Dancing in the Rain

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(31)武力紛争法①

Ⅰ 武力紛争法の適用法理
戦争法から武力紛争法へ
 ⑴ 戦争に関する方の区分
  伝統的には二つ
   ①jus ad bellum:戦争に訴えることの合法・違法を規律する法
   ②jus in bello:戦時における交戦国の戦闘行為を規律する法=戦争法戦時国際法
     近世初頭のグロティウスなどの関心は前者の研究=正戦論
 ⑵ 武力紛争法の適用根拠
  現代国際法は戦争を違法化 この状況下で武力行使の手段や方法を規制し、また戦闘員や文民を保護するための「武力紛争法」あるいは「国際人道法」の存在を認めることは法的矛盾を払う
  人道的要請ー一度武力的措置が取られるときは一定規模の戦闘行為が展開、その被害と惨禍を最小化することが必要 「人道の最優先的考慮」(パレスチナの壁事件)
 ⑶ 武力紛争法の平等適用
 全ての敵対当事国に平等に適用ー侵略国と被害国の区別なし ex.ジュネーブ諸条約第一追加議定書(前文)=武力紛争時の戦闘員・文民保護の必要性
 
2武力紛争法の規範的特質
 ⑴ 軍事的必要と人道原則 military necessity principle of humanity
  相手国の戦力を弱めるために必要な軍事力の行使を原則的に許容しつつ、他方、そのために必ずしも必要でない武力の行使は人道的考慮からこれを制限
  伝統的戦時国際法は前者は大きな比重を占める ex.「戦時中に国家が達成するために努めるべき唯一の正当な目的は敵の軍事力を弱めること」(サンクトペテルブルク宣言・1868)
 ⑵ 人道原則の強化
  戦争や武力行使の違法化された現代の武力紛争法は何よりもその惨禍を防止することにあり、人道原則が優先されなければならない(以下第一追加議定書条文)
  51条5:当該攻撃によって予想される「軍事的利益との比較において」文民や民用物について生じる付随的被害が「過度」となる攻撃は無差別攻撃とみなして、これを新たに禁止
  56条1:危険な威力を内蔵する施設はたとえ「これらのものが軍事目標となる場合であっても」それへの攻撃が「文民たる住民の間に重大な損失をもたらすときは攻撃の対象としてはならない
 ⑶ ハーグ法とジュネーブ法の統合化
   ハーグ法:交戦当事者の戦闘行為や戦闘手段を規制する
        当事国の行為・行動を規制するという点で主権志向的
   ジュネーブ法:傷病者、捕虜、文民などの戦闘犠牲者の保護
        人の保護という点で人道志向的=今日の国際人道法
  区別はされるが密接に関連、実体的識別基準としての有用性は消滅しつつある
 ⑷ 武力紛争条約と慣習法
  ①総加入条項の撤廃:当該戦争の交戦国の全てが締約国である場合に限ってその条約が適用される旨を定める条項 general participation clause ex.1907年のハーグ陸戦法規慣例条約2
  非締約国が無制限の武力を講じうることに対し、優劣を除去することを目的 ただし、慣習法たる条項はその適用を受けない ex.東京水交社事件
  交戦国の増大から適用性を著しく縮小 ex.ジュネーブ4条約および第一追加議定書はこれを排除、非締約国たる当事国がこれを受容した場合当該条約に拘束される(2条・追加議定書96条2)
  ②条約規則の慣習法性
   パレスチナの壁事件では非締約国のイスラエルに対し、ハーグ陸戦条約の諸規定の慣習法性を認定し、その違反を認定
 
3適用範囲
 ⑴ 国際武力紛争
 「二以上の締約国間に生じる全ての宣言された戦争またはその他の武力紛争」に適用(ジュネーブ4条約2条・1949)
 第一追加議定書は、植民地支配、外国の占領支配および人種差別体制に対する自決権の行使としての武力闘争を国際的武力紛争のカテゴリーに含める(1条4)
 ⑵ 内戦
 ①共通第3条:国内における反政府団体は、「交戦団体」承認をしない限り、国際法上の交戦法規は適用されない ex.捕虜にならず罪人となる
  1949年諸条約共通3条は内戦にける最低限の規定を設定 生命身体に対する虐待・拷問等の禁止、個人の尊厳の侵害および裁判によらない処罰の禁止等
 ②第2追加議定書(1977):第一追加議定書の対象とならない紛争で、締約国の領域内で発生する政府軍と反乱軍その他の武力集団との間の紛争に適用される
  敵対行為の直接の当事者でないものに対する人道的保護、武力紛争を理由に自由を剥奪されたものの保護、一般住民の安全の強化など保護すべき義務の範囲を拡大
 
武力行使の手段と方法の規制
1戦闘手段の規制
 ⑴ 一般的規制規準:ハーグ陸戦規則22条は害敵手段につき、無制限の権利を否定 第一追加議定書35条で再確認
  ①不必要な苦痛を与える兵器
   ハーグ陸戦法規23条e:「不必要の苦痛を与えるべき兵器、投射物その他の物質」の使用禁止 交戦国の目的は「敵の軍事力を弱めること」(サンクトペテルブルク宣言)
  ②文民・民用物と軍事目標を区別し得ない兵器
   特定の軍事目標に限定しえない兵器の使用は禁止 伝統的戦時国際法の軍事目標主義 第一追加議定書51条4
  ③広範な環境被害を与える兵器 第一追加議定書35条3
 ⑵ 条約による特定兵器の禁止
  一般的な規制は新兵器に対処しうる利点を有する反面、兵器の特定性を欠く
  ①サンクトペテルブルク宣言(1868)②毒ガス禁止宣言③ダムダム弾禁止宣言④自動触発海底水雷条約⑤ガス使用等の禁止に関するジュネーブ条約(1925)⑥細菌兵器及び毒素兵器の開発・生産・貯蔵等の禁止条約(1972)⑦特定通常兵器条約⑧対人地雷禁止条約(1997)
 ⑶ 核兵器使用の合法性問題
  禁止する条約がないために見解が対立
  原爆訴訟事件(1963年)で東京地判は広島・長崎の原爆投下を違法とする 「無防備都市への原爆投下は無差別爆撃と同視すべきであって、当時の国際法に違反」
  核兵器には様々な機能:特に平時における政治的効用 そのため包括的な禁止条約が存在しない
  1961年核兵器使用禁止決議(総会)はその使用は「国連憲章の直接の違反」あるとすると同時に「国際法規と人道法」に違反(米英中仏カナダイタリア等は反対)
  ICJ勧告的意見:武力紛争法の定める軍事目標主義や不必要な苦痛を与える兵器の禁止規則等とほとんど両立しない、として一般的には武力紛争法の規則に反するとした
   ただし、国家存亡のかかる自衛の極限状況におけるその使用の合法・違法は国際法の現状と裁判所が認定できる事実に照らし、確定的にこれを決定することはできないとも述べた
  第一追加議定書:米国等は本議定書は核兵器には適用されないとするが、軍事目標に限定し得ない兵器の禁止や文民を区別し得ない無差別攻撃は慣習法化
 
2戦闘方法の規制
 ⑴ 軍事目標主義:一般住民や非軍事的施設等を保護するため、無差別の攻撃は禁止 ハーグ陸戦規則はその基準として無防守都市と防守都市の区別
  第一追加議定書52条2「攻撃は厳格に軍事目標に対するものに限定する」 また平和的住民の生存に不可欠のものに対する攻撃や自然環境の重大な破壊を禁止(54条ー56条)
 ⑵ 背信行為の禁止:相手側の信頼を裏切る意図をもって法的に保護される権利ないし義務があるかのように相手の信頼を誘う行為(第一追加議定書37条1)
   降伏旗を掲げて交渉を装うこと、傷病による行動不能を装うこと、文民・非戦闘員の地位を装おうことなど
  他方で奇計は適法:敵を誤導しまたは無謀に行動させる意図を持つ行動で武力紛争の法規に違反せず、かつ国際法上の保護に関して敵の信頼を誘うものでない行動(37条2)
 

 

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