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(26)国際刑事法 個人の国際犯罪

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個人の国際犯罪と国際刑事裁判所(ICC)についてざっくりとまとめました(以前、国際法上の個人 III とラベリングしていたもの。)。

 

個人の国際犯罪

  • 国際法によって規律される犯罪という意味での「国際犯罪」cf. 海賊は「人類一般の敵 hostis humani generis」
  • 単に当該犯罪が行為が渉外性・国際性を持つにすぎないもの ex.実行地が複数にまたがる場合や犯人の国外逃亡の場合=国際的司法共助が必要となっても国内法上の犯罪にすぎない。
  • 行為主体が「国家」である場合は、国家責任の問題。
  • 国際的規制犯罪と狭義のの国際法上の犯罪の区別。特に犯罪の追及方式に本質的な隔たり。

国際的規制犯罪

  • ある行為が各国の共通の法益を侵害するものであるために国際法がこれを処罰すべき犯罪と定めることを受けて、各国が国内法の制定を通してその処罰の手続を設ける形態の犯罪。
  • 国際法は、処罰の対象犯罪の内容を特定化した上で、各国の刑事裁判権の行使の枠組を定めるにとどまり、具体的な裁判手続や罰則は各国内法に委ねられる。
(1)慣習法上の国際的規制犯罪
  • 主として海賊行為と伝統的戦争犯罪
  • 海賊に対する普遍的管轄権:海上交通の安全という共通法益の侵害と、いかなる国の管轄権にも服することを拒否するため(英海事高等裁判所)
  • 伝統的戦争犯罪:軍隊構成員の交戦法規の違反や非戦闘員の敵対行為の参加などの戦時国際法の違反。自国の軍事法廷で処罰し得ることが広く認められてきた。
(2)条約上の国際的規制犯罪
  • 第二次世界大戦後、新たな形態の国際的規制犯罪が発展。
  • 条約をもってある特定の行為を処罰すべき犯罪とした上で、刑事裁判権につき普遍主義をとる。上記2例と異なり、刑罰権の行使を義務付ける。
  1. 先駆的条約例:1884年海底電信保護条約、1921年婦人及び児童の売買禁止に関する国際条約。
  2. ジュネーブ諸条約の戦争犯罪:1949年ジュネーブ4条約は一定の違反行為を「重大な違反行為」とし、これらの犯罪に対しては有効な刑罰権の行使のための立法措置を義務付けると同時に、普遍主義を導入。
  3. 国際テロ関係条約の規制犯罪:1970年ハイジャック防止条約、1979年人質行為禁止条約。容疑者所在地国は当該容疑者との結びつき(国籍、実行地、被害法益等)を問わずに「引渡しか訴追か」の義務を負う=いずれかの国による処罰の実現。ただし、条約であるので非締約国に適用はない。   

国際法上の犯罪

  • その違反が国際社会の一般法益の侵害として国内法を介さずに国際的手続によって直接処罰されるものを国際法上の犯罪という。
  • 第一次世界大戦後のヴェルサイユ条約はドイツ皇帝の開戦責任を追及するための特別法廷の設置を規定したが、オランダの引渡し拒絶により実現せず。
  • ニュルンベルク軍事裁判及び極東国際軍事裁判条例は、「平和に対する罪」と「人道に対する罪」を裁判の対象とする。
平和に対する罪 crime against peace

侵略戦争ないし国際法に違反する戦争の計画、開始もしくはその共同謀議への参加。

人道に対する罪 crime against humanity

上記犯罪の遂行に伴って、またはこれに関連してなされた一般市民に対する殺りく、殲滅、奴隷化等の非人道的行動や迫害行為であって戦前戦時中になされるもの。

  • 戦後の展開:国連総会決議51(1946年):ニュルンベルク軍事裁判で承認された「国際法の諸原則」を確認する決議、ジェノサイド条約(1948年)、戦争犯罪及び人道に対する罪に関する時効不適用条約(1968年)
  • アドホック刑事裁判所の創設:国連憲章7章の強制措置の一環として設置。タジッチ事件でその合法性を承認。
1993年旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)

安保理決議808により設置:①ジュネーブ諸条約の重大な違反行為、②通例の戦争犯罪、③ジェノサイド、④人道に対する罪を管轄。

1994年ルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)

安保理決議955により設置:①ジェノサイド、②人道に対する罪、③ジュネーブ共通第3条及び第2追加議定書違反を管轄。

  • 前者は内戦と国際的武力紛争という両側面を持つのに対し、後者は内戦にとどまった。
  • 今日では、平和に対する罪=侵略犯罪、ジェノサイド、人道に対する罪、ジュネーブ諸条約の重大な違反、戦争犯罪(狭義)が「国際法上の犯罪」と認められるに至る。

国際刑事裁判所 Internatonal Criminal Court

  • 国際法上の犯罪を扱う常設裁判所としてローマ規定(1998年採択・2002年発行)により設置。
  • 裁判所の管轄権は「国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪=コア・クライムに限定される」とした上で、具体的には、以下を規定。

 (a)ジェノサイド罪(b)人道に対する罪(c)戦争犯罪(d)侵略犯罪(5条1)

 cf. ジュネーブ諸条約の重大な違反は「戦争犯罪」に含む。

  • 侵略犯罪は、その定義と管轄権行使の条件に関する見解の対立により、新たな定義規定と必要な条件が成立するまで裁判の対象としないこととなった(5条2)
  • 2010年規程検討会議:侵略犯罪について、予審裁判部の許可がある場合には締約国と検察官による事件の付託を認める。また、侵略の判定基準として1974年総会決議「侵略の定義に関する決議」を採用。
  1. ジェノサイド罪:ジェノサイド条約の定義規定をそのまま採用(6条)
  2. 人道に対する罪:武力紛争との関連づけを取り除く一方、文民に対する「広範なまたは組織的な攻撃」の一部として、またかかる攻撃であることを「知りながら」行う行為に限定(7条)
  3. 戦争犯罪:ジュネーブ諸条約の重大な違反、戦争の法規、慣例の重大な違反及び国際的性質を有しない武力紛争におけるジュネーブ共通第3条の重大な違反を含み、その上で、それらの犯罪が「とくに」計画もしくは政策の一部として、またはどう犯罪の大規模な実行の一部として行われる場合に限定(8条)

国際刑事裁判所の管轄権

自然人の重大な国際犯罪を裁く機関:国家紛争を取り扱う通常の国際裁判所とは本質的に異なる管轄権制度。

(1)自動的管轄権
  • 国家が締約国となることによって裁判所の管轄権を自動的に受諾したものとする(12条1)個別的同意を要しないが、侵略犯罪については別の方式が予定。
  • 前提条件として一定国家の加入:犯罪地国ないし被疑者の本国のいずれかが締約国であること(12条2)ただし、安保理が付託する場合は例外。
  • 批判:(1)非締約国の国民でも被告人とされうる、(2)被疑者拘束国を管轄権行使の許容要件に定めていない。特に戦闘地域での非戦闘員の殺害や不適切な捕虜取り扱いなどにより自国民の訴追の恐れがある米国は強硬に反対。
  • 異なる管轄権システムの併存:提訴権を有するのは(a)締約国、(b)安保理、(c)検察官
(2)対人管轄権
  • 裁判権は「自然人」を対象(25条1)公的地位職責は責任の追及とは無関係(27条)
  • これまで国際法は、国家機関の地位にあるものの行動は国家の行為とみなし、「国際責任」を問題としてきたが、重大な国際犯罪は国家機関にある個人の責任を追求せずには防止できないという理解(ニュルンベルク裁判)

【判例】ジェノサイド条約適用事件(2007年):一定の行為については個人と国家の「責任の二重性」が認められる。

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(3)補完性の原則 principle of complementarity
  • 国際刑事裁判所の管轄犯罪は国内裁判でも処罰の対象であり管轄権の競合が生ずることになる。
  • 国際刑事裁判所は「国内刑事裁判権を補完する」(前文1条)主権尊重の概念が考慮。国内裁判権に優位性。
  • 受理可能性:次の場合、裁判所は事件を受理することができない
  1. 管轄権を有する国が事件を捜査訴追しているとき
  2. 捜査した国が不起訴と決定した場合(c)そのものがすでに裁判を受け、規定20条の一事不再理が適用されるとき
  3. 事件が十分な重大性を有していない場合(17条1)

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