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(11)安全保障例外 GATT第21条【国際経済法】

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国際経済法、これで最後です。最近話題の(?)安全保障例外についてまとめました。判例がないのであまり書くことがありません。自分の使っていたちょっと前の教科書でも記述すらないレベル。

安全保障例外

  • GATT 第21条は、WTO協定の義務違反について、一般的例外条項(第20条)とは別に、安全保障例外(National Security Exception)を規定。
  • 同条は、(a) 安全保障上の利益に反する情報、(b) 安全保障上の重大な利益( essential security interests)の保護のために締約国が必要であると認める(which it considers necesary)措置、(c)国連憲章上の義務(特に安保理決議)履行についての例外を定めている。

GATT第21条 安全保障例外

この協定のいかなる規定も、次のいずれかのことを定めるものと解してはならない。

( a )締約国に対し、発表すれば自国の安全保障上の重大な利益に反するとその締約国が認める情報の提供を要求すること。

( b )締約国が自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認める次のいずれかの措置を執ることを妨げること。

  • i. 核分裂性物質(fissionable materials)又はその生産原料である物質に関する措置
  • ii. 武器、弾薬及び軍需品の取引並びに軍事施設に供給するため直接又は間接に行なわれるその他の貨物及び原料の取引に関する措置
  • iii. 戦時その他の国際関係の緊急時に執る措置

( c )締約国が国際の平和及び安全の維持のため国際連合憲章に基く義務に従う措置を執ることを妨げること

米国通商拡大法第232条による措置

  • 米国の1962年通商拡大法(Trade Expansion Act)第232条は、米国の安全保障を害するおそれがある量・状況で行われる輸入について、商務省の調査に基づき大統領が何らかの措置をとることを認めている。
  • 2018年3月、トランプ政権は、第232条に基づき鉄鋼について25パーセント、アルミニウムについて10パーセントの関税を賦課することを表明。
  • これについて、米国は、国防上必要となる国内のアルミニウム及び鉄鋼産業の長期的な生存(viability)確保のために必要な措置であると主張し、GATTの第21条により正当化されるとした。
他の加盟国の反応
  • 2018年10月には、中国が、この米国の措置がGATTの第2条(量的制限)及び第1条(最恵国待遇)違反であるとしてパネルの設置を要求。EUやインド、ロシアなども同様の主張を行った。
  • また、この米国の関税措置に対する報復(retaliation)として、中国やEUなどはWTOの紛争解決手続を待つことなく米国から輸入につき関税を課した。これについて、米国はWTO協定違反であるとしてパネルの設置を要求した。
  • なお、この報復措置について、中国などは、米国の措置が実体はセーフガード措置であるとして、セーフガード協定第8条2項の補償に替わる報復であるとして正当化している。

GATT第21条の解釈 

  • 第232条の措置をめぐって第21条の解釈が問題となるが、この点について、後述のウクライナーロシア事件を除いて、WTO 加盟国及び紛争解決機関(DSB)によって争われた事例は少なくとも公式には存在しなかった。
  • 米国は、第21条はその文言から自己判断的(self-judging)な規定であり、条約全体の判断が各加盟国に委ねられるのであり、パネル及び上級委員会はこれについて審理することはできないと主張した。
  • これに反対する国は、何が重大な安全保障上の利益に該当するかという判断は加盟国の裁量(discretion)によるとしても、同条(b)の(i)-(iii) に該当するかについては、WTOの紛争解決機関よって審理が可能と主張した。
上級委員会による一般的な解釈指針
  • 上級委員会は、WTO協定の解釈について確立した方法を提示したことはないが、一般的には、ウィーン条約法条約(Vienna Convention on the Law of Treaties, VCLT)第31条から第32条に依拠してきた。
  • 具体的には、文脈(context)と趣旨及び目的(object and purpose)に照らした文言の通常の意味(ordinary meaning)にしたがって誠実に(in good faith)に解釈することやWTO協定の確立した解釈としての後の合意慣行(subsequent practice)についても考慮すること、また、交渉及び起草過程についても補助的に参照することが考えられる。
  • また、上級委員会は、条約の全ての条項について、それが効果をもたらすように解釈しなければならないとする実効的な解釈の指針を提示してきた。 
パネルによる報告
  • 2019年4月、DS512ロシアーウクライナ事件(Russia—Measures Concerning Traffic in Transit)において、パネルは、第21条の適用をめぐる紛争についてもその管轄権を認めた。
  • パネルは、安全保障例外についての加盟国の完全な自由裁量を否定し、何が重大な安全保障上の利益を構成するかについては加盟国の裁量が認められるが、安全保障例外を主張する加盟国はその利益が何であるかを説明しなければならないとした。
  • その上で、パネルは、当該措置が同条 (b)の(i)-(iii) に適合するかどうかについてはパネルが客観的に評価することが可能であるとした。
  • なお、米国の反対により上級委員会が定足数を失っている状況においては、紛争解決機関は、紛争解決了解(DSU)に基づきパネルの報告書を採択することができない。

安全保障例外とWTO体制

  • 安全保障を理由に加盟国がいかなる措置もとることができるとすれば法の支配に基づく多角的貿易システムの予測可能性と信頼性を損なうことになる。
  • また、これは安全保障の名の下に(under the guise of)保護主義の台頭を許すことになり、WTOの目的を害することに繋がる。この点について、米国自身、第21条の交渉過程において、安全保障例外が拡大解釈されることに対する懸念を表明している。
  • 他方で、安全保障問題をWTOの紛争解決機関が扱うことについては加盟国の間でも慎重論。特に米国の WTOに対する不信感はその存続自体を揺るがすことにもなりうる。

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