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(6)一般的例外条項 GATT第20条【国際経済法】

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国際経済法(WTO法)その5、GATT 第20条の一般例外条項についてまとめました。第21条の安全保障例外については別にまとめようと思います。

 

一般的例外条項 General Exceptions  

  • GATT 第20条は、量的制限(第11条)や内国民待遇(第3条)の例外として一般的な例外条項(=あらゆる協定違反の正当化根拠)を定める。
  • ただし、貿易救済措置(反ダンピング、セーフガード、補助金)については適用がない。なお、安全保障に関する例外については別立てで第21条に規定。
  • さらに、衛生植物検疫措置についてはSPS協定、国際的規格に関してがTBT協定がそれぞれ特定分野の権利義務及び例外を規定。

GATT第20条

  • 締約国は、任意の又は正当化できない差別(arbitrary or unjustifiable discrimination)でないか、又は、偽装された制限(a disguised restriction)でないことを条件として、下記の措置(抜粋)をとることができる。
  • すなわち、何らかの国内措置が一見して協定違反であっても、次の場合に当てはまる場合は正当化されうる。

(a)公徳(public morals)の保護に必要な措置

(b)人、動物、植物の生命又は健康の保護に必要な措置

(d)法令規制の遵守compliance with laws or regulations )に必要な措置

(g)有限自然資源(exhaustible natural resources)の保護関する(relating to)措置

GATT 第20条

この協定の規定は、締約国が次のいずれかの措置を採用すること又は実施することを妨げるものと解してはならない。ただし、それらの措置を、同様の条件の下にある諸国の間において任意の若しくは正当と認められない差別待遇の手段となるような方法で、又は国際貿易の偽装された制限となるような方法で、適用しないことを条件とする。

a. 公徳の保護のために必要な措置

b. 人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置

d. この協定の規定に反しない法令の遵守を確保するために必要な措置この協定の規定に反しない法令の遵守を確保するた

g. 有限天然資源の保存に関する措置。ただし、この措置が国内の生産又は消費に対する制限と関連して実施される場合に限る。

要件

(1)協定違反の措置の存在(ex. 量的制限、内国民待遇、最恵国待遇など)

(2)第20条の要件充足(二段階テスト

  (i)各号いずれかの要件

  (ii)柱書(chapeau)の要件:恣意的な又は正当化できない差別、偽装された制限

  • 第20条を援用して、国内措置のGATT違反を正当化するためには、そもそも違反が存在しなければならない。被申立国としては、そもそも当該措置が協定違反でないことを主張するか、あるいは、又は同時に、協定違反を第20条による正当化を主張することが可能。
  • 第20条の適用可能性は、判例法理によると、二段階テストによって審査される。すなわち、まずは、(a)〜(g)の各号のいずれかに該当することを被申立国は立証しなければならない。この点、後述のブラジルータイヤ事件によれば、非申立国は、当該措置の必要性((g)号を除く)について一応の証明がなされればよいとされる。これに対して、申立国は、代替手段があることを立証しなければならない。
  • 次に、第20条のシャポー(柱書)の要件として、当該措置が、(1)恣意的な差別であるか(2)正当化できない差別であるか、又は(3)偽装された制限であってはならない。すなわち、申立国は、第20条の各号が立証されたとしても、当該措置が恣意的又は正当化できない差別であること、あるいは、偽装された制限であることを立証することにより、当該措置の違法性を主張することが可能となる。
  • 後述の、シュリンプータートル事件によれば、同条柱書は、例外を主張する(規制権限を有する)加盟国とGATTの実体法上の権利を持つ加盟国の権利と義務のバランスを図ったもの。同事件は、恣意性及び正当性ついて、措置の実施に関する非柔軟性と手続の透明性(due process)の欠如誠実な交渉の不在により認定。なお、偽装された制限については確立された判例法理は存在しない。

主要判例

DS332:ブラジルータイヤ(2007)

【事実】

  • ブラジルは再生タイヤの輸入を通産省令により禁止。これについてECは、当該輸入禁止措置がGATT第11条1項に違反すると主張。ブラジルは、抗弁として、GATT第20条(b)による例外の適用を主張。

【判旨】

(※必要性要件について)

  • 「必要性」とは、「不可欠性(indispensable)」に限定されない。
  • 必要性は、政策目標と達成手段の比較衡量(weighing and balancing )により判断される。
  • 具体的に考慮すべき事項として:措置の遵守による目的への貢献度、規制や措置によって保護される利益や価値の重要性、国際貿易に対する制限的効果(trade restrictiveness)等がある。
  • 措置が目的達成に貢献するというためには、目的と措置の間に「真正な目的と手段の関係」がなければならない。また、貢献は、実質的な貢献(material contribution)でなければならない。
  • 措置の必要性の予備的結論が得られた場合(非申立国の立証責任)、代替手段の有無によって確定される。申立国(本件ではEC)は、合理的に利用可能な(reasonably available)より貿易制限的でない代替手段を提示しなければならない。
  • 代替手段は、非申立国の保護水準(level of protection)を達成する権利を保護するものでなければならない(本件の場合、ブラジルには政策目標として保護水準を設定する権利を有する、ECはその設定された水準を満たすような代替手段を提示する必要がある。)。
DS58:シュリンプータートル(1998)

【事実】

  • エビ底引き漁における海亀の大量死を削減する目的で、米国は、海亀除去装置(TEDs)を開発。
  • 米国は、エビの捕獲国が米国と同等の規制プログラムを有しており、かつ同等の付随的捕獲率を維持しているか、捕獲国の漁業環境は海亀に対して危険がないことを証明しない限り、 海亀に悪影響を与える可能性のある方法で捕獲されたエビの輸入を禁止。(ただし、適用対象はカリブ海大西洋地域に限定)
  • 国務省の1991年ガイドラインは、同等と認定されるために外国は、常に TEDs を使用することを義務づけ、又は代替的にエビ漁に絡む海亀大量死を削減するための、統計的に信頼でき、かつ検証可能な科学的プログラム導入を約束しなければならないとした。さらに、1993年には、代替プログラムのオプションを削除した。
  • 同1996年ガイドラインは、TEDの使用の義務づけを全ての外国で捕獲されたエビについて拡張認証国以外からの輸入を禁止した。新たに対象となった国については、より短い経過期間が設定された。

【判旨】

  • 第11条1項(量的制限)違反については争いがない。
  • 第20条(g)の天然資源には、非生物天然資源に限定されていない
  • 関連する」とは、措置の一般的な構造と設計と達成しようとする政策目標の関係を審査し、手段が目的に合理的に関連していることが必要である。
  • 第20条柱書について、恣意的又は正当と認められない差別を構成するためには「差別」、「恣意性又は不当性」、「同様の条件の下にある諸国の間の差別」の要素が必要。
  • 柱書は、20条各号の例外を主張する加盟国の権利と他の加盟国の実体法上の権利の間で権利・義務のバランスをはかるための規定であり、その均衡線は特定の事案に応じて移動する。
  • 正当と認められない差別に関して、法律上の規定それ自体は、本質的に同じ政策の採用を要求しておらず、それだけでは同等性決定において裁量又は柔軟性が認められるように見える。しかし、国務省の現行ガイドラインによる実施及びその運用実務においては当該柔軟性が排除されている(すなわち、一律に米国の採用するTEDsを採用してることを義務付けている。)。
  • ある政策目標を達成するために自国内で実施されているのと本質的に同一の包括的規制プログラムを採用するよう要求するような禁輸措置を使用するのは受け入れられない。 また、非認証国である限り輸入が認められないことは、ウミガメ保護という政策目標にも矛盾。
  • また、米国は、禁輸実施以前に、被上訴国等エビ輸出国とともに海亀保護のための二国間又は多国間協定の締結に向けた真剣かつ全般的な交渉を行っておらず、米国は一部の輸出国(米州諸国)とは真剣に交渉し、他の輸出国とはそれを怠ったのであるから、差別であり、かつ正当と認められない。
  • さらに、カリブ海・西大西洋地域の 14の輸出国は TEDs 使用要求に対応するために 3 年の経過 期間が与えられたが、被上訴国を含む他の輸出国は要求実施のため 4 ヶ月しか与えられ ていない。
  • 非柔軟性及び手続の不透明性は恣意的な差別も構成する。

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