連結点の確定
- 狭義の国際私法(抵触規則)は単位法律関係について、連結点を用いて、準拠法を指定する。
- 連結点の確定は、弁論主義によるべきか、それとも裁判所が職権で探知するべき(職権探知主義)かが問題となる。
- これについて、弁論主義によるとするのが多数説:訴訟手続とは、要件事実に該当する事実を確定し、それにより実体法上の法律効果を確定するという構造を取っているため。
連結点の分類
客観的な連結
- 属人的連結:国籍・常居所
- 属地的連結:物の所在地、行為地、事実の発生地
主観的な連結
- 当事者自治(合意による準拠法の選択)
国籍・常居所の確定
属人法:どこへ行ってもその人に付随して適用される法律を指し、人の身分及び能力についてはこれに従うべきとされてきた。
国籍
我が国の国籍法
- 1899年の旧国籍法は血統主義を基本としつつ婚姻や養子縁組等によって夫婦や親子となったものの国籍を同一とする家族国籍同一主義を採用。
- 1950年の現行国籍法は家族国籍独立主義、1984年には女子差別撤廃条約を受けて父母両系主義へ。
- 国籍法は、国籍の取得(出生、認知、帰化)国籍選択制度、国籍の喪失について規律。
重国籍者及び無国籍者の本国法
- 重国籍(法の適用に関する通則法38条1項):内国国籍優先の原則。まずは日本、外国籍同士の場合は常居所のある外国が優先、常居所のある外国がない場合は最密接関係地(国籍取得の経緯、居住状況、親族居住の有無、往来の状況等を総合的に判断)
- 無国籍(同法38条2項):常居所地法による。ただし、本国法として同視することはできない(25条ないし27条、32条の場合を規定)
通則法第38条 (本国法)
1 当事者が二以上の国籍を有する場合には、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。ただし、その国籍のうちのいずれかが日本の国籍であるときは、日本法を当事者の本国法とする。
2 当事者の本国法によるべき場合において、当事者が国籍を有しないときは、その常居所地法による。ただし、第二十五条(第二十六条第一項及び第二十七条において準用する場合を含む。)及び第三十二条の規定の適用については、この限りでない。
常居所
常居所とは、一般に、人が居所よりは長期の相当期間にわたり常時居住する場所をいう。
住所概念の相違:英米法のドミサイル
- 出生によって親から取得する本源住所、一定年齢に達した後に自己の選択によって取得する選択住所、特定の人の住所に依存する従属住所の区別がある。無住所・重住所は認められない。
- 選択住所は、そこを本拠(home)とする意思、すなわち、永住の意思がなければ認めれない。英米法においてはこれは本拠(domicile)ないしドミサイルとされ、一つしか持つことができない。
- この住所概念の相違から、ハーグ国際私法会議において住所の代わりに常居所概念が生まれる。
国際私法による規律
- 旧法例では、遺言の方式、扶養義務の準拠法のみであったが、平成元年改正により、婚姻や親子関係等の規定において法例14条ー16条、21条において第二順位の連結点として導入(通則法25条ー27条、32条)
- 通則法においては、財産法分野においても、8条2項、11条、15条、19条、20条など契約や不法行為においても広く用いられるようになった。
常居所決定の具体的基準
- 通則法に規定ないが、居住の目的、期間、状況等の諸要素を総合的に考慮して判断しなければならない。また常居所取得の意思は問題とならない。
- 常居所が不明の場合は、居所地法によるが、それを準用する規定には適用がない(通則法第39条)
- 通則法によって新たに設けられた財産法分野における常居所概念と従来の身分関係のおけるそれと同一のものと解釈されるべきかについては争いがある。
- 同一説:概念の相対性といっても、同一の法律中の概念は基本的に同内容とするのが原則であるように思われ、統一的に理解するのが基本である。身分関係で厳格に解していた常居所概念は緩やかに捉えていく方向が考えられる。
- 異別説:本国法に代わる場合は社会的統合を重要な要素と安定性のある基準であることが望まれる(固定性・安定性を重視)一方で、扶養義務などの保護法的な事項に関しては安定性や社会的統合は不可欠の要素とはいえない。