アメリカ生活も残りわずかとなってきましたが、実践的な英語の話。今回は、2年ほど前にアメリカにやってきた当初を思い出して書いてみたいと思います。題して挨拶編。挨拶というのは、一番初めに誰もが直面する場面ではあるにも関わらず、誰も教えてくれません。まあ、すぐに慣れてしまうからということかもしれませんが。
アメリカの挨拶と日本の挨拶
さて、旅行か留学か駐在か、ともかくあなたは念願のアメリカにやって来ました。すると、もちろん、誰かと会ったときには挨拶をします。レストランでもホテルでも、あるいは、道を歩いているだけでも、アメリカでは挨拶をします。
日本だったら、例えばお店とかだと、挨拶というよりも「いらっしゃいませ」と言われることが多いですね。この場合は特に何も返さなくても問題ありません。というかもともと返答を求められていません。
しかし、アメリカの場合は違います。"Hi, how are you?" と聞かれてだんまりではだめです。たとえそれが、スーパーのレジであっても、カフェのカウンターであっても、とりあえず何か声に出して(重要)返事をしないといけません。
とはいえ、日本語では、案外ちゃんと挨拶することって少ないような気がします。もちろん、こんにちは、と言うことはありますが、親しい仲の人だったり、知り合いに対しては、会釈とかだけ済ましたりすることも多いんじゃないでしょうか。
I'm fine, thank you. And you?
さて、まずは、中学の(年代によっては小学校の)英語の教科書を思い出してみましょう。ちょうど最初に出てくるフレーズです(あるいは "This is a pen."の次かもしれません。)。
"Hi, how are you?" ですね。では、それに対する返答はなんでしょう。
"I'm fine, thank you. And you?" じゃないでしょうか。僕は小学生の頃に通っていた地元の英会話教室でこれを呪文のように唱えていました。 今の教科書はどうなってるか分かりませんが、これだとナチュラルじゃない。もちろん、間違ってはいないのですが。
How are you? の意味
それはなぜかというと、実はこの "How are you?" には(少なくともアメリカ英語では)ほとんど意味がないからです。つまり、"Hi, how are you?" でワンフレーズです。このセットで「こんにちは」ということです。
アメリカに来て当初ありがちなのは、ああ自分の調子を聞かれてるんだと思って、真剣に答えを考えてしまって、"I'm tired" とか "I'm hungry"とか答えちゃうんですね(自分がそうでした。)。でもそんなことは実は聞かれてないんです。
How are you ? に対する答え方
じゃあ、なんと答えたらいいのか。これにはバリエーションがあります。
Good
まず、一番よく耳にするのは、"I'm good, how are you?" です。あるいは単に "Good" だけのことも多いです。
人によっては、他にも、 "Not bad" とか "Fine" とか "Doing well" とか "Can't complain"とか、いろいろ返し方があるかもしれませんが、大切なのは、ネガティブなことを言わないということです。
どんな時でも "Good" です。明らかに風邪を引いていて見るからに体調が悪くても "Good" です。いやいや全然 "Good" じゃないでしょ、とルームメイトに言ったら、アメリカではこうなんだよと言われました。誰も本当の調子なんか聞いていないんですね。
I'm okay
ただ、言うとすれば、"I'm okay" というのがあります。この "Okay" は "Okay"じゃありません(ややこしい。)。まあまあ、又はそれ以下といったニュアンスです。ちなみに日本人が(?)割とよく使う "so-so" というのはほぼ聞きません。
話はちょっと逸れますが、例えば、"How was your flight?" とか "How was your weekend?"と聞かれたときに(非常によく聞かれます)、"It's okay"と言ったりします。これもまあまあだったよ、ないし、悪くはなかったと言いたいときの答え方です。
さらに、"I'm okay" というのは、何かものを勧められたときに断るのにも使えます。
例えば、食事をしていて、「コーヒー要りますか?("You want some more coffee?")」と聞かれたときに、「大丈夫です、ありがとう("Ah, I'm okay, thank you.)」と答えることができます。
How are you?
"How are you?" の話に戻すと、実はこの疑問文に答えずに、"Hi how are you?" とそっくりそのままおうむ返しにすることも多いと思います。ちょっと変な感じがするかもしれませんが。
この場合、聞き返された方は、"Good" とか答えるわけです。最初に聞いた方は、特に答えが返ってこなくとも、別にこれは無視されたと感じることはないと思います。それくらい意味がないということですね。
その他の表現
ちなみに、"How are you?" 以外にも、"How are you doing?" とか "How's it going?" という表現もよく使います。これらは全部同じ意味です。それから久々に会った場合だと、"How have you been?" というのも使えます。
What's up?
"What's up?" は、事情とか状況を尋ねるときに使われます。どうかされましたか、くらいの意味です。ところが、これもまた "How are you?" と同義の場合もあります。文脈次第です。
"What's up?" の別の言い方に "What's good?" というのもあります(主にアフリカ系アメリカ人の間で使われている気がします。)。
さらに、これらがチャットだと、 "Was good" とか "Sup (what's up → wassup の略)"としてスラング化します。これらに対して(What's upも含む)は定型として "Not much" と答えることが多いです。奥深き What's upの世界。
双方向のコミュニケーションとしての挨拶
渡米してまもない頃、アメリカ人はなんて表層的(superfacial)なんだと思ってしまったものですが、少なくともそこに双方向コミュニケーションないし対話の可能性があるというのはいいことなんじゃないかと思うようになりました。日本だと一方通行のことが多いですしね。
でもこれはどっちが優れているという問題ではなく、日米間の文化的背景の相違によるものだと思っています。つまり、日本の場合は、アメリカのように人種・宗教・文化の多様性がない(あるいは同質性が高い)ために、「言わなくても分かる」文化なのだと思います。
それとは逆にアメリカは、その国民の多様性のために、常に己が何者であるのかを示し続けなければならないという、「言わなきゃ分からない」文化(もしかしたらもっとちゃんとした学術用語があるのかもしれない)なんじゃないかと思ったりします。そして、これは挨拶のみならず社会の随所に現れているような気がします。
その上で敢えて言えば、アメリカの場合、形だけでも "Good" と言った後に、何か他の話題につなげることができるというのはいいことじゃないかと思います。そこから新しい会話が始まることもよくあります。
例えば、最近ワシントンDCに行った際にスーパーのレジでこんな会話がありました。
"Hi, how are you doing?"
"Good. I just got in town(ちょうど着いたところなんだ)"
"Oh yeah, where're you from?(そう、どこから来たの?)"
"North Carolina(ノース・カロライナだけど)"
"Really! I'm from there, too. It' a small town in the mountains though(私もよ。と言っても山の方だけどね)"
自分から何か話しかけるのって気が引けますよね。でも、"How are you?" と聞かれた後だったらなんだか話しやすいようなそんな気がします。ちなみにアメリカではこういうレジ係(cashier)とのスモール・トークは割とよくあって、南部だとスモールどころか本腰を入れて話始めることもあるみたいです。(テキサス出身者談)
さて、挨拶編と銘打ったからには、別れ際の挨拶に着いても書こうと思ったのですが、意外にここまでで文量が埋まってしまったので、これくらいにします。また機会があれば "Have a good one!" の話も書きたいと思います。
それでは、Have a good one!
関連記事
hiro-autmn.hatenablog.comhiro-autmn.hatenablog.com