旅
「こんなお堅い仕事してますけどね、本当は、自分のことなんて誰も知らないような外国の街に飛び出して、肩で風をきって通りを歩いてみたい、なんて思っているんですよ」と彼はいかにも照れ臭そうに言った。彼の小さい目が更に小さくなって、ついには見えな…
「ここで次のバスに乗り換えればいい」首都ティラナから石の街ジロカストラへと向かう途中、交差点のど真ん中で降ろされる。交差点といっても、未舗装の道が文字通り交差しているだけで、バス停のようなものも見当たらない。何の標識もない。誰かに道を聞こ…
ようやく宿に戻ると、見慣れない日本人の女の子が二人、パティオの席に座って談笑していた。足元には大きな荷物置かれていた。昨日は見かけなかったから、ついさっき到着して一息というところなのだろう。 僕は軽く会釈して、彼女たちの前を横切った。オラ、…
2023年夏。 久々に一人旅に出た。 行き先は、14年前に家族で行った、香港。 張り出した漢字の看板がなんだか物珍しくて見上げるたびに写真を撮ってしまう。 どことなく懐かしくてノスタルジックなフィルム調の写真によく合う街並み。 東京に負けず劣ら…
僕はいつか自分の言葉で語らなければならないと思う。イスラエルのことを。パレスチナのことを。正義について。弱者について。 自分がこの目で見たことを、肌で感じたことを、ありのままに語らなければならないと思う。できる限りバイアスを排除して。主張の…
「君、いい靴を履いているね」 コルカタの雑踏の中でふと足を止めたとき、後ろから二人組の若いインド人の青年に声をかけられた。インドの町中で声をかけられるのにはもう慣れっこだったし(大抵何らかのトラブルに見舞われることになるのだが)、その日は特…
砂山に足を埋めながら、尾根を一歩一歩進んでいく。結構な高さがあるけれど、不思議と怖さはない。落ちても大した怪我はないだろうとたかをくくっているからだろうか。額に汗がにじむ。 日陰の側の砂にそっと素足をつけてみる。同じ砂とは思えないくらい冷ん…
聞き慣れたアラームで目が覚める。午前5時。凍えるように寒い。ぱちぱちと雨粒が車体に当たる音が聞こえる。 窓から外を覗くと焚き火はすっかり冷たい灰へと姿を変えていた。車の中で身を屈めて寝ていたせいで体の節々が軋む。このままもう二度と朝はやって…
初めてのニューオーリンズなんだけど、どこに行けばいいんだろう、と僕は言った。バーボン・ストリートにひっそりと佇む年季の入った小さなバー。一面の鏡と端正に並んだ酒瓶を背にカウンターに立つ往年のバーテンの姿は、昔、教科書で見たマネの絵画をどこ…
とにかく眠い。もう5時間くらい運転し続けている。さすがに小曽根真のピアノも聞き飽きてくる。 アイスランドという国には公共交通機関という概念がないようだった。観光するにはツアーに参加するか、車を借りて自力で周るかになる(そしてもちろん僕は後者…
シーラーズのホステルに着いたのは早朝だった。さすがにチェックインにはまだ早い。宿には開放的なテラスになったレストランが併設されている。朝食の席には先客がいた。 「息子に勧められてね、1ヶ月間イランを旅することにしたの」とクリスは言った。よく…
外を自由に出歩けない街というのは、サンサルバドルが初めてだった。もちろん、危険を顧みずに動き回ることだってできたかもしれない。でも、良くも悪くも僕はもう昔みたいに眩しいくらいの根拠のない自信に満ちた若干20歳の無鉄砲な旅人ではなかったし、…
「廃墟の教会が見えてきたら、その窓から外に出るのよ。そうしたら帰りはちゃんと城壁を辿って帰ってこれるから」と彼女は言った。そこに必要な情報が欠けているのは明らかだったけれど、彼女のそのどこか預言じみた断定的な口調は、それ以上僕が質問するの…
「鏡の中に見えるものは、実際はより近くにあることがあります」 ふと目に入ったサイドミラーにはそう書いてあった。事故を防止するための注意書きなのだろうけれど、なんだかそれは深遠な哲学的命題のように響いた。もう何日も同じ車に乗っているのに、どう…
モスクワからサンクトペテルブルクまでやってきたら、次にどこへ向かうか。フェリーで数時間かけて北欧へ抜けるか、国際バスでバルト三国に下るか、という2つの選択肢がある。ロシアで出会った多くの旅人は前者を選んだ。後者を選ぶのはなかなか渋いという…
15時にウユニ村を出発した3台のバンは、途中で塩工場の町(みたいな名前だったと思う)に立ち寄って、夕暮れ前のまだ明るいうちに塩湖に到着した。思えばずっとこの時を待っていたのだ。鏡に映したような果てしない大地の広がり。湖面に反映する青空と白…
森を抜けて湖に出る。 さすがスロベニア随一の観光地というだけあって、ブレッドの湖畔の一帯にはホテルやレストランが所狭しと立ち並んでいた。それでも観光客で賑わう人気のリゾート地というよりも、由緒正しき避暑地といった落ち着いた風情で、その一帯を…
巨大なハリケーンから逃れるために、グレイハウンド(アメリカ南部ではほぼ唯一の長距離バスだ。ビリー・ジョエルの昔の曲に出てくる)で、ノース・カロライナからジョージアのアトランタ、それからテネシーのナッシュビルへと向かった。ちょうど大学院の授…
イベリア半島からジブラルタル海峡を渡ってモロッコへと抜ける。当初の予定なら、もうとっくに次の目的地であるシャウエンに到着しているはずだった。どれくらいバスは山中で立ち往生しているのだろう。随分と小雨にはなったけれど、濁流がどこからともなく…
バックパッカー時代、旅先では基本的にタクシーは避けるようにしていたのだけれど、たまにどうしてもタクシーを利用せざるを得ないような時があった。それも、よりにもよってカンボジアとかインドとかの途上国で、絶対に流しのタクシーなんかに乗りたくない…
どういう経緯だったのか忘れてしまったけれど、ブカレストからドラキュラ城のあるブランへ向かう途中、ブラショフという小さな町に立ち寄った。山に囲まれた古い町だった。名前こそよく知られていないものの、中世の町並みを今に残す美しい町で、ルーマニア…
アルバニアの港町サランダは、前評判に及ばずどこか面白味の欠いた、どちらかといえばつまらない町だった。イオニア海に面したリゾート地とは銘打っているけれど、美しい海ならクロアチアやモンテネグロで散々堪能したし、風光明媚な景色を楽しむにしてはあ…
あの夜、僕らが経験した出来事は、果たして本当に風の仕業だったのか、今となってはうまく確信が持てない。 それは確かに砂利土を踏みしめる足音のように聞こえたし、実際に何者かがざわざわとテントの内室を外から揺らしていたように思えた。けれど、考えれ…
Atlanta, GA Sseptember 13th, 2018 とある有名な米ドラマに出てくるワンシーン。一応見ておこうと郊外を彷徨う。 Georgia Peach ノースカロライナからバスで何時間もかけてたどり着いたアトランタ。 高層ビルに囲まれて、やっと南部の中心まで来たという感…
Nashville, TN September 14th, 2018 Nashville's iconic 'Batman Building' or should I say Cat Tower? バットマンビルとも呼ばれるナッシュビルのシンボル。猫のように見えなくもない。 Since Hurricane Florence was approaching, I was runnig to the W…
Chicago, IL August 16th, 2019 Chicago is definitely the home of modern skyscrapers. 僕にとって摩天楼といえば、ニューヨークではなく、シカゴだった。 The Chicago Teathre / シカゴ劇場 Trump International Hotel & Tower Chicago / トランプタワー…
New Orleans, LA November 25th, 2018 An iconic view of red trams and palm trees along the street. 赤いトラムと立ち並ぶ椰子の木は、紛れもなくこの町のシンボルだ。 French Quarte The district lingering of French colonial past. フランス植民地時…
丘の上に築かれた白い街に向かって 剥き出しの山肌をひたすらに登っていると いかにもその街は 僕という存在を拒んでいるかのように思われた その街は外敵から身を守るために ー渇ききった旅人の感受性をただ癒すためではなくー 海賊の襲来に備えるために建…
米国留学時代、何度か一人旅を経験しましたが、アメリカは一人旅(少なくとも従来型のバックパッカー旅)には向かないと思います。その理由について書いていきたいと思います(と思ってだいぶ前からこの下書きを温めていたらこのコロナで旅行どころではなく…
このブログの記事タイトルに使っている写真の一覧です。ほぼ自分用。順不同。随時更新 。なんかもうちょっと洗練された形で表示できないものかと思ったり。これを足掛かりに旅の記事とか写真の記事とか書いてみたい今日この頃。 北米 中南米 アジア ヨーロッ…