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【国際法判例】ニカラグア事件(ICJ管轄権・受理可能性判決)

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国際法判例シリーズ。この記事では、ニカラグア事件のICJ管轄権・受理可能性判決についてまとめています。

【事件名】ニカラグア事件(Nicaragua Case)

【当事国】ニカラグア v. 米国 

【判決日】国際司法裁判所(ICJ)管轄権・受理可能性判決:1984年11月26日

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事実と経過

判決要旨

  1. 裁判所はICJ規程36条2項及び5項に基づいて、ニカラグアの請求を審理する管轄権を有する(11対5)
  2. 両国間の1956年条約24条に基づいて、同条約の解釈適用に関する紛争に関する請求を審理する管轄権を有する(14対2)
  3. ニカラグアの請求が受理可能であると裁定する(全員一致) 

管轄権 

(1)ニカラグアの管轄権の基礎に関する主張
  • 1929年にPCIJ規程の署名議定書に署名し、無期限の選択条項受諾宣言を行った。同宣言は、ICJ規程36条5項により規定する「なおも効力を有する宣言」にあたる。よって、同宣言はICJにおいても継続して効力を有する。
  • しかし、連盟事務局に同議定書の批准書を寄託した記録はなかった=PCIJの当事国ではなかった=同宣言は36条5項の適用がないのではないか。
  • 断旨:1929年の宣言には、「潜在的効力」があり、36条5項によってICJにおいても効力を有する。現行裁判所規程の起草者の主要な関心は、先行裁判所との最大限の継続性を確保することであり、規程36条5項は拘束力のなかった宣言をも含むと解する。
(2)米国の強制管轄権に対する通告:中米問題としての除外可能性

判旨:米国は1946年に選択条項受諾宣言に付した留保により、同通告は6ヶ月後に効力を有する。よって、ニカラグアの提訴時点ではその効力を有していなかったのであり義務を免れることはできない。

(3)ニカラグアの多数国間条約の援用に対する米国の主張
  • 米国は、同宣言で多数国間条約から生じた紛争を除外する留保を付しているにもかかわらず、ニカラグア国連憲章米州機構憲章など多数国間条約を援用した、と主張。
  • 判旨:ニカラグアは、多数国間条約の違反のみに限定せず、慣習国際法の原則を援用しており、単にこのことを持って請求を却下することはできない。
(4)1956年の米国との友好通商航海条約
  • ニカラグアは、申述書で1956年の米国との友好通商航海条約の違反を主張しており、これは管轄権の基礎とならないか。
  • 判旨:ニカラグアが提訴した事情や事実から同条約の解釈またはその適用に関する紛争が存在し、裁判所はその紛争を構成する範囲で管轄権を有する。  

受理可能性 

  • 米国の主張:進行中の武力紛争は裁判に馴染まず、政治的性格の強い紛争を司法判断の対象にすべきではない。
  • 判旨:ある問題が安保理に付託されているという事実は、その問題を裁判所が審理することを妨げない。また、進行中の武力紛争のため証拠収集に困難が伴うことは受理不能を意味しない。
  • ニカラグアの請求は紛争の平和的解決を目指すものであり、適切に機構の主要な司法機関に付託されている

経過

  • 米国は、1985年1月に、ICJ宛書簡において上記判決を批判するとともに、本案審理への不参加を表明。その後、米国の訴答書面及び口頭手続の弁論を欠くまま本案審理が進められ、判決が下された。

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