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(43)国際法上の難民の地位【国際法】

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国際法解説シリーズ。この記事では、国家の庇護権と難民条約上の難民の地位についてまとめています。

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庇護制度の発展

  • 領域的庇護 territorial asylum:他国からの亡命者を自国領域内で保護すること。
  • 古代ギリシャ都市国家間では他国からの亡命者に庇護を与える慣行が広く見られたことが、近世の主権国家間での領域的庇護制度に発展。
  • グロティウス「祖国を追われて庇護を求める外国人に対しては、彼らが既存の政府に服し、抗争の回避に必要な規則を遵守するならば定住することを拒否すべきでない」
  • 伝統的には国家が権利として「庇護権」を有するとされてきた。今日においても、外国人が有する権利ではなく、いかなる国もこれを与える義務を負わない、とされる。
  • 世界人権宣言はすべての人が迫害からの庇護を求め、かつ、これを享受する権利(14条1)を認めているが、これは個人の庇護権を認めたものではない。

外交的庇護

在外公館には広範な不可侵権(inviolability)を有する(外交関係条約22条)ものの、条約上の取り決めがある場合を除いて、一般国際法上、庇護権を有さない。

判例】庇護事件:外交的庇護の場合は、避難者は犯罪地国の領域内にいる。外交的庇護の供与の決定はその国の主権を毀損することになる。 

国際難民法の発展

19世紀においては難民の問題を特別に取り扱うことなく、逃亡犯罪人、経済的流民とともに国家の庇護権の拒否の対象事項とされた。

難民条約の採択経緯

難民条約の性格と議定書の採択

  • 西側諸国を中心に作成:ソ連・東欧からの難民救済を主眼。
  • 難民条約は難民を「1951年1月1日前に生じた事件の結果として」発生したものに限定(1条A②)=アジア・アフリカを含んでいない。
  • 締約国の選択により上記期限内で「欧州」で生じた難民の保護に限定しうる道を設けていた(1条B①)
  • 1967年「難民の地位に関する議定書」:時間的・地理的制限をなくすことで、普遍性を高める。

難民の定義

(1)定義上の3要件

条約難民(1条A②)

  1. 迫害要件:人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること。または、政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖(well-founded fear)。
  2. 保護喪失要件:この恐怖のため、その国籍国の保護を受けることができないものまたはその保護を望まないもの及び無国籍者の場合は常居所国へ帰ることができないかまたはそれを望まないもの。
  3. 国外性要件:迫害の恐怖のために「国籍国の外にいるもの」
(2)3要件の検討

迫害要件

  • 迫害の原因事由の限定列挙=人種・宗教・国籍・特定の社会的集団の構成員・政治的意見。戦争や内乱等の経済的困窮は対象外。
  • 迫害の蓋然性の立証:本来は主観的判断基礎=個人的認識。しかし、条文は「十分に理由のある恐怖」として客観的事情の存在を要求。
  • その客観性の立証の度合いにつき、厳格にすれば、難民申請者はその立場上、証拠の収集・提示に困難な地位に置かれているため、事実上振るい落とされる。
  • 貴族院「迫害を受けるであろうという合理的な程度の見込み」でよい(キース卿)、米連邦最高裁「証拠によって客観的状況が示される限り、その状況がおそらくもたらすであろうことを証明する必要はなく、迫害が合理的に起こりうることで十分」

国籍国の保護喪失要件

  • 本国による保護の拒否などの客観的事情の存在、または、保護を望まないという個人意思の主観的事情の尊重。例外として1条C

国外性要件

  • 国内避難民は当たらない。国籍国を離れたのちに迫害の恐怖を生ずる場合を含む「後発的難民」 refugee sur place

cf.アフリカ難民条約(1969年):外部からの侵略、占領、外国支配、内乱により国外に避難したものも対象。この場合の難民は迫害要件不要。

(3)難民該当性の立証に関する手続問題
  • 各国の立法に認定手続きを委ねる。ex.「出入国及び難民認定法」立証責任は第一次的には申請者本人。必要な場合は「難民調査官による事実の調査をさせることができる」(61条の2の14①)
  • ただし、国に一般的な「調査義務」を設けたものではないにしても、立証不足を持って直ちに不認定の処分を禁じたものと解すべき。

 難民の地位

  • 社会的同化と帰化を「できるかぎり」促進すべきもの(34条)永住者として受け入れ義務を課しているわけではない。国家の庇護権の概念をなお維持。
  • 難民認定を受けたものは、労働、教育、裁判、公的扶助、社会保障等について一定の保護・待遇を与えるべきものとされる。
  • 不法入国を理由とする処罰は禁止され、また、国の安全と公の秩序の維持以外の理由による追放は禁止(32条)

ノン・ルフールマン原則 

ノン・ルフールマン原則(principle of non-refoulement)とは、いかなる方法によっても難民の「生命または自由が脅威にされされるおそれのある領域の国境へ追放または送還してはならない」とする原則(33条1項)

(1)適用基準

迫害要件とは異なる文言:前者がの方がより緩やかで、「生命・自由への脅威」はより客観性を要求?

(2)適用範囲
  • 送還先が当該脅威の待つ別の国へ再送還が見込まれる場合にも適用。間接的に生命・自由の脅威。
  • 迫害を逃れる者について国境での入国拒否を禁ずるものか:解釈上、締約国の領域内に存在する難民を対象としている(33条2)
  • UNHCRは、同原則は場所を問わず適用されるとする。また、正式に難民認定を受けてないものでもその生命・自由の脅威にさらされるおそれがある場合には適用されるとする解釈が有力。
(3)慣習法性

国際人権法や犯罪人引き渡し条約の発展により慣習法化するに至ったという学説が有力。 ex.拷問禁止条約、日韓犯罪人引渡条約 ただし、尹秀吉事件では否定。

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