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(11)国家 II:政府承認と国家承継【国際法】

国際法解説シリーズ、国家編その2。この記事では、政府承認と国家承継についてまとめています。国家承認については国家の第一部でまとめています。

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 政府承認

  • 本来は国内事項で国際社会の関知するところではないが、事実上2つの政権が存在する場合、いずれの政権を正統とするかにつき政府承認が問題となる。
  • 国家同一性の原則:一国内での政府や統治者の変更は国家としての同一性に影響を与えない(グロティウス・ヴァッテル時代からの伝統的原則)

政府承認の要件

実効性の原則

新政府が当該国において実行的支配を確立すること。新国家がいかなる政体をとるかは当該国の主権的事項であり他国がこれに介入すべきでないという考え方。

正統主義(legitimism)

19世紀、神聖同盟による君主的正統主義、20世紀前半期は中南米による立憲的正統主義=トバール主義。ただし広い支持を得たわけではない。

実効性原則の限界ー不承認主義の台頭

ハイチとシエラレオネにおける不承認:軍事クーデタによる政権に対し地域的機構・国連が不承認策をとる=伝統的な実効性原則の排除

政府承認廃止論

  • エストラーダ主義(メキシコ外相、1930年):政府承認は外国の批判や内政介入を許すことになる懸念。戦後、英米も転換し、外交関係を持つかの実務的判断に留めることとした。
  • 承認回避の理由:内政干渉の防止、政策是認の回避、外交的処理の柔軟性。一方で、2つの政権の正統性を競い合っている場合は意義を有する。cf. ベラルーシのルカシェンコ政権、ベネズエラのマドゥーロ政権など、大統領選挙に不正の疑義がある場合の対応。

国家承継

国家承継は、新国家の成立あるいは国家領域の一部の他国への移転があるとき、先行国(predecessor states)が有する国際法上の権利義務、法制度、あるいは国家財産や債務等を承継国(successor state)が引き継ぐことをいう。

伝統的区分

(1)包括承継

国家の合併・結合・併合、分裂(merger, unification, annexation, dismemberment, division)先行国が消滅。

(2)部分承継(割譲、分離独立)

条約承継条約における形態:領域の一部移転、新独立国および国家の結合および分離 

cf.ソ連崩壊は「分離」であると解される。ロシアがソ連の地位を引き継ぐ継続国家として国際的に確認。旧ソ連国は分離。バルトは「主権の回復」

国家承継法の特質

  • 国家承継法は明確化されていない領域のひとつ。特に日常的に生起するものではなく、また個別具体的な処理をされてきたため。国際法委員会(ILC)は法典化するも締約国は少ない。
  • 条約承継条約(1978年)と「国家財産、公文書および債務の国家承継に関するウィーン条約」(1983年)、「国家承継との関連における自然人の国籍に関する条文草案」(1999年)などの諸条約あり。

条約の承継

(1)条約関係継続性の原則(principle of continuity of treaty relations)

個人の相続と同様に包括的に条約関係を承継するとする原則

(2)クリーン・スレート原則(clearn slate rule)

新独立国の場合、先行国が締結していた条約を承継するか否かは白紙の状態で出発すべきとする原則

(3)承継形態と条約承継
  • 領域の一部移転:当該地域には承継国の条約が全面的に適用(条約承継条約15条、以下同じ)条約境界移動の原則=譲受国の条約適用範囲が拡大する。cf.西ドイツによる東ドイツの吸収併合
  • 国家の結合:別段の合意がある場合を除いて、いずれの先行国の条約も引き続き効力を有する(31条)
  • 複数の国への分裂:先行国の全領域について効力を有するいかなる条約も、そのように構成された各承継国につき引き続き効力を有する(34条①)このような自動承継化の規定につき、国家実行にそぐわないとする見解 cf.ガブチコボ・ナジマロシュ事件
  • 分離:植民地独立の場合とは区別して、継続性の原則を適用。しかし、このような区別は伝統的にはされてこなかったのであり、慣習法化には疑問。
  • 新独立国:分離や結合によって成立する国家と区別され、承継発生前に「先行国がその国際関係上の責任を負う従属地域」はクリーン・スレート原則が適用。具体的には、①自動承継義務の免除と②条約参加の選択の自由を保障。以前に新独立国の領域に適用されていた多数国条約について「承継の通告」が可能(17条)

cf.境界と領域的制度の承継:クリーン・スレート原則の例外。条約によって決定された境界および領域的制度は当該地域の割譲や新国家の成立があった場合でもそのまま承継(11条)根拠:①境界の安定性と確定性の確保、②自立的存在論=条約の運命とは独立に自身の法的存在を持つ ex.プレア・ビヘア事件

国家承継と国際機構

(1)先行国が消滅した場合

承継国は新国家となるので原則として加盟の手続が必要。ただし、結合の場合は柔軟に対応。

(2)先行国が存続している場合
  • 吸収の場合は問題なし。新独立国は加盟手続きが必要。分離した新国家も同様。
  • 継続国家の地位 :連邦が解体して旧構成国の一つが法的に旧連邦の国際的地位を引き継ぐ場合  cf.ソ連とユーゴ 
  • 継続国家は加盟申請が不要:学説上、客観的要素(国土・人口等地理的要因、首都機能の所在地、歴史的文化的)と主観的要素(他の承継国の同意・国際社会の一般的承認)で判断

政府機能の承継

  • 一般原則として、承継国の統治権憲法秩序に服する。 ex.香港返還と英中共同宣言(1984年)
  • 前政府の国家領域の一部に残存し、そこに実効的な統治を継続する場合:光華寮事件 

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