Dancing in the Rain

Life is not about waiting for the storm to pass but about learning how to dance in the Rain.

(31)国際紛争の平和的解決②

Ⅲ 平和的解決の手段・方法
 
国連憲章上の平和的解決義務の位置付け
 憲章33条1項:平和的解決義務
 「その継続が国際の平和及び安全の維持を危なくする虞のある」紛争は、交渉、仲介、調停、国際裁判等に解決を求めるべきものとした
  cf.2条3項はすべての紛争に対し、平和的解決義務の一般原則。33条の場合は安保理への付託義務と連動していため限定的。
 
2 解決方法の類型
 憲章は、交渉審査仲介調停仲裁裁判司法的解決、地域的機関の利用を列挙 周旋 good offices は仲介に含まれるとする説もあり。
 明示的言及を欠く方法
  ①普遍的国際機構における解決手続 ②個別条約による特別の手続 ③機能的裁判所の手続
 
Ⅳ 伝統的解決方法の概要ー非裁判手続
 
1 交渉 negotiation:紛争解決のための当事国による直接の協議
 多くの裁判条約では交渉前置主義 ex.コンゴ領軍事活動事件では女性差別撤廃条約29条1違反を理由に管轄権を否定
 短期間の交渉でも暗礁に乗り上げた時や相手国が一切の譲歩をも確定的に拒否するときなどは交渉実施の条件を満たす(マヴロマティス事件)
 条約上の義務でない場合、交渉前置主義は適用されない=「一般的規則」の存在を否定(カメルーン・ナイジェリア事件)
 ※交渉命令判決:紛争の解決に必要な基本的法原則や考慮事項を提示しつつ、これを踏まえて当事国の交渉による最終的解決を命ずる判決
  北海大陸棚事件、アイスランド漁業事件、ガブチコボ事件 「合意に到達する目的をもって」その交渉が「意味を持つ」ように誠実に遂行する義務
 
仲介 mediation:第三者が交渉の機会の設定や場所の提供等に続いて、当事国の合意のもとに和解案を提示 19世紀には仲介者の公平性がとりわけ強調
 周旋の例;日露戦争ルーズベルト大統領 
 仲介の例:カーター大統領によるキャンプデービット合意、テヘラン事件のアルジェリア
 ※レインボー・ウォーリア号事件:国連事務総長の裁定が仲介か仲裁裁判か定説なし 法的理由が提示されておらず、仲介に拘束力が生じたとする見解
 
審査 inquiry:専門的知識を有する委員で構成される委員会が紛争の事実関係を解明することによって解決の進展を図る制度
 ドッガー・バンク事件:英露間の委員会の報告書に基づきロシアが賠償金を支払い解決(1904)
 ハーグ国際紛争平和的処理条約に採用 戦後の例;レッド・クルセイダー号事件:イギリス・デンマーク間 発砲行為の合法性など必要な方的判断にも踏み込む
 
調停 conciliation当事国の合意によって設置される中立的委員会が紛争の実態と両当事国の主張を調査・勘案しつつ、友好的解決のために妥当な解決案を提示する手続
 中立的・専門的委員会によることで仲介と区別され、事実問題の解明に限定されないことで審査と区別、必ずしも法に準拠しなくてもいいことから仲裁裁判とも区別
 一般的受容のための柔軟性:法的規準に拘束されずに利害の調整・解決策が法的拘束性を持たない 成功例はヤン・マイエン事件くらい 裁判の方が費用に見合う
 
Ⅴ 国際機構による紛争解決
 
1 概説
 相互依存の深化=多様な国際機構の創設=国際法の発展に重要な役割
 国連の主要な任務は国際紛争の平和的解決
 その他の機構においても独自の解決システムを整備している場合あり ex.国際労働機関や国際民間航空機関
 
安保理の紛争解決
(1)紛争の付託
  ①当事国の付託:平和的解決手段によっても解決できない場合は安保理に付託(37条)一方的付託は可能と解釈される 33条の手段による解決ができなかった時の認定が不明瞭
  ②当事国以外の付託:他の加盟国(35条1)総会(11条)事務総長(99条)に平和脅威型の紛争について「安保理の注意を促すこと」ができる。
 
(2)安保理の勧告
  紛争・事態の付託があった場合でも安保理は必ずしもこれに機械的に対応する義務を負うものではない。
 「紛争の継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする恐れが実際にあると認めるとき」は36条に基づく行動をとるか適当と認める解決条件を提示するかいずれかの措置を取らなければならない(37条2)
  ①「適当な調整の手続または方法」の提示(36条1)法律的紛争の場合は国際司法裁判所に付託されるべきことを考慮すべきものとする(36条3)コルフ海峡事件のみ
  ②解決条件の勧告:具体的な解決案の提示 ex.テヘラン事件における大使館職員の解放と出国措置の勧告
 
(3)勧告の国際法準拠性:国際法の範囲内かあくまで安保理か「適当」と認めるものであれば良いのか
 
(4)「紛争」と「事態」の区分の問題性:解決のための手続的調整の勧告は紛争と事態の双方について可能であるが(36条1)、解決条件の勧告は紛争のみ(37条1)
  一方で、安保理は「事態の継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞があるか」どうかを調査する(34条)
 「事態」とは、明確な対抗的主張がない状況を指すと言われるが、そのような状態で裁判や調停等の手続的措置を勧告してどのような意味があるのか
  更に問題なのは「棄権」:27条3項は第6章の表決について「紛争当事国」は投票を棄権すべきものとする(強制的棄権)文理解釈上「事態」の当事国は表決に参加できる。
 
世界貿易機関の紛争解決
 1995年 世界貿易機関(WTO):1947年のGATTを引き継ぐと同時に、さらにガットのウルグアイ・ラウンドで妥結をみたサービス貿易に関する一般協定(GATs)や貿易関連の知的所有権に関する協定(TRIPs)等を取り入れた、多角的貿易体制を発展させる機関として、1994年のマラケシュ協定に基づき創設
 任務は4つの附属書群に納められた諸協定の円滑な実施を図ることで、附属書2は「紛争解決にかかる規則及び手続に関する了解 DSU」を実施することが明記
 GATT時代の慣行による解決手続の発展=多角的貿易体制の安定と予見可能性を企図した制度化 一般理事会の一部門をなす「紛争解決機関 DSB」による一元的遂行
 
(1)解決手続の概要
  ①協議 consultationの開始:紛争の早期解決の要請に基づく義務 相手国が10日以内に応答しないとき、あるいは要請日から60日以内に協議による解決が実現しなかった場合は、申立国は紛争解決機関にパネルの設置を要請できる
  ②パネルの設置:協議前置主義 諸協定の自国の「利益が無効にされ、若しくは侵害され、またはこの協定の目的達成のが妨げられている」と認められるときは①違反申立②非違反申立③状態申立にこの手続を訴えることができる
 設置の可否はネガティヴ・コンセンサス方式で、議事日程に挙げられた要請の次の会合で実施 3名ないし5名の委員で構成され、選任は事務局の指名提案
  ③パネルの報告書と上級委員会:60日以内にパネルは最終報告書を紛争当事国に送付、上訴なき場合、60日後に紛争解決機関で採択 異議ありの場合は上級委員会に報告書の法的問題ないし法律解釈のみ審査、採択された場合は無条件に受諾しなければならない
  ④勧告の実施と履行確保:紛争解決機関の採択があった場合は、当該措置の是正のための勧告 速やかに当該国が勧告を実施できない場合は、履行のための妥当な期間が与えられるが、この期間経過後も履行されず、代償の合意もなき場合は、申立国は対象協定の譲許の停止やその他の義務の停止の承認を求めることができる 一般国際法上の「対抗措置」とは区別された。ある種の国際的制裁
 
(2)WTO手続の特徴
 ①手続の期限、②ネガティブ・コンセンサス方式=自動的な承認・強制管轄、③上訴制度の採用=法の解釈統一・信頼性の付与
 

 

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