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【国際法判例】ジェノサイド条約に対する留保事件(ICJ勧告的意見)

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国際法判例シリーズ。この記事では、ジェノサイド条約に対する留保事件のICJ勧告的意見についてまとめています。

 

【事件名】ジェノサイド条約に対する留保事件

【諮問機関】国連総会 

【決定日】国際司法裁判所(ICJ)勧告的意見 :1951年5月28日

 

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事実と経緯

  • 1948年12月9日、第3回国連総会は、総会決議260(III)により、ジェノサイド条約(集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約:the convention on the prevention and punishment of the crime of genocude)を採択し、署名を開放。
  • 同条約には留保規定はなかったが、旧ソ連等8カ国が国際司法裁判所(ICJ)の義務的管轄を定めた第9条を中心に留保を付した。これに対して一部の署名国が異議を申し立てたことを受けて、同条約の被寄託者たる国連事務総長は、この留保付き署名にいかなる法的効果を与えるべきかの指示を国連総会に求めた。
  • これに対し、国連総会は、決議478(V)により、ICJに以下の点につき勧告的意見を要請した。
  1. 留保を表明した国は、一部の条約当事国がその留保に異議を申し入れたのに対し、他の当事国は異議を申し入れなかった場合、その留保を維持したままで条約当事国とみなされるか。
  2. (1)が肯定的に答えられる場合、留保国と、留保異議国と留保承諾国との間でそれぞれ当該留保はいかなる効果は持つか。
  3. 留保に対する異議が、未批准の署名国及び未署名・未加入の国によって申し入れられた場合、その異議の法的効果はいかなるものか。

意見要旨

  • 第1の問題は、留保国は留保異議国との関係で、当該留保を維持したまま条約当事国とみなされるかというもの。国家は、その条約関係において、同意なしに拘束されず、留保も合意なければ他の当事国との関係で効果を持たない。これは確立した原則ではあるが、ジェノサイド条約においては柔軟に適用する余地がある。すなわち、国連総会の普遍的性格や同条約が広範な参加を求めていること、多数国間条約においては柔軟性が要請されていることなどの事情に言及する必要がある。
  • また、留保規定がないからといって留保が禁止されているとは結論できない。多数国間条約の性質、目的、作成と採択の方法は、留保の有効性、効果、可能性を決定するために考慮される。
  • 同条約は、国連総会によっても締約国によっても普遍的な範囲を持つ条約として意図された。また、同条約は人道的かつ文明的な目的のために採択された。このような条約では締約国自身の固有の利益を有せず、権利義務の契約上の均衡について語ることはできない。
  • 同条約の趣旨及び目的は、総会及び締約国の意図が、できるだけ多数の国々を参加させる点にあったことを示唆。他方で、参加国を確保するために条約の目的そのものを犠牲にすることを意図したとは考えられない。したがって、条約の趣旨及び目的は、留保を行う自由にも、それに異議を申し立てる自由にも限界を設ける。留保及びその異議の許容性の基準は当該留保と条約の趣旨及び目的との両立性である。(両立性の基準
  • 条約の絶対的な一体性の概念が国際法の規則になっているとは思われない。(国際連盟の留保の許容性につき全会一致を原則とする)行政慣行の存在は決定的な要素ではない。また、米州諸国では異なる慣習が存在している。したがって、第1の問題については、その抽象性のため絶対的な回答を与えることはできない。留保及びその異議に対する効果は個別事情に依存する。
  • 条約の当事国は留保の有効性を評価する権限があり、この権限を個別かつ独自の観点から行使する。すなわち、留保に異議を唱える国は、条約の趣旨及び目的という基準の枠内でその個別の評価に基づき、留保国を条約当事国としてみなすかどうかを判断する。

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