Dancing in the Rain

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(35)国際安全保障③

IV 自衛権

1 憲章における自衛権の地位
(1)武力不行使原則と自衛権の関係:国連憲章51条が規定。
  国連憲章2条4項の定める例外としての位置付け:ただし、その対象となる「武力攻撃」は2条4項の「武力による威嚇または武力の行使」よりも狭く限定。
 ニカラグア事件:武力行使の形態を2分類。自衛権発動の要件となる「武力攻撃」は「最も重大な形態(the most grave forms)」の武力の行使を指し、「その他のより重大でない形態(other less grave forms)」の武力の行使(武器供与、兵站の支援等)に対しては、「均衡のとれた対抗措置(proportinate counter-measures)」に訴えることができるのみ。

【参考】国連憲章2条4項
 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土 保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によ るものも慎まなければならない。
【参考】国連憲章51条
 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃(an armed attack)が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利(the inherent right of indiviual or collective self-defence)を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国が措置は、直ちに安全保障理事会 に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又 は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。


(2)伝統的自衛権の概念
  自己保存権として理解:20世紀には包括的な保存権は他国の権利侵害の口実になるとして次第に否定。
  カロライン事件(1873年):「自衛の必要性が急迫しており、圧倒的で手段の選択の余地がなく、熟慮の余裕がない場合(a necessity of self-defense, instant, overwhelming, leaving no choice of means and no moment for deliberation)」であってさらに「不合理ないし過剰なものでないこと(unreasonable or excessive)」(ウェブスター・フォーミュラ
 伝統的自衛権は、外国の私人や私人グループによる領域侵害等も対象とし、武力攻撃も要するものではない。 cf.不戦条約・国連憲章51条は狭く限定的な自衛権

(3)先制自衛 anticipatory self-defense: 武力攻撃が急迫(imminent)しているが、発生していない状況における自衛権の発動は認められるか。
 2002年のブッシュ政権時の米政府の「国家安全保障戦略」の声明はこれを肯定。→2016年オバマ政権でも可能性を排除せず。
 憲章制定時には想定外であった核・ミサイル攻撃が現実味を帯びることで自衛権問題の核心的論点となる。 
 伝統的な国際法では脅威が急迫している場合には許容される(アナン事務総長の諮問機関・2004)
 「武力攻撃」の中に「武力攻撃の急迫した脅威」をも読み込む=自衛の名における「先制襲撃」の合法化につながる危険。
 なお、ICJは、ニカラグア事件において、「武力攻撃の急迫の脅威への対応の合法性も問題」については、見解を示さないとし、コンゴ領域武力行動事件でも同様の立場。

【参考】2002年9月の「国家安全保障戦略
 テロリストが米国民と米国に対して危害を与えることを防止するため、必要な場合には、単独で行動し、先制的に行動することにより、自衛権を行使することを躊躇することはない。
 国際法は数世紀にわたり、国家が攻撃の急迫した危険を示す実力から自国を守るための行動を正当に取ることができるようになる前も攻撃を甘受する必要はないことを認めている。
 米国は、発生する脅威の機先を制するためにあらゆる場合において実力を行使することとなるのではなく、また、諸国は、先制を侵略のための口実として用いるべきではない。

2 集団的自衛権
(1)制度化の経緯:サンフランシスコ講和会議で第51条が追加採択。   
 会議直前、米州諸国はチャプルテペック協定において共同防衛措置を規定。 背景には拒否権による集団安保体制の機能不全を懸念があった。
 憲章はこの矛盾を解消すべく、「必要な措置を取るまでの間」、「武力攻撃」の発生を前提条件に自衛権を認める

(2)法的性質
  ①共同防衛説(バウエット):複数の国が同時に攻撃を受けた場合に、それらの国が共同して対処する権利=個別的自衛権の共同行使
  ②限定共同防衛説ラウターパクト):被攻撃国と政治的・経済的緊密性ゆえに、その国への攻撃が自国の安全にとって不可分な関係にある特定の諸国が取りうる権利
  ③任意的共同防衛説(シャクター):国家関係を限定せずにすべての加盟国に認められるもので、任意に行使できる
  ②は権利の濫用を抑制する効果を持つが対象国の範囲が不明確 NATO条約等あらかじめこの範囲を限定することも考えられるが、これは旧い同盟体制を事実上忍び込ませることになる
  ③は武力攻撃は全ての国に対する義務違反を構成し、いかなる国にも武力行使の法的基礎を与えるとするが、自衛の概念を超える=他国防衛説

(3)行使要件
  ①武力攻撃の発生、②必要性・緊急性、③均衡性に加えて、④被攻撃国による攻撃事実の「宣言」⑤非攻撃国からの支援の「要請」(ニカラグア事件オイル・プラットフォーム事件で再確認)
 「宣言」は他国による一方的な武力攻撃発生の認定を防ぎ、「要請」は権利行使の有資格者の範囲を大幅に限定。

3 非国家主体と自衛権
 テロリスト等非国家主体による侵害行為に対し、通常の場合は関係国が国内的に対処するか、関係条約により処理。しかし、大規模なテロ等の場合、国家はどのように対処しうるか。
 9.11米国同時多発テロのケース:
  安保理決議1368は、「国際の平和と安全に対する脅威」を認定。
  安保理決議1373は、国連憲章第7章の措置として資金提供や支援供与の禁止を決定。
 両決議はともに自衛権に言及するものの前文において一般的に確認するものであり、権利として承認したものではなかった cf.湾岸戦争時は「武力攻撃」を認定
 アメリカはテロ攻撃がアフガニスタンアルカイダによるものと断定し、イギリスとともに個別的・集団的自衛権を援用しつつ軍事行動を展開、その後、国連憲章51条に従い、国連事務総長に報告。NATOも米国へのテロ攻撃が全加盟国への武力攻撃の対象となったとみなす北大西洋条約第5条の適用を認める。
  ICJはパレスチナの壁事件勧告的意見において、憲章51条は「国家による他国への武力攻撃」を前提とした。これによると私的テロ組織の攻撃はそれが大規模なものであっても「武力攻撃」に該当しない。
 ただし、事後の慣行に基づく条約解釈の確立(条約法31条3(b))

【参考】安保理決議1368(2001年9月12日)
 Recognizing the inherent right of individual or collective self-defense in accordance with the Charter….
1. Unequivocally condemns in the strongest terms the horrifying terrorist attacks which took place on 11 September 2011 in New York, Washington and Pennsylvania and regards such acts, like any act of international terrorism, as a threat to international peace and security.

 

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