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(7)補助金と相殺関税 I GATT第6条3項とSCM協定【国際経済法】

 

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国際経済法(WTO法)シリーズ第6弾、補助金と相殺関税についてです。わかりやすくするため2回に分けることにしました(2回で収まれば良いですが。)。 

 

概論

  • 輸入品の製造コストが外国政府(輸出国政府)によって助成又は相殺されているために、自国の産品が損害を受けた場合、WTO加盟国は貿易救済措置(trade remedy measure)として、一方的に、つまりWTOによる紛争解決手続の終了を待たずに相殺関税countervailing duties, or CVDs)を課すことができる。その根拠はGATT第6条3項に求められる。
  • なお、貿易救済措置とは、特定の条件下において正当に輸入を制限できる措置であり、WTO法上、相殺関税のほか、ダンピング措置及びセーフガード措置が認められている。また貿易救済措置には、なお、一般例外条項(GATT第20条)は適用されない。
  • 1979年に合意、1994年に改定された補助金及び相殺措置に関する協定(相殺措置協定:Agreement on Subsidies and Countervailing Measures, or SCM Agreement)は、相殺措置及び反ダンピング措置について、実体的及び手続的事項を規定。
  • SCM協定の下では、WTO加盟国は、補助金に対する救済措置として、相殺関税措置だけでなくWTOの通常の紛争処理手続による解決も追求可能。定められた期限内に、紛争解決機関の勧告の実施がなされない場合には、申立国は対抗措置(countermeasures)の承認を求める申請が可能。
  • 相殺関税と紛争処理手続による解決は同時に追求可能だが、二重の救済(double relief)は許されない。

GATT 第6条3項

いずれかの締約国の領域の産品で他の締約国の領域に輸入されるものは、原産国又は輸出国においてその産品の製造、生産又は輸出について直接又は間接に与えられていると認められる奨励金又は補助金の推定額に等しい金額をこえる相殺関税(countervailing duty)を課せられることはない。「相殺関税」とは、産品の製造、生産又は輸出について直接又は間接に与えられる奨励金(bounty)又は補助金(subsidy)を相殺する目的で課する特別の関税をいう。

補助金の定義

SCM第1条補助金の定義を規定。これによれば、政府又は公的機関(a government or any public body)による資金面での貢献( a financial contribution)があり、これにより利益(benefit)が発生した場合に、補助金が存在するとみなされる。

SCM 第1条

この協定の適用上、次の( a )の( 1 )又は( 2 )のいずれか及び( b )の条件が満たされる場合には、補助金は、存在するものとみなす(shall be deemed to exist)。

( a )(1)加盟国の領域における政府又は公的機関資金面で貢献していること。

すなわち、

  1. 政府が資金の直接的な移転(direct transfer of funds)を伴う措置(例えば、贈与、貸付け及び出資)、資金の直接的な移転の可能性を伴う措置又は債務を伴う措置(例えば、債務保証)をとること。
  2. 政府がその収入となるべきものを放棄し又は徴収しない(otherwise due foregone)こと(例えば、税額控除等の財政による奨励)。
  3. 政府が一般的な社会資本以外の物品若しくは役務を提供し(provide goods and services)又は物品を購入(purchases goods)すること。
  4. 政府が資金調達機関に支払を行うこと、又は政府が民間団体に対し、通常政府に属する任務 ... を遂行すること若しくは政府が通常とる措置と実質上異ならないものをとることを委託し若しくは指示する(entrusts or directs a private body )こと。

(2)GATT 第16条に規定する何らかの形式による所得又は価格の支持があること。

( b )( a )の(1)又は(2)の措置によって利益がもたらされること。

救済措置の対象となる補助金

SCM協定の下、補助金は以下の2種類に分類。

  1. 禁止補助金(prohobited subsideis):輸出が行われることに基づいて公布される補助金、輸入品よりも国内品を優先して使用することに基づく補助金(SCM第3条)
  2. 対抗可能な補助金(actionalble subsideis):相殺関税措置又はWTOによる紛争解決措置の対象となる補助金。要件として、補助金特定(specific)されていること(SCM第2条)、他の加盟国に悪影響(adverse effects)を及ぼすものであること(SCM第5条)が必要。

補助金に対する救済措置の概観 (まとめ)

  1. そもそもSCM協定上の補助金が存在するか(SCM第1条:政府行為+利益)
  2. その補助金特定性を有するかどうか(SCM第2条)ただし、禁止補助金(SCM第3条)は特定を有するものとみなされる。
  3. 補助金悪影響を及ぼすか(SCM第5条)ただし、禁止補助金は悪影響要件は不要。
  4. 対抗可能な補助金(1〜3を満たす補助金)及び禁止補助金に該当する場合、救済措置として、(1)SCM協定に基づく相殺関税措置を一方的に実施、(2)WTOの紛争解決手続(紛争解決機関の勧告+対抗措置)の開始のいずれか又は両方を追求できる。

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