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(7)条約法 II:留保制度【国際法】

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国際法解説シリーズ、条約法その2です。この記事は、条約法条約上の留保に関する規定についてまとめています。

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条約の留保

  • 留保(reservation):条約の署名ないし批准の際、「条約の特定の規定の自国への適用上その法的効果を排除又は変更すること」を意図して行う国家の単独の声明(2条(d)) 
  • 多数国間条約において、一部の国が国内事情等により特定の条文の受け入れを困難視する場合、留保を認めることでその国の条約への参加を促進することができる。条約の普遍性の実現。
  • 留保制度は2つの相異なる要請:普遍性(広範な締約国の確保)と一体性の確保を図るものでなければならない。

保制度の歴史的意義と経緯

19世紀末、奴隷取引禁止のブリュッセル一般議定書に対するフランスの留保(「部分的批准」)。その後、2度のハーグ平和会議で一般化。

(1)連盟慣行

全会一致の原則」により、他のすべての締約国の受諾を必要とする。一カ国でも反対すれば条約の締約国とはなり得ない。一体性重視。

(2)汎米慣行

一部の締約国の反対があっても、留保受諾国との間では留保規定の部分を除いて条約関係が成立するものとし、反対国とのあいだでは条約関係が成立しないとする方式。普遍性重視。 

(3)両立性の基準

当該留保につき条約目的との両立性に異議を唱えない締約国との間では条約関係が成立し、他方、異議申立て国との関係では留保国は締約国とはみなされない。

判例ジェノサイド条約留保事件(ICJ、1951年)「当該条約の目的等を勘案しつつ、ささやかな留保に対する異議により諸国家が本条約の枠外に置かれることも、また多数の締約国確保のために条約の趣旨が犠牲にされることも認められない」とし、それゆえ、「当該留保と条約の趣旨及び相性との両立性」にこそ、留保を付す際のまたこれを異議する際の「基準」になるとした。

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条約法条約の留保制度 

  • 留保の許容性(permissibility):いかなる場合に留保を付すことができるか。①当該条約が留保を禁止している場合、②条約が当該留保を含まない特定の留保のみを認めている場合、③条約に定めがないとき、当該留保が条約の趣旨目的と両立しない場合(19条)
  • 留保の受諾及び留保に対する異議(objection)(20条):条約が留保を明示的に認めている場合は、別段の定めがない限り受諾を要しない(同①)留保国と受諾国との間では条約関係が成立、留保にかかわる規定は「留保の限度において変更」される(21条①a)
  • 留保国と異議申立国との間では「条約の効力発生が妨げられることはない」としつつ、かつ留保にかかわる規定は「留保の限度において適用がない」(21条3) 
  • ただし、締約国としての地位を認めない旨の「別段の意図を明確に表明する場合」は留保国との間では成立しない(20条4b) 
  • 両立性の判断:個々の締約国が判断。特に人権条約で問題 ex.自由権規約6・7条に対するアメリカの留保、ジェノサイド条約の管轄権規定、人種差別撤廃条約の規定(締約国の少なくとも3分2の異議があるときは両立しないものとする)
  • 留保の相互主義:留保国以外の締約国も、留保国との関係においては、当該留保規定に拘束されることはない。

人権条約と留保

人権条約には条約法上の留保制度を全面的に適用するべきではないとする学説。

  1. 相互性の欠如:自国の管轄下にある個人に対して義務を負うのであるから、国家間の義務の相互性が働かない。
  2. 実施機関の存在:人権条約は履行監視制度を含んでいるため、これらの実施機関が留保の許容性を一元的に判断することが可能。

判例ベリロス事件(欧州人権裁):留保の有効性に関する判断権を確認しつつ、スイスの留保を無効とした(ただし無効とされた留保の効果については不明)

判例自由権規約委員会一般的意見24(1994):国際人権規約は「個人の権利付与」に関わる条約であり、国家は他国の留保に法的利害を持つことが乏しく、よってその問題は委員会が判断するほかない=人権条約の留保の許容性は実施機関にあるとする宣言。→これに対して、英・米・仏は締約国に判断権があるとして反対意見。

判例ロウル・ケネディー事件自由権規約委員会、1994年):同意見に基づき、留保の許容性を判断、個人通報制度に対する留保が議定書の趣旨及び目的と両立しないとして、無効とする→トリニダード・トバゴは議定書を廃棄(留保が受諾されなければ議定書に参加しなかったと考えられるな場合にも、議定書に拘束されるのかという反対意見)

解釈宣言の取り扱い

  • 解釈宣言(interpretative declaration):条約規定の意味内容を特定化するために、条約の署名または批准の際に付される。条約の法的効果を排除変更するものであってはならなず、この場合は「留保」みなされる(条約法2条1d)
  • 英仏大陸棚事件(1977年):フランスが大陸棚条約6条に付した条件は、「留保」か「解釈宣言」かの判断につき、「解釈の要素を持つものの、単なる解釈を越え、条約規定の法的効果を変更する意図を有するものである」→しかし、依然としてその基準は曖昧で、個々のケースによって判断。 

日本による留保

 (a) 人種的優劣又は憎悪に基づく思想のあらゆる流布、人種差別の扇動、いかなる人種若しくは皮膚の色若しくは種族的出身を異にする人の集団に対するものであるかを問わず、すべての暴力行為又はその行為の扇動、及び人種主義に基づく活動に対する資金援助の提供も『法律で処罰すべき犯罪』であることを宣言すること」
 (b) 人種差別を助長し及び扇動するその他のすべての宣言・活動を『違法である』として禁止するものとし、このような団体又は活動への参加が、『法律で処罰すべき犯罪』であることを認めること。
  • 児童の権利条約37条(c):国内制度上20歳以上と未満で分離
自由を奪われたすべての児童は、人道的に、人間の固有の尊厳を尊重して、かつ、その年齢の者の必要を考慮した方法で取り扱われること。特に、自由を奪われたすべての児童は、成人とは分離されないことがその最善の利益であると認められない限り成人とは分離されるものとし、例外的な事情がある場合を除くほか、通信及び訪問を通じてその家族との接触を維持する権利を有すること。」 

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