Dancing in the Rain

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在テヘラン米国大使館事件 本案判決

米国 VS イラン 国際司法裁判所

1980年5月24日

<経緯(在テヘラン米国大使館事件 仮保全措置命令以降>

 1979年12月15日、ICJは人質の解放、大使館の明渡し等を内容とする仮保全措置を命令。

 1980年4月24日、米軍は海軍ヘリによる人質救出作戦を行うも失敗。米国は、安保理への報告の中で、これは国連憲章51条に基づく自衛権の行使であり、自国民救済のための人道目的の措置と説明。同年5月24日には判決。最終的にはアルジェリアの仲介を待って1981年1月19日に達成。

<判決要旨>

 ⑴イラン側は不出廷であるが裁判可能(前出)

 ⑵法律的紛争と政治的紛争は不可分である=混合紛争論(前出)

 ⑶ICJと安保理の同時係属について

 国連憲章12条は「総会」について制限しているが、裁判所については規定せず。

 法律的紛争を解決することは、国連の主要な司法機関である裁判所の任務である。

 法律的な解決は紛争の平和的解決の決定的な要因になりうる。

 したがって、安保理と裁判所が同時に活動することは可能である。

 ⑷管轄権の基礎:外交関係条約議定書と領事関係条約議定書

 ⑸国家責任の有無

⒈義務違反行為のイラン政府への帰属

  原則として、大使館を襲撃した過激派学生は公的地位を有していたとは言えず、また、イラン国の権限ある当局から具体的な任務を与えられ国家のために行動していたとは立証されなければならないが、そのような関係は認められないため、過激派学生の行為をイラン政府に帰属させることはできない。

  しかし、イラン自身の不作為=米国大使館及び領事館、館員、公文書及び通信手段の保護、館員の移動の自由の確保のための措置を講じなかったことは、ウィーン外交関係条約及びウィーン領事関係条約条の義務のみならず一般国際法上の義務に違反している。よってイラン自身の行為は明白で重大な義務違反を構成する。

  また、大使館占拠後、イラン政府はあらゆる努力手段を講じ占拠を終了させなければならない義務が存在したにもかかわらず、そのような措置は取られず、加えて、学生による占拠を承認し、ホメイニ師自身が大使館占拠及び人質行為をを支持を明瞭にした。これらにより大使館占拠及び人質行為は国家の行為へと変容した。

⒉責任阻却事由の有無

  イランは、米国が25年以上にわたりスパイ活動を行い、国内問題への介入を行ってきたと主張。これはイランの行為を正当化する特別な事情と言えるか。

  同主張が立証されたとしても、イランの行動を正当化できない。外交法の規則は自己完結的な制度であり、違法行為に対する防衛及び制裁として取り得る必要な措置を規定している(外交関係条約9条及び領事関係条約23条1項及び4項のペルソナ・ノン・グラータなど)=外交法に認められた以外の制裁行為は許されない。

  米国の人質救出作戦はいかなる動機によるものであれ、国際関係における司法過程への尊重を害する行為であり、また、裁判所による両国に対する紛争を激化させない命令を想起させる。しかし、この行為の合法性については申し立てられておらず、またこの行為はイランの行為に対する評価とは無関係である。

 したがって、裁判所は、国際条約及び確立した一般国際法上の義務違反を認定し、イランの国家責任及び賠償義務を認める。その上で、人質の解放、出国の保証、大使館及び領事館の明渡し、及び館員の身分保障を命じる。 

<論点>

⑴裁判所は伝統的な政治的紛争論を否定。ここから裁判所と安保理の同時係属の可能性があるがこれを容認。しかし、この点につき争いがある。

⑵私人の行為であっても、国家に国際法上の防止義務違反がある場合、国家責任が発生することを確認。私人の行為を国家が承認した場合にも国家に帰属(国家責任条文11条で採用)することが明らかにされた。

⑶米国の人質救出作戦につき、裁判所は非難はしたが、自国民保護のための武力行使の合法性については判断せず。またイランは不出廷のため、仮保全措置命令違反かどうかについても検討されず。

⑷自己完結制度とは、外交法上、必要な救済策が規定されており、それ以外の対抗措置はとりえないという考え方であるが、一般国際法上の対抗措置が禁じられているわけではない。またペルソナ・ノン・グラータによって外交官を追放してもそれが真の問題解決になるかは疑問が残る。

 

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旧在テヘラン米国大使館(2016年3月3日撮影)

 

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