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(38)武力不行使原則の例外 IV 領域国の同意・人道的介入・自国民の保護

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集団安全保障と自衛権以外の武力不行使原則の例外として、領域国の同意、人道的介入、自国民の保護についてまとめました。 自衛権の拡張(非国家主体に対する自衛権及び先制的自衛権)については、前回の記事(武力不行使原則の例外 III)でまとめています。

 

国連憲章外の武力不行使原則の例外

  • 国連憲章体制下、武力行使は原則として禁止(憲章第2条4項)ただし、明文の例外として、集団安全保障(第7章)及び自衛権(第51条) を規定。
  • また、テロリストやサイバー攻撃など新たなる脅威に対する武力行使の正当化根拠として、自衛権の拡張(非国家主体に対する自衛権及び先制的自衛権)が主張される。
  • さらに、憲章外の例外として、人道的介入や自国民の保護などが主張されるが、これら(ただし、領域国の同意を除く)は、国家実行に依存し、一部の国家の支持を得ているものの、国際社会のコンセンサスを形成するに至っていない

領域国の同意

  • 領域国(被攻撃国)の同意(consent)がある場合、当該領域国に対する武力の行使は武力不行使原則に反しないと広く認識。ただし、国連憲章に明示の規定はなし。 intervention by invitation と称されることもある。
  • 同意は、黙示であっても明示であってもよいとされる。また、形式(文書によるか口頭によるか)についても合意なし。
  • 事例として、アフガニスタン、イラク、ソマリア、リビア及びイエメンにおける米国の軍事活動、マリにおけるフランスの軍事活動(2013年)、シリアにおけるロシアの軍事活動(2015年)が挙げられる。
政府の同意権限
  • 典型的には、領域国が内戦状態に陥った場合に、他国の介入を要請する権限はどの政府にあるのかという問題。特に、シリアなど現政府が自国民を弾圧しているようなケースや暴力的に政権を収奪したようなケース。
  • 少なくとも政権にジェノサイドや人道に対する罪の疑いがあるとしてもそれだけを持って同意する権限を失うわけではないと解される。ex. シリアのアサド政権
  • 少なくとも実効的(effective)な政府であること、すなわち領土を実効的に支配していることが必要とされてきたが、近年では、これに加えて民主的手続によって選出された正統性(legitimacy)を有する政府でなければならないとする国家実行(特に安保理による集合的判定)あり。ex. ハイチ(1994年)、シエラレオネ(1997年)、イエメン(2015年)

人道的介入

  • 人道的介入(humanitarian intervention)ないし人道的干渉とは、他国において重大かつ深刻な人権侵害が行われるとき、これを阻止するために別の国が(一方的に)軍事力をもって強制介入できるとする理論。16世紀から特にキリスト教徒の保護を名目とした介入について議論。
  • 国連安保理による武力行使の承認があれば問題とならないが、常任理事国の拒否権行使により安保理が機能不全(paralysis)に陥っている場合(ex.シリア問題に対するロシアの拒否権行使)に人道的介入を根拠とする武力行使が認められないかが問題。
  • 1999年の北大西洋条約機構(NATO)によるコソボ空爆の際に、英国等は人道的介入による武力行使の正当化を主張。2013年のシリアの化学兵器使使用に対する武力行使、2018年4月のシリア空爆についてもこれを維持。ただし、米国は法的根拠として人道的介入を具体的には援用していない。
保護する責任(Responsibility to Protect. R2P)
  • 2005年国連サミット成果文書(World Summit Outcome)において、 カナダ等が保護する責任(Rseponsobility to Protect, or R2P)として人道的介入の考えを概念化。ただし、武力的介入は、安保理決議を前提とする。

(138)すべての国家は、ジェノサイド、戦争犯罪、民族浄化(ethnic cleansing)及び人道に対する罪から自国民を保護する責任を有する。国際社会は、それが適切な場合は、個別の国家がこの責任を果たすための支援をするべきである。

(139)国際社会は、国連を通じて、国連憲章第7章及び第8章の規定に従い、ジェノサイド、戦争犯罪、民族浄化及び人道に対する罪から人々を保護するために適切な外交的、人道的その他平和的手段を用いる責任を有する。この文脈において我々は、国連安保理を通じて、断固とした時宜にかなった態様で、第7章を含む国連憲章に従い、集団的行動をとる用意がある。

  • 安保理決議1970(2011年2月)は、リビアに対しては保護する責任について言及。ただし、保護する責任を直接の根拠として武力行使を認めた安保理決議は存在しない。
正当化根拠と問題点
  • 一般に承認された国連実行によれば、重大な人権侵害は国際的関心事項(legitimate concern of international community) ex.ウィーン宣言(世界人権会議、1993年)
  • 国連憲章第2条4項は、政治的独立(political independence)及び領土保全(territorial integrity)及び国連の目的に反する形の武力行使を禁じているという解釈。
  • 人道的介入は、武力行使が極めて限定的であり、外国政府を攻撃するものではなく、時間的短い場合は、政治的独立も領土も害しない。また、国連憲章第1条3項が定める人権の促進という国連の目的に合致しているとする主張。
  • しかし、起草過程を鑑みればこれらの文言は強調的表現に過ぎず、そのような解釈は受け入れられていない。
  • また、国連憲章の1条1項(国際の平和と安全の維持)と2項(主権平等と自決権)には「第一次的地位」が与えられている(国連経費事件)
  • 人道的介入は、何が重大な人権侵害を構成するかを決定する主観的要素(評価者の不在)を含むことから濫用の可能性があり。また、その基準についても量的・質的閾値の問題。さらに、例えば、シリアの化学兵器使用の真偽など、人道的介入の根拠となる人権侵害が存在したかという立証には事実的困難(factual difficulty )が伴う。 
違法ではあるが正当であるの理論 illegal but legitimate  
  • 安保理決議を得ずに行われたNATOのコソボ空爆(1999年)に際して、違法(illegal)ではあるが、正当な(legitimate)介入であるとして正当化が主張され、また、同空爆は、国際社会から広く黙示の承認(tacit approval)ないし政治的同意を得た。
  • ただし、違法ではあるが正当であるの理論は、そもそも違法か合法化を決する法的議論(legal argument)ではないことに注意。また、正当性の判断は、合法性判断とは異なり、それぞれの国家の正当性概念の認識によって左右されることになることが問題となる。

在外自国民の保護

  • 自国民が外国において人質等の過酷な拘束状態に置かれた場合に、これを救出するために本国が実力に訴えることことが認められるかという問題。
  • 伝統的には自衛権の一環とする説が有力。領域国が保護する意思を持たない又は能力がないこと(unwilling or unable の基準)、当該国民が急迫した生命の危機にさらされていること、武力の行使以外に手段がないこと、その行動が合理的必要性と均衡を保つことなど要件が主張される。
  • イスラエルのエンテベ空港急襲、米国のテヘラン大使館員救出作戦などの国家実行。国際司法裁判所(ICJ)はテヘラン事件で、武力行使について非難するも判断はせず。米国は自衛に固有の権利(伝統的自衛権)に含まれると主張。
  • 他の例外と同様に、濫用の危険性から国際法上の権利として国際社会の合意には至っていない

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