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(3)非関税障壁ー量的制限 GATT 第11条【国際経済法】

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国際経済法(WTO法)シリーズ第2段、非関税障壁のうちの量的制限に関するまとめです。英語で勉強したので日本語訳のおかしいところがあるかもしれません。

 

数量制限の一般的な廃止 General Elimination of Quantitative Restrictions とは

  • 原則としてGATT 第11条1項は、関税、税、課徴金 (duties, taxes or other charges)以外の輸入・輸出にかかる制限や禁止の禁止。制限・禁止の態様が割当 (quotas) であると、輸出入ライセンスであると、他の措置であるとを問わない。第11条2項は例外を定めている。
  • GATT法制上、数量制限は非関税障壁 (Non Tariff Barriers)として一般的に禁止。ただし供給不足物資に関する措置は大きな例外。また、輸出税に関しては禁止されていない(GATT第2条2項)ため、高税率の輸出税を課すことで事実上の輸出制限となり、制度上の抜け穴(loop hole)となる可能性はある。
  • さらに国際収支の擁護(第12条)及び低開発国の産業育成(第18条)のための例外の他、第20条による一般的例外規定が存在。

GATT 第11条1項

締約国は、他の締約国の領域の産品の輸入について、又は他の締約国の領域に仕向けられる産品の輸出若しくは輸出のための販売について、割当によると、輸入又は輸出の許可によると、その他の措置によるとを問わず、関税その他の課徴金以外のいかなる禁止又は制限も新設し、又は維持してはならない。

 GATT 第11条2項

(a) 輸出の禁止又は制限で、食糧その他輸出締約国にとつて不可欠の産品の危機的な不足を防止し、又は緩和するために一時的に課するもの

(b) 輸入及び輸出の禁止又は制限で、国際貿易における産品の分類、格付又は販売に関する基準又は規則の適用のために必要なもの

(c) 農業又は漁業の産品に対して輸入の形式のいかんを問わず課せられる輸入制限で、次のことを目的とする政府の措置の実施のために必要なもの(以下略) 

主要判例

L6309:日本ー半導体(1988年5月4日)

【事実・経緯】

  • 1980年代に日本の半導体の輸出が米国を上回ったことにより、米国はダンピング(不当廉売)調査を実施。交渉の結果、日米半導体協定を締結。
  • 同協定により、米国および第三国に輸出されるコストならびに輸出価格を監視、これにより半導体価格が上昇。EECは、反ダンピング措置は、輸入国産業に損害がある場合にのみ取りうるとして提訴。

【争点】

  • 第三国に対する監視措置は、輸出価格及び輸出数量を制限するものであり、GATT第11条に反する。

【パネル報告】

  • 一定以下の価格での輸出を制限することは、第11条における数量制限に該当する。
  • 第11条は、法律や規制に限定されずより広い措置について適用され、法的拘束力のない事実上(de facto)の量的制限も射程にある。
  • 非拘束的要請が、第11条上の措置となるには、①当該要請が実施されるのに十分なインセンティブがあると考えられる合理的な根拠が存在すること、②当該措置(企業に特有の費用を下回る価格での輸出)が政府の介入に本質的に依存していること。
D S155:アルゼンチンー皮革(2000年)

【事実】

  • アルゼンチンは、同国の皮革産業団体かに皮革等の輸出前段階の輸出通関代理の権限を付与。同団体は皮革を含む製品に関する手続規定を作成。
  • 同手続によると、積込前輸出検査に国内皮革産業関係者が臨席することとされ、実際の検査は国内皮革産業関係者が実施していた。

【争点】

  • EUは、国内皮革産業関係者が輸出の通関手続に臨席することが事実上の輸出制限に該当し、 GATT第10条3項 (a)、11条1項に違反する旨主張。

【パネル報告】

  • 当該措置は、公平的、かつ合理的に貿易に関する法、規則、その他の措置を実施しなければならないことを規定するGATT第10条3項 (a) に違反し、かつ輸出制限を規定した同手続規定がGATT 第11条の適用範囲となりうる(ただし、措置が第11条に違反するかどうかについては、 EUが国内皮革産業団体の税関手続における介在が同条に違反する旨の立証を行っていないとして違反を否定。)。
  • また、それ自体は直接には輸出制限ではないが、間接的に輸出制限の効果を持ちうる措置をGATT第11条に違反する。
D S438:アルゼンチンー輸入措置(2015年) 

【事実】

  • アルゼンチンは、貿易関連要求措置(TRRs)を含む輸入制限措置を実施。
  • TRRs は、輸入者等に、輸入するための条件をつけるものであり、これらの条件には、輸出入均衡要件、輸入量上限設定、送金制限、国内投資要求、ローカルコンテント要求が含まれていた。

【パネル報告】

  • 申立国は、違反の疑いのある措置について立証責任を負うが、本件のような明文の規定のない措置の場合は全てを証明しなくともよい。
  • 被申立国にも協力義務があり、拒否すれば不利な事実認定を受ける可能性がある。
  • 量的制限について、貿易量が実際に減少したことを立証する必要はなく、第11条は、輸入産品の競争機会を保護するものである。
D S366:コロンビアー輸出入港(2009年) 

【事実】

  • コロンビアは、織物及び衣料の輸入の通関港を26中11港に制限。中でもパナマと中国製品についてはボゴタ1港のみ認める措置となっていた。

【争点】

  • パナマは、GATT第11条違反、第1条(最恵国待遇)、コロンビアは、20条(d)による正当化を主張。

【パネル報告】

  • 入港規制措置は、第11条の「その他の措置」に該当する。
  • 第11条により禁止される措置は、量的制限のみではなく、不確実性を創出し投資計画に影響する措置、 輸入品の市場アクセスを制限する措置、輸入コストを禁止的に高額にする措置(=輸入者の競争的地位に影響を及ぼす措置)を含む。
  • 事実上の制限効果(貿易量の低下)は11条違反の認定には必要なく、制度の設計及び構造から判断可能である。

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