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(19)海洋法 III 境界画定・紛争解決と公海・深海底

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海洋法その3です。海洋の境界画定問題と旗国主義と公海制度、それから深海底制度についてもざっくりまとめています。

 

海洋の境界画定

原則として、海洋の境界画定は関係国の合意による:誠実に交渉する義務であって「合意に到達する義務」を含むものではない(北海大陸棚事件) 

条約上の画定方式

(1)領海
領海条約12条:合意なき場合、特段の歴史的権原がある場合を別として、両国の基線上の最も近い点から等しい距離にある等距離線(中間線)によるべき。カタール・バーレーンで慣習法化。
(2)大陸棚・排他的経済水域
  • 1958年の大陸棚条約は等距離線方式を定めたが、西ドイツは同方式の衡平性を疑問視して批准せず。
  • 海洋法条約83条①では、衡平原則も等距離原則も採用せず、「衡平な解決を達成するために、ICJ規程38条に規定する国際法に基づいて合意により行う」とする。

国際裁判における境界画定

裁判例では、抽象的な衡平原則による例が多かったが、判例法理として3段階方式が確立。メイン湾事件、リビア・マルタ大陸棚事件、グリーンランド・ヤンマイエン事件、カタール・バーレーン事件、カメルーン・ナイジェリア事件など。
「等距離線+関連事情」方式:
  1. 暫定的な等距離中間線
  2. 衡平の考慮からこれを修正すべき関連事情の有無検討
  3. ②が認められるときに①を移動
関連事情の考慮
海岸の地理的要因を重視:海岸線の長さ、島の存在、海岸線の特異な形状など。経済的、資源的要因、海底の地質構造、安全保障上の要請などは考慮せず。 

公海 high seas

  • 公海とは、内水、領海、排他的経済水域及び群島水域以外の海洋のすべての部分(86条)
  • 法的性格:すべての国の共有物とする re communis論と、いかなる国のものでもないとする res nullius論。前者は、公海は個別国家の領有の対象とならないこと、後者は、資源の原始取得を主張。

公海自由の原則

  • 帰属からの自由(89条):国家の主権的領有の禁止
  • 使用の自由(87条):航行、上空飛行、地底電線、海底パイプラインの敷設の自由、漁業の自由、科学調査の自由
  • 二重の制約:
  1. 他国の利益に対する「妥当な考慮 due regard」を払う義務(87条2)
  2. 条約上の規制 ex.海洋環境保護条約、生物資源保存条約

船舶の旗国主義

  • 船舶の国籍と便宜置籍船:船舶は特定の国の国籍を有し、その国の管轄権に服する。国籍は登録に基づいて許与、その条件は国ごと(91条)
  • 税金対策や法規制を回避するため、実際の船の所有者の国籍国とは異なる国家(ex. パナマ )の船籍を取得する場合を便宜置籍船(flag of convenience ship)という。
  • 国際法上の要件として、その国と当該船舶との間に「真正な関係 genuine link」が存在しなければならない。便宜置籍船に対して、実質的な船主の国籍国は原則として管轄権を行使できない。
  • 旗国主義:船舶は、国際法が認める特別の例外を除いて、公海上においてはその国旗を掲げる国籍国の排他的管轄に服する(92条①)
  • ただし、自国民の国外犯処罰の行使は妨げられない。被害者の場合は受動的属人主義の問題。 ex.タジマ号事件
【判例】ロチュース号事件:公海での領域主権の不存在により、いかなる国も外国船舶に対して管轄権を行使できない。

沿岸国の追跡権 right of hot pursuit

(1)追跡権制度の形成
  • 外国船舶による内水・領海における沿岸国法令違反がある場合には、沿岸国は当該船舶を公海上に追跡し、拿捕、引致することができる。

  • 19世紀後半の船舶の高速化と海上通商の増大とともに沿岸国法益の保護の必要上重視。1894年領海決議で承認。1930年の領海草案では要件を明確化。

  • 海洋法条約は、「内水、群島水域、領海または接続水域」だけでなく、「排他的経済水域又は大陸棚」にある場合にもその法令違反があるときは準用される(111条①②)

(2)権利行使の要件
  • 追跡権制度は旗国主義の例外をなすので、その要件は厳格化される必要。追跡は違反船が、内水、群島水域、領海又は接続水域にあるときに開始していること、追跡は中断してはならないこと、視覚的または聴覚的停止信号を発すること等の要件。
  • 合法的に追跡が開始されても、被追跡船が旗国または第三国の領海に入ったその時点で追跡権は消滅。

海上犯罪の取締り

  • 公海上での海賊行為、奴隷取引、無許可放送、無国籍船及び船舶の国旗の濫用に対して外国軍艦よる臨検を認める(110条)停船、乗船、検査を含む。
  • 今日では、船舶の不法奪取や船舶上のテロ行為、海上の麻薬取引も別条約の規制対象。
(1)海賊行為と武装強盗
  • 海賊行為に従事する者は、古来「人類の敵」としてすべての国がその取締まりの権限を有するものとされてきた(普遍主義)
  • 海賊の定義:私有の船舶または航空機が私的目的のために公海上の他の船舶または航空機に対して行うすべての不法な暴力行為、抑留又は略奪行為(海洋法101条、公海条約15条)
(2)国旗の濫用と無国籍船
当該船舶の本国の軍艦はこれを臨検できる。2以上の国旗を便宜的に使用するときはそのいずれの国籍をも有効に主張し得ず、国籍を有しないものとみなされる。
(3)麻薬の不正取引
他国による臨検は認められず、一般的な協力義務にとどめる(108条)麻薬・向精神剤の不正取引防止条約は特別の臨検制度を整備。不正取引の「合理的根拠」を持つ国はその旨を帰国に通報、臨検の許可を要請。

船舶の衝突と刑事裁判権 

  • ロチュース号事件では、「犯罪の結果の発生した船舶の所属国はそれを領土内で行われたものとして違反者を訴追することを禁止する国際法規則はない」として加害国のみならず被害船の旗国による刑事裁判権行使も認める
  • 海上通商への悪影響をを恐れた海運界からの批判から、1952年のブリュッセル条約による修正。海洋法97条によると「当該船舶の旗国又はこれら者が属する国の司法当局」が追及可能。 

深海底

  • 深海底制度の形成:①無主地説、②共有地説、③未確定説→マルタの提案(1967年)深海底とその資源を人類の共同遺産とする新しい国際制度の創設。
  • 1970年深海底原則宣言→第三次海洋法会議:先進国は、緩やかな国際管理、一定の許可料の納入を持って自主的に開発しうるライセンス方式を主張したのに対し、途上国は、国際機構による資源の一元的な管理を主張。
  • 実施協定による制度の修正:開発制度が市場経済の原理を無視し、商業ベースの開発を不可能としたことに対する先進国の不満。 
  • 条約第11部の実施に関する協定(1994年):条約発効の前に条約本文を修正する協定。

深海底の地位と開発制度

(1)深海底の法的地位
  • 深海底は、「人類の共同遺産 common heritage of mankind」(136条、公定訳では財産)
  • 基本的規則:①深海底に対する主権的主張の禁止、②同資源の人類全体への帰属とその非譲渡性、③採取された鉱物資源の私的所有の禁止(137条)、④開発活動の全人類的利益目標(140条)、⑤国際海底機構の全人類代表性
(2)開発制度
  • 深海底資源の管理・開発活動の統括のため国際海底機構 international Sea-Bed Authority
  • 開発活動の遂行主体:①機関たる事業体、②機構と提携する締約国とその企業等(153条②)パラレル方式と呼ばれるこの方式は、途上国と先進国の妥協の産物。
  • バンキング方式:国・企業が開発申請を行うときは商業的に等価値を有する2つの鉱区を申請するものとし、そのうち一方を許可し、他方を機構の開発のために留保するという制度(附属書Ⅲ)
  • 希少資源の陸上産出国の経済的影響の最小化のための産出制限(151条):実施協定で援助制へ。
  • 機構や途上国による開発の促進のための技術移転義務(附属書Ⅲ5条):実施協定で一般的な協力義務へ。

海洋紛争の解決

  • 紛争解決のための任意的な方法を大幅に改め、条約本文中に紛争解決のために部を設ける(第15部)最終的には義務的裁判によるものとする。
  • 戦後の主要裁判例:コルフ海峡事件、ノルウェー漁業事件、北海大陸棚事件、国際仲裁裁判所の英仏大陸棚事件、みなみまぐろ事件、国際海洋法裁判所のサイガ号事件、国際調停のヤン・マイエン事件、国際審査のレッド・クルセイダー事件

条約上の解決手続

  • 裁判手続の選択:自主的解決の奨励(第15部第1節)裁判条約等で裁判が義務化している場合はそれが優先(282条)
  • 海洋法条約への加入時に紛争の解決機関を選択:①国際海洋法裁判所(ITLOS)、②ICJ、③仲裁裁判所、④特別仲裁裁判所(287条)
  • 当事国の選択が一致しない、あるいはいまだ存在しない場合は仲裁裁判所
 裁判義務の制限と除外
  • 自動的除外紛争:①排他的経済水域および大陸棚での科学調査に関する沿岸国の決定にかかわる紛争、②排他的経済水域における主権的権利の行使にかかわる紛争。これらは附属書Ⅴの第2節に定める調停に付されるべきものとされた。
  • 選択的除外紛争:①海洋の境界画定の紛争、歴史的湾ないし歴史的権原に関する紛争。②軍事的活動に関する紛争、③安保理の任務の対象となった紛争(298条)。

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