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(1)国際貿易機関(WTO)の紛争解決システム 【国際経済法】

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後出しですが、国際貿易機関(WTO)の紛争解決手続についてまとめました。小委員会(パネル)や上級委員会のプロセスなど、国際司法裁判所(ICJ)とは全く異なるシステムなので、国際経済法を学び始める前に理解しておく必要があるかと思いました。また、近年、日本と韓国の間の紛争で世間的にも話題になっていましたね。

写真はアリゾナ州・フェニックスから。夕日をバックにひっそりとたたずむサボテンたち。

 

国際貿易機関(WTO)における紛争解決 

  • 国家間において紛争が生じた場合、国際法上、相手国の同意がなければ司法的解決はできない。ex. 国際司法裁判所(ICJ)の管轄権
  • 国際貿易機関(World Trade Organization, or WTO)は、自動的かつ義務的(automatic and compulsory)な紛争処理システムを採用。すなわち、他の締約国に対し、WTOがカバーする協定上の紛争について、一方的に紛争解決手続を開始することが可能。この紛争は主として貿易上の問題ではあるが、付随的に健康や環境問題、公序や国家安全保障といったセンシティブな問題も含みうる。
  • WTOの紛争解決システムは、詳細な手続事項、上訴プロセス、履行確保制度、判例法の蓄積などの特質から、締約国によって頻繁に利用されてきた。ex.1995年から594件以上のケース
  • 紛争解決機関(Dispute Settlement Body, or DSB)は、全ての加盟国により構成。実質的には一般理事会(General Coucil)と同じ構成ではあるが、独自の議長を有する。DSBは、小委員会(パネル)の設置、パネル及び上級委員会の報告書の採択、勧告や決定の履行監視、譲許の停止の許可など、紛争解決手続上の意思決定機関として機能。

関連規定:GATT及び紛争解決了解

  • GATT第22条及び 第23条は、WTOの紛争処理システムの基本的な原則を規定。具体的な手続的ルールについては、紛争解決了解(Understanding on Rules and Procedures Governing the Settelement of Disputes, or DSU)が定める。
  • GATT第23条によれば、締約国は(a)他の締約国が協定上の義務を怠るか、(b)何らかの措置を適用するか、又は、(c)その他いかなる状況の結果として、この協定に基づいて与えられた自国の利益が無効化若しくは侵害(nulified or impaired)されたか、又は、この協定の目的の達成が妨げられていると認める場合に紛争処理手続を開始することができる。 
  • 典型的には、(a)の義務違反により、協定上の利益が無効化又は侵害されたと主張するケースがほとんど。なお、(c)その他の状況で認められたケースはない。
  • また、義務違反だけでなく利益の無効化又は侵害も要件となるが、申立国が協定の義務違反の立証に成功した場合、無効化又は侵害について存在するものと推定される(DSU第3条8項)

紛争解決了解(DSU)上の紛争解決手続

DSUによれば、紛争解決手続は、協議、小委員会(パネル)、上級委員会、履行監視の4段階からなる。

協議(Consultation )

  • 協議(consultation)は紛争解決の第一段階として規定される。協議は、事実や法的主張の確認や、これ以上の手続を進めることなく紛争を解決することを目的とする。またこの段階では、WTO事務局長の仲介や周旋(good offices)も利用される。
  • DSUは、協議について、その要求から30日以内に開始しかつ誠実に(good faith)行われなければならないことを規定するが、協議の形式や形態等については定めがない。

小委員会(Panel)

  • 協議の要求から60日以内に紛争が解決しない場合、申立国(complaining state)は、DSBに対し小委員会(パネル)を設置するよう求めることができる。DSBは、反対のコンセンサスがない限り、当該要求から次の会議までの間にパネルを設立しなければならない。
委員の選定
  • パネルが設置された後、DSBはパネルを構成する3人の委員(panelist)を選定する。委員は、(1)政府職員、(2)WTO事務局員、(3)貿易についての学識経験者又は弁護士に大きく分類される。
  • 当事国の間で合意がない限り、当事国及び関連する第三国の国民は委員となることができない。また、発展途上国が当事国の場合、要求があれば、委員のうち一人は途上国出身でなければならない。
  • 事務局(Secretariat)は、委員の候補者の名前を提示する。当事国は、やむにやまれぬ理由(compeling reason) がある場合に限って、提示された候補者を拒否できる。
  • パネルの設置から20日以内に委員の選定に合意できない場合は、当事国の要求に基づき事務局長が委員を選定する(要求から10日以内。)。
  • 委員は、独立し中立で、当事国と利害関係を有するものであってはならず、これに反する場合、当事国は委員を変更するよう要求する権利を有する。
審理手続
  • 申立国は、問題となる特定の措置及び主張の法的根拠について付託事項(terms of references)として決定し、書面により提出。その後、通常2回の実質的な審理が行われる。いずれの審理の前にも主張を書面にて提出する、
  • パネルは、関連するWTO法に照らして、当該措置を検討し、事実及びWTO法適合性についての客観的評価(objective assesment)を行った上で、DSBにおいて採択すべき報告書を作成する。
  • 上級委員会の判例によれば、証明責任(burden of proof)は、特定の主張や防御について主張するものが負うが、主張が真であると推定できるのに十分な立証がある場合は、証明責任は他方の当事国に転嫁する。
  • 申立国は、広範な法的問題を提起することが多いが、パネルは訴訟経済を行使。すなわち、全ての問題について取り扱う必要はなく、この立場は慣例として確立。
報告書の作成(Final Report)
  • パネルは、その設置から遅くとも9ヶ月以内に報告書を作成(ただし実際には守これを超過することが多い。)。報告書は、義務違反がある場合はそれを認定し、問題となる措置について是正するように勧告。パネルは、具体的に履行するための提案を行うことも権限として可能であるが、実際に行使することは稀。違反国にいかにして違反状態を是正するかの裁量があるとの立場。
  • 報告書は、逆コンセンサス(negative consensus)によりDSBにおいて採択。逆コンセンサスとは、全ての加盟国が報告書に採択しないことにつき同意しない限り、報告書は自動的に採択されるという意思決定方式。非申立国は、採択をブロックすることができないが上級委員会に上訴することができる。

上級委員会(Appellate Body)

上級委員会の構成
  • 上級委員会7名の委員により構成。DSBにより任命。任期は4年。再任は一回限り。
  • 上級委員会は、事務局長と協議の上、独自に訴訟手続を設定可能。
  • 上級審は3名の委員(Division)によって審理されるが、報告書作成にあたっては、他の4名の委員とも意見交換を行う。3名の委員選定にあたっては、ランダム性や平等性に基づく非公開の手続による。
  • なお、2019年12月、2名の委員が任期満了により退任したが、トランプ政権の米国が新委員の任命をボイコットした。これにより、委員の数は、審理を行うための最低人数である3人を割り込むことになり、上級委員会は実質的に活動停止状態にある。
報告書の作成
  • 上訴の日から60日(最大90日)以内に報告書を作成しなければならない。報告書は、逆コンセンサス方式によりDSBにおいて自動的に採択される。
  • 上級委員会の審理は、法及び法解釈に関する問題に限られるが、広範な決定権を有する。すなわち、パネルの報告書の破棄(reverse)、変更(modify)、又は維持(affirm)することが可能。しかし、DSUはパネルへの差戻し(remand)については規定せず
  • この結果として、上級委員会は、パネルの報告書の理由づけを大きく変更する場合に、当事国が手続を一からやり直さなければならなくなるのを避けるために、特定の問題についての分析を完成させることが慣例となっている。

履行監視(Surveilance of Implementation)

  • 違反国は、パネル及び上級委員会の報告書の採択から30日以内に、DSBに対して履行の意思を表明しなければならない。
  • 即時に履行することが現実的でない場合、履行のための合理的な期間(a reasonable priod of time )合意又は仲裁により設定できる。この期間は15ヶ月を超えてはならない。合理的な期間の決定の6ヶ月後、DSBの定期的な会議において進捗状況を報告しなければならない。
  • DSU第22条は、合理的な期間の経過までに履行がされない場合、救済措置として補償(compensation)を規定。具体的には、報復措置などの譲許の停止(suspension of concessions)の承認をDSBに求めることができる。DSBは、期間経過から30日以内に逆コンセンサスによりこれを承認しなければならない(ただし実際に譲許停止の承認が要求されることは極めて稀。)。
  • 十分な履行がなされたかについて疑義がある場合(不履行と区別)は、当事国は、元のパネル(履行確認パネルとも)において争うことができる(DSU第21条)履行確認パネルは通常一回のみで、90日以内に報告書を作成しなければならない。

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