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Dancing in the Rain

Life is not about waiting for the storm to pass but about learning how to dance in the Rain.

(28)国際紛争の平和的解決③

国際法

Ⅵ 国際仲裁裁判

 仲裁裁判は紛争当事国の合意によって事件ごと(アドホックに設置されるのに対し、司法裁判は一定数の裁判官で構成される恒常的法廷を有するものとされる
 
1国際仲裁裁判の発展史
 古代ギリシャ都市国家間、ローマ時代は重視されず→中世に君主間の紛争増大、裁判制度の注目 ローマ教皇は特に紛争解決者としての役割
 近世の主権国家体制の発展とともに仲裁裁判の実行は衰退化=裁判への服従は国王権力と相容れない 
 <学説>
  グロティウス「仲裁人の決定は絶対的な効力」
  ヴァッテル「重要度の低い権利」については裁判に馴染むが「明白に不当で不合理な判決」は無効とする(=無効原因論の端緒)
 1794年ジェイ条約、欧米・ラ米諸国で仲裁裁判は用いられ、19世紀以降、紛争解決の重要な一手段に cf.1872年のアラバマ号事件(英米)で仲裁裁判は広く世に認識
 
   ①仲裁裁判を義務化する条約の増大
   ②仲裁裁判所の常設化ないし法廷設置の円滑化 (1899国際紛争平和処理条約)
  
各締約国があらかじめ指名した裁判官の総名簿が常備されていること、国際事務局が常置されていること 具体的な法廷が事件ごとに設置されるのは従来どおり
 
 利用度は低迷:仲裁裁判自体が減っているわけではない 仲裁裁判の司法化現象:審理手続、裁判準則の同一化、少数意見制の一般化、法的論証の質・量的接近=柔軟性や衡平性が減退する恐れ
 
2仲裁裁判所の構成
 法廷構成の任意性:裁判官の人数や選出方法について、すべて当事国の同意
 条約で仲裁裁判が義務化された場合、相手国が裁判官を選出しない場合に備えて、特定の第三者に要請あるいは国際司法裁判所に付託できることを定めるものもある
 
3仲裁裁判の効力
 
 ⑴ 拘束性:判決 awardが当事国を拘束することは中世より承認=当事国は拘束されることを当然として約束 一般国際法上の原則であって、仲裁協定の規定の有無に依存しない
 
 ⑵ 仲裁判決の無効原因論:「明白に不当で不合理な判決 」は拘束力を持たない(ヴァッテル)
  仲裁裁判モデル規則(ILC・1958年):①権限踰越②裁判官の腐敗③判決理由の欠如ないし基本的手続規則の逸脱④仲裁協定の無効 cf.スペイン国王仲裁裁判事件(1990年)で争点
  判決結果の自国の側からの満足・不満の尺度を持ってその受容ないし無効を主張を慎むべき=客観的判定の必要性・国際司法裁判所の関与 また無効とされても裁判をやりなおすという上級審の役割ではない
 
Ⅶ 国際司法裁判
 
国連機関における国際司法裁判所の地位
 国連の「主要な機関」(7章)であるとともに「主要な司法機関」(92) 法的解決に馴染む紛争は通常は付託されるべきとする 司法審査や上訴機能を想定?
 裁判所規程は「この憲章と不可分の一体をなす」(92)両者は一つの文書として読まれるべきもの 国連加盟国は当然に規程の当事国であり、規程の改正には憲章の手続きが必要(69条)
 一方で、非加盟国が規程の当事国となる手続きが存在(93条3) 裁判所の普遍化を図るための措置
 
2裁判所の構成
 ⑴ 構成と資格:国連での選挙によって選出される15名の裁判官 裁判官は個人の資格で、国籍関係ないが、同一国籍が2名以上は不可
   資格は自国で「最高の司法官」かあるいは「国際法に有能の名のある法律家」(2条)配分は「世界の主要文明・法系」が代表されるべき(9条)
   常任理事国の恒常的選出の慣例 アジア3・アフリカ3・ラ米2・東欧2・西欧その他5
 ⑵ 裁判官の選出手続:任期は9年であるが3年ごとに5名改選
  ①候補者の指名:常設仲裁裁判所の裁判官として任命した裁判官団が4名まで候補者を指名
  ②国連の選挙:総会と安保理の絶対多数 
 ⑶ 特任裁判官制度 judge ad hoc:15名の裁判官の中に自国籍がいない場合に当事国は指名可能(31条) 自国の法的立場が正当に伝達されることで訴訟に参加しやすくする 一方で、裁判官は個人の資格のはず
 
3裁判管轄権
 ⑴ 基本原則:裁判管轄権 jurisdiction 裁判所が事件を受理し、審理し、判決を与える権限
  同意原則:紛争当事国の合意により管轄権が設定 国家主権観念を重視した近代国際法の承継
 ⑵ 管轄権の存在形式
  ①付託協定:発生した特定の紛争を裁判所に付託するための協定(40条1「特別の合意」) ex.マンキエ・エクレオ、北海大陸棚、ガブチコヴォ、リギタン・シバタン
  ②応訴管轄:一方の当事国の提訴に対して相手国がのちに同意を与える場合 コルフ海峡事件:同意の表明といった明示的方法による必要はない 近年では、コンゴ対フランス
  ③裁判条約・裁判条項:ボコタ規約、欧州平和解決条約 後者は対象となる紛争が当該条約の解釈適用に関するものに限定
  ④選択条項受諾宣言:規定36条2項 Optional Clause、裁判所の管轄権を「義務的」であると認める宣言をした国相互間で法律的紛争につき裁判義務を創設 法的性質につき双務的合意説(ニカラグア事件)
 留保の慣行:特定の種類の紛争を除外する留保が広く承認ー選択条項の受諾の促進 自己判断留保の問題:自国の判断により提起された紛争が国内管轄事項に属するかの決定権を留保するもの
 留保の相互主義:提訴国がふした留保を被告側が援用して当該事件の管轄権を否定すること ex.ノルウェー公債事件
 宣言の期限:一定期間を付して行うことができる ニカラグア事件では提訴の直前に「中米諸国の紛争」を除外 信義則により無効
 
4訴訟手続
 ⑴ 訴えの提起:裁判は訴えの提起をもって始まる(40条1)合意提訴と一方的提訴の二種類 いずれの場合も「紛争の主題」と「当事者」の記載 訴状の場合正確な請求内容と簡潔な事実と請求の根拠を記載
 ⑵ 審理手続:書面手続と口頭手続 原告の申述書 Memorial と被告の答弁書  要請があるときは原告は抗弁書 Reply及び被告の再抗弁書の提出を認めることができる(規則45)
       口頭手続は当事国の代理人、補佐人、弁護人あるいは証人等の意見聴取の手続 弁論の終結にあたっては最終申立(法廷での朗読と代理人の署名入りの書面)
 
付随手続 incidental proceedings 本案の審理の遂行に伴って提起される当事国の諸種の申請の処理 本案判決前後で分類
 ⑴ 先決的抗弁 preliminary objection:本案の決定を阻止するために当事国の一方が提起する、裁判所の権限を否認する妨訴抗弁 ①管轄権に対する抗弁と②請求の受理可能性に対する抗弁 ex.当事者適格
 先決的抗弁が提出されると本案手続は停止し、当該抗弁の認否の審理が開始 却下した場合は審理が再開
 抗弁は申述書の提出後3ヶ月後以内に提出する必要(規則79条) 本案の主張と併行して答弁書において管轄権・受理可能性抗弁を認める(逮捕状事件・アヴェナ事件)  
 ⑵ 保全措置 provisional measures:裁判の主題をなす各当事国の権利を保全するために最終判決が下されるまでの間裁判所が指示する暫定的措置(規定41) 本案判決の実効性を確保する目的
 認容の要件:本案の結論とはかかわりなく当事国の行動を規制するため「例外的権限」として厳粛な要件のもとで認められなければならない 判例により形成
 ①本案管轄権の存在に蓋然性が認められること(蓋然性要件)②申請内容が請求主題をなす権利を保全するものであること(訴訟主題との連結性)③権利の保全のための緊急性=償い得ない損害 irreprable prejudice の存否
 効力:拘束力につき争い ラグラン事件では、命令が「拘束力効力」を持ち、「法的義務」を創設すると判示 違反の効果はなお問題 コンゴ領軍事活動事件では違反を主文に明記したのみ
 先決的抗弁と同時に出された場合、仮保全措置が優先 権利保全のの緊急性
 ⑶ 訴訟参加
   ①許可方式(62条):裁判事件によって影響を受ける「法律的性質の利害関係」を持つ国が裁判所に参加の許可を求める制度 「明確な特定化」が必要 領土・島・海洋境界紛争事件
  自国の利害について裁判所の考慮に入れるべくする意見陳述型の参加(=当事国の地位なし)と自国の独自の請求を提起して決定を求める請求提起型参加=管轄権リンクが必要
   ②権利方式(63条2):条約の解釈が問題となるときに当該条約の締約国がその裁判に「参加する権利 right to intervene」を持つもの 国際裁判に特有 締約国であるから利害関係あり
 
6判決
 ⑴ 裁判準則:①条約②慣習国際法③法の一般原則④補助手段として判例と学説(38条1)「衡平及び善」によることもできるが実例なし
 ⑵ 表決:評議は非公開かつ秘密(54条3)表決は賛否を投じ、棄権はゆるされない 可否同数の場合は裁判所長の決定投票
 少数意見①個別意見=判決の結論に賛成するが理由を異にする場合と②反対意見=結論そのものに反対する場合
 ⑶ 判決の効力:「当事者間において且つその特定の事件に関してのみ拘束力を有する(59条)=先例拘束を否定 「判決は、終結とし、上訴を許さない」(60条)言い渡しとともに確定
 既判力 :判決の持つ拘束性と終結性 争いの終結による法関係の安定性の確保と蒸し返しの禁止による当事国の利益の確保(ジェノサイド条約適用事件・2007)
  人的範囲:当事国のみ、第三国に及ばない 物的範囲:「主文 operative clause, dispostif)」理由も密接不可分であるとする有力説
 ⑷ 判決の解釈と再審
  ①解釈:「判決の意義または範囲」について争いがあるとき、いずれかの当事国の要請によって裁判所がこれを明らかにするための手続(規定60条)
  「主文と不可分である限り理由の判断も解釈の対象」(カメルーン・ナイジェリア)新たな論点の判断や原判決の変更を意図する請求は認められない ex.庇護事件の解釈請求
  ②再審 revision:決定的な重要性を持つ新事実の発見に基づいて判決の改変の要否を審査する手続 受理可能性審査と本案の審理手続(規定61条2・規則99条4)
  要件:「決定的要素となる性質を持つ事実の発見」と「判決時にその事実を知らなかったことにつき過失がないこと」「新事実の発見から6ヶ月以内に請求し、判決日から10年を経過していないこと」
   チュニジアリビア大陸棚事件判決及び領土・島・海洋境界紛争事件では「決定的要素」の存在が否定 主文の変更も不可避とする効果を持つものと解される
   ジェノサイド条約適用事件では、新事実は「判決の言い渡しの時にすでに存在した事実」であるした
 
7判決の履行確保
 ⑴ 安保理の94条権限
 当事国による不履行があった場合他方の当事国は安保理に訴えることができ、「必要と認めるときは、判決を執行するために勧告をし、または取るべき措置を決定することができる」(94条2)
 第6章の勧告と第7章の強制措置とは異なる独自の権限とする自律説によると両者の発動要件の枠内で行使することを否認=平和の脅威の有無に関係なく判決の不履行という事実に基づいて措置を取ることができる
 ⑵ 安保理措置の限界
 措置や勧告は基本的に判決内容を変更するものであってはならない=「判決を執行するため」
 ⑶ 表決手続:非手続事項=拒否権行使可能とするのが有力説 ニカラグア事件では94条で二度にわたり安保理に提起したがアメリカの拒否権行使で阻まれた
 
8勧告的意見(憲章96条・規程65−68条)
 ⑴ 意見の要請
  ①要請権者:総会と安保理のほか、総会の許可を得た一定の国連機関と専門機関に限られる(96条) 万国郵便連合を除くすべての専門機関
  ②事項的範囲:総会と安保理は「いかなる法律問題」についても可能(96条1)抽象的問題でも良い ex.核兵器使用の合法性事件
  総会と安保理以外の機関・機構は「その活動の範囲内において生ずる法律問題」に限定される 
 
 ⑵ 裁判所の対応の基本的立場
  ①意見付与の裁量性②裁判所の協力義務=主要な司法機関として「原則として拒否するべきではない」(西サハラ事件、平和条約事件)③司法適合性の考慮=「決定的事由」の有無
 ⑶勧告的意見の効力:助言的性格を有するにすぎず拘束力を有しない(平和条約事件)個別条約により拘束力を持たせることは可能 ex.国連特権免除条約 しかし、事実上の強制的裁判の効果
 

 

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