗弁を却下する
  ③米国が資金供与や訓練、武器、情報提供などによりコントラの軍事的・準軍事的活動を支援して国際慣習法上の不干渉原則に違反した
  ④港や海軍基地などニカラグア領土に対する攻撃、及び③の干渉行為により、国連憲章2条4項に含まれる慣習法上の武力不行使原則に違反した
  ⑤ニカラグア領空飛行及び④の行為により他国の領域主権を尊重する慣習国際法の原則に違反した
  ⑥ニカラグア領水への機雷敷設は、武力行使不行使原則と不干渉原則及び外国船舶の港湾の利用権を侵害した
  ⑦米国は上記の法的義務に違反するすべての行為を直ちに中止し、差し控える義務を負う
  ⑧米国は慣習法上の義務違反によりニカラグアに与えたすべての損害につき賠償する義務を負う
 
⑹後の経緯:
  ニカラグアは1986年の6月と7月に安保理に米国の判決不履行を提訴 しかし、二度とも米国の拒否権行使により否決された。
  総会でも審議され、履行を求める決議が4つ採択されたが、米国は無視した。
  1987年9月7日に裁判所は賠償額の算定を開始した、112億ドルの請求をしたが、米国は応じなかった。
  1990年に行われた選挙の結果、米国の支援を受けた半サディニスタ派のチャモロ政権が成立、判決履行を求める立場を転換し、請求を取り下げた。
 
<論点>
 武力不行使原則と自衛権の慣習法性を認めたが、過度に法的信念に依存したものであった(国家実行についての要件は緩和された)
 集団的自衛権の要件につき「宣言」と「要請」を挙げたが根拠が不明であり、これが慣習法といえるかは疑問 また法的性質につき、他国防衛説をとったものと解される。
 「武力行使」を武力攻撃と武力攻撃に至らない武力行使に区分した上で、前者は自衛権及び集団的自衛権の対象となるのに対し、後者では被害国自身の「均衡のとれた対抗措置」のみ許されるとした
 私人の行為の国家への帰属につき、「実効的コントロール」を要件としたが、ICTYはタジッチ事件(1999)において、より緩やかな「全般的コントロール」で足りるとした。この点につき、ICJは、ジェノサイド条約適用事件(2007)において、後者を否定し、本件の立場を維持した。
 

 

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