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(34)国際紛争の平和的解決 III 国際司法裁判所(ICJ)

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国際紛争の平和的解決その3です。国際司法裁判所制度についてまとめました。管轄権、先決的抗弁、仮保全措置、勧告的意見など国際法判例を読む上で欠かせないタームを扱っています。

 

国際司法裁判制度

  • 国際司法裁判所(ICJ)の地位:国連の「主要な機関」(7章)であるとともに「主要な司法機関」(92条) 
  • 裁判所規程は「この憲章と不可分の一体をなす」(92条)両者は一つの文書として読まれるべきもの。国連加盟国は当然に規程の当事国であり、規程の改正には憲章の手続きが必要(69条)
  • 一方で、非加盟国が規程の当事国となる手続きが存在(93条3)→裁判所の普遍化を図るための措置。 

裁判所の構成

  • 構成と資格:国連での選挙によって選出される15名の裁判官。裁判官は個人の資格で、国籍関係ないが、同一国籍が2名以上は不可。
  • 資格は自国で「最高の司法官」かあるいは「国際法に有能の名のある法律家」(2条)配分は「世界の主要文明・法系」が代表されるべき(9条)
  • 常任理事国の恒常的選出の慣例:アジア3・アフリカ3・ラ米2・東欧2・西欧その他5
  • 裁判官の選出手続:任期は9年であるが3年ごとに5名改選。常設仲裁裁判所の裁判官として任命した裁判官団が4名まで候補者を指名し、総会と安保理の絶対多数による承認。
  • 特任裁判官制度 judge ad hoc:15名の裁判官の中に自国籍がいない場合に当事国は指名可能(31条)自国の法的立場が正当に伝達されることで訴訟に参加しやすくする。一方で、裁判官は個人の資格のはずとの批判。

裁判管轄権 

  • 裁判管轄権 jurisdiction:裁判所が事件を受理し、審理し、拘束力ある判決を与える権限。管轄権の不存在が確認されるときは、裁判所はその請求を却下。
  • 同意原則:紛争当事国の合意により管轄権が設定。国家主権観念を重視した近代国際法の承継。

管轄権の存在形式

(1)付託協定

発生した特定の紛争を裁判所に付託するための協定(ICJ規程40条1「特別の合意」)紛争当事国双方が裁判に付することに合意した場合。ex.マンキエ・エクレオ、北海大陸棚、ガブチコヴォ、リギタン・シバタン

(2)応訴管轄

一方の当事国の提訴に対して相手国がのちに同意を与える場合。付託協定の場合と異なり双方の合意を提訴の時点で必要としない。コルフ海峡事件:同意の表明といった明示的方法による必要はない。近年では、コンゴ対フランス。

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(3)裁判条約・裁判条項
  • 裁判条約:ボコタ規約、欧州平和解決条約など裁判による国際紛争の最終的解決を義務付ける条約。
  • 裁判条項:ジェノサイド条約9条など、条約中において裁判に付することをできる要件について定めた条項であり、対象となる紛争は当該条約の解釈適用に関するものに限定。
  • これらの場合は、当該条約締結時点において合意があったとみなせるため提訴時において付託協定など新たな裁判の合意を必要としない。
(4)選択条項受諾宣言(ICJ規程36条2項 Optional Clause)
  • 裁判所の管轄権を「義務的」であると認める宣言をした国相互間で法律的紛争(a.条約の解釈、b.国際法上の問題、c.国際義務違反となる事実の存在、d.賠償の性質または範囲)につき裁判義務を創設。法的性質につき双務的合意説(ニカラグア事件)
  • ある国家は選択条項受諾宣言をしていない限り、ICJに管轄権はないため一方的に訴えられることはない(ただし、応訴管轄の場合を除く。)。
  • 留保の慣行:特定の種類の紛争を除外する留保が広く承認ー選択条項の受諾の促進。
  • 自己判断留保の問題:自国の判断により提起された紛争が国内管轄事項に属するかの決定権を留保するもの。
  • 留保の相互主義:提訴国が付した留保を被告側が援用して当該事件の管轄権を否定すること。 ex.ノルウェー公債事件
  • 宣言の期限:一定期間を付して行うことができる。ニカラグア事件では提訴の直前に「中米諸国の紛争」を除外したが、裁判所は信義則により無効とした。

訴訟手続

訴えの提起

裁判は訴えの提起をもって始まる(40条1)合意提訴と一方的提訴の二種類。いずれの場合も「紛争の主題」と「当事者」の記載。訴状の場合正確な請求内容と簡潔な事実と請求の根拠を記載。

審理手続

  • 書面手続と口頭手続:原告の申述書 Memorial と被告の答弁書 。要請があるときは原告は抗弁書 Reply及び被告の再抗弁書の提出を認めることができる(規則45)
  • 口頭手続は当事国の代理人、補佐人、弁護人あるいは証人等の意見聴取の手続 弁論の終結にあたっては最終申立(法廷での朗読と代理人の署名入りの書面)

付随手続 incidental proceedings 

本案の審理の遂行に伴って提起される当事国の諸種の申請の処理。本案判決前後で分類。

(1)先決的抗弁 preliminary objection
  • 本案の決定を阻止するために当事国の一方が提起する、裁判所の権限を否認する妨訴抗弁。①管轄権に対する抗弁と②請求の受理可能性に対する抗弁 ex.当事者適格
  • 先決的抗弁が提出されると本案手続は停止し、当該抗弁の認否の審理が開始。却下した場合は審理が再開。
  • 抗弁は申述書の提出後3ヶ月後以内に提出する必要(規則79条)本案の主張と併行して答弁書において管轄権・受理可能性抗弁を認める(逮捕状事件・アヴェナ事件)  
(2)仮保全措置 provisional measures
  • 裁判の主題をなす各当事国の権利を保全するために最終判決が下されるまでの間裁判所が指示する暫定的措置(規定41)本案判決の実効性を確保する目的。
  • 認容の要件:本案の結論とはかかわりなく当事国の行動を規制するため「例外的権限」として厳粛な要件のもとで認められなければならない。判例により形成。
  1. 本案管轄権の存在に蓋然性が認められること(蓋然性要件)
  2. 申請内容が請求主題をなす権利を保全するものであること(訴訟主題との連結性)
  3. 権利の保全のための緊急性:償い得ない損害 irreprable prejudice の存否
  •  効力:拘束力につき争い。ラグラン事件では、命令が「拘束力効力」を持ち、「法的義務」を創設すると判示。違反の効果はなお問題。コンゴ領軍事活動事件では違反を主文に明記したのみ。
  • 先決的抗弁と同時に出された場合、仮保全措置が優先。権利保全のの緊急性。
(3)訴訟参加
  • 許可方式(62条):裁判事件によって影響を受ける「法律的性質の利害関係」を持つ国が裁判所に参加の許可を求める制度。「明確な特定化」が必要 領土・島・海洋境界紛争事件
  • 自国の利害について裁判所の考慮に入れるべくする意見陳述型の参加(=当事国の地位なし)と自国の独自の請求を提起して決定を求める請求提起型参加=管轄権リンクが必要。
  • 権利方式(63条2):条約の解釈が問題となるときに当該条約の締約国がその裁判に「参加する権利 right to intervene」を持つもの。国際裁判に特有。締約国であるから利害関係あり。

判決

  • 裁判準則:条約、慣習国際法、法の一般原則、補助手段として判例と学説(38条1)「衡平及び善」によることもできるが実例なし。
  • 表決:評議は非公開かつ秘密(54条3)表決は賛否を投じ、棄権はゆるされない。可否同数の場合は裁判所長の決定投票
  • 少数意見:判決の結論に賛成するが理由を異にする場合の個別意見と結論そのものに反対する場合の反対意見。

判決の効力

  • 「当事者間において且つその特定の事件に関してのみ拘束力を有する(59条):先例拘束を否定 「判決は、終結とし、上訴を許さない」(60条)言い渡しとともに確定。
  • 既判力の肯定:判決の持つ拘束性と終結性。争いの終結による法関係の安定性の確保と蒸し返しの禁止による当事国の利益の確保(ジェノサイド条約適用事件、2007年)
  • 人的範囲:当事国のみ、第三国に及ばない。物的範囲:「主文 operative clause, dispostif)」理由も密接不可分であるとする有力説。

判決の解釈と再審

解釈
  • 「判決の意義または範囲」について争いがあるとき、いずれかの当事国の要請によって裁判所がこれを明らかにするための手続(規定60条)
  • 「主文と不可分である限り理由の判断も解釈の対象」(カメルーン・ナイジェリア)新たな論点の判断や原判決の変更を意図する請求は認められない ex.庇護事件の解釈請求
再審 revision
  • 決定的な重要性を持つ新事実の発見に基づいて判決の改変の要否を審査する手続。受理可能性審査と本案の審理手続(規定61条2・規則99条4)
  • 要件:「決定的要素となる性質を持つ事実の発見」と「判決時にその事実を知らなかったことにつき過失がないこと」「新事実の発見から6ヶ月以内に請求し、判決日から10年を経過していないこと」
  • チュニジア・リビア大陸棚事件判決及び領土・島・海洋境界紛争事件では「決定的要素」の存在が否定。主文の変更も不可避とする効果を持つものと解される。ジェノサイド条約適用事件では、新事実は「判決の言い渡しの時にすでに存在した事実」であるとした。

判決の履行確保

  • 当事国による不履行があった場合、他方の当事国は安保理に訴えることができ、「必要と認めるときは、判決を執行するために勧告をし、または取るべき措置を決定することができる」(94条2)
  • 第6章の勧告と第7章の強制措置とは異なる独自の権限とする自律説によると両者の発動要件の枠内で行使することを否認=平和の脅威の有無に関係なく判決の不履行という事実に基づいて措置を取ることができる
安保理措置の限界

措置や勧告は基本的に判決内容を変更するものであってはならない。「判決を執行するため」

表決手続

非手続事項=拒否権行使可能とするのが有力説。ニカラグア事件では94条で二度にわたり安保理に提起したがアメリカの拒否権行使で阻まれた。 

勧告的意見

  • 要請権者:総会と安保理のほか、総会の許可を得た一定の国連機関と専門機関に限られる(憲章96条)万国郵便連合を除くすべての専門機関
  • 事項的範囲:総会と安保理は「いかなる法律問題」についても可能(96条1)抽象的問題でも良い ex.核兵器使用の合法性事件
  • 総会と安保理以外の機関・機構は「その活動の範囲内において生ずる法律問題に限定される。

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裁判所の対応の基本的立場

意見付与には裁量性があるが、主要な司法機関として「原則として拒否するべきではない」(西サハラ事件、平和条約事件)とし、裁判所の協力義務がある。司法適合性の考慮に考際し「決定的事由」の有無により判断。

勧告的意見の効力

助言的性格を有するにすぎず拘束力を有しない(平和条約事件)個別条約により拘束力を持たせることは可能。 ex.国連特権免除条約 しかし、事実上の強制的裁判の効果。

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