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(5)準拠法選択 単位法律関係と連結政策【国際私法】

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以前書いた国際私法シリーズのうち、なぜかかなり重要なトピックであるはずの準拠法選択について抜け落ちていたので書き足しました。準拠法選択といっても、抵触規則、単位法律関係、連結点、法律関係の性質決定といった国際私法独自のタームと不可分なのでそれらについても概括的に書いています。

 

抵触規則による問題処理の構造

基本構造:抵触規則(狭義の国際私法)は、単位法律関係について、連結点を用いて、準拠法を指定する。ただし、国際的な強行法規や渉外実質法などの例外。

  • 単位法律関係:指定概念によって切り取られた抵触規則の対象となる法律関係。ex.「相続」「不法行為」「婚姻」
  • 連結点:準拠法を選択する際に用いられる基準。ex. 国籍(「本国法」)、常居所、物の所在地、行為地、当事者意思

したがって、ある渉外性を有する(=外国と関連のある)法律問題について、その処理過程は以下のようになる。

  1. 抵触規則の適用対象となるグループ(=単位法律関係)に分類(=法律関係の性質決定
  2. それぞれについてどの法域の法が適用されるか(=準拠法)について連結点によって決定
  3. 準拠法規範を単位法律関係に適用
  4. 各単位法律関係に対して得られた解決をつなぎ合わせる(=モザイク的構造)

具体的に下記のケースについて、交通事故(不法行為)による損害賠償請求権の相続という問題について考えると、そもそも単位法律関係は、「不法行為」なのか「相続」なのかが問題となる。

不法行為として捉えた場合、準拠法は通則法17条により原則として結果発生地法となるのでインド法が準拠法となる。

他方で、相続の問題として捉えた場合、通則法36条により被相続人(=甲)の本国法となるので日本法が準拠法となる。

このように単位法律関係をいかに設定するかにより、結果として準拠法選択が異なってくることになる。

日本に住む日本人甲は、観光旅行で訪れたインドで、インドに住むインド人の乙の運転する自動車にひかれて死亡した。日本に住む甲の子である丙は、乙に対して損害賠償請求ができるか。

準拠法の決定

通則法4条以下が準拠法選択に関する規定。38条以下は総論に関する規定であり、4条から37条は各論に関する規定である。

抵触規則の規定方法による分類

一方的抵触規則

ある問題についてある特定の法が準拠法として指定される場合だけを定める。 ex.「日本人の行為能力は、日本法による」

双方的抵触規則

ある問題についての準拠法を内国法であるか外国法であるかを問わず一般的に規定。 ex.「人の行為能力は、その本国法による」  

連結政策

国籍や常居所、行為地など、考えうる連結点のうち当該単位法律関係について何を連結点とするかは法政策上の問題(=連結政策)だが、実質法上の結果から中立的な連結方法、すなわち1つの単位法律関係に1つの準拠法が指定されるというのが、国際私法の目指す理想的な姿である。

(1)原則的な連結方法

単位法律関係、連結点、準拠法がそれぞれ1つの単純な連結。例えば、相続の場合、被相続人の本国法という1つの連結点により準拠法が指定。

通則法第36条 

相続は、被相続人の本国法による。

(2)段階的連結

平成元年法例改正により導入。複数の要素の組み合わせで連結点が成り立っているため、段階的に準拠法を探求し、最終的には一つに指定する仕組み。例えば、婚姻の効力の場合、夫婦の本国法、常居所地法、最密接関係地法の順に決定する。

通則法第25条 

婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。

(3)配分的連結

1つの法律関係を関係する当事者それぞれに関係する部分に分けてそれぞれの部分ごとに準拠法を指定。例えば、婚姻の成立については、夫が日本国籍で、妻が米国籍の場合、夫につき日本法が、妻につき米国法がそれぞれ準拠法となる。

通則法第24条 

婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。

(4)最密接関係地法を準拠法とする連結

問題となっている法律関係に最も場所的に密接な地の法(最密接関係地法)を準拠法として指定する。最密接関係地法を準拠法とすることは国際私法の基本理念であるが、これを準拠法として規定することは規定として不十分であり、予見可能性及び法的安定性も欠ける。

例えば、法律行為の成立及び効力についての準拠法は、原則として当事者が選択した法によるが(当事者自治の原則)、当事者の準拠法選択がない場合は、最密接関係地法によるとする(さらに8条2項及び3項は最密接関係地法を推定することで法的安定性にも配慮。)。

第二節 法律行為
第7条(当事者による準拠法の選択)
法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。
第8条(当事者による準拠法の選択がない場合)
前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。
2 前項の場合において、法律行為において特徴的な給付を当事者の一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者の常居所地法当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。
3 第一項の場合において、不動産を目的物とする法律行為については、前項の規定にかかわらず、その不動産の所在地法当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。
(5)例外条項

抵触規則により指定された準拠法よりも当該事案においてより密接な関係がある法がある場合に、本来の連結を覆して最密接関係地法を準拠法とすることを可能にする条項。

例えば、不法行為の損害賠償請求権の効力については、原則として、不法行為の結果発生地が準拠法となるが、「不法行為の当時において当事者が法を同じくする地に常居所を有していたこと」や「当事者間の契約に基づく義務に違反して不法行為が行われたこと」などその他の事情に照らして、より密接な関係がある法がある場合には同法が準拠法として指定されるとする。

通則法第17条 

不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、加害行為が行われた地の法による。

通則法第20条 

前三条の規定にかかわらず、不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、不法行為の当時において当事者が法を同じくする地に常居所を有していたこと、当事者間の契約に基づく義務に違反して不法行為が行われたことその他の事情に照らして、明らかに前三条の規定により適用すべき法の属する地よりも密接な関係がある他の地があるときは、当該他の地の法による

実質的色彩を帯びた抵触規則

一定の実質法的結果(ex. 男女平等、嫡出親子関係の成立)を目指している抵触規則。実質法的な価値判断が国際私法の平面に入り込むことにより、(法廷地の)実質法的正義と内外法平等や国際判決調和といった抵触法的正義に緊張関係

(1)選択的連結

問題となっている法的問題が、複数の準拠法のいずれかで肯定されればそれでよいとするもの。

例えば、嫡出親子関係の成立においては、スペイン人とドイツ人の間の子どもについて、スペイン法かドイツ法かいずれか一つの準拠法を決定してから判断するのではなく、仮にスペイン法(あるいはドイツ法)を適用した場合に嫡出親子関係が認められるのでればその結果を採用することとなる。すなわち、嫡出親子関係は積極的に認められるべきという実質法上の価値判断が抵触規則の段階で入り込んでいることになる。

(嫡出である子の親子関係の成立)
通則法第28条
夫婦の一方の本国法で子の出生の当時におけるものにより子が嫡出となるべきときは、その子は、嫡出である子とする。
(2)累積的連結

問題となっている法的問題が複数の準拠法のいずれでも肯定されなければならないとするもの。

例えば、養子縁組については、養親の本国法だけでなく、養子の利益保護のため養子の本国法の要件も充足しなければならない場合がある。

(養子縁組)
通則法第31条
養子縁組は、縁組の当時における養親となるべき者の本国法による。この場合において、養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分があることが養子縁組の成立の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。 

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