国際法解説シリーズ。この記事では、外交・領事関係法その2、領事関係条約と国家元首等の特権免除についてまとめました。
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領事制度の発展
- 中世の十字軍時代、地中海東方には商業都市の居留地を建設。領事は商人仲間の長として選任、商人相互の裁判や滞在国政府との交渉。
- 15世紀、ヨーロッパ相互国間でも普及。17、18世紀、主権国家体制のもと変貌。
- 領事は本国政府が直接任命し、相互主義、領域主権の原則のもと、領事裁判の制度が廃止( 中東ではcapitulationとして残る。)。外交使節制度の普及、資格権限が使節に移る。領事の役割は、自国の通商上の利益や自国民の保護に限定。
- 領事関係法は、慣習法として発展して外交関係法とは異なり、主として二国間の領事条約ないし通商航海条約により定められる。
- 共通する規定も相当に存在し、一般条約として「領事関係に関するウィーン条約」(1963年採択)が誕生。「国際法の法典化と漸進的発達」の両方を含む 「本条約は締約国間に効力を有する他の条約に「影響を及ぼすものではない」(73条)
領事関係の開設と領事機関の設置
- 相互の合意:外交関係の開設は特段の表明がない限り、領事関係の開設の同意を含むものとみなされる。もっとも、外交関係の断絶は当然に領事関係の断絶をもたらすものではない(2条)
- 領事機関は一定の管轄区域 consular districtを持つ。
- 領事機関の長(9条①):
- 総領事 counsel general
- 領事 consul
- 副領事 vice-council
- 代理領事 consular agent
- 外交使節と異なり、アグレマン制度はない。資格等を示した委任状 commission が派遣国から出され、これに対する接受国の認可状 exquatur が交付される。
- 本務領事と名誉領事:後者は、接受国の住民から選任・委嘱される。
領事の任務
【判例】ラグラン事件:逮捕・抑留されたドイツ国民が自国領事と連絡を取る権利(36条)が与えられないままアメリカで刑事裁判が進められたことが同条の違反をなす。もしこの権利が無視されたまま重罪が認定されるときはなんらかの形で裁判のやり直しの措置が取られるべきものとする。
領事特権
(1)公館の不可侵
公館長の同意がある場合を除いて接受国当局の立ち入りは認められない。ただし、火災等の緊急時には長の同意があったものとみなされる(31条)
(2)身体の不可侵と裁判権の免除
- 原則として抑留・拘禁されないが、重大な犯罪であって司法当局の決定がある場合は別(41条第1項)
- 裁判権については、「領事任務の遂行に当たって行った行為」に関して、事務技術職員を含めて接受国の裁判権から免除(43条第1項)
- 民事につき例外あり、刑事は任務遂行中のものであり限り全面的に免除(43条第2項)
- ペルソナ・ノン・グラータ制度あり
国家元首等の国際的地位
(1)国家元首の裁判権免除
1999年、英貴族院は免除を否定し、引渡を可とする
③この事項的免除については、拷問禁止条約のような普遍的管轄権の設定された国際犯罪は元首が遂行すべき「国家の任務」とは言えない。
(2)政府の長と外務大臣の地位
- 国際的には十分明確化されてこなかったが、少なくとも政府の長については元首と同様の取り扱いがなされるべきであるとされる。cf. 外交関係条約7条②
- 外務大臣は、慣例上、国家を代表して外国に赴くときは政府の長と同様にみなされてきた。
【判例】逮捕状事件(ベルギー対コンゴ民主共和国の現職の外務大臣):「外務大臣は、その職責の遂行という事実によって、元首や政府の長と同様に国際法上本国を代表する資格が認められ、よって在任中は「完全な刑事裁判権からの免除と不可侵権を享受する」のであって、この場合が公的・私的行為の区別は認められない。ただし、私的行為については退任後においてその免除を主張し得ない。
(3)外国軍隊の地位
(4)外国軍艦の地位
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