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国際経済法(WTO法)【記事一覧】

 

この記事では国際経済法(WTO法)に関する記事の一覧を作成しています。

 

国際経済法(WTO法)

(1)紛争解決手続

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(2)譲許表

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(3)非関税障壁ー量的制限

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(4)内国民待遇ー国内税

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(5)内国民待遇ー国内規制

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(6)一般例外条項

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(7)補助金と相殺関税 I

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(8)補助金と相殺関税 II

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(9)アンチ・ダンピング措置

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(10)セーフガード措置

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(11)安全保障例外

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(5)外国判決の承認・執行 【国際私法】

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この記事は、国際私法における外国判決の承認及び執行についてまとめています。

 

総説

  • 外国で発生した出来事をわが国において法的に評価するには準拠法選択と外国判決の承認という方法がある。
  • 準拠法選択は、外国判決がなされる前の段階で、実体法上の問題について、複数ある外国の法(準則)から適用すべきものを選択し、適用されることで具体的結論を得るものであるのに対し、外国判決の承認は、すでになされた具体的で断定的な外国判決(決定)の効力をわが国でも認められるかを判断する。
  • 訴訟法上は、前訴判決があればそれが実体法上誤ったものであっても既判力によってそれを前提に処理されるところ、外国判決にもこの前訴判決と同等に扱うことができるか判断するものである。一方で、準拠法選択の場合、当該事実関係につき一から適用について判断していくことになる。

外国判決承認制度の根拠

  • 外国判決は外国の主権たる司法権の作用の結果であり、当然にはわが国では効力を持たない。またこれを承認しなければならないとする慣習法上の義務もない。ではなぜ承認制度を自発的主体的な判断として設けているのか。
  • 勝訴した当事者にとっては、もう一度わが国で裁判をやり直さないといけないとすると外国で時間や労力、資金を費やした訴訟活動が無駄となり酷である。
  • 敗訴した当事者にとっては、わが国で最初から同じことを争うことができるとするのは都合が良すぎるとも考えられる。
  • また、社会的にも外国判決の承認によって国際的な法的交流が円滑に行われ促進されることにもなる。承認国としては、自国で本案審理を再度行う必要がなくなり裁判所の人的物的資源を節約できる。 

以上の理由から、わが国では一定の要件のもとに、外国判決の承認執行を認めている。

基本原則

(1)実質的再審査の禁止

外国判決を承認するか否かの審理の際に、事実認定や法適用につき過りがないかをチェックすることの禁止するという原則。これを認めると国内の上級審が下級審の判決を再審査するのと等しく、実質的に外国判決を承認しないのと等しい。

(2)自動承認の原則

承認のための特別の手続を要しない。強制執行の場合は、執行判決という執行許可が必要(民執22上6号、24条)

承認要件  

  • 承認要件は民訴118条により規定。まず前提として承認対象となる判決は何かという承認適格性(同条柱書き)の問題があり、個々の承認要件は1号から4号により規定
  • 実体的再審査は禁止されることから、審査は外国判決における手続が適正であったかの点が中心となる。
  • 特に問題となる間接管轄(1号)と訴訟手続開始文書の送達(2号)は個別に規定し、それ以外の手続的な問題は手続的公序(3号)で判断される。内容面の審査は原則として行われないが、準拠法選択における国際私法上の公序と同様に承認国として譲ることのできない基本的秩序・価値を守るために実体的公序(3号)の規定が置かれている。最後の相互の保証(4号)は政策的に認められたもので位置付けが困難である。

第118条

外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。

一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。

 

承認適格性

承認の前提としてその対象が外国裁判の確定判決であることが必要となる。

(1)確定

未確定の場合に承認した場合、上級審で判決が覆った場合に混乱。確定しているとは、もはや通常の不服申し立てが出来ない場合をいう。

(2)判決

「外国の裁判所が、その裁判の名称、手続、形式のいかんを問わず、私法上の法律関係について当事者双方の手続的保障の下に終局的にした裁判をいうもの」である(最判平成10年4月28日)

(3)民事性

刑事事件で罰金を科すような判決は対象とならない。対等な私人間の民事紛争に与えられる解決と異なり、租税や刑事などの非民事事件では、国家としては直接の利害関心を有し、各国の利害に互換性がない。そのため、ある国から利害関心の実現を求められた国は、通常、相手が自らの利害関心にも協力することを見返りとして要求する。この共助のルートを逸脱して外国判決の承認をすることはしないと考えられる。なお、懲罰的損害賠償について判例あり。

具体的要件

(1)間接管轄(1号)
  • 判決を下した裁判所が、当該事件における裁判機関として的確であったこと。狭義の裁判権だけでなく、国際裁判管轄も含む。判断基準につき、判決国のルールを基準とすると実質的再審査の禁止に触れることから、「我が国の国際民訴法の原則から見て、当該外国裁判所の所属する国がその事件につき国際裁判管轄を有すると積極的に認められること」とする判例の立場が通説。直接管轄の基準との関係につき、以前はそれと同一であるとするのが多数説であった。
  • 同一説(鏡像理論)は、いずれも公権的判断を当事者に強制する正当性を担保するものであって、日本が自国の裁判所にそうしてよいとしている枠を逸脱することは容認できないとし、両者は完全に同一であるべきであるとする。
  • 異別説は、すでに判決国では一定の公権的判断が妥当している以上、それをできるだけ尊重して国際私法秩序の安定をもたらすことに価値を認め、直接管轄に比して間接管轄は緩やかに認めてよいとする。
  • この点、判例は「基本的に我が国の民訴法の定める土地管轄に関する規定に準拠しつつ、個々の事案における具体的事情に即して、当該外国判決を承認するのが適当か否かという観点から、条理に照らして判決国に国際裁判管轄が存在する否かを判断すべき」(平成10年判決)民訴3条の2以下の規定が設けられた現在においては、判示のいう国内土地管轄規定に依拠する必要がなくなった。後半の条理による調整は、3条の9によって例外的な個別的調整規定が存在する以上不要となるようにも考えられるが(このように解すると同一説)、管轄が否定されても個別事情によって例外的に肯定することも可能である趣旨とすれば非同一説と解される。
  • 平成26年4月26日最高裁判決は、不法行為に関する訴えにおける承認執行について、「基本的にわが国の民訴法の定める国際裁判管轄に関する規定に準拠しつつ、個々の事案における具体的事情に即して、外国裁判所の判決をわが国が承認するのが適当か否かという観点から、条理に照らして判断すべきものと解するのが相当である」とした。
(2)訴訟手続開始文書の送達(2号)
  • 訴訟開始時における被告に対する手続保障の規定。特に防御を尽くすことなく敗訴した被告の保護を趣旨とする。
  • 判断枠組みについて、上記平成10年判決は、①被告が現実に訴訟手続の開始を了知することができるものであること、②被告の防御権の行使に支障のないものであること、③国際私法共助に関する条約があればそれに定められた方法を遵守していること、と判示した。③につき、送達に関する条約の遵守の実効性確保の趣旨と解される。公示送達等はここでの送達とはいえない。また、送達がなされていなくても応訴した場合は2号の要件は満たされる。
(3)公序(3号)

判決の内容及び訴訟手続が、日本における公序に反しないこと。

  1. 手続的公序:「訴訟手続」が公序に反しないこと。これは1号・2号から漏れた手続チェックの受け皿となる規定。裁判官が買収されていた場合など。
  2. 実体的公序:準拠法選択における国際私法上の公序(通則法42条)に対応。判決内容に基づく承認結果の反公序性と、事案の内国関連性の2要件に照らして判断される。

cf.内外判決の抵触:内国判決と矛盾する外国判決を承認することは手続的公序に違反すると一般には考えられている。内外判決と執行の間にずれがある場合、その抵触の有無をいつの時点で考えるのかが問題となる。

(4)相互の保証(4号)
  • 判決国も我が国の判決を承認することを求める要件。判決国の承認要件が我が国と厳密に一致することや昭孝により緩やかであることは必要ない。
  • なお、各国の利害関心が低くその判断に互換性がある民事判決において相互の保証の要件にすることには疑問があるとするのが多数説である。

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【国際法判例】ケベック分離独立事件(カナダ最高裁勧告的意見)

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国際法判例シリーズ。この記事では、ケベック分離独立事件のカナダ連邦最高裁判所勧告的意見についてまとめています。

【事件名】ケベック分離独立事件 Quebec Secession Case 

【決定日】カナダ連邦最高裁判所勧告的意見:1998年8月20日

国際法判例の記事一覧はこちらから>

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事実と経過

  • 連邦国家カナダの1州を構成するケベックでは人口の8割がフランス系で、言語的・文化的なアイデンティティの確立をめぐる動きが強く、特に60年代以降は憲法改正におけるケベック自治権拡大をめぐって連邦との対立が激化するようになった。
  • 80年代には、独立を標榜するケベック党政権によって分離独立の賛否を問う住民投票がなされたが、6割の反対で否決に終わった。その後、82年にはカナダ憲法(英領北アメリカ法改正)が成立したが、同州は批准を行わなかった。87年には同州の要求の一部を受け入れる協定がまとめられたものの全ての州の批准を得ることが出来ず、締結されずに終わった。
  • こうした状況の下で、94年にケベック州首相はケベック主権国家となることを目標とし、それを実現するための具体的なプロセスを明らかにした主権法案を国民議会に提出した。また、95年6月には、ケベック党の指導者らが住民投票の賛成投票後の具体的な行動同指針を示した共同行動綱領に合意した。これらは同年9月にケベック未来法として国民議会で採択された。これを踏まえて、同年10月には第二回の住民投票が行われ、賛成49.42パーセント、反対50.58パーセントで否決された。
  • このような背景のもと、カナダ総督は総督は96年9月30日の枢密院令により、連邦最高裁判所に対して以下の3点の諮問を行った。
  1. カナダ憲法上、ケベック議会、立法機関または政府は、カナダからケベックの分離独立を一方的に実施することができるのか。
  2. 国際法上、とりわけ国際法上の自決権は、ケベックの議会、立法機関又は政府に対してカナダからケベックの分離独立を一方的に実施する権利を与えているのか。
  3. この点に関して国内法と国際法の矛盾がある場合にはカナダにおいてはどちらが優先するか。

意見要旨

憲法における一方的分離独立の地位

  • ケベックの一方的な分離独立は、憲法上許されるものではない。分離独立には法的に憲法の改正を必要とするものであると同時に必然的に交渉を要する。
  • カナダ憲法は、連邦から離脱するための州の権限について沈黙し、分離独立を明確に認めておらず、またそれを明確に禁止しているわけでもない。しかし、分離独立の行動は、疑いなく現行の憲法制度に合致しない形でカナダ領土における統治形態を変更させるものとなる。
  • 憲法上、住民投票の利用は規定されておらず、その結果は憲法体制において直接の法的効果を有するものではない。にもかかわらず、住民投票は特定の場合において、重要な政治的問題に関する有権者の意思を確認するための民主的手段を提供するものである。
  • 憲法の内包する民主主義の要請から、ケベック人民が明確に表明するカナダから分離する意思は、相当重要な意義を有するものとして認めなければならない。
  • 住民投票によるケベック人民による既存の憲法秩序に対する明確な否定は、分離独立要求に正当性を付与し、交渉に入り、そして憲法の諸原則に従って交渉を行うという形で、こうした民主的意思の表明を認め、尊重する義務を他の州及び連邦政府にもたらすことになる。
  • この憲法上の諸原則に従って交渉を進める義務を果たさないことは、当事者の国際的な正当性を損なうことになる。

国際法における一方的分離独立の地位

  • 国際法は一方的分離独立の権利を認めてはいないが、明確に否定することもしていない。国際法は国の領土保全を重視し新国家の形成については国内法に委ねている。一方的分離が憲法と両立しない場合であっても、例外的な事情においては人民の自決権に従って許容される。
  • 国際法は自決権を「人民」に与えているが、その正確な意義は不明確である。「人民」は必ずしも国の住民の全体を意味するものではなく、ケベックの住民は人民に該当する多くの特徴を確実に有するが、その法的性格付けの問題は本件諮問事項に回答するために必要でない。
  • 人民の自決権は通常は「内的」自決を通じて実現され、「外的」自決権は最も極端な事例においてしかも注意深く限定された状況においてのみ生じる。国際法上の自決原則は領土保全の枠内で発展してきた。人民の自決権の行使を支持する多くの国際文書はまたこうした権利の行使に対し多くの制約を課している。
  • 国際法上の自決権が外的自決権を認めるのは、旧植民地状況にあるか、民族が外国による軍事占領下にあるような抑圧状況にあるか、あるいは明定可能な集団が、政治的、経済的、社会的及び文化的発展を追求するために政府を利用しようとしても意味をなさない状況にある場合(=内的自決を完全に拒否された場合)である。
  • ケベックの事情は分離独立の認められる例外的な事情にあたらない。人民の自決権に言及した国際文献の論理構造からすれば、カナダは「人民の同権及び自決権の原則」に従って行動する主権及び独立国家であり、従って差別なくその領域に属するすべての人民を代表する政府を有する者である。
  • 従って、「人民」の定義がどうであれケベック州の住民も、またケベックの議会、立法府または政府も、国際法の下で一方的にカナダから分離する権利を有さない
  • 憲法違反の分離独立が結果的に成功するかどうかは国際社会の承認に依存する。しかし、国際的承認は分離の日に遡及して「法的」権利の淵源となるものではない。

国内法と国際法の優劣

諮問事項①および②に対する答えに鑑みて、諮問事項③にいう国内法と国際法の間の矛盾は生じない。

論点

  • ケベック州が交渉を経た後合意に至らず、一方的に独立を宣言しかつ当該地域の実行支配を行っている場合、その領土は保全されるのか。
  • 独立宣言後、仮にフランスが国家承認した場合、カナダ政府はいかなる主張を行うことが出来るか。
  • 国家資格要件に経済的自立は該当しないか。
  • 分離独立ではなく既存国家に併合された場合、国家承認は要しないとすると、その違法性はいかにして主張するか。
  • 救済的分離権を超法規的に措定することは国際法上観念できないか。
  • 国家の成立が政治的現実に依存するにもかかわらず、国際法上分離権が認められないとする意義は何か。
  • 国際法上、住民投票はどのような意味を持つか。

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(43)国際法上の難民の地位【国際法】

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国際法解説シリーズ。この記事では、国家の庇護権と難民条約上の難民の地位についてまとめています。

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庇護制度の発展

  • 領域的庇護 territorial asylum:他国からの亡命者を自国領域内で保護すること。
  • 古代ギリシャ都市国家間では他国からの亡命者に庇護を与える慣行が広く見られたことが、近世の主権国家間での領域的庇護制度に発展。
  • グロティウス「祖国を追われて庇護を求める外国人に対しては、彼らが既存の政府に服し、抗争の回避に必要な規則を遵守するならば定住することを拒否すべきでない」
  • 伝統的には国家が権利として「庇護権」を有するとされてきた。今日においても、外国人が有する権利ではなく、いかなる国もこれを与える義務を負わない、とされる。
  • 世界人権宣言はすべての人が迫害からの庇護を求め、かつ、これを享受する権利(14条1)を認めているが、これは個人の庇護権を認めたものではない。

外交的庇護

在外公館には広範な不可侵権(inviolability)を有する(外交関係条約22条)ものの、条約上の取り決めがある場合を除いて、一般国際法上、庇護権を有さない。

判例】庇護事件:外交的庇護の場合は、避難者は犯罪地国の領域内にいる。外交的庇護の供与の決定はその国の主権を毀損することになる。 

国際難民法の発展

19世紀においては難民の問題を特別に取り扱うことなく、逃亡犯罪人、経済的流民とともに国家の庇護権の拒否の対象事項とされた。

難民条約の採択経緯

難民条約の性格と議定書の採択

  • 西側諸国を中心に作成:ソ連・東欧からの難民救済を主眼。
  • 難民条約は難民を「1951年1月1日前に生じた事件の結果として」発生したものに限定(1条A②)=アジア・アフリカを含んでいない。
  • 締約国の選択により上記期限内で「欧州」で生じた難民の保護に限定しうる道を設けていた(1条B①)
  • 1967年「難民の地位に関する議定書」:時間的・地理的制限をなくすことで、普遍性を高める。

難民の定義

(1)定義上の3要件

条約難民(1条A②)

  1. 迫害要件:人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること。または、政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖(well-founded fear)。
  2. 保護喪失要件:この恐怖のため、その国籍国の保護を受けることができないものまたはその保護を望まないもの及び無国籍者の場合は常居所国へ帰ることができないかまたはそれを望まないもの。
  3. 国外性要件:迫害の恐怖のために「国籍国の外にいるもの」
(2)3要件の検討

迫害要件

  • 迫害の原因事由の限定列挙=人種・宗教・国籍・特定の社会的集団の構成員・政治的意見。戦争や内乱等の経済的困窮は対象外。
  • 迫害の蓋然性の立証:本来は主観的判断基礎=個人的認識。しかし、条文は「十分に理由のある恐怖」として客観的事情の存在を要求。
  • その客観性の立証の度合いにつき、厳格にすれば、難民申請者はその立場上、証拠の収集・提示に困難な地位に置かれているため、事実上振るい落とされる。
  • 貴族院「迫害を受けるであろうという合理的な程度の見込み」でよい(キース卿)、米連邦最高裁「証拠によって客観的状況が示される限り、その状況がおそらくもたらすであろうことを証明する必要はなく、迫害が合理的に起こりうることで十分」

国籍国の保護喪失要件

  • 本国による保護の拒否などの客観的事情の存在、または、保護を望まないという個人意思の主観的事情の尊重。例外として1条C

国外性要件

  • 国内避難民は当たらない。国籍国を離れたのちに迫害の恐怖を生ずる場合を含む「後発的難民」 refugee sur place

cf.アフリカ難民条約(1969年):外部からの侵略、占領、外国支配、内乱により国外に避難したものも対象。この場合の難民は迫害要件不要。

(3)難民該当性の立証に関する手続問題
  • 各国の立法に認定手続きを委ねる。ex.「出入国及び難民認定法」立証責任は第一次的には申請者本人。必要な場合は「難民調査官による事実の調査をさせることができる」(61条の2の14①)
  • ただし、国に一般的な「調査義務」を設けたものではないにしても、立証不足を持って直ちに不認定の処分を禁じたものと解すべき。

 難民の地位

  • 社会的同化と帰化を「できるかぎり」促進すべきもの(34条)永住者として受け入れ義務を課しているわけではない。国家の庇護権の概念をなお維持。
  • 難民認定を受けたものは、労働、教育、裁判、公的扶助、社会保障等について一定の保護・待遇を与えるべきものとされる。
  • 不法入国を理由とする処罰は禁止され、また、国の安全と公の秩序の維持以外の理由による追放は禁止(32条)

ノン・ルフールマン原則 

ノン・ルフールマン原則(principle of non-refoulement)とは、いかなる方法によっても難民の「生命または自由が脅威にされされるおそれのある領域の国境へ追放または送還してはならない」とする原則(33条1項)

(1)適用基準

迫害要件とは異なる文言:前者がの方がより緩やかで、「生命・自由への脅威」はより客観性を要求?

(2)適用範囲
  • 送還先が当該脅威の待つ別の国へ再送還が見込まれる場合にも適用。間接的に生命・自由の脅威。
  • 迫害を逃れる者について国境での入国拒否を禁ずるものか:解釈上、締約国の領域内に存在する難民を対象としている(33条2)
  • UNHCRは、同原則は場所を問わず適用されるとする。また、正式に難民認定を受けてないものでもその生命・自由の脅威にさらされるおそれがある場合には適用されるとする解釈が有力。
(3)慣習法性

国際人権法や犯罪人引き渡し条約の発展により慣習法化するに至ったという学説が有力。 ex.拷問禁止条約、日韓犯罪人引渡条約 ただし、尹秀吉事件では否定。

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(42)人民の自決権 II:内的自決と外的自決【国際法】

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国際法解説シリーズ、人民の自決権についての続きです。大学のゼミで発表した時のものをベースにしています。当時はちょうどロシアがクリミアを併合した頃でした。

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自決権の今日的意義

非植民地化の過程で自決権に基づく国家の成立が認められたことの影響で、分離独立は広く自決権の実現として主張されるようになった。実際、冷戦以降の様々な地域紛争・民族紛争では、当事国は自決権の行使を正当化根拠として分離独立を主張した。しかし、その一方で国際社会は独立国家からの分離独立を自決権の行使として認めてこなかった。すなわち、一度独立国家として成立すれば、領土保全原則が優先し、分離権としての外的自決の継続的適用はありえない、とされた。

また、国際司法裁判所は、コソボ独立宣言事件で一般国際法上、一方的独立宣言を禁止する原則・規範は存在しないが、非植民地化以外の文脈で、国家樹立の権利を内包する自決権の主張に関しては判断を回避した。バングラデシュ、旧ユーゴからの独立国、エリトリア南スーダンなど、非植民地化以外の文脈で分離独立に成功した国家が存在するが、これらは自決権の行使としてではなく、実効的支配を確立することによって達成されたものであると解されている。

内的自決理論

独立国家には外的自決が認められないにもかかわらず、分離独立と自決権は全く無関係というわけではない。この点につき学説上有力に唱えられているのが内的自決理論である。内的自決とは、人民が代表性ある民主政府を求める権利とその国内の少数者団体が自治権又は自決権を求める権利を意味する。

この理論は友好関係宣言7項の留保条項の反対解釈から導かれる。それは、「人権、信条又は皮膚の色による差別なくその領域に属するすべての人民を代表する政府を有する主権独立国家」のみが「領土保全又は政治的統一」を保持する資格があり、少数者団体の文化・アイデンティティ・宗教などを維持するための自治権が完全に否定された場合、その分離の要求が国際法上正当性のある要求として認められることとなる、とするものである。これによれば、限定された例外的な場合に限り、所属国家の領土保全は保護されず、従って集団の自決権が国家の領土保全に優先されることになり、当該集団には所属国家からの分離権が認められることになる。

この理論によると、独立国家において自決権は「外的自決」から「内的自決」に変容することで、その領域内のの普遍的適用が可能となる。これは理論のレベルでは一定の説得力を持つが、国際法規として確立する望みはないとも主張される。国際社会の実行が伴っていないためである。また、この理論は「民主主義のための干渉」を正当化するという批判も存在する。

国家資格要件・国家承認要件との関係

伝統的国際法において、国家の成立は国際法が規律するところではなく、国家は国家としての資格要件備えて政治的事実として成立した時点で国際法主体となると捉えられていた。法主体としての国家が成立するための資格要件は伝統的に、①恒常的住民、②明確な領域、③政府、④他国と関係を取り結ぶ能力(外交能力)であるとされる。(1933年モンテビデオ条約1条)
国家承認とは、国家の資格要件を中心とした判断に基づき、既存国家が新たに成立した領域的・政治的実体を国家として認める行為である。承認によって、政治的に承認国と非承認国の国家関係の正常な展開が可能となり、多くの場合外交関係の樹立につながる。国家承認は、個々の承認国によって一方的・個別的に行われるため、裁量性・相対性を内包する。

国家承認の効果については、創設的効果説と宣言的効果説の学説が対立している。創造的効果説は、承認以前の国家の国際法主体性を全面的に否定し、国家承認によって初めて国際法上の法主体となるとするものである。これに対し、宣言的効果説は、国家は事実として存在するならば承認される前でもすでに国家としての法主体性を備えており、承認はそれを確認し宣言するだけのものとされる。今日では後者が有力となっているものの、一方で、宣言的効果説のみによっては捉えきれない側面も持つ。

伝統的国際法において承認の要件は国家の資格要件と同一とされ、実効的支配という客観的事実に限るものであった。また、この要件を満たさない実体への承認は尚早の承認として旧国家への干渉(=母国の領域主権の侵害)とみなされ、国家責任が問題になるとされた。

しかし、第二次世界大戦以降の現代的国際法の下における実行では、国家性基準が合法的に満たされていること、つまり、違法な武力行使や人権・自決権侵害によって国家が成立したのではないことが承認の要件とされるようになっている。
自決権と国家承認につき、国際社会は所属する領域国の同意なしに国家の一部を構成する集団が分離独立することには抵抗してきた。このような分離実体に他国が国家承認を付与することは領域国の主権および領土保全の侵害を構成し、国家主権平等原則に反するからである。

この点につき、母国の領土保全と主権侵害との主張に対抗して国際社会が分離独立を結果的に承認したケースとしてバングラデシュの事例ががあげられる。東ベンガル州としてパキスタンの東部領域を構成していた同州住民は、インドの国際法上違法な武力支援を受けて独立を達成した。このことは所属国家により重大かつ深刻な人権侵害を受け、参政権を否定され、自治の要求も無視された状況において、自決権としての分離権を国際社会が承認した事例として捉える見解がある。

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