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(8)外国法の適用と公序【国際私法】

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外国法の適用

  • 国際私法により外国法が準拠法として指定された場合に、当該外国法は国内法との関連でどのように捉えられるべきか問題となる。
  • 学説は、外国法事実説と外国法法律説に分かれ、後者はさらに外国法編入説と狭義の外国法法律説(通説)に分類される。
  • 通説は、抵触規則が外国法にその適用の根拠を与えるため、外国法も準拠法としての資格において国内法となんら差異はないとする。
  • 外国法の解釈:その外国で解釈されるのと同じように解釈・適用すべきである。条理、学説、判例など法源性の問題も、その外国の法秩序の観点から判断されねばならない。

憲法との関係

  • 外国法が準拠法選択によって内国法に変質する(外国法編入説)とすれば憲法の下位に位置付けられることになるが、通説(外国法法律説)は、国際私法上の公序を通じて排除されるとする。
  • しかし、内国憲法規範も事案の国際性を考慮して準拠外国法に適用されるとすれば結論に差異はない。

外国法の不明

外国法も判断基準という点では通常の法規と異ならず、裁判官が職権でこれを確定する義務がある。この点、外国法の内容が不明である場合にどのように対処するべきかにつき争いがある。

(1)請求棄却説
  • 原告が請求原因事実の証明に失敗したものとして棄却すべき。
  • 批判:根拠がなく、また、裁判拒否と同様の結果をもたらす。また、確実に確定できない場合も不明とする立場であり、代替的な別の手段を用意していない。
(2)条理説

当該外国の他の法制度や一般原則を参照するとする説。

(3)近似法説

外国法と比較法的に最も近似している法内容を参考にするとする説。この場合、調査費用や時間的限度から内容がどうしてもわからない場合を「不明」と捉える。

(4)補助連結説

連結が失敗したということであるから、本来の連結の次の順位の連結点で再考するとする説。

(5)法廷地法説

判断基準の不在を避けるために、手続法上、やむを得ない手段として外国法の代わりに法廷地法を適用するとする説。相当な手段を尽くしても合理的期間内に外国法の内容を確定できない場合は内国法で補充することは認めざるをえないとする。

外国法の適用排除−公序

  • 国際私法は、準拠法を選択するに当たって、外国法の内容については考慮しない(「暗闇への跳躍」)したがって、準拠法となる外国法の適用結果が、法廷地の私法秩序に照らせばこれに反する場合がある。ex. 重婚、一夫多妻制、男女平等違反
  • 公序:抵触規則によって指定された準拠外国法を我が国で具体的な事実に適用した結果、我が国の私法秩序の中核部分をなす法原則や法観念が破壊される恐れがある場合に例外的にその適用を排除するもの(法の適用に関する通則法第42条)
  • 適用排除の手法として、例外条項を規定する国際私法もあり。スイス国際私法は、抵触規則により指定された準拠法よりも、当該事案において、より密接に関係する法がある場合に、本来の連結を覆してその法を準拠法とする。
通則法第42条(公序)
外国法によるべき場合において、その規定の適用が公の秩序又は善良の風俗に反するときは、これを適用しない

国家的公序と普遍的公序

  • 公序を、当該国家に固有の公序(例えば、日本国憲法下における秩序)である国家的公序と捉える立場と、国家から離れて人類に共通の私法上の普遍的公序を観念すべきとする立場が存在。
  • 少なくとも欧州人権条約との文脈においてはヨーロッパにおいてはヨーロッパ公序が存在するとする見解もあり。

公序則の発動要件

(1)適用結果の反公序性

我が国の強行規定違反が直ちに通則法42条の公序違反となるのではなく、外国法の適用結果が、我が国の私法秩序の中核部分に反するか否かが判断基準となる。したがって、民法90条の公序良俗とは区別される。

(2)内国関連性

公序による適用排除となる事案が我が国との密接な関連性(内国関連性)を持つものでなければならない。内国関連性がなければ中核部分への衝撃は弱まるため。もっとも反公序性がない場合には事案の内国関連性が高くてもそもそも公序違反とならない。

公序則発動の効果

公序により準拠法たる外国法の適用が排除される場合、どのように処理すべきかが問題となる。これについて、二者択一的な判断が求められる場合は結論に差異は生じない。

(1)欠缺肯定説(判例・通説)

内国法適用説(判例):法廷地の法によるべきとする。
補充的連結説:次段階の密接な関係地法によるべきとする。 

(2)欠缺否認説(有力説)

適用を排除した段階で具体的な結論が出ており、改めていずれかの国の法を適用するなどして法規範の補充をする必要はないとする説。

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労働法(国家公務員試験対策)【目次】

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完全に国家公務員試験の択一用です。たぶん過不足なく書けていると思います。学部の試験は受けていないので記述はあっさりめ。理解も深くないです。加えて2015年度以降の法改正についても全くフォローしていないです。 

目次 

(1)労働契約

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(2)解雇

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(3)賃金

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(4)労働時間・休憩・休日

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(5)年次有給休暇

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(6)年少者・女性

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(7)就業規則・懲戒

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(8)労働組合

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(9)団体交渉

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(10)争議活動・組合活動

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(11)労働協約

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(12)不当労働行為

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(13)争議行為の救済・紛争解決

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 ベースはいわゆる「スー過去」です。択一だけだったらこれ一冊で十分な気がします。

 

(7)連結点:国籍及び常居所【国際私法】

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連結点の確定

  • 狭義の国際私法(抵触規則)は単位法律関係について、連結点を用いて、準拠法を指定する。
  • 連結点の確定は、弁論主義によるべきか、それとも裁判所が職権で探知するべき(職権探知主義)かが問題となる。
  • これについて、弁論主義によるとするのが多数説:訴訟手続とは、要件事実に該当する事実を確定し、それにより実体法上の法律効果を確定するという構造を取っているため。

連結点の分類

客観的な連結
  • 属人的連結:国籍・常居所
  • 属地的連結:物の所在地、行為地、事実の発生地
主観的な連結
  • 当事者自治(合意による準拠法の選択) 

国籍・常居所の確定

属人法:どこへ行ってもその人に付随して適用される法律を指し、人の身分及び能力についてはこれに従うべきとされてきた。

  • 本国法主:国籍を連結点とするべきとする立場。 ex. スイスを除くヨーロッパ
  • 住所地法主:住所を基準とすべきとする立場。 ex. 英米、ラ米諸国

国籍

  • 国籍とは、個人が特定国家の構成員である資格を指す。
  • 国籍の得喪国際法上、国家の国内管轄事項であるとされる。
我が国の国籍法
  • 1899年の旧国籍法は血統主義を基本としつつ婚姻や養子縁組等によって夫婦や親子となったものの国籍を同一とする家族国籍同一主義を採用。
  • 1950年の現行国籍法は家族国籍独立主義、1984年には女子差別撤廃条約を受けて父母両系主義へ。
  • 国籍法は、国籍の取得(出生、認知、帰化国籍選択制度、国籍の喪失について規律。
重国籍者及び無国籍者の本国法
  • 重国籍法の適用に関する通則法38条1項):内国国籍優先の原則。まずは日本、外国籍同士の場合は常居所のある外国が優先、常居所のある外国がない場合は最密接関係地(国籍取得の経緯、居住状況、親族居住の有無、往来の状況等を総合的に判断)
  • 無国籍(同法38条2項):常居所地法による。ただし、本国法として同視することはできない(25条ないし27条、32条の場合を規定)

通則法第38条 (本国法)

1 当事者が二以上の国籍を有する場合には、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。ただし、その国籍のうちのいずれかが日本の国籍であるときは、日本法を当事者の本国法とする。
2  当事者の本国法によるべき場合において、当事者が国籍を有しないときは、その常居所地法による。ただし、第二十五条(第二十六条第一項及び第二十七条において準用する場合を含む。)及び第三十二条の規定の適用については、この限りでない。 

常居所

常居所とは、一般に、人が居所よりは長期の相当期間にわたり常時居住する場所をいう。

住所概念の相違:英米法のドミサイル
  • 出生によって親から取得する本源住所、一定年齢に達した後に自己の選択によって取得する選択住所、特定の人の住所に依存する従属住所の区別がある。無住所・重住所は認められない。
  • 選択住所は、そこを本拠(home)とする意思、すなわち、永住の意思がなければ認めれない。英米法においてはこれは本拠(domicile)ないしドミサイルとされ、一つしか持つことができない。
  • この住所概念の相違から、ハーグ国際私法会議において住所の代わりに常居所概念が生まれる。
国際私法による規律
  • 旧法例では、遺言の方式、扶養義務の準拠法のみであったが、平成元年改正により、婚姻や親子関係等の規定において法例14条ー16条、21条において第二順位の連結点として導入(通則法25条ー27条、32条)
  • 通則法においては、財産法分野においても、8条2項、11条、15条、19条、20条など契約や不法行為においても広く用いられるようになった。
常居所決定の具体的基準
  • 通則法に規定ないが、居住の目的、期間、状況等の諸要素を総合的に考慮して判断しなければならない。また常居所取得の意思は問題とならない。
  • 常居所が不明の場合は、居所地法によるが、それを準用する規定には適用がない(通則法第39条)
  • 通則法によって新たに設けられた財産法分野における常居所概念と従来の身分関係のおけるそれと同一のものと解釈されるべきかについては争いがある。
  • 同一説:概念の相対性といっても、同一の法律中の概念は基本的に同内容とするのが原則であるように思われ、統一的に理解するのが基本である。身分関係で厳格に解していた常居所概念は緩やかに捉えていく方向が考えられる。
  • 異別説:本国法に代わる場合は社会的統合を重要な要素と安定性のある基準であることが望まれる(固定性・安定性を重視)一方で、扶養義務などの保護法的な事項に関しては安定性や社会的統合は不可欠の要素とはいえない。

 

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(6)法律関係の性質決定【国際私法】

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この記事では、国際私法における法律関係の性質決定についてできるだけ分かりやすく簡単にまとめています。

●国際私法学習のオススメの参考書はこちら

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意義 

  • 法律関係の性質決定とは、抵触規則(狭義の国際私法)のうち指定概念(ex. 「相続」「婚姻」)の内容を解釈・確定し、問題となっている法律関係の法的性質を決定して、その指定概念に含まれるかどうかを決めること。
  • 例えば、不法行為による損害賠償債務の相続という問題の場合、抵触規則が適用される単位法律関係は、「不法行為」なのか「相続」なのかが問題となる。逆に言えば、(日本の場合だと)法の適用に関する通則法の第17条の「不法行為」の問題なのか、第36条の「相続」の問題なのかを決定(=法律関係の性質決定)しなければ、適用すべき準拠法を決定できないことになる。
  • このように問題となっている法律関係は多様であるのに対して、抵触規則の定める指定概念は概括的であるために問題となっている法律関係が複数の規定の定めるいずれの単位法律関係に該当するのか一見しただけでは明らかではない。

具体的に問題となるケース

  • 共同相続人の一部が相続財産を第三者に処分した場合の相続人の処分権の有無は、相続の問題か物権の問題か
  • 離婚の際の親権者指定は、離婚の問題か親子間の法律関係の問題か
  • 債権質は、物権の問題か客体である債権自体の問題か
  • 不法行為の基づく損賠債務の相続は不法行為か相続か
  • 契約債務の時効は債権を発生させた法律行為の問題か手続きか
  • 離婚に至る行為を原因とする慰謝料請求は不法行為か離婚か
  • 前婚無効の後婚の有効性は前婚の効力か後婚の成立か

解決方法

19世紀末、抵触規則が統一されても、指定概念の解釈が各国で異なるのであれば法の抵触を完全に除去することはできないという問題意識から、法律関係の性質決定が論じられるようになった。

法廷地実質法説

  • 性質決定は法廷地の実質法により決定されるべきであるとする立場。例えば、法廷地が日本であった場合は、「相続」という単位法律関係について日本の民法における「相続」と同一の概念と捉える。
  • 主権理論からの説明:抵触法により外国法を適用するのは主権の制限であり、性質決定の基準を自国法ではなく外国法に委ねれば主権侵害を招くことになる。
  • 法秩序維持からの説明:国際私法も国内法の一部であるから、一国の法の解釈として抵触規則に含まれる指定概念は特に反対の定めのない限り、法廷地実質法上の同一のものと解すべき。
  • 批判:国際私法はあらゆる国の法制度を内包しうるものでなくてはならず、また、法廷地法を優先させることは内外法平等の前提に反することになる。例えば、日本人と一夫多妻制をとるムスリムとの離婚については、日本の実質法上概念としての単位法律関係が存在しないことになる。

準拠法説

  • 準拠実質法上の概念を基準とする。ex.準拠法が米国法であれば性質決定も米国法による。
  • 批判:性質決定がなされなければその法律関係の準拠法は決定されないのだから、その準拠法によって性質決定を行おうとすれば循環論に陥る。

国際私法自体説

  • 抵触規則の指定概念の解釈は国際私法独自の立場から行われなければならない。国際私法の目的と機能が実質法とは異なることを考慮すれば、抵触規則の解釈を行う際は実質法上の概念に拘束されず、国際私法独自の観点から自律的にその解釈を行う必要がある。通説。
  • なお、判例は、具体的基準については抵触規則の解釈問題であり、関連する抵触規則間の事項的な適用範囲の確定の問題として、それらの規定の趣旨・目的を考慮して指定概念を構成すべきであるとする。

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