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(25)国際法における個人 II 犯罪人引き渡し

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国際法における個人に無理やり押し込んだ感がありますが、犯罪人の引き渡しについてまとめました。

 

犯罪人の引渡し

  • 犯罪人引き渡し(extradition)制度の発展:古代中世ローマ法から、グロティウスによる「引き渡すか、処罰するか」、ヴァッテルも同旨。フランス革命以後、政治犯は引渡しの対象から外れる。
  • 1833年ベルギー犯罪人引渡法→19世紀以降、法的枠組みが確立。
  • 条約によらない引渡しの義務性:
  1. 義務説:犯罪の防止 ex.ヴァッテル・グロティウス
  2. 非義務説:礼譲 comity説 領域固有の裁量「領域主権の通常の行使を意味する」(庇護事件)
  • ロッカビー事件(1998年)では安保理に基づく引渡しの義務性が争われたが、事件は取り下げ。
  • 19世紀以来、2国間条約の増加 ex.日米・日韓、相互主義を前提とした国内法。欧州犯罪人引渡条約(1957年)対象犯罪の明確化と義務化。

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引き渡しの基本原則

(1)双方可罰の原則 principle of double criminality
対象犯罪が請求国と被請求国の双方で可罰的であること(日米2条)相互主義と法治主義が背景。ピノチェト事件(1999年)によれば基準時は実行時。
(2)特定主義の原則 principle of speciality
請求国は引渡し前に行われた犯罪であって、被請求国によって引渡しが許諾された犯罪についてのみ訴追・処罰することができる(日米7条)
(3)政治犯不引渡しの原則 principle of extradition of political offenders
  • 思想的要因:自由主義的背景、政策的要因:他国の政争に介入しない配慮
  • 法的性格:今日では国際法上、確立した一般原則
  1. 非慣習法説=条約等で認められてきただけ オコンネル等
  2. 国家権能説=義務ではない ex.尹秀吉事件(東京高裁)
  3. 国家義務説 ex.同事件の東京地裁、ブルンチュリ
  • 偽装引渡し(disguised extradition)にも適用。同地裁「客観的にこれと同視すべき程度に処罰の確実性」
【判例】張振海事件(東高・平2):「一国の政治体制の変革を目的とし、あるいはその国家の内外政策に影響を与えることをも奥的とする行為であって、その国の刑罰法規に触れるもの」(政治犯の定義)
  • 相対的政治犯:政治秩序の侵害に伴う普通犯罪(殺人、放火など)との区別。同判旨によれば、①当該行為が真に政治目的を持つか、②客観的に政治目的の達成に直接関連しているか、③行為の内容、性質、結果の重大性が意図された目的に対比して均衡を失っていないか、の基準。
  • 例外:一般例外犯罪(①外国の元首とその家族に対する危害行為。ex. ベルギー条項=加害条項 attentat clause、②無政府主義的反社会行為)と条約上の例外犯罪 ジェノサイド、ハイジャック、アパルトヘイト等多様。
(4)自国民の不引渡し
  • 一般的慣行は存在せず、国家の裁量に委ねられている。

  • 大陸法系:自国民を保護する義務=国家の尊厳維持、自国での処罰可能性、他国裁判権の不信。

  • 英米法系:犯罪地国法定主義。①回復すべき法秩序は犯罪地国、②手続上の便宜。

不適切な引き渡しの効果

  • 犯罪人引き渡し条約が結ばれていない国家間においてしばしば不適切な方法により犯罪人の移送が行われるケース。ex. 誘拐(abduction)、誘導(luring)ただし、(事実を誤認していたとしても)自らの意思による場合はこれに当たらない。

  • アイヒマン事件では、イスラエルが、アルゼンチンで逃亡生活を送っていたかつてのナチス政権の将校アイヒマンを同地から連行。 人道に対する罪などによりイスラエルにおいて訴追。裁判所は、逮捕時の態様によらず裁判権行使可能とした(ただしアルゼンチン の国家主権に対する侵害は認定。)。

  • ニコリッチ事件(ICTY、2003年) では、戦争犯罪の嫌疑をかけられたセルビア人のニコリッチ司令官は、NATOにより誘拐の上、裁判所に連行。同司令官は、自らの意思に基づかない誘拐は国家主権の侵害であるとして、ICTYの管轄権を争った。これに対して、裁判所は以下の衡量基準を提示。

  1. 普遍的に非難される犯罪(universally condemned offenses)の迅速な裁判に対する国際社会の期待
  2. 領域国の主権の侵害(該当する場合)
  3. 被疑者の基本的権利の侵害

国際人権法の発展と引渡し

  • 死刑廃止条約は締約国が死刑存置国への犯罪人の引き渡しを実際上困難にしている。
  • 米加引渡し条約(1971年):請求国が死刑を課さないか、その執行を行わない旨の十分な保証が得られない場合は、請求国は引渡しを拒否しうる(6条)
【判例】ショート事件(オランダ、1990年):アメリカ軍人の引渡し義務に対して欧州人権条約第6議定書上の義務(死刑の廃止)を優先。 cf.2003年の米とEUの引渡し条約は拒否事由を確認
【判例】ゼーリング事件(欧州人権裁、1989年):死刑そのものではなく「死刑の順番待ち現象」に鑑みて、それが欧州人権条約「第3条:拷問等の禁止」の違反を引き起こすとした。 

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