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(9)反致 【国際私法】

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国際私法解説シリーズ。この記事では、国際私法における反致の概念についてまとめています。

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反致の意義

  • 反致とは、法廷地の国際私法によって指定された準拠法が所属する国の国際私法が、法廷地法または第三国法を準拠法としてしている時に、その外国法の立場を考慮して、法廷地または第三国法を準拠法とすることを認めることである。
  • 国際私法の国際的不統一:国際私法は各国の立法に委ねられ、相互に内容の異なる各国の国内法として存在するため、同一の法律関係について、国ごとに指定される準拠法が異なるという事態が生じる。
  • これには、(1)同一の法律関係について、両国が自国法を準拠法として指定する場合と(2)両国の国際私法が相互に相手国法を準拠法として指定する場合が考えられる。後者の場合に反致が認められる可能性がある。

反致の種類

(1)狭義の反致

A国の国際私法によればB国法が準拠法となるが、B国の国際私法によればA国法が準拠法となる時に、A国でA国法を準拠法とする場合。

例:ある法律関係について、日本の通則法によれば米国法が準拠法となるが、米国の国際私法によれば、日本法が準拠法となる場合に日本法を準拠法とする。

(2)転致(再致)

準拠法国の国際私法が第三国法を準拠法とする場合にその法による場合。

例:ある法律関係について、日本の通則法によれば米国法が準拠法となるが、米国の国際私法によれば、フランス法が準拠法となる場合にフランス法を準拠法とする。

(3)間接反致

回り回って自国に戻ってくる場合。

例:ある法律関係について、日本の通則法によれば米国法が準拠法となるが、米国の国際私法によれば、フランス法が準拠法となる場合に、フランスの国際私法よれば日本が準拠法となる場合に、日本法を準拠法とする。

(4)二重反致

A国の国際私法によればB国法法が準拠法となるが、B国法の国際私法によればA国法が準拠法となり、かつ、B国法の国際私法に反致の規定がある場合にはその反致規定までもを考慮し、A国でB国法を準拠法とする場合。結局は、元の準拠法と同じになる。

例:ある法律関係について、日本の通則法によれば米国法が準拠法となるが、米国の国際私法によれば、日本法が準拠法となり、かつ、米国の国際私法に反致規定がある場合に米国法を準拠法とする。

反致の根拠

このような反致がなぜ認められるべきかについて、理論的根拠と実際的な根拠が考えられる。

論理的根拠

(1)総括指定説
  • 準拠法として指定される外国法には実質法規則だけでなく抵触規則(国際私法)も含まれるとする立場。
  • しかし、国際私法による準拠法選択の対象になぜ觝触規則も含まれるのか十分な根拠がない。
  • 論理的には法廷地と準拠法所属国との間で無限の循環が生じ、準拠法が決まらないという事態に陥る可能性。これに対して通説は実質法の指定とする。
(2)破棄説
  • 前提として、国際私法は各国法の適用範囲を定めることにより国家主権の発動たる立法権の範囲を確定するものと解する(国際私法=国際法説ないし主権理論)
  • そして、指定された外国の国際私法が当該法律関係についてその国の法以外を指定している場合は、それは事案に対する管轄を放棄しているということであり、それにもかかわらずその国の法を適用することは主権の侵害になるとする。
  • しかし、外国法の適用意思によるものではないし、主権の侵害にもならなとする反論。

実際的根拠

(1)狭義の反致による内国法の適用拡大
  • 内国法が適用されれば、外国法の内容の調査・解釈・適用の困難を免れ、勝手知ったる内国法を適用して裁判を行うことができ、裁判の便宜・質という観点から有益である。
  • 一方で、内外法平等の精神に反し、反致を認めることでかえって外国の国際私法を調査・解釈・適用しなければならないという煩雑さが生じてしまうとの批判。
(2)国際的判決調和
  • 同一の事案について法廷地と準拠法所属国との間で準拠法の一致がもたらされ、国際的に跛行的な法律関係の発生を防止できる可能性がある。また属人法をめぐる本国法主義と住所地法主義の対立を緩和できる。
  • しかし、準拠法所属地国の国際私法が同様に反致を認めている場合、準拠法が入れ替わったにすぎない。反致によって国際的判決調和が実現される場合があったとしてもそれは限られた国の間での話にすぎない。
  • 一般論として広く認めることは問題があるが、いかなる場合にも他国の国際私法を考慮してはならないとする理由もない。各国の国際私法は各種の法律関係の性質に最も適した準拠法を指定しようと努力していると同時に、同一の渉外的法律関係について規律が国際的に調和することも目指している。反致を認めることが合目的であるかを個別的に検討していく必要がある。

我が国における反致

通則法41条の解釈論:特徴として、第一に、「本国法によるべき場合」として、通則法が「本国法」として外国法を指定した場合にその適用を限定。ただし段階的連結による場合の本国法には例外。第二に、狭義の反致のみを認めている。

第41条

当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。ただし、第25条(第26条第一項及び第27条において準用する場合を含む。)又は第32条の規定により当事者の本国法によるべき場合は、この限りでない。 

本国法によるべき場合

肯定:行為能力(4条)、婚姻の成立及び方式(24条)、嫡出・準正・養子縁組(28〜31条)、その他の親族関係(33条)、後見・相続・遺言(35条〜37条)

否定(41条但):婚姻の効力(25条)、夫婦財産制(26条第1項)、離婚(27条)、親子間の法律関係(32条の段階的連結)

(1)段階的連結と反致
  • 平成元年法例改正により追加。
  • 段階的連結の場合には、関係当事者に関する準拠法を厳選・精選しているから、その法律によるのが適当と考えられることや本国も段階的連結を採用し、最密接関係地法の指定を認めるような場合にその認定が困難となるため。
  • 例えば、同一本国法が夫の住所地として日本法に反致してくるような場合、両性平等の見地から望ましくない。
(2)選択的連結
  • 多数説は、41条は限定的に列挙しており、当然に反致すると解する。
  • 一方で、選択的連結の場合に反致を認めると、準拠法の選択肢の数が減少する恐れがあるため、それが選択的連結を採用した趣旨に反するとして一律に否定したり、実質法目的に適う限りで反致を肯定あるいは否定する立場がある。
(3)セーフガード条項

否定説は、セーフガード条項の場合の準拠法指定の趣旨が特定の国の実質法を強行的に適用するところにあることを理由に反致は認められるべきではないとする。

その国の法に従えば日本法によるべきとき

その国の法とは、外国法上の抵触規則であり、いかなる資格で指定されるかは問わない。

(1)間接反致と二重反致
  • 間接反致については、本国国際私法の転致規定まで考慮すれば、日本法を準拠法としていると解釈する余地もある。
  • 二重反致については、「その国の法」に反致規定も含めて考えれば、41条の反致が成立しないとして結果的に二重反致と同様の結果となる。
(2)隠れた反致
  • アメリカの諸州の法制において、養子縁組等の問題については、裁判管轄権に関する規則のみ存在し、準拠法決定の規則は存在しない。すなわち、裁判所は自州に裁判管轄があるかどうかについて判断し、それが認められれば、準拠法選択について考えることなく、法廷地法である自州の法をただちの適用する(管轄権アプローチ
  • すなわち、裁判管轄の有無の判断の中に、準拠法選択の問題が吸収されている。この管轄権を認める際の基準には当事者の住所が用いられているため、反致について抵触規則が存在しないとしても、国際私法全体から総合的に判断して日本法に準拠すべきものと定められていると解される場合、その成立が認められる。
  • 隠れた反致とは、このような州法が準拠法として定められた場合に、そこに当事者の住所地法主義という抵触規則が隠されているものとして、当事者の住所(ドミサイル)等が日本に存在する場合に日本法への反致を認める立場である。
  • 批判として、そもそも当事者の住所が自州になければアメリカの裁判所は事案を審理する管轄権を持たず、アメリカの目から見て住所が日本にあるからといって日本法を適用する事態は考えられないとして否定する見解がある。 

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