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(1)EU法の法源【EU法】

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ずっとまとめたいと思っていたEU法。いつまで続くか分かりませんが、まずはEU法法源EU法秩序におけるヒエラルキーについてまとめてみました。

 

EU法法源と分類

  • EU法法源(=法の存在形式)は、成文形式と不文形式、一次法と二次法などに区分される。

成文形式と不文形式

成文形式

  • EU条約(Treaty on European Union, or TEU)
  • EU機能条約(Treaty on Functioning of the European Union, or TFEU)
  • EU基本権憲章(Charter of Fundamental Rights of the European Union)
  • 国際協定・条約
  • 派生法(二次法)=規則、指令、決定等

不文形式

  • 法の一般原則
  • 判例

一次法(Primary Law)と二次法(Secondary Law)

  • 一次法欧州委員会欧州議会、理事会、欧州司法裁判所といったEUの基礎的な機関について規定し、憲法的性格を有する。具体的には、基本条約(EU条約及びEU機能条約)、EU基本権憲章、欧州司法裁判所の判例法によって発展した法の一般原則などが一次法に含まれる。
  • 二次法:基本条約規定や目的に基づく法。派生法とも呼ばれる。具体的には、規則、指令、決定などの法律行為がこれに含まれる。また、EUが締結した条約や国際協定が二次法に含まれる場合がある。

EU法秩序における規範のヒエラルキー

  • EU法秩序内には、それぞれの規範の適用関係において独自のヒエラルキー(階層)が存在。具体的には以下の序列により優劣が決定。
  1. EU条約第2条に規定される規範的価値
  2. 基本条約、EU基本権憲章、及び法の一般原則
  3. EUを拘束する国際協定及び一般国際法
  4. EUの立法行為(legislative acts)=規則、指令及び決定

規範的価値

  • EU条約第2条は、EUは、「人間の尊厳の尊重、自由、民主主義、平等、法の支配、及び少数者に属する者の権利を含む人権の尊重という諸価値」に基づくと定めている。
  • EU及びEU加盟国は、規範的価値に拘束され、これらの価値を尊重し、促進しなければならない。
  • 欧州司法裁判所は、基本条約(一次法)規定が規範的価値の逸脱を認めるものと解してはならないと判示。EU基本条約の改正の限界を提示。

基本条約とEU基本権憲章

  • 基本条約EU条約とEU機能条約から構成。前者は総則的規定を定め、後者は各則的規定を置く。両条約は、「同一の法的価値」(条約第1条ー3条、機能条約第1条2項)を有する。
  • 両条約の附属議定書(Protocols)及び附属書(Annexes)は両条約の構成要素を成す(条約第51条)。
  • EU基本権憲章は、2009年12月1日のリスボン条約発効後、基本条約と「同一の法的価値」(条約第6条1項)を有するものと位置づけ。欧州司法裁判所も、同憲章が基本条約と同一の法的価値を有するものと判示。

法の一般原則

  • EUにおける法の一般原則とは、欧州司法裁判所及び各加盟国裁判所が依拠することのできる不文原則の総体
  • 法の一般原則は、法の欠缺の補充や法解釈の補助、EU立法等の審査に用いられる。法の一般原則に反するEU法取消訴訟により無効とされ、国内裁判所において適用を排除される。
  • 法の一般原則は、加盟国の国内法に共通の原則や国際法及びEU法から導かれる原則に見出される。
  • EU条約第6条3項による成文化:「欧州人権規約によって保障され、かつ、加盟国に共通の憲法的伝統に由来する基本権は、一般原則(general principles)としてEU法の一部を成す」
  • 具体的には、基本権、法の下の平等、比例性原則、補完性原則、法的明確性の原則等が法の一般原則として判例法理上、確立している。

国際法

  • EUはその権限の行使において国際法を尊重しなければなればならない。国際法には、EUが締結した国際協定及び条約、一般国際法及び慣習国際法が含まれる。
  • EUが締結した国際協定は、EU機関及び加盟国を拘束する(機能条約第216条2項)。国際協定は、二次法(派生法)に優越し、二次法が国際協定に反する場合は取り消される場合がある。他方、国際協定は、基本権を含む一次法に劣後する。
  • EU加盟国は、EUの排他的権限に当たらない事項において第三国や国際機構と国際協定を締結することを妨げられないが、誠実協力原則(条約第4条3項)により、EU法を損なうことがないように協定締結権限を行使する義務を負う(EUから特別の授権がある場合はこの限りではない)。

派生法

  • 派生法は、基本条約上、法律行為(legal acts)と総称。機能条約第288条1項は、「EUの権限を行使するため、諸機関は、規則(regulations)、指令(directives)、決定(decisions)、勧告(recommendations)及び意見(opinions)を採択する」と規定。規則、勧告及び決定の間に優劣は存在しない。
  • 法律行為は、立法行為(legislative acts)と非立法行為(non-legislative acts)とに分類される。前者には、規則、指令及び決定が含まれ、後者には、委任行為(delegated acts)及び実施行為(implementing acts)がある。
  • 法律行為は、その制定にあたって根拠となる理由が添付されなければならない(機能条約第296条2項)。理由添付が不十分な場合は取消事由となる。
  • 立法行為は、EU官報(Official Journal of the European Union)に掲載されることで効力を発生する。
規則(Regulations)
  • 規則は、一般的適用性を有し、その全ての要素について義務的であり、かつ、全ての加盟国において直接適用可能である(機能条約第288条の2)。従って、規則は発効と同時に自動的に加盟国の法秩序の一部に組み込まれ、拘束力を有することになる。
指令(Directives)
  • 指令は、達成すべき結果につき名宛人たる全ての加盟国を拘束するが、形式及び手段についての権限は国内機関に委ねられる(機能条約第288条の3)。従って、規則と異なり、直接適用可能ではないため、原則として国内実施される必要がある。
決定(Decisions)
  • 決定は、その全ての要素について義務的であり、名宛人を指定する場合は、同人に対してのみ義務的である(機能条約第288条の4)。
勧告(Recomendations)及び意見(Opinions)
  • 勧告及び意見は、法的拘束力を有しない(機能条約第288条4項)。勧告は、EU機関が名宛人に対して意見を表明し、法的義務を課すことなく一連の行動を取るよう促す際に用いられる。これに対して意見は、単なる意見の表明(ステートメント)に過ぎない。
その他の行為
  • EU機関は、機能条約第288条が列挙する行為以外に、同条約第295条に規定する機関間協定(interinstitutional agreement)、同第6条3項の規定する指針(guidelines)のほか、決議(resolutions)、宣言(declarations)、結論(conclusions)等を採択することがある。
  • それぞれの行為の法的拘束力については、名称にかかわらず、法的拘束力を有する規範として採択されることが意図されたかどうかによる。

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