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(21)国際環境法:概論【国際法】

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国際法解説シリーズ。この記事では国際環境法についてまとめました。

パリ条約の話など、最近のトピックはフォローしていませんが(というか国際環境法を一本の記事にまとめるというのもそもそも無理がありますね)、原理原則的なルールは押さえていると思います。

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国際環境法とは

  • 国際環境法(international environmental law):環境の保護・保全をはかるための国際法の実体的、手続的、組織的規則の総称。
  • 20世紀以降、生成途上:大量生産、大量消費、大気汚染等に起因する環境破壊は人間の健康への影響だけでなく、生態系・気候系といった深刻な事態を誘発=すべての国の共通認識と協力が必要
  • 開発」とは対抗関係にある。先進国と途上国の共同歩調を阻害。

ストックホルム国連人間環境会議(1972年)はこの対立を鮮明にする。先進国では「環境問題は一般に工業化と技術開発に関連する」のに対し、途上国では環境問題の大部分が低開発から生じている」ので「自国の優先順位と環境を保護し改善する必要性を念頭に置いて、その努力を開発に向けなければならない」(人間環境宣言4項)ものとする

持続可能な開発

  • 持続可能な開発(sustinable development):1980年代、国連自然保護連合が国連開発計画と世界自然保護基金とともに発表した「世界保全戦略」に起源→「環境と開発に関する世界委員会」の報告書「我ら共通の未来」(ブルントラント報告書・1987年)
  • これによれば、「将来の世代が自己の需要を満たす能力を損なうことなく現代の世代の需要を満たす開発」が必要→リオ宣言に取り入れ(原則3・4)気候変動枠組み条約。

環境保護に関する一般法原則

(1)領域管理責任原則
  • 当初は、国境を越える隣国の環境損害の防止を目的としたが、他国の権利を侵害する行為のために自国の領域を使用させてはならない、というすべての国の義務(コルフ海峡事件、1949年)へと発展。
  • 今日では、領域管理責任原則は確立した一般国際法上の地位を有する。また、環境破壊に限定されるわけではなく、およそ他国の権益を侵害することとなる自国領域の使用・使用許諾にかかる。

判例】トレイル溶鉱所事件(仲裁判決、1941年):いかなる国も、重大な結果をもたらし、また明白で確かな証拠によって立証されるときは、他国の領域ないしその領域内の財産・人に対して煤煙による被害を引き起こすような方法で自国の領土を使用し、もしくは使用を許容する権利を有しない。

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(2)環境損害防止原則
  • ストックホルム宣言(1972年):資源開発に関する各国の主権的権利を確認しつつ、国家は「自国の管轄内または管理下の活動が他国の環境または自国の管轄の範囲外の地域の環境に損害を与えないように確保する」責任を負う」(原則21)→1992年リオ宣言でも再確認。
  • 「環境」そのものを保護法益としている「環境とは抽象的概念ではなく、生活空間、生活の質および将来の世代を含む人類の健康を表示する」ものである(核兵器使用の合法性事件)
  • 環境損害防止原則(principle of environmental harm prevention)はその後、海洋法条約194条2項、気候変動枠組み条約前文、生物多様性3条等に受け継がれ、今日環境に関する国際法の一般原則として承認。同原則に基づく国家の責任は具体的にいかなる場合に生じるか、従来の事例は十分明確にしていない。
  1. 厳格責任説(strict liability):客観的な損害の発生という事実のみを持って成立。
  2. 相当の注意義務説(due diligience):損害の発生の防止に適当な措置をとることを怠った時に初めて責任が生じるとする立場。有力説。

手続制度の発展

(1)事前通報 prior notification

一国で開始される開発事業が他国の環境に相当の影響を与えることが予測されるときは、その潜在的影響国に事前に通報すること。ex.長距離越境大気汚染条約8条b、海洋法条約206条、生物多様性条約

(2)事前協議 prior consultation
  • 上記通報に続いて潜在的影響国の要請に基づいて行われる、環境リスクを最小にするための話し合い。
  • この協議は合理的期間内に誠実に行われなければならないが、他方、同意を義務付けられるものではない。一般的には、環境影響評価の実施も求められる。ex.パルプ工場事件
(3)緊急時の通報

事故等による重大な越境損害の危機が発生した時は領域国はこれを速やかに損害影響国に通報しなければならない。コルフ海峡事件で確認(船舶航行の事例であるが、今日では越境汚染にも適用。)。

環境損害責任の強化

(1)汚染者負担原則 polluter pays principle
  • 環境汚染の防止に要する費用は原則として汚染者が負担すべきとする原則(1974年、OECD)リオ宣言で確認、さらに国際的貿易と投資を歪めることなく「環境費用の内部化」に努めることを定める(原則16)
  • 生産者が環境コストの削減のために環境損害の防止と資源の有効活用を期待、環境政策の差異が市場競争に悪影響を与えないようにする
(2)無過失責任主義
  • 高度の危険を伴う活動や重大な汚染被害を発生させるおそれのある活動について、故意過失の有無を問わず賠償の責任を負う。
  • 事故は深刻で甚大な損害をもたらすおそれがある、被害者による過失の立証が困難、責任の厳格化が事故防止に有効などの観点。
  1. 民事型責任:汚染を引き起こす施設の管理者に汚染損害の無過失責任を負わせるもの ex.油濁民事責任条約「船舶の所有者」
  2. 国家補完型責任:事業者の責任を締約国家が補完して責任を負う。特に賠償額が巨額になるものを想定。ex.(パリ条約に対する)ブリュッセル補足条約(1963年)
  3. 国家専属型責任:民間組織が行う活動であっても、他国への損害の責任はこれを許可した国に専属させる責任形態。宇宙条約のみ。

地球環境の保護

  • 事前通報や協議は近隣諸国に対する越境汚染に対しては有効に機能しえても、地球規模の環境の保護には必ずしも効果的に対応できるわけではない。
  • 加害国・被害国の区別がない。すべての国が加害国であると同時に被害国であり、その特定化は困難。
  • 分野ごとに個別的条約によって可能な防止策を講ずるほかない ex.オゾン層保護ウィーン条約(1985年)、気候変動枠組条約(1992年)、生物多様性条約(1992年)、砂漠化対処条約(1994年)
  • これら条約には地球環境保護の基調概念である「持続可能な開発」が本文中に導入。また、EU条約やWTO協定などにも取り込まれ、環境法の基本原則への成熟を目指すものの、その具体的内実の不明瞭性と不確定性が実定法原則の進化を阻んでいる。

持続可能な開発概念の展開

リオ宣言(1992年):「持続可能な開発を達成するため、環境の保護は開発過程の不可分の一部をなし、それから分離して考えることはできない」(原則4)環境の開発と保護の調和的統合を強調。その他主要原則の検討ー同概念の実態を支える基本原則。

(1)世代間衡平の原則 principle of intergenerational equity(原則3)

環境の保護と開発において現代の世代は将来の世代に責任を負う。持続可能概念に内在。

(2)予防原則 precautionary principle(原則15)

重大または回復不能な環境損害のおそれがあるときは、たとえその科学的因果関係が確証されなくても、そのための予防措置を講じなければならないとする。

(3)共通だが差異ある責任 principle of common but differentiated responsibilities (原則7)

途上国と先進国は環境の保護に共通の責任を負うべきもののその度合いは異なるとするもの。

  • これまで環境を犠牲にして経済発展を遂げた先進国はより多くの責任をおうべきであり、また環境破壊の防止には相応の財政的負担と科学的技術を要する。国家平等原則の例外としての位置付け。

判例】ガブチコボ・ナジュマロシュ事件:持続可能な開発概念の中に適切に表現されている」として環境と開発の調和の必要性を説くが、国際法上同概念の法的位置付けの判断は慎重に回避 概念の曖昧性 解釈指針として?

地球環境保護の条約レジー

実効性と普遍性確保のため制度の具体的構築。近年、枠組条約と議定書の組み合わせ方式の採用と遵守手続きの導入が顕著な傾向。

(1)枠組条約と議定書の組み合わせ方式
  • 環境保護の具体的施策の実施には技術の発展、財政・立法措置の手当など、資金・時間・労力を必要とすると同時に、時代の状況に応じて柔軟に対処する必要性。
  • 環境保護の基本体制や基本原則を定める枠組条約(framework convention)を先行させ、具体的な規制基準や実施手順はのちの議定書(protocol)に委ねる方式

ex.長距離越境大気汚染条約(1979年)と硫黄化合物議定書(1985年、1994年)、オゾン層保護ウィーン条約モントリオール議定書(1987年)、気候変動枠組条約京都議定書(1997年)、生物多様性条約(1992年)とカタルヘナ議定書(2000年)

両者は目的の追求においては一体化しているものの法的には独立。締約国でも議定書参加は義務付けられない。

(2)遵守手続
  • 履行確保の方法:①国家報告・審査制度、②紛争解決手続、③遵守手続=環境条約に特有。
  • 遵守手続の概要:条約義務の不履行は一般的には国際違法行為を構成し、国家責任追及の対象となるが、環境関係議定書の遵守手続は直ちに紛争解決手続を取るのではなく、議定書の実施期間が当該不履行国との協議や支援を進めつつ遵守の促進を図る手続(最初のモントリオール議定書が「不遵守手続 non compliance procedure」と称したことから一般にこの名称が普及)

ex.京都議定書「遵守手続及びメカニズム」遵守促進部は助言、財政技術的支援、勧告、強制部は不遵守の宣言、遵守計画の作成の指示とその監視、特定の制度上の資格の停止等

  • 紛争解決手続との関係:両者は並存する。同意原則を取る紛争解決手続の限界、事後的責任追及のみでのは不十分であること、被害者・加害者の特定困難。

環境と貿易

(1)環境保護自由貿易
  1. 対抗関係論:環境と貿易は相対立する関係 ex.木材貿易と熱帯雨林の破壊、気候・生物多様性への影響。
  2. 相互扶助論:資源の効率的な利用を促進、非効率な生産活動による環境破壊を促進する一方、適切な環境対策は貿易の発展にとって必要な資源の確保に資する。
(2)WTO体制と貿易制限措置
(3)紛争解決フォーラム

GATTWTOの紛争解決手続の下では、もっぱらWTO法との適合性の有無という形で取り扱われ、環境法との両立性や適合性というかたちでの問題設定は制度上起こり得ないのではないか。

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(1)労働契約(国家公務員試験対策:労働法)

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国家公務員試験択一試験用にまとめたものです。2015年度以降の法改正については反映されていません。

労働条件基準

  • 労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について無効=最低水準としての労働条件基準(労基13条)
  • 法の定める労働条件基準は、たとえ労働契約が無効であったとしても、事実として労働が行われている限り適用。
  • 使用者には労働条件明示義務(労基15条①)
  • 書面交付必要5項目①期間②就業場所と業務③労働時間・休日・休憩④賃金⑤退職・解雇(労基則5条)※退職金は含まれない
  • 明示条件と異なる場合、労働者は即時に契約解除が可能(期間制限なし)(労基15条②)この場合、就業のために住所を移した労働者は解除から14日以内に帰郷する場合に、使用者は必要な費用を負担しなければならない(労基15条③)
  • 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、部分的に無効 労働者に有利な規定が適用される(労契12条、7条但)

労働契約

  • 当事者の合意のみで成立する諾成契約(労契6条)
  • 親権者・後見人は未成年者に代って労働契約を締結することはできない 同意を得て自らする必要(労基58条①)
  • 親権者・後見人・行政官庁は、労働条件が未成年者に不利であると認める場合は、将来に向かってこれを解除できる(同条②)
  • 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない(労基16条)
  • 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸しの債権と賃金を相殺してはならない(労基17条)
  • 強制貯金は禁止(労基18条)だが、任意貯金は許容 ただし厳格な要件=労使協定と管理に関する規程 前者は行政官庁へ、後者は周知

労働法上の当事者

労基法上の「労働者」
  • 使用されるもので、賃金を支払われるもの」(9条)ただし、①同居の親族のみを使用する事業に使用される労働者②家事使用人は除外
  1. 使用性(仕事依頼の諾否の自由の有無、業務遂行の指揮監督の有無等)
  2. 賃金性
  3. それ以外の要素(事業主性の有無、公租公課の負担等)

判例)トラック持ち込みの傭車運転手は否定、奨学金等を得て大学病院で臨床研修していた研修医で肯定、代表取締役で否定

労組法上の「労働者」
  • 「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」(3条)
  1. 現在使用されていることを問わない。
  2. 厳密な意味での労務対称性は問われず、賃金に準ずるものでも良い=経済的に弱い立場の労働者に団結を認める趣旨
  • 判例上、経済的従属が主たる判断基準であって、労基法の人的従属性は補充的な要素に過ぎない   

判例)自由出演契約によりコンサートに出演している楽団員、トラック持ち込みの傭車運転手、自宅でヘップサンダルの賃加工を行う職人で肯定

労契上の「労働者」
労働契約上の「使用者」
  • 「労働者に対して賃金を支払う者」(2条②)=労働契約の締結当事者たる者=相手方たる企業=法人そのものであって、管理責任者や取締役を含まない
労基法上の「使用者」
  • 「事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」 

労働契約の期間

  • 長期は原則として「最長3年」(労基14条):例外として①一定の事業完了に必要な期間を定める場合には完了までの期間②高度の専門知識を有するものとの契約や満60歳以上の者との契約の場合には最長5年。
  • 期間途中の解約は、労使双方ともに、やむを得ない事由があれば即時解除できる(民法628条)→期間中はやむを得ない事由がない限り解雇できない(労契17条)
短期労働契約が反復更新された場合の雇い止め
  • 実質的には期間の定めのない契約となっている場合は、雇い止めは解雇に当たる=解雇法理の適用
  • 未だ期間の定めが「形式的なものに過ぎない状態」にはなっていない場合、雇い止めは更新拒絶の意思表示となる=期間満了によって終了
  • 期間を定めていない場合、使用者による解雇は、解雇権濫用法理(労契16条)や解雇制限(労基19条)などの制約に服する

 労働者の採用・使用

採用・内定
  • 採用内定があれば「始期付・解約権留保付労働契約」が成立する(判例)=明示された日に労働契約が成立する。
  • 採用内定通知は、労働者が応募としてなした労働契約の申し込みに対する承諾判例
  • 内定取り消しは、取消事由が「知ることができないまたは知ることが期待できない事実」であって、「解約権留保の趣旨目的に照らして客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として是認することができる場合」のみ許される(判例電電公社近畿電通局事件)=書面に取消事由として限定されている必要はない。
  • また、解雇予告手続は不要(ただし精神的損害に対する慰謝料請求は認められる可能性がある) 一方、応募者側からの内定辞退は自由であって、申入れから2週間で解除の効果が発生(ただし信義則上契約責任を負う場合がある)
  • 自治体における採用内定の通知は事実上の行為に過ぎず、採用の確定的な意思表示ないし始期付または条件付き採用行為ではない 
試用
  • 試用は解約権留保つき労働契約であり、試用期間中の解雇には、「解約権留保の趣旨目的に照らして客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として是認することができる場合」のみ認められる(三菱樹脂事件
  • 試用とは、雇用契約に期間を設け、その趣旨・目的が労働者の適正を評価、判断するためのものであるとき(神戸弘陵学園事件)
使用者の不法行為責任
  • 政党党員であるかの調査で書面交付を要求することは違法行為とはいえない(東京電力塩山営業所事件)
  • 特定政党の党員であることを理由として職場の内外で監視、私物の写真撮影などは不法行為責任を構成する
  • 採用につき思想信条を考慮しても違法ではない(三菱樹脂事件

 配転・出向

  • 配置転換:同一企業内における職務内容や勤務場所の変更のための人事異動
  • 使用者は業務上の必要性があれば配転命令可能「企業の合理的運営に寄与する」と認められれば良い(東亜ペイント事件)「余人をもっては容易に替えがたいといった高度の必要性に限定されない」
  • 転勤命令につき、業務上の必要性が存在する場合でも、当該命令が他の不当な動機・目的を持ってなされたものであるときは、権利の濫用として無効(東亜ペイント事件)

出向:異なる企業間で行われる人事異動

  • 在籍出向:出向元との労働契約は存続、期間中は休職扱い。
  1. 関連会社等の日常的な出向は、就業規則の規定と包括的な同意で足りる 転勤命令も同じ(東亜ペイント事件)。就業規則に明白な出向義務が規定されていない場合=「他社出向の必要があるときは特命休職を命ずる」は否定(日東タイヤ事件)
  2. 労働条件の大幅な変更を伴う場合、労働者の個別の同意あるいは労働協約が必要。復帰命令には労働者の同意は必要なし
  • 移籍出向:出向元企業を退職、出向先と新たな労働契約締結。命令には個別の同意が必要

短時間労働者・派遣労働者

  • 所定就労日数が4日以内でも、週の所定労働時間が30時間以上の者については通常の労働者と同じ日数の年休あり(労基39条3項)
  • 雇用保険は、週所定労働時間が20時間未満の労働者については給付の対象から除外(雇用保険法6条2号)
労働者派遣法制
  • 職安法施行規則4条は「労働者供給」事業の消極的要件を明示 適法な請負契約との区別 70年代後半「人材派遣業」が発展 法規制の必要性。
  • 1985年「労働者派遣法」成立:「事故の雇用する労働者を、当該雇用関係下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」と定義(2条)=供給元とは労働契約関係にあるが、供給先から指揮命令を受けるという形態を抜き出して規制
派遣事業に対する規制
  • 法令上列挙された業務以外のすべての業務について行うことができる(ネガティヴ・リスト方式)
  • 99年改正までは、26の専門業務に限るポジティブ・リスト方式であったが原則自由化、03年には製造業にも解禁
  • 改正後新たに承認された部分いついては、同一業務への派遣期間を1年以内とする(ただし派遣先事務所の過半数代表の意見を聴いて3年以内も可能)と制限(40条)
  • 従来から認められていた清掃業、情報処理、研究開発等26業務については派遣期間の限定はない。
  • 12年改正では、日雇派遣(日々または30日以内)が禁止(35条の3)例外は、高度の専門性を必要とする業務、60歳以上、雇用保険の適用を受けない学生、年収が500万円以上のもの
許可・届出
  • 特定派遣労働者業:派遣元に常時雇用される労働者のみを派遣労働者とするもの 厚生労働大臣に届出が必要
  • 一般労働派遣業:登録型の派遣労働者など常時雇用以外の労働者も雇用・派遣するもの 厚生労働大臣の許可が必要・より厳格(5条以下)。派遣労働の契約当事者は派遣元企業 団体交渉の相手方も同様 

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(2)解雇(国家公務員試験対策:労働法)

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国家公務員試験択一試験用にまとめたものです。2015年度以降の法改正については反映されていません。

労働契約の終了事由

  • 解雇:使用者の一方的な意思表示
  • 辞職:労働者の一方的な意思表示
  • 合意解約:当事者の合意による解約
  • その他:期間満了、定年、当事者の消滅

合意解約

  • 合意解約の場合は、労基法の解雇制限規定は適用なし。
期間の定めのある場合
  • 当事者はやむを得ない事由のある場合、即時解除できる(民法628条、労契17条①)
期間の定めのない場合
  1. 労働者側からの解約申し入れ=辞職はいつでも自由にできる(2週間経過で終了)
  2. 使用者からは民法上自由であるが、労基法解雇権濫用法理(労契16条)や解雇制限(労基19条)、解雇予告手続(労基20条)などで修正。

解雇に対する規定

  • 判例理論から法制化、2003年労基法改正18条の2、2007年労契法16条(労基は削除)
解雇権濫用法理
  • 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする(労契16条)客観的合理性と社会的相当性基準。
  • 普通解雇事由があったとしても常に解雇しうるものではなく、当該具体的な事情のもとで、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通年上相当なものとして是認することができないときは、解雇権の濫用として無効(高知放送事件)
  • 解雇事由は必ず就業規則に記載しなければならない(労基89条3号)
  • 退職の場合、使用者に退職事由証明書を請求可能 遅滞なくこれを交付する義務 退職願いは解約申し入れにあたり、これを使用者が承諾すれば効力が発生(判例
  • 解雇理由証明書、退職時の証明は、労働者の請求しない事項を記入してはならない(労基22条)
解雇権濫用の効果
  • 解雇は私法上無効(労契16条)。解雇が無効であれば、労働者は解雇期間中の賃金の支払いを使用者に請求できる(民法536条②=使用者の責に帰すべき事由によって就労できなかったと認定)
  • 労働者が他で働いて得た収入があれば、平均6割に達するまで=最大4割はこれを控除して支払うことができる。
解雇の時期的制限(労基19条)
  1. 業務上の負傷・疾病のための療養期間とその後30日間 例外:打切補償(平均賃金の1200日分)と天災事変等により事業の継続が不可能(同下)
  2. 産前産後休期間とその後の30日間は解雇が禁止される 例外:やむを得ない事由で事業継続が不可能(行政官庁の認定が必要)(ただし解雇予告を行うのは違法ではない)

 ※いずれも帰責事由による解雇は不可

解雇手続の規制

  • 原則:「少なくとも30日間前の予告ないし30日分の平均賃金の支払い」が必要(労基20条①)
  • 例外:即時解雇=行政官庁の解除予告除外認定が必要、ただし、これは事実確認的なものであり、②の場合には解雇予告手当の支払い義務を負わないとした裁判例あり。
  1. 天災事変その他やむを得ない事由で事業継続が不可能
  2. 労働者の責に帰すべき事由で解雇
  • 即時解雇事由がないのに即時解除した場合:使用者が即時解雇に固執しないかぎり「30日もしくは30日分の平均賃金」の支払いによって解雇の効力が生じる(判例=相対的無効説)
  • 解雇予告手続は、短期の就労者等には適用除外(労基21条)
  • 解雇の効力が生じる以前でも、解雇理由証明書を請求できる(労基22条②)

整理解雇の法理

  • 整理解雇:余剰人員の人員整理を目的とする解雇
  • 整理解雇の4要件(判例
  1. 人員削減の必要性
  2. 整理解雇の手段を選択せざるを得ないこと(解雇回避努力)=配転・出向・非正規の雇い止め、一時休業、希望退職者の募集 
  3. 整理解雇基準の合理性=合理的な人選基準
  4. 手続の妥当性

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(3)賃金(国家公務員試験対策:労働法)

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国家公務員試験択一試験用にまとめたものです。2015年度以降の法改正については反映されていません。

賃金の意義

  • 賃金:労働の対償として、使用者が労働者に支払うすべてのもの。
  • 労働契約や就業規則等によって使用者の支払いの義務のあるものは賃金、任意のものは賃金ではない。出張旅費も賃金ではない。
賞与・退職金
  • 賞与は、就業規則等に定めがあり、使用者に支払い義務がある場合賃金となる。退職金も同様。
  • 賞与に支給日在籍要件を設けても違法ではない=将来の労働意欲の向上という側面(判例
  • 退職金は退職時に確定=「一定期間内に同業他社に転職した場合は減額・不支給とする」などの条項は有効=功労報償的性格

賃金支払いにおける4原則

通貨払いの原則
  • 日本円のみ、外国貨幣は不可、小切手や物による支給は不可(労基24条①)
  • 例外:法令若しくは労働協約の別段の定め ex.現物支給可能
  • 厚労省令で定めるもの=労働者の同意を要件として、賃金の口座振り込み、退職金の銀行振出自己宛小切手や郵便為替
直接払いの原則
  • 代理人、賃金債権の譲受人への支払いは不可(小倉電話局事件) 使者への支払いや法に基づく差し押さえは可能
全額払いの原則
  • 相殺禁止、労働者の生活を脅かさない調整的相殺は認められる、自由意思による相殺・放棄は認められる
  • 例外:法令による別段の定め(所得税源泉徴収)、過半数代表者との書面による労使協定(組合費の給与からの天引き=チェックオフ)
毎月一回以上の定期日払原則
  • 年棒制の場合も、分割額を月一回 定期日は特定の日であって曜日での指定は不可(24条②)
  • 例外:①臨時で支払われる(賃金)②厚生労働省令で定める賃金(一ヶ月を超える期間の精勤手当、勤続手当)
  • 非常時払:出産、疾病、災害その他命令で非常の用に充てるための「既往の賃金」につき、支払期日前の非常時払が認められる(労基25条)
  • 出来高払い:使用者は労働時間に応じて一定額の賃金を保証(労基27条)

休業手当

  • 使用者の帰責事由による休業の場合、使用者は平均賃金の6割を労働者に支払わなければならない=生存確保(労基26条)
  • 休業手当にいう「帰責事由」は天災事変のような不可抗力を除くすべての事由=経営上の障害も含む
  • 民法の危険負担の規定による請求も可能、ただし民法は過失責任主義に立つもので、労基26条は労働者の生活保障を主眼とする
  • 労働義務が履行不能の場合の賃料請求権:契約の解釈により解決できない場合は民法536条
使用者の帰責性
  • 違法な解雇による就労不能、正統性のないロックアウト、会社側の過失による工場消失。
  • 労働者の一部のストライキが原因で他の不参加者の労働義務の履行が不可能になっても、賃金請求権を有しない(ノース・ウエスト航空事件)=使用者の「責に帰すべき事由」とは言えないため・。

賃金に関するその他の問題

  • ノーワーク・ノーペイの原則:争議行為中は労務をしていないので賃金を支払う必要は無い
  • 賃金二分論判例は否定 賃金カットの範囲は労働協約の定めまたは労働慣行の趣旨に照らして個別的に判断すべき(三菱重工長崎造船所事件)
  • 賃金債権の事項消滅:通常の賃金債権は2年、退職金は5年
  • 割増賃金:算定基礎は、家族手当・通勤手当等の「労働の時間や内容と関係のない労働者の個人的な事情で変動する賃金」は含まれない
  • 賞与等の臨時に支払われた賃金や一ヶ月を超える手当も除外
  • 出張・外勤命令を拒否し、内勤業務に従事した場合、債務の本旨に従った履行をしたとは言えず、賃金カットの対象となる(水道機工事件)

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