Dancing in the Rain

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Life is not about waiting for the storm to pass but about learning how to dance in the Rain.

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城塞とコロニアル建築、波を運ぶ風【旅行記:プエルトリコ、サン・フアン】

 

久々の週末一人旅、ということでプエルトリコのサンフアン(San Juan)に行ってきたので、備忘録もかねてご紹介。

 

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プエルトリコと聞いて思い浮かべるのは、自分の中ではなんといってもミュージカルの金字塔、ウエスト・サイド物語に出てくる名曲 America です。プエルトリコ系移民たちの、故郷を懐かしく思う気持ちと自由の国アメリカへの理想が対照的に歌い上げられているのが印象的なこの曲。少し歌い出しの歌詞を引用してみます。

Puerto Rico, You lovely island, Island of tropical breezes.
Always the pineapples growing, Always the coffee blossom blowing.
Puerto Rico, You ugly island, Island of tropic diseases.
Always the hurricanes blowing, Always the population growing, And the money owing, And the babies crying, And the bullets flying.

プエルトリコ、南国の風が吹く美しい島、いつだってパイナップルが成っていて、コーヒーの花が咲いている

プエルトリコ、病んだ熱帯の醜い島、いつだってハリケーンがやって来るし、人口は増え続け、借金まみれで、赤ん坊は泣き止むことなく、弾丸が飛び交う

といっても、この映画(劇団四季のミュージカルの舞台も見たような気がするけれど)を見たのはそれこそ中学生くらいで、なんとなくプエルトリコに対する暗いイメージをずっと抱いていたのを覚えています。まあ映画自体暗いですしね。

今や移民(immigrants)というと、ホンジュラスとかグアテマラとか中米からの不法移民ないしその取り扱いに関する人権問題の文脈で語られていて、アメリカにとっては選挙結果を左右するほどの重要なイシューとなっています。

 

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なんとなく週末どこかに行きたいなと思っていて、調べていたら安かったのがプエルトリコ・サンフアン行きのフライトだったんですね。本当はシアトルに行きたかったのだけれど、よく考えたらわざわざ極寒の2月にシアトルにいうというのはあまり賢明な案とは言えないかもしれない。でも3月以降はまた高くなるだろうしなというジレンマもありますが。

改めて地図を見てみると、随分とアメリカ大陸から離れているのが分かります。もはや南米の方が近いのではないかという距離感。キューバ よりも遠い。それに何故だかそもそもプエルトリコが島であるということを前日に気がついて、なんとなくハバナに降り立った初日の苦い記憶がふっと蘇るという(ハバナの話はまた別の機会に書きたいと思います。)。

 

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さて、プエルトリコは少なくとも法律的にはアメリカ領(US Territory)なので、渡航に際して米国のIDがあればパスポートは必要ありません。国内旅行ということになります(もちろん日本から行く場合はESTAが必要です。)。

この法的地位について、一時期は大統領の暗殺計画もあったぐらい独立運動が盛んだったみたいですが、現在では独立国家になろうという機運は下火になっています。それくらい経済的恩恵もあるし、何より米国国民というステータスは大きい。リオ・グランデ川を越えてメキシコからテキサスに入るという無茶な真似をしなくてもいいですし(これを実際にやってアメリカに入国したホンジュラス人の猛者が友人にいるわけですが。)。

それでも、例えば、2017年に結果的に3000人以上の死者を出したハリケーン・マリアに対する米国政府の対応は遅々としたもので、これに対しては国内的にも厳しく批判に晒されました。だからといって、ハワイみたいにプエルトリコを州に格上げしようとしても、民主党支持州(Blue State)となることが確実視されているため、共和党政権はそんなことはやりたくないという政治的現実があります。ちなみに現状だとプエルトリコ人は米大統領選挙には投票できません

 

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話を元に戻すと、僕の個人的なプエルトリコに対する期待は(もちろん良い意味で)見事に裏切られました。

流石に冬なので日は短いけれど、なんといっても暖かい。午後5時くらいだけれど、気温は27度くらいある。空港から市内までバスに乗ると、コインしか使えないと言われましたが、それでもお札しかないよというと無料で乗っけてくれました。ノリのいいラテン・ミュージックをガンガンに流しながら、猛スピードでハイウェイを突っ走るバス。開け放たれた窓から、生暖かい風が吹き込んでくる。スペイン語で世間話をする女性たち。日はだんだんと傾き、燃えるようなオレンジ色へと変わる。外では南国の鳥たちがさんざめくかのように鳴いている。

なんだかほっこりする一幕。ああ、(アメリカなんだけど)また中米に来ちまったなという感覚。こういう第一印象って大事ですよね。

 

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宿を取ったサンフアンの街から、スペイン統治時代の旧市街(Old San Juan)までは約6キロくらいあります。ちなみに、オールド・サンフアンは世界遺産にも登録されていることを帰ってきてから知りました(どれだけ興味がなかったのかという。)。

旧市街までの公共交通機関は途中までバスがあるけれど、それ以降はなし。まあ時間もあることだし、歩いて行くことにします。ギリシャ・サントリーニ島のフィラ(Fira)からイア(Oia)まで歩いたのが10キロだったからまあそれよりはマシじゃないかという思いもあり。ちなみに、サンフアンではアメリカ本土と同じくUnerが使えるので全然歩かなくても観光できます(Lyftは今のところありません。)。

 

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アメリカ本土ですら考えられないことですが、歩道が途切れることなくきちんと整備されています。それだからか見かけるランナーの数も多いです。炎天下の真昼間に走っている気持ちはよくわかりませんが。それでも碧みがかった煌くカリブ海を横目に走るというのは格別なんだろうなと思います。波を運んでくる風も気持ちがいい。

いずれにせよ、外を出歩いている人が多いというのは治安がいいというサインになります。やっぱり中米とは違う。ここはアメリカなのだという安心感もありますが、実際のところ、監視カメラも至る所に設置されているし、パトロール中の警察も多いです。それでもスリには気をつけろというのはよく聞く話です。

 

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コンダッド(Condado)ビーチを通り過ぎます。この辺りはラグジュリーなホテルやレストラン、バーが立ち並んでいる外国人ないしアメリカ本土人の多い賑やかなエリア。何故水着を持ってこなかったんだろうと後悔。思えばいつもそうで、いざ海を目の前にすると飛び込みたくなる衝動にかられます。それにだんだんと日差しも強くなってきました。じわりとシャツを滲ませる汗。 

海沿いを歩いていると、スペイン時代の城塞の跡が残っているのが見えます。強者どもが夢が跡。こういうのはまあ、キューバ に残っているものと同じようなものですが、こちらは米国国立公園局(National Park Service)の管理下にあります。

それから、見慣れない南国の植物はやっぱり見ていて飽きませんね。いくつかこっそり持って帰れないかと思ったりする。とかなんとか考えていると、ペリカンみたいな口をした大きな鳥が悠々と空を通り過ぎていったり、二匹のイグアナが猛スピードで走り抜けていったりしました。こうしてまたシャッターチャンスを逃す。

 

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途中の休憩も含めて一時間半ほどで旧市街までたどり着きました。メキシコのグアナファトとかグアテマラのアンティグアみたいな(既視感溢れる)カラフルなコロニアル建築。観光客向けのレストランとかカフェやバー、スーベニア・ショップなどまた賑やかになり始めます。

街の雰囲気で言うと、イエローやらオレンジやらのスペイン流の色遣いはやはりパッと明るくさせます。そしてなりより時折姿を覗かせる真っ青なカリブ海とのコントラストが美しい。トルコのイスタンブルの旧市街とマルマラ海をなんだか彷彿とさせますが、それでもこの色の対比は他にはない気がする。

 

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特に当てもなく石畳の路地を行ったり来たりしていると、やがてだだっ広い平原に突き当たります。風が強くて、これまでにない開放感。サンファン島の先端にあるスペイン時代の城塞 El Morroモッロ砦と日本語で呼ばれている模様)の遺構です。

この原っぱがまた気持ちいい。凧揚げしている子供がいたり、談笑しているカップルいたり。ビールでも一本空けたくなりますが、ここプエルトリコでも、他のアメリカ諸州と同じく屋外での飲酒は違法です。

プエルトリコのナンバープレートのイラストにも採用されているGarita(張り出し櫓)も特徴的。カリブ最大の城塞(fortification)と言われるだけのことはあって、これらの城塞は、16世紀から19世紀にかけてプエルトリコ防衛の要となってきました。アメリカがやって来るまでは、ということですが。

 

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サンファンは、旧市街だけでなくオールナイトで賑やかな La Placitaとかも楽しいと思います。他にも、サンファンから車で一時間ほどで行ける熱帯雨林とか滝とかビーチとかにも時間があったら行っても良かったかなと思いました。小さな島ではありますが、レンタカーがあると便利です。運転できない場合、公共交通機関がは基本的にはないので現地のツアーに参加することになります。

それから、実際的な Tips になりますが、お金について、基本的にはアメリカ本土と同じくどこでもクレジットカードが使えます。ただし、前述のとおりバスに乗るにはキャッシュ(しかも25セント硬貨)のみです。チップもアメリカと同じく必要。

ネット環境については、だいたいのカフェやレストランには無料Wifiがあります(なお、サンファンの空港には有料Wifiしかありません。)。アメリカの携帯を持っている場合はもちろんそのまま使えます(少なくともAT&Tでは確認。)。言葉については、少なくとも接客業に従事しているような人についてはちゃんと英語が通じます。もちろんスペイン語が話せるに越したことはありませんが。

 

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最後に個人的にお気に入りの写真を二枚。日がちょうど沈んだ後の波打ち際と椰子の木。もう少しで夜の闇に包まれてしまうその直前の儚く消え入っていく前の姿。風が止む。喪われた楽園。

どっか別の南国の島でも撮れるんじゃないかと言われそうではありますが、それでもなんだか不思議と好きな雰囲気です。

 

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