せっかくアメリカに住んでいるので、何か実際的な(practical)英語について書けないかと思っていました。陳腐(cliché)ですが、教科書に載っていないような英語。といっても、あんまりスラング(slang)ばかりに偏りすぎるのもよくないかなと思いました。
そこでとりあえず、今回は第一弾として恋愛関係の言葉について書いてみました。日本語から英語にしにくいもの、逆に英語にしかないような表現といったものを紹介したいと思います。
恋愛関係にある人も、そうでない人も、恋愛の話って古今東西を問わず(というか否応なく)話題になるトピックなので、覚えていて損はないはず。
日本語→英語
日本語ではよく使うけど、これって英語でなんていうのというのを集めてみました。
告白する
「告白する」という言葉は、日本語では割とよく使う言い方ですが、英語に直訳すれば、confess one's love になります。しかし、この言い方は間違いではないですがほぼ使いません。というのも、これは宗教上の意味合いが強く、特にキリスト教における信仰告白みたいに聞こえてしまいます。さらに、love 自体も神の愛(ギリシャ語のagape)をイメージさせます。
(1)好きだと言う
そこで、「告白する」に相当する特別の単語はないので、「好きだと言う」あるいは「恋人になりたいと言う」という意訳をします。例えば、「昨日、その子に告白された」と言いたい場合、Yesterday she said she liked/loved me とか、次の「恋人」を表す英語を使って、Yesterday she said she would like me to be her boyfriend と言ったりできます。
このように特定の言葉を英語でなんと言ったらいいかわからない場合、「告白する」→「好きだと言う」みたいに、記述的に(descrictive)表現するのは英語を上達させる上で重要なテクニックの一つです。
(2)プロポーズする
「告白する」と似たような言葉に「プロポーズする」というのがありますね。もちろん、これは英語の proposeからきていて、ちょっと堅い表現ですが求婚する(まさに日本語も堅いですね)という意味でも使われます。ということで、これも記述的に「結婚したいと言う」と意訳します。例えば、「プロポーズの言葉は何でしたか」と尋ねる場合だと、結婚する(get married)を使って How did you tell him/her you want to get married? と言えますね。
恋人
恋人という言葉を直訳すれば、lover ですが、これもほぼ使われません。多くの場合、日本語と同じく彼氏あるいは彼女(boyfriend/girlfriend)が使われます(チャットとかだと、bf/gf と短縮して書いたりもします。)。
ジェンダーレスな表現を使う
ただし、LGBTなど多様な性のあり方が認められつつある現代においては、性差に基づかない呼び方が好ましいとされる場合もあります。例えば、日本語だと「恋人」という言葉は、男女問わず使えてしまうので便利ですね。「恋人いるの?」という質問は、個人の性的指向(sexual orientation)に配慮した尋ね方だと言えます。
この観点から、最近では、パートナー(partner)という言葉もよく耳にします。他にも、ちょっと堅苦しい言い方ではありますが、significant other(大切な人というニュアンスでしょうか) という言い方があります。例えば、最近僕が目にしたものだと、パーティーの招待状(invitation)に significant other も連れてきていいよ、と書かれていました。
もう少しフォーマルな文脈で、かつ、既婚のカップル(married couple)の場合、spouse (配偶者)というのも使えます。これも夫/妻(husband/wife)という呼称とは違ってジェンダーが入らない言い方ですね。
付き合う
誰かとお付き合いするというのを英語で表現するのも難しい。そもそも日本語の「付き合う」という言葉も多義的です。必ずしも恋愛の文脈で使われるわけではありません。例えば、彼は付き合いが悪いとか、一般的な人間関係にも使えますね。
(1)付き合いたい場合
こういう場合、例文で考えてみるのがいいかもしれません。例えば、「付き合ってもらえませんか」と言いたい場合、I'd like to be your boyfriend/girlfriend(君の恋人になりたい)とか I'd like you to be my boyfriend/girlfriend(君に恋人になってほしい)と言えます。ストレートでいいですね。
(2)付き合っているのか聞きたい場合
他に、「誰か付き合ってる人いるの」(個人的にはあまり聞かれたくない質問ですが)と聞きたい場合、単純に Do you have a boyfriend/ girlfreind? と言えばいいですが、ちょっとこれが直接的すぎる場合、Are you seeing anyone? という言い方もできます。この場合の seeは見るという意味ではなくてまさに「付き合う」というニュアンスに近いと思います。
(3)恋愛関係 Relationship とは
また、Are you currently in a relationship? (今付き合ってる人いるの?)というのも使えます。この relationship というのは「関係」という意味ですが、文脈によってしばしば「恋愛関係」という意味で使われます。
ただし、多義的な単語なので、より明確に恋愛関係であることを示したい場合は、romantic relationship と言ったりします。直訳すれば、「ロマンチックな関係」ですが、なんとなく意味が分かりますね。他にも、(オリビア・ニュートン・ジョンの曲じゃないけれど)physical relationship と言えばまさに肉体関係という意味になります。こちらは全然ロマンチックじゃない。
英語→日本語
ここからは逆に英語でよく耳にするけれど、日本語だとどう言ったらいいか戸惑ってしまうようなものについて書いていきます。
crush
ややこしいですが crash/clashという単語もあります。これは「衝突する」という意味。そうじゃなくて、これは crushです。辞書を引くと、まず「押しつぶす」という意味が出てきます。しかし、ここでは名詞として恋愛関係の文脈で使われる crush の意味について考えます。
例えば、I think I have a crush on him というフレーズはどうなるでしょうか。ラインとかでサジェスト機能(単語を入力すると関連するスタンプを表示してくれる機能)を使って crush と打ってみると大体分かるかと思います。ハートの目をしたスタンプがたくさん出てきますね。つまり、この crush は「(多くの場合一時的な)好きという感情」を意味します。例文だと、「彼を好きになってしまったみたい」と意訳できます。
初恋はどう表現するか
応用編で、「初恋はいつでしたか」と聞く場合、When was your first crush? ということができます。これを first love としても通じるように、crash は love を使って代替できることも多いと思います。先ほどの、彼を好きになってしまったみたいというのも、I think I love him と言っても(文脈によっては)間違いではありません。
ただ、crush は、厳密には強く短い心酔(infatuation)を指すので、人によっては、それは love じゃないとか、 love 以前のものという認識になるかと思います。でも初恋って(多くの場合)淡く切なく終わってしまうものだから、やっぱり crush の方がしっくりくる気がします。
dating
最後に かなり困惑(confusing)させられる dating という単語について。日本語だと、「デートする」ですね。根本的には同じなのです。しかし、この単語のアメリカ的意味を理解するにはまず、アメリカ人の恋愛観について知っていないといけません。
(1)日米の恋愛観の違い
日本だと、告白する→恋愛関係になる(→結婚する)みたいな流れが一般的ですね。つまり、まず気になる人がいて、デートを重ねて、どこかのタイミングで告白して、その時点で、そのデートしていた人が「恋人」に切り替わる、というイメージになるかと思います(もちろん、あくまで一般論ですが。)。
まず、日米で共通しているのは、恋愛関係(relationship)の有無を問わず デート(dating)をすることです。つまり、恋愛関係になる前でも後でもデートはしますね。しかし、アメリカの場合、感覚として少し違っているところはあります。それは、複数人と同時進行でデートするのはオッケーなのです。ただし、その関係が排他的(exclusive)になるまでは。日本だと何だか不真面目な印象ですが、さすが合理的な(rational)アメリカ人といった感じ。
(2)アメリカ人にとっての dating
アメリカの恋愛観は、ざっくりまとめると以下の4つのステップがあるということになります(しつこいようですがケースバイケースです。)。
デートする関係(dating)→排他的にデートする関係(dating exclusively)→恋愛関係(relationship)→結婚 (marriage)
具体的に考えていきましょう。
まず、気になる人が何人かいるとします。とりあえず彼ら(彼女ら)とデートします。そのうち気が合う(get along)人が誰か一人に絞られてきます。そこで、エクスクルーシブな関係(exclusive relationship)に移行します。この時点から、それまでデートしていた他の人とはデートできません。本命に絞ったわけです。しかし、ここがまた奇妙ですが、これはまだ正式な恋愛関係ではないのです。いわばお試し期間(trial)みたいなもの。このエクスクルーシブな関係を経て、この人に決めた!となった時に、恋愛関係に移るというわけです。
もちろん人によっては、日本と同じようにこの第二段階をすっ飛ばしていきなり恋愛関係に入るというケースもあります。場合による(it depends)というやつです。ちなみにどれくらいの期間が経てば、dating から exclusiveへ、exclusive から relationship へ移行するかというのもしばしば議論になりますが、これももちろんケースバイケース。
(3)dating or hanging out ?
hanging out という英語を知っていますか?食事したり、お茶したり、ショッピング・モールに行ったり、映画を見たり、どこかに出かけたり、こういうのをまるっとまとめて hanging out (あるいは単に動詞としてhang)といいます。例えば、「週末どっか行かない?」というのは、Do you want to hang this weekend? となります。どちらかといえばスラングですが非常に頻繁に使われると思います。
さて、ここでとある問題が浮上します。それは、特に男女間で(あるいは同性間で)、例えば二人きりで何度も遊んだりするような仲である場合に、果たしてその二人は hanging out しているのか dating しているのかという問題です。男女の友情は成立するかというような普遍的な問題ですよね。日本でもこういう微妙な関係ってよくあります。
白黒はっきりさせたい場合、dating なのかストレートに聞いてしまうのもいいかもしれません。例えば、Are we dating?(僕たちってデートしてるのかな?)って聞いてみるとか。僕は実際にこれを言って若干口論じみたことになったので注意が必要ですが(経験者は語る。)。
長くなるのでこれ以上このトピックについて深入りしませんが、もっと知りたい場合、dating or hanging out とネットで検索してみてください。みんな同じようなことで悩んでるんだなと感じさせられます。
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