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Dancing in the Rain

Life is not about waiting for the storm to pass but about learning how to dance in the Rain.

ケベック分離独立事件

国際法判例

【事実】
 連邦国家カナダの1州を構成するケベックでは人口の8割がフランス系で、言語的・文化的なアイデンティティの確立をめぐる動きが強く、特に60年代以降は憲法改正におけるケベック自治権拡大をめぐって連邦との対立が激化するようになった。80年代には、独立を標榜するケベック党政権によって分離独立の賛否を問う住民投票がなされたが、六割の反対で否決に終わった。その後、82年にはカナダ憲法(英領北アメリカ法改正)が成立したが、同州は批准を行わなかった。87年には同州の要求の一部を受け入れる協定がまとめられたものの全ての州の批准を得ることが出来ず、締結されずに終わった。こうした状況の下で、94年にケベック州首相はケベックが主権国家となることを目標とし、それを実現するための具体的なプロセスを明らかにした主権法案を国民議会に提出した。また、95年6月には、ケベック党の指導者らが住民投票の賛成投票後の具体的な行動同指針を示した共同行動綱領に合意した。これらは同年9月にケベック未来法として国民議会で採択された。これを踏まえて、同年10月には第二回の住民投票が行われ、賛成49.42パーセント、反対50.58パーセントで否決された。
 このような背景のもと、カナダ総督は総督は96年9月30日の枢密院令により、連邦最高裁判所に対して以下の3点の諮問を行った。

(1)カナダ憲法上、ケベック議会、立法機関または政府は、カナダからケベックの分離独立を一方的に実施することができるのか。
(2)国際法上、とりわけ国際法上の自決権は、ケベックの議会、立法機関又は政府に対してカナダからケベックの分離独立を一方的に実施する権利を与えているのか。
(3)この点に関して国内法と国際法の矛盾がある場合にはカナダにおいてはどちらが優先するか。

【意見要旨】

(1)憲法における一方的分離独立の地位

 ①ケベックの一方的な分離独立は、憲法上許されるものではない。分離独立には法的に憲法の改正を必要とするものであると同時に必然的に交渉を要する。
 ②カナダ憲法は、連邦から離脱するための州の権限について沈黙し、分離独立を明確に認めておらず、またそれを明確に禁止しているわけでもない。しかし、分離独立の行動は、疑いなく現行の憲法制度に合致しない形でカナダ領土における統治形態を変更させるものとなる。
 ③憲法上、住民投票の利用は規定されておらず、その結果は憲法体制において直接の法的効果を有するものではない。にもかかわらず、住民投票は特定の場合において、重要な政治的問題に関する有権者の意思を確認するための民主的手段を提供するものである。憲法の内包する民主主義の要請から、ケベック人民が明確に表明するカナダから分離する意思は、相当重要な意義を有するものとして認めなければならない。
 ④住民投票によるケベック人民による既存の憲法秩序に対する明確な否定は、分離独立要求に正当性を付与し、交渉に入り、そして憲法の諸原則に従って交渉を行うという形で、こうした民主的意思の表明を認め、尊重する義務を他の州及び連邦政府にもたらすことになる。
 ⑤この憲法上の諸原則に従って交渉を進める義務を果たさないことは、当事者の国際的な正当性を損なうことになる。

(2)国際法における一方的分離独立の地位

 ①国際法は一方的分離独立の権利を認めてはいないが、明確に否定することもしていない。国際法は国の領土保全を重視し新国家の形成については国内法に委ねている。一方的分離が憲法と両立しない場合であっても、例外的な事情においては人民の自決権に従って許容される。
 ②国際法は自決権を「人民」に与えているが、その正確な意義は不明確である。「人民」は必ずしも国の住民の全体を意味するものではなく、ケベックの住民は人民に該当する多くの特徴を確実に有するが、その法的性格付けの問題は本件諮問事項に回答するために必要でない。
 ③人民の自決権は通常は「内的」自決を通じて実現され、「外的」自決権は最も極端な事例においてしかも注意深く限定された状況においてのみ生じる。国際法上の自決原則は領土保全の枠内で発展してきた。人民の自決権の行使を支持する多くの国際文書はまたこうした権利の行使に対し多くの制約を課している。
 ④国際法上の自決権が外的自決権を認めるのは、(ⅰ)旧植民地状況にあるか、(ⅱ)民族が外国による軍 事占領下にあるような抑圧状況にあるか、あるいは(ⅲ)明定可能な集団が、政治的、経済的、社会的及び文化的 発展を追求するために政府を利用しようとしても意味をなさない状況にある場合(=内的自決を完全に拒否された場合)である。
 ⑤ケベックの事情は分離独立の認められる例外的な事情にあたらない。人民の自決権に言及した国際文献の論理構造からすれば、カナダは「人民の同権及び自決権の原則」に従って行動する主権及び独立国家であり、従って差別なくその領域に属するすべての人民を代表する政府を有する者である。
 ⑥従って、「人民」の定義がどうであれケベック州の住民も、またケベックの議会、立法府または政府も、国際法の下で一方的にカナダから分離する権利を有さない。
 ⑦憲法違反の分離独立が結果的に成功するかどうかは国際社会の承認に依存する。しかし、国際的承認は分離の日に遡及して「法的」権利の淵源となるものではない。

(3)国内法と国際法の優劣

 諮問事項①および②に対する答えに鑑みて、諮問事項③にいう国内法と国際法の間の矛盾は生じない。

<論点>

ケベック州が交渉を経た後合意に至らず、一方的に独立を宣言しかつ当該地域の実行支配を行っている場合、その領土は保全されるのか。
②①で独立宣言後、仮にフランスが国家承認した場合、カナダ政府はいかなる主張を行うことが出来るか。
③国家資格要件に経済的自立は該当しないか。
④分離独立ではなく既存国家に併合された場合、国家承認は要しないとすると、その違法性はいかにして主張するか。
⑤救済的分離権を超法規的に措定することは国際法上観念できないか。
⑥国家の成立が政治的現実に依存するにもかかわらず、国際法上分離権が認められないとする意義は何か。
国際法上、住民投票はどのような意味を持つか。

 

 

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