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(22)外交・領事関係法 I  外交関係条約・外交特権

f:id:hiro_autmn:20200521002657j:plainこの記事では、外交・領事関係法の前半、外交関係条約と外交特権についてまとめています。

 

外交使節制度の発展

  • 古代ギリシャ・ローマ:特定の目的のために派遣される特派使節。
  • 13世紀ヴェネツィア:常駐外交使節の制度。イタリアの各地に派遣。15世紀にはイタリア各都市国家、ウェストファリア以降一般化。
  • 18及び19世紀を通じて常駐使節制度は本格的な発展。国際関係の安定的発展のための制度の必要性が認識される。
【判例】在テヘラン米国大使館事件:「本制度は、数世紀の検証に耐え、国際社会における効果的協力のために、また諸国家の憲法・社会体制の相違にもかかわらず相互理解の達成と紛争の平和的解決に不可欠の仕組みであることを証明した」

外交関係法の特質

  • 外交関係法は慣習法として発展。明確化していたために法典化の検討対象。
  • 外交関係に関するウィーン条約(1961年):常駐使節を「外交使節団 diplomatic mission」とし、その設置、任務、構成、特権と免除を網羅的に規定。
  • 自己完結制度 self-contained regime:外交関係法は、実体法の規則のみならず、その違反に対する責任追及の法制度も一体的に含むため、原則として他の分野の国際法の規則に依存しない、それ自体で完結した制度であるとされる。 ex.ヨーロッパ人権条約システム
【判例】在テヘラン米国大使館事件:一方で使節団に与えられるべき便宜、特権、免除に関する接受国の権利義務を包括的に定めると同時に、他方でその違反や濫用に対処するための手段をも内包している。  

外交関係の開設と使節団の任務

  • 以前は常駐使節の交換によって外交関係を開設。外交関係条約では、両者を区別して、ともに合意による(2条)とする cf.国家承認も別制度
  • 19世紀・20世紀は、国家は使節を派遣する権利を持つものの、その義務を負っているわけではなかった。

使節団の構成とアグレマン

外交使節団(14条)
外交使節:
  1. 国の元首に対して派遣される大使 ambassador
  2. 国の元首に対して派遣される公使 minister
  3. 外務大臣に対して派遣される代理公使 charge d’affaires
使節団の職員:外交官の身分を有する外交職員と事務・技術職員
アグレマン(4条)
  • 派遣国は使節団の長として派遣するものについてあらかじめ接受国のアグレマン(Agrément
    )=(同意、承認)が与えられていることを確認しなければならない。
  • 伝統的に、国家は受け入れが困難とされる特定の使節について拒否できるという慣行。アグレマンの拒否については、その理由を示す義務を負わない。

使節団の任務

  • 伝統的には、交渉・保護・観察 negociar proteger observer
  • 条約は、①派遣国を代表すること、②派遣国及びその国民の保護、③接受国政府との交渉、④接受国の諸事情の観察と報告⑤接受国との友好・協力の促進(3条の①)を規定し、①につき、使節団の長は条約締結で全権委任状が不要(7条2)、②の保護利益は「国際法が認める範囲内」=内政干渉になることなく、外交的保護に従わなければならない、④の情報収集は「適法な手段」によらなければならない、ことを定める。
ペルソナ・ノン・グラータ persona non grate
  • 接受国はいつでも外交官がペルソナ・ノン・グラータであることを派遣国に対して通告することができる(9条)
  • 理由を示す必要はなく、その当否を争う手続きもない。
  • 通告を受けた派遣国はその者を本国に召還するか、または、使節団における任務を終了させるかいずれかの措置をとる。
  • 相当期間内になされない時は、接受国は「その者を使節団の構成員と認めることを拒否することができる」(9条2)

外交特権

外交官は様々な特権(privilege)と免除(immunity)を享有し,公館の不可侵と租税の免除を含めて外交特権という。

外交特権の根拠

(1)治外法権説 extraterritoriality theory
外交使節は実際上は接受国の領域内にありながら、法的には派遣国の領域内の存在と擬制。19世紀、グロティウス等。
(2)代表説 representative theory(威厳説)
外交使節は派遣国とその元首の威厳を代表するので、国家と元首に対するものと同じ、ないしそれにふさわしい特権が認められなければならない
 「権利や業務を代表させるだけでなく、その威厳、偉大性、および優位性をも使節に代表させている」ヴァッテル
 「使節の身体に対する侵害は、その者が代表する国家に対する侵害をなす」ブルンチュリ
(3)職務説 functional necessity theory
  • 使節、使節団の特権はその任務の効果的な遂行を確保するために認められたものとする。19世紀もっとも有力。
  • 「任務遂行のために施設が接受国当局から完全に独立していなければならないという必要性に由来する相互的実利に根拠」
  • 条約前文:特権免除の目的「国を代表する外交使節団の任務の能率的な遂行を確保することである」職務説を基本に代表説を加味

主要な外交特権

(1)公館の不可侵 inviolable 
  • 個人ではなく派遣国の特権。接受国の官憲は使節団の長の同意がある場合のほかはその建物・敷地内に立ち入ることができない(22条第1項)
  • 緊急時の立ち入り:公館の不可侵権は絶対的なものでないことは伝統的にも確認。これを認める見解も有力。cf. 領事関係条約では「領事機関の長の同意があったものとみなす」明文規定があったが、外交条約は沈黙。
  • 犯罪人の庇護:外交的庇護権 right of diplomatic asylum は近代においては一貫して否定されてきた。領域的庇護と区別、また、犯罪の性質を問わず外交的庇護は否定される。 ex.政治犯罪
【判例】庇護事件:外交的庇護の場合は避難者は犯罪を犯した領域内にあり、外交的庇護の供与はその国の主権の侵害を意味するそれは犯罪人をその領域国の裁判権から免れさせ、また当該国の排他的管轄事項に対する干渉を構成する。
  • 公館の保護義務:公館の保護や侵害の防止のため接受国は「適当なすべての措置をとる特別の責務を有する」(22条2)

【判例】在テヘラン米大使館事件:「侵害の完成に至る前にそれを防止ないし阻止する」義務であると同時に、万が一発生した場合は、「迅速な終了」と「現状の回復」をはかる義務を伴うものである、としてイランの義務違反を認定。
(2)身体の不可侵
  • 条約は不可侵権を確認し、「外交官はいかなる方法によっても抑留し又は拘禁することができない」とし、かつ、その侵害を防止するため、接受国は「すべての適当な措置を取らなければならない」とした(29条) 在テヘラン米大使館事件で違反認定。
  • ただし、必ずしも絶対的なものと解されてきたわけではない→一時的な拘禁は許されるとされる。正当防衛・犯罪の防止。
(3)裁判権の免除
  • 外交官は接受国の刑事裁判権から完全な免除を享有する(31条)=絶対的免除 cf.公務の遂行と無関係の私的行為にまで免除を認められるかは問題。
  • 民事・行政裁判権は制限にとどまる:①接受国領域内にある個人の不動産に関する訴訟 ②個人としての相続に関する訴訟 ③公の任務外で行う職業・商業活動に関する訴訟は免除されない。ただし、法令遵守義務(41条①) 法令に従う義務をも免ずるものではない。
  • 免除の放棄:以前は民事裁判権の放棄を認める見解が多数、その後裁判権全体に及ぶ。ただし、放棄は「明示的」になされなければならない(32条2)なお、裁判権の免除の放棄は、執行の免除の放棄を伴うものではない(32条4)免除の放棄を決定する権限は派遣国のみにあり個人ではない。大使等が放棄の権限を持つかは争い。

特権の濫用と範囲

  • 濫用に対しては、ペルソナ・ノン・グラータ、重大な場合は、外交関係の断絶。
  • 人的範囲:外交官の家族で世帯を共にするものは、そのものが接受国の国民でないときは外交官と同様の特権免除を有する(37条1)

特権の享有期間

  • 任務の開始時期:信任状を提出した時ないし自己の到着を外務省に通告し、信任状の写しを外務省に提出した時(13条)
  • 特権の享有開始時期:接受国の領域内に入った時ないし既に領域内にいるときは自己の任命が外務省に通告された時
  • 終了時期:接受国を去る時または去るために要する相当期間の経過後。
  • 消滅後も、そのものが「使節団の構成員として任務を遂行するにあたって行った行為についての裁判権からの免除」は引き続き存続(39条2) 任務遂行と無関係の行為は、刑事裁判権を含めて免除の存続を否認するもの 。

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