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(6)法律関係の性質決定【国際私法】

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この記事では、国際私法における法律関係の性質決定についてできるだけ分かりやすく簡単にまとめています。

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意義 

  • 法律関係の性質決定とは、抵触規則(狭義の国際私法)のうち指定概念(ex. 「相続」「婚姻」)の内容を解釈・確定し、問題となっている法律関係の法的性質を決定して、その指定概念に含まれるかどうかを決めること。
  • 例えば、不法行為による損害賠償債務の相続という問題の場合、抵触規則が適用される単位法律関係は、「不法行為」なのか「相続」なのかが問題となる。逆に言えば、(日本の場合だと)法の適用に関する通則法の第17条の「不法行為」の問題なのか、第36条の「相続」の問題なのかを決定(=法律関係の性質決定)しなければ、適用すべき準拠法を決定できないことになる。
  • このように問題となっている法律関係は多様であるのに対して、抵触規則の定める指定概念は概括的であるために問題となっている法律関係が複数の規定の定めるいずれの単位法律関係に該当するのか一見しただけでは明らかではない。

具体的に問題となるケース

  • 共同相続人の一部が相続財産を第三者に処分した場合の相続人の処分権の有無は、相続の問題か物権の問題か
  • 離婚の際の親権者指定は、離婚の問題か親子間の法律関係の問題か
  • 債権質は、物権の問題か客体である債権自体の問題か
  • 不法行為の基づく損賠債務の相続は不法行為か相続か
  • 契約債務の時効は債権を発生させた法律行為の問題か手続きか
  • 離婚に至る行為を原因とする慰謝料請求は不法行為か離婚か
  • 前婚無効の後婚の有効性は前婚の効力か後婚の成立か

解決方法

19世紀末、抵触規則が統一されても、指定概念の解釈が各国で異なるのであれば法の抵触を完全に除去することはできないという問題意識から、法律関係の性質決定が論じられるようになった。

法廷地実質法説

  • 性質決定は法廷地の実質法により決定されるべきであるとする立場。例えば、法廷地が日本であった場合は、「相続」という単位法律関係について日本の民法における「相続」と同一の概念と捉える。
  • 主権理論からの説明:抵触法により外国法を適用するのは主権の制限であり、性質決定の基準を自国法ではなく外国法に委ねれば主権侵害を招くことになる。
  • 法秩序維持からの説明:国際私法も国内法の一部であるから、一国の法の解釈として抵触規則に含まれる指定概念は特に反対の定めのない限り、法廷地実質法上の同一のものと解すべき。
  • 批判:国際私法はあらゆる国の法制度を内包しうるものでなくてはならず、また、法廷地法を優先させることは内外法平等の前提に反することになる。例えば、日本人と一夫多妻制をとるムスリムとの離婚については、日本の実質法上概念としての単位法律関係が存在しないことになる。

準拠法説

  • 準拠実質法上の概念を基準とする。ex.準拠法が米国法であれば性質決定も米国法による。
  • 批判:性質決定がなされなければその法律関係の準拠法は決定されないのだから、その準拠法によって性質決定を行おうとすれば循環論に陥る。

国際私法自体説

  • 抵触規則の指定概念の解釈は国際私法独自の立場から行われなければならない。国際私法の目的と機能が実質法とは異なることを考慮すれば、抵触規則の解釈を行う際は実質法上の概念に拘束されず、国際私法独自の観点から自律的にその解釈を行う必要がある。通説。
  • なお、判例は、具体的基準については抵触規則の解釈問題であり、関連する抵触規則間の事項的な適用範囲の確定の問題として、それらの規定の趣旨・目的を考慮して指定概念を構成すべきであるとする。

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