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(14)国家領域 I:領域主権と国家の構成【国際法】

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国際法解説シリーズ、国家領域その1。この記事では、領域主権及び国家領域の構成についてまとめました。領土取得権限及び領土紛争解決ついては第二部・第三部でまとめています。

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領域主権の法概念 

国家領域とは、国家主権の及ぶ範囲の空間を指すが、この立体的空間に及ぶ国家の権限を特に領域主権(territoril sovereignty)と呼ぶ。領域主権は以下のような特徴を有する。

  1. 立体性:領土・領海・領空で構成
  2. 包括性:当該地域における人・物・事象を支配
  3. 排他性:領域主権の結果として他の国家に対して排他的に主張が可能

法的性質

国家領域の法的性質をどのように捉えるべきか、学説は所有権説と権限説に分かれる。

(1)所有権説 dominium(客観説)
  • 私人と同様に国家がその領土を自由に使用し処分する権利、すなわち所有権に類する権利を有するとする立場。 
  • ローマ法から近世の絶対王政時代の家産制時代の支配的考えであり、国家の領土は世襲財産とする。
(2)権限説 imperium(支配権説)
  • 領土主権とはその領域内の人と物に対する支配権そのものを意味する。
  • 支配権説は有力であるが、「割譲」という現状がある以上、所有権という考えも排除できないため、今日では両説が包括的に認められる。

判例パルマス島事件仲裁判決:(国家主権は)国家間の関係においては独立を意味する。地球上の一部に関わる独立は、他国を排除して、そこに国家の機能を行使する権利である。

国家領域の不可侵

  • 領土保全原則(territorial integrity):伝統的には、領域国の意に反してその領土を武力的に奪取されないことを意味。ex.1815年の議定書におけるスイスの永世中立とその領土保全クリミア戦争後のトルコ
  • 20世紀以降、連盟規約や国連憲章が「領土保全と政治的独立」を標榜、武力不行使原則とともに確認、その後、植民地独立付与宣言や友好関係原則宣言等で言及、一般国際法化。
  • 国際司法裁判所(ICJ)は、ニカラグア事件において、領域主権尊重の原則の効果は、武力不行使原則と不干渉原則と不可避的に重なると判示。
  • 人民の自決権との関係:特に植民地の人民が自決権を行使して独立する場合、施政国の領土保全の侵害を構成しないものと解するべき。 

判例ケベック分離事件:植民地人民及び外国の姿勢下にある人民あるいは内的自決を否定された人民は分離権を有する。 

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領域管理責任の原則

  • 国家は、自国領域において排他的な領域主権を持つと同時に、自国の主権行使によって他国の権利を害してはならないという責任(領域管理責任を負う。この原則の違反は、国家責任を構成。
  • 「他人のものを害さないように自己のものを使用せよ」の命題に由来する義務であり、国内法の相隣関係の法理のアナロジーとして考えられる。
  • 古典的には、自国領域内における外国人保護(領域内における他国の権利保護)や大気汚染などの越境損害(自国領域外における他国の権利保護)の問題。
  • 近年では、自国領域内における武装勢力(テロリストなど)による他国に対する越境攻撃を防止する義務に発展。
  • しかし、その義務の懈怠ないし履行不能という不作為は、当該武装勢力の行為を国家に帰属させるかという問題について、ICJは、管理不能というだけでは領域国家に帰属しないと判示コンゴ領域における軍事活動事件)

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(1)領域国内にある他国の権利侵害
  1. 人による侵害:外国人を相当な注意(due diligence)をもって保護する責任
  2. 物による侵害:他国を侵害する危険を了知している場合に必要な措置をとる責任
  • パルマス島事件(1928年)では、領域主権はそのコロラリーとして、領域内において他国の権利を保護する義務があるとした。
  • コルフ海峡事件(1946年)では、他国の権利を侵害する行為のために自国の領域を使用させてはならないというすべての国の義務の存在を指摘し、アルバニアの責任を認める。

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(2)領域国外における他国の権利侵害
  • 元来は、自国領域内の外国ないし外国人の権益を保護の対象とするものであったが、近年では、領域外の外国権益の侵害を防止すべき原則として発展し、かつ、その侵害行為が私人や企業によるものであっても国家の管理責任を生じせしめる原則へと発展。
  • さらに、環境損害に関する独自の法原則へ(1972年ストックホルム人間環境宣言原則21→1992年リオ宣言原則2)

判例】トレイル溶鉱所事件仲裁判決(1941年):いかなる国も他国に重大な結果をもたらす形で自国の領域を使用したりその使用を許容する権利を有しない。

国家領域の構成

  • 特定の国の領域主権の及ぶ国家領域は、領土とそれに付随する領水(領海と内水)、及びそれらの上部の領空から構成
  • これに対し、いずれの主権または領有にも服さない国際公域として、公海、公海上空、深海底南極大陸、宇宙空間などがある。

cf.国際化区域:国家領域のうちで特に国際的利用に供された特別の法的地位を持つ区域。

領土

  • 国家領域の中核であり、国家の存立要件。
  • 割譲すれば、それに付随して領海と領空も移転、領土に対する領域主権は排他的かつ包括的性質。
  • 国際法上の制限として、主権免除、外交特権など。

領水

内水(internal water)と領海(territorial sea)を合わせた水域。後者につき、外国船舶の無害通航権が認められるという違い(別記事参照)

領空

第一次世界大戦後、航空国際条約は、「すべての国はその領域上の空間において完全かつ排他的な主権を有する」とし、1944年のシカゴ国際民間航空条約(ICAO条約)でも確認。

  • 水平的限界:領土ないし領域の外側の限界
  • 垂直的限界:争いあり。実効的支配説、地球引力説、大気圏説、航空機揚力説、人工衛星最低軌道説など。

cf.1967年宇宙条約は宇宙空間に対する「主権の主張」を禁止、そこでの活動の自由を求める

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