※国家公務員試験の択一試験用にまとめたものです。2015年度以降の法改正については反映されていません。
争議行為の意義
- 広く「業務の正常な運営を阻害する行為」
- 団体交渉の行き詰まりを打開して要求を実現させるために用いる圧力手段。
争議行為の当事者の拘束
(1)信義則
- 争議行為の開始は団体交渉拒否や要求拒否が前提。
- 手続として事前の予告が必要。
(2)武器対等の原則
争議行為の正当性
法的保護=正当な争議行為
- 刑事免責(労組1条2項):強要罪、威力業務妨害罪、住居侵入罪、公務執行妨害罪などが不成立。
- 民事免責(労組8条):債務不履行責任(415条)、不法行為責任(709条)の追求を受けない。
- 不利益取扱いからの保護:使用者の不法行為が成立し、損害賠償責任。
正当な争議行為によって取引先が損害を被ってもその第三者は争議行為を行った組合に対して責任追及はできない。
争議行為の正当性の基準:主体・目的・手続・態様
(1)労使の力バランスの確保
(2)要求事項が団交によって解決が図られれるべき事項であること
- 純粋政治ストや同情ストは違法(三菱重工長崎造船所事件)
- 経営者の追放は必ずしも正当な範囲を逸脱するものではない(大浜炭鉱事件)
- その非組合員の解雇の撤回を求めて争議行為をする場合では正当な争議行為といえる(高知新聞社事件)
(3)争議行為は、相手方の信義を損なわない方法で行われなければならない
- サボタージュは作業能率を低下させるという消極的手段にとどまる限り正当性が認められる。
- ピケッティング:平和的説得にとどまる限り正当性が認められる(朝日新聞社事件)スクラムを組んで大声で威圧は否定(書泉事件)
- 威力を用いて妨害した場合は、威力業務妨害罪が成立(羽幌炭鉱事件)
- 市電の発信を阻止したとしても直接暴力に訴えていない限り正当な行為である(札幌市労連事件)
- タクシー運行を業とする企業において当該自動車を労働者側の排他的支配下に置くことは正当な争議行為の範囲を逸脱(御国ハイヤー事件)
- ボイコットは同じく平和的説得は許容されるが、それが誹謗中傷に至れば正当性を失う(岩田屋事件)
- 職場占拠、生産管理(山田鋼業事件)、車両確保戦術には正当性は認めらない。
- 職場への滞留は、使用者の占有を排除せずに他の従業員の入構や就労を阻止しないようなものであれば正当性が認められる。
- 違法な争議行為に参加して含む状の規律に違反したものは懲戒責任を免れない(全逓東北地本事件)
- 精神病院の従業員の争議行為により、患者の治療に支障をきたす事態が発生したとしても、直ちに正当性の範囲を逸脱したものとはいえない(新潟精神病院事件)
争議行為と賃金
- ノーワーク・ノーペイの原則:賃金カットができるのは労務の不提供分に限らレル。賃金二分論は判例は明確に否定。
- 一部スト・部分ストにより就労不能となったスト不参加組合員の賃金請求・休業手当はともに認められない。
- ある組合のストにより就労不能になった他組合の従業員は賃金請求はできない=スト突入は帰責事由ではない。ただし休業手当の請求はできる。
使用者の争議対抗手段
- 組合が争議行為を開始しても使用者に操業停止の義務はない(非組合員や他組合員によって操業を継続できる)
- 継続するための対抗措置も取ることができ、これは威力業務妨害罪の保護対象となる(山陽電気軌道事件)
ロックアウト
- 争議の態様いかんによって労使の均衡が破れた場合には、使用者にそれを回復する手段が認められる=ロックアウト
- ロックアウトが使用者に認められる根拠は「衡平の原則」による(丸島水門事件)また、防御的ロックアウトのみ合法=予防的・攻撃的なロックアウトは違法
- ロックアウトの対象は、スト突入組合員とその支援者のみ 他組合員や非組合員に対して行うことは許されない。
- 使用者にも争議権が認められる場合:労働者の争議行為によりかえって労使間の勢力均衡が破れ、使用者側が著しく不利な圧力を受けるような場合(丸島水門事件)
組合活動
- 原則として時間外かつ事業所外。
- 就業時間中の活動は、就業規則・労働協約上に許容規定、慣行上の許容、使用者の承諾のある場合に限られる。
- 使用者は企業施設の利用を受忍する義務はなく、事業所内での組合活動は使用者の施設管理権に服する(国鉄札幌運営区事件)
- 就業時間中のリボン着用は職務専念義務に違反する(目黒電報電話局事件)
- 従業員用ロッカーへのビラ貼りも違法。